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私がラブレターを多治さんに渡して3日が経った。
――――私は家でも学校でも、ため息しか出ない。
「もしかして、無視されてるんじゃない?」
奈緒ちゃんが見かねて言った。
でもそれ、私の心を更にえぐってますよ、奈緒ちゃん。
「だよね…。」
今ので9999回目の、ため息をつきながら私は奈緒ちゃんの言葉を受け入れる。
(オージさん、お店にも来なくなってしまったし、明らかに避けられている。
このままじゃ、何も出来ないままもう会えなくなってしまう。)
「あぁ…っ、どうしよう…」
(せっかく出逢えたと思ったのに…ーーー)
「とりあえず、lineの連絡先教えたんなら待つしかないんじゃない?」
奈緒ちゃんが私の前の席に椅子の向きを逆にして座って、頬杖をついたまま冷静に言う。
「…うん」
(あぁ、失敗した。携帯番号も書くべきだった…。)
lineのIDだけじゃうまく探せなかったのかもしれない。
浅はかだったわ…。
「優木さん?悩み事?」
「赤坂くん」
顔をあげると、同じクラスの赤坂新くんがすぐ横に立っていた。
「悩み事でも、君の出番は無いから。ご心配なく」
私の代わりに、奈緒ちゃんが言う。
「怖…」
「奈緒ちゃん、怖いって」
私と赤坂くんが同時に反応する。
奈緒ちゃんの眼光が鋭すぎて、私も赤坂くんも黙った。
「あんな下心丸出しのやつに、相談なんてするわけないでしょ?」
逃げるように離れていった赤坂くんの背中を睨みながら、奈緒ちゃんが言った。
「…―――」
(これは、ありがとうと言うべきなのかな?)
私はハハハ…と苦笑いしながら誤魔化す。
と、急にあの日のことを思い出した!
「本屋さん!」
勢いよく椅子から立つと、ガガッと椅子が鳴った。
(お店が無理なら、次は!)
「駅前の本屋さんで一度会ったの!今日からそっちで探してみるよ!」
希望を胸に、私は鞄を持って走る。
「そう…程々にね」
聞き違いかもしれないけど、教室から出るとき奈緒ちゃんが、ため息混じりにそう言ったような気がした。
(あぁオージさん…、今日こそ逢えますように…ーーー)