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苦くない珈琲が飲みたい  作者: 夢呂
【第五章】多治大輔目線
19/20

「は?女子高生に告られた?」


酔ったからか、ポロッとそんな話をしてしまった。

心のどこかで、会社とは関係ない第三者に話を聞いて貰いたかったのかもしれない。



「―――で、付き合ってんの?」

俺の話を肴に、早瀬さんが酒をすすめる。


「まさか。即答で断りましたよ」

告られたから付き合う、それは早瀬さんのいつものパターンなのだろう。

この人は見た目だけはイケメンだからである。でも、俺は違う。ましてや相手は高校生だ、あり得ない。


「はーーっ?なんで?あ、不細工(ブサコ)だったのか?」


(あ、一応来るもの拒まずではないんだな)

早瀬さんの言葉から彼も一応選んで付き合っているということを、冷静に分析している自分に驚いた。


「いや、めちゃくちゃ綺麗な子ですけど…」

俺がそう返すと、早瀬さんが呆れたようにため息をつく。


「バカだな…お前。とりあえずやっときゃいいものを」


「―――早瀬さんならやりかねないですね」

俺は一瞥して、答える。


「俺なら間違いなく付き合うな」


「相手17とかですよ?早瀬さんのひとまわりも年下ですよ?」


「だから何だよ」

グラスにあった酒をぐいっと飲み干して、早瀬さんが言った。


「え?」


「年齢とか、関係ねーだろ」

酔っ払ってるはずの早瀬さんが、真顔で言うと、何だか真面目に話しているような気になる。


(関係、無いわけない…)

年齢は気にするだろ、だって高校生だぞ。


「だいたいお前、悩んでる時点でアウトだろ。」

真面目に言ったかと思えば今度はヘラヘラと笑っている。やっぱり酔っ払いだ。


「?」

(アウト?何が?)


俺がその答えを知ろうと早瀬さんを見ていると、早瀬さんが、酒を一口飲んでから言った。


「堕ちてんじゃん、その子に」


「え?そんなこと「無いなら、バッサリ拒否してる筈だろ?何を躊躇(ためら)ってるのか知らねーけど」


「………」

そうなのか?無いならバッサリ拒否…してるものか?そう言われたら、そんな気がしてきた。


「ちゃんと向き合えよ。そう思える相手なんて、そうそういないんだからな」


「早瀬さん…」


酔っ払いだと半分バカにしていたけれど、この人やっぱり人生の先輩なのかもしれない。



「あ、俺今スゲー、イケメンなこと言ったな」

早瀬さんが、誇らしげな顔で笑った。


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