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東方八岐録 ~夜の細道~  作者: 桐生直隆
三章 暮空之鬼子母神編
33/34

三十夜 鬼も魅せる朧月夜

 はい。更新。

 急かされたらので頑張りました!!


 それと、おかげさまで十万PV超えました!

 いやっほう!!

 

 天狗との交渉決裂。 

 鬼勢の味方に着こうと考えたのだったが。どうにもそれで正解らしい。何故って、初めから俺は暮空(おに)の味方だったようで、今思うに、半妖で鬼子な暮空を連れて天狗勢に加勢しようと言うのが間違いであった。


 ……そもそも。自分自身、禍な鬼神なのであって。


 考える間にも、義理の娘の拳が迫る。一応、あしらうために限定(ノーマル)程度に妖気開放でそれを迎える。

 鬼気迫る。文字通りの闘気を振り撒きながら、咆哮と共に跳んだ暮空。

 

 正直。躱すまでもない。

 俺の存在概念性質上、攻撃や脅威で向かって来られても、所詮俺には養分でしかない。攻撃を通したいのならば、特異な能力に頼るか、直接的でなく状況的な危機を作り出す他ない。


 腹部。

 抉るように打ち込まれた拳に身体が飛んだ。穿つ衝撃が背面へ突き抜け、人と変わらぬ体重の俺は後方へと吹っ飛んだ。続いて背面に走る衝撃はぶつかった木によるものか。

 そのまま落下。

 俺は難無く着地する。


「夜刀ー。分かってるだろうけど、手ぇ出すんじゃないよ」


 控える夜刀は無言に頷き、戦闘に巻き込まれないように距離を取る。


 腹部感じた威力に、自身の飛び方。

 外見通り、鬼を基盤(ベース)とした半妖のようだ。単純な力だけはかなりのもの。

 人間が鬼に成る伝説はよく聞くが、よもや何の因果か、偶然拾った命がその鬼子だったとは。運命の悪戯は面白い。


 ……半妖だけあって本家の鬼に及ばず遠からず、か。妖気で言うにC級程度。ま、変に能力も無いなら一般退魔師三人もいりゃ余裕かねぇ。


 能力も無く、暴走に任せ、単調な力で暴れるだけなら獣と同義。退魔師の罠に嵌まり、結界師の術式に捕らわれ、陰陽師の策略に掛かること明解。

 退魔・破邪の最高峰(エキスパート)、陰陽師相手なら、一人相手に容易く敗北しよう。


 ……大方の実力も測れたし、このまま暴れさせても意味は無い。己の力に振り回されてるみたいだし、丁重に意識を刈り取りますか。


 追撃。こちらに向かう暮空に意識を戻す。

 彼女は変わらず、獣よろしく炎のように赤髪を振り乱し、策もなく一直線にこちらに突っ込んでくる。


「良い子はおねんねの時間だよ――あぁん?」


 殴られた跡。ダメージも何も残るはずの無いその部分から熱を感じる。

 そして感じた直後、その熱は一気に上昇、灼熱を感じさせ、


「おいおい。能力まで持ってるってのかい――吃驚だよ」


 極熱の紅蓮を咲かせ、俺の腹部が爆裂した。

 後方、転がる身体。

 爆ぜる爆炎の花弁は、灼熱の舌で周囲一帯を舐め回し、余波と熱風が放射線上に波を生む。


「夜様っ!!」


 予想外の事態に夜刀の声が響く。

 声は届くが姿は見えない。俺の視界は炎の紅を映すのみ。

 爆裂した腹部、されど損傷は無い。どうやら腹部そのものが爆発したわけではないようだ。

 ……ならば何だ? 何が爆発した? 確かに俺は自分の腹部に熱を感じた。

 

 思考に専念しようにも、愛する我が子はそれを許さず。

 散る爆炎が晴れると同時、突き出されたのは右拳。愚直に単調な攻撃なれど、爆炎の目眩ましからの間髪入れぬ追撃。それは避けるに叶わず、吸い込まれるように顔面へと突き刺さった。


 また、背後に飛ぶ身体。

 一転二転三転と、地面を転がって、地面に足を踏ん張って無理矢理慣性を殺す。


 熱。そしてまた爆ぜる。

 今度は顔面だ。予測はできたがため、今度は吹き飛ばず済んだが。それでも大した威力だ。

 追撃を防ぐため、すぐさま眼前の炎を肺から空気を押し出して吹き飛ばす。まだ、暮空と距離があるはず、と開けた視界。


 が、現実はそれを裏切ってそこにあった。


 見れば今にもこめかみを蹴り抜こうと脚を振り被る暮空の姿。

 あまりに移動が速すぎる。

 ……今度は何をした?


 耐久性はあれど、これ以上爆裂されても面倒しい。咄嗟に翳した腕。

 そして、見た。

 暮空の脚が爆裂するのを。

 威力で言えば、俺の身体から起こった爆発に遠く及ばないそれ。しかし、幼き少女の肢体を動かすには十分過ぎる威力で、その爆発の推進力を利用して彼女の蹴足は加速する。


 が、それがどうと言う話。

 防御に、と身体を動かした俺にその程度の蹴撃が通る訳もなく。その細い足首は容易く俺の手に掴まれる。

 そして熱。また、爆ぜる俺の手。

 しかし離さない。

 俺はそのまま脚を掴んで暮空を持ち上げる。宙ぶらりんになる彼女。抵抗にこちらの掴む腕を逆足で蹴ったり、もがいて暴れたりしているが。最早無駄な足掻きだ。


「捕まえたっと」


 逆さ釣りに暴れる暮空。

 その顔は犬歯を剥き出しに息荒く歪んでおり、まさに獣の如く。


 抵抗する彼女。

 また、時折身体から爆炎が上がる。それはやはり俺の身体から出る爆炎より小さくあり。

 暴れる拳が俺の腹部を掠める。するとまた熱の直後に大爆発。爆発直径十メートルはゆうに越そうかと言う大爆炎が紅蓮を咲かす。


 ……ふむ。この爆炎は周囲、木々が炭になる辺り本物。が、本人に損傷はないと見える。やはり〝程度の能力〟かい。能力はおそらく……


 試し、自身の妖力を極端に抑えて見る。

 また、暮空の攻撃が当たった部分が熱を帯び、爆ぜる。

 しかし、爆炎は驚く程に小さくなっていた。


 ……確証を得たね。おそらくは〝妖力を爆裂させる程度の能力〟とか、そのへんだろう。基本、相手の妖力を爆発させるのに使ってたみたいだし、確かに人里じゃあ使いようがなかろ。それがなきゃ、人里で暴れても『子鬼が出た』で済みそうなもんだ。


 彼女の居住区は貧困街。

 元より人通りが少ない上に、妖力を持った外敵も少ない。満月の晩、鬼子と化した彼女も、暴れる機会無くしては騒ぎにもならなかったのだろう。


 しかし。騒ぎになったならないは別に、実際の戦闘力は大したもの。自分の妖力を爆裂させて攻撃力に転ずる戦闘方はC+級――準中堅妖怪級と言っていい。


 更にはこの〝爆裂させる程度の能力〟。

 俺には特例で効きはしないが、この能力は強者喰い(ジャイアントイーティング)だ。強肉弱食。実力の敵わない者を倒しかねない能力。

 相手の妖力が高ければ高い程、その爆炎は威力を上げる。限定(ノーマル)開放時の俺の妖力は夜刀と同義だが、その場合大爆発。戦闘(ハード)殺戮(ルナティック)での爆力がどれほどになるかなんて考えたくもない。

 俺は無事だろうが、周りが大変だ。


 改めて、夜刀に相手させなくて良かった。

 夜刀は俺の伝承の写身だが、災厄を喰らう能力はない。故に、俺のような理を超えた耐久性も無い。生身にそのままありのまま、あの不可避の大爆発を喰らうことになる。


 自分の妖力が爆発するのだ。避けられる訳が無い。


 どかん。

 どかん。


 耳をつんざくように先から響く爆裂音。流石に煩くて敵わない。


「てゐっ」

「――がぁっ!」


 逆さ釣り幼女の腹部に拳一閃。

 絵面的にとても健全的でない状況であるが、暮空は今や鬼の身体。手加減だってしているし、問題ない。

 がくり。力無く意識を手放し、大人しくなった暮空を肩に担ぎ上げる。戦闘の終わりを察して夜刀がそばに戻ってきた。


「おい。夜刀」

「はい夜様」

「お前様、着物はどうした? 何故、裸なんだ?」

「それが……先程の戦闘の爆発に巻き込まれて吹き飛んでしまいまして……」


 ……うん。絶対嘘だろ。爆発で吹き飛んだなら、何故お前様はそんなに無傷なんだか。


「――で?」

「すいません。嘘です。何かとこじつけて脱ぎたかっただけです。反省してます。後悔はありません」

「いや、反省も無いだろうが」

「はい!」

「何とても良い笑顔で頷いてんだお前様は! ここまで行くと逆に清々しいわ! はよ服を着ろ変態従者!!」


 尻尾で頭を一発しばき上げ、病気の夜刀に服を着させる。

 着させたところで、肩越しに背後に視線をやった。


「ま、こんだけ爆発音響かせりゃ寄って来るよねぇ。お待たせしました、とでも言っておこうかい?」


 忘れてならない。ここは鬼の領土。

 大音量響かせ戦闘があれば、地主がやってくるのは自明の理。


 俺の言葉。

 木陰より姿を現すのは有角の人影。肌が紅いのがいれば、髪が金色なのもいる。鬼は多種多様の外見を持つが、共通した特徴がある。

 それは頭部より生えし角。

 次々に姿を現し始める鬼たちに振り向き、俺は言った。


 自分の頭に生えた二本の角を見せ付けるように振るいながら、


「こんばんわ。鬼諸君。いきなりだが、お前様方に加勢しよう。俺は八岐夜、しがないちょっと最強な鬼神様だ。引き連れているのは悪神と半妖鬼子。

 そんで、更にいきなりだが、お前様方の頭になろうと思う。文句諍いも多々あるだろう。それがあるなら拳で語れ。実力で己の意見を通して見せろ。俺はお前様方のたった一つの道理が大好きだ。実に分かりやすい。

 〝力こそ全て〟。


 ――さ、拳で語り合おうじゃないか。戦闘狂諸君」



 奔る。空間を埋め尽くすのは狂喜。

 強者と戦うことを何よりの喜び、娯楽とする戦闘狂――鬼にとって、俺はどうやら最高の玩具になり得たらしい。男も女も一様に、口の端を釣り上げて白い歯を、剥き出しの犬歯を、見せて笑う。


 俺の顔にも笑み。

 鬼連中とは違う。いつもいつでもの享楽の笑みを貼り付けて。

 狂喜の笑みと、享楽の笑みが相対する。

 

 俺は横、夜刀に気絶した暮空を預けると、握った拳を打ち鳴らした。

 その鈍くも響いた拳骨の音が、俺と連中の祭りの火蓋となった。

 追って響いた鬼の鬨の声。


「さぁさ! 意識飛ばしたい奴から掛かってきなよ!!」


 拳が飛び交う喧嘩祭りの幕開けだった。



 ◆


「しゅーりょー」


 一帯。地形を変える程に大荒れを見せた喧嘩祭りが終幕を迎えた。

 途中、戦闘音に目を覚ました暮空が乱入したり、どさくさに夜刀が裸になったり、と色々あったが事態は収束。

 積み上がる死屍累々。戦闘不能になった鬼の山の上、俺は我が物顔で腰を下ろす。どいつもこいつも満足そうな顔で積み重なっている。余談、女鬼だけは丁重に気絶させて横に並べている。


 ……本当、満足そうな顔しくさりおってからに。何がそこまで楽しいんだか。ま、少しは気持ちもわかるけど。


 自分の下。目を回している鬼共。

 彼らも強者過ぎる強者なのだろう。ゆえ、拳で語れる、自分に近しい存在を求める。それは鬼の本能か、人としての感情か。そこまでは流石に分からない。


 死屍累々の山の上、流石に疲れて一息ついた。


「で、お前様は掛かってこないのかい?」


 問うた先、立っているのは桃色の髪を持つ鬼女。側頭部より生えた二本の角はやたらと短い。


「私はいいわ。そこに転がる連中と違ってそこまで血気盛んじゃないもの」

「あっそ。ならいいんだが。

 それと、起きてるのはお前様だけなんで、お前様に問うが。俺が鬼の頭になることは認めてくれんのかい?」


 桃髪の彼女はくすりと小さく笑って、


「認めないと思う? 鬼のただ一つの掟、知ってるでしょう? 〝力こそ全て〟よ。それに、そこに転がってる人たちの満足そうな顔を見てみなさいよ。異論なんてないでしょうね」

「そうかい。で、これから頭になる者として聞くが、お前様は?」

「私?」

「そ、お前様。戦闘に参加してないが。なんとなく分かんよ。雰囲気と言うか何と言うか、ぶっちゃけ勘なんだけど。お前様、かなりの実力者だろうがい。大妖怪級ぐらいあるんじゃないかい?」

「あら、買い被りすぎよ」

「そうだよいいんだけどねー」

「食えない人ね」

「俺は何時だって喰らう側だからねぇ」


 下ろしていた腰を上げ、立ち上がる。そのまま死屍の山を飛び降りて、彼女の前に飛び降りる。


「鬼は大の酒好きと聞くが、少しばかりなら用意がある。どうせこれから飲むんだろう?」


 俺の合図に、暮空を抱き上げた夜刀が来る。背中には旅籠。その中には酒。


「皆喜ぶと思うわよ。貴方のことも、お酒のことも」

「そいつは結構。じゃ、頭になったことだし。鬼の根城へと案内頼めるかねぇ」

「了解。夜頭領」


 微笑んで言った彼女の後に続いて、俺と夜刀が行く。

 山道。木々の隙間を縫って進む。

 倒れている連中も起き上がり次第戻って来るだろう。


 不意、先を歩く鬼女がくるりと反転し、こちらを向いた。


「あ、そうそう。私の名前はね、茨木(いばらき)華扇(かせん)って言うの。よろしくね頭領」

「あぁ。よしなに。華扇」


 そうして、俺は鬼の頭になった。

 朧月夜で、半妖も真の姿を魅せる。幻想的な夜の話だった。




 華扇ちゃんですね。はい。

 暮空。ぶっちゃけそこそこです。能力上、強者喰いが可能です。実力で言えば夜刀の方が上ですが、一体一の対決に持ち込まれると、正直どっちが勝つか分かりません。

 対暮空に対して最強なのは、妖力を持たず、身体機能が高いやつです。だから、人間の術師とかには割と負けます。……今の暮空、は。


 どっでもいい話。二次小説読むと自分も書きたくなりますよねー。

 禁書目録の二次書きてぇ。「もしもレベル5が第十位までいたら」とか。時間操作系能力者で「廃棄時計(オーバータイム)」とか妄想膨らむわぁ。体内時計がずれるから、絶対基準としていつもストップウォッチ持ってるとか。時間を巻き戻すと困るから、統括理事会が幻想殺しの近くに彼を置いたとか。楽しげ愉しげ。


 ともあれ、感想待ってます!!

 嗚呼、キャラ絵とか描いて送ってくれる人いねぇかなぁ。


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