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殿下の承認欲求を満たしていただけなのですが…… なぜ、こうなった?

作者: 春待瑞花
掲載日:2026/06/25

「アリ!みててっ!」

 クラウス殿下が水魔法を発動させて的の真ん中に当てた。

「すごいです!殿下っ!中央に当たりましたね!素晴らしいですっ!」

 すかさず拍手しながら褒め称える。得意満面の殿下に向かって笑顔のまま告げる。

「本当に素晴らしいです。私はたくさんの量の水を放つ事が出来ますが、制御力は殿下には全く敵いません。殿下のように制御力を身につけたいと思います。一緒に頑張りましょう!」

「そ、そうだな。俺ももっとたくさんの水を出せるよう頑張るよ」

「どちらがより多くの水を的に当てれるか、競争ですね!」

「ああ!」

 今日も殿下のやる気スイッチが入ったらしい。魔術師のところに駆け寄る殿下の後ろ姿を見送る。

――――――


「アリ!みてっ!」

 殿下が身体強化の魔法をかけて宙返りしながら近くの木に登った。

「まあっ!素晴らしいですっ!私は筋力がないので、殿下のような跳躍はとても出来ません。身体強化で一瞬で木の下まで移動する事は可能なのですが……」

 と言いながら素早く木の下に移動した。得意満面の顔だった殿下が驚いて目を見開く。

「す、すごいな、、、本当に一瞬だ、、」

「殿下ならすぐにこの速さを超えますわ。私も跳躍力を鍛えますので、一緒に頑張りましょう!」

「ああ!もちろんだ!」

 今日も殿下のやる気に火がついた。

――――――


「アリ!これみて!サモスラ国の系譜を書き出したんだ!」

「殿下は、もう他国の系譜を覚えたのですねっ!素晴らしいです!私は系譜よりも語学を先に学んでいますので、系譜に関してはさっぱりですわ。でも、サモスラ語とヒマリア語は大体覚えましたのよ。早速両国の系譜を覚えたいと思います。殿下とご一緒にサモスラ国やヒマリア国の方にご挨拶出来たら嬉しいですわ」

「ああ…… そうか、もう大体覚えたのか……

 よし!俺も語学をすぐに習得するよ」

「私も系譜を頑張って覚えますので、パーティーで両国の方にお会いする事がありましたら、共にご挨拶いたしましょうね!」

 殿下の目が闘志に燃えているのを確認したが、優美に微笑んでおいた。




******



「アリ!みててくれ!」

「はい。殿下ならきっと討ち取れますわ。頑張ってくださいませ!」

「ああ!」

 殿下が弾丸のように突っ込んでいった。


 ……まあ、殿下なら一人で倒せるでしょう……


 ……しかし、なぜこうなった?

 私は公爵令嬢、クラウス殿下は第2王子。

 国の至宝であるはずなのに、今殿下が突っ込んでいった相手は魔王だ。

 魔獣達を取りまとめている最強の敵。

 命を落とすかもしれない、こんな危険な任務、普通は王子や高位貴族はやらない。

 騎士団や魔術師達精鋭部隊で対峙するか、勇者パーティーが対峙するかだろう。


 だけど、今、辺りにいた魔獣を全て倒し、一人となった魔王に対峙しているのは私と殿下の二人のみ。

 そして、きっと殿下一人で魔王を討ち取るのでしょうね……

 私にそんな意図は全くなかったのだけれど、気づいたら人類最強の二人となってしまっていた。

 ……ほんと何でだろう?ただ、殿下の承認欲求を満たしていただけなのに?……



 私は転生者だった。前世日本で22歳まで生きた記憶がある。死因はわからないけど、webデザイナーとして働き、取引先に向かう新幹線の中で寝た記憶が最後だ。

 7歳上の姉は子供が1歳の時に離婚して実家で暮らしていた。実家の近くで一人暮らしをしていた私は、薬剤師として忙しく働く姉に頼まれて、甥っ子の面倒をよくみていた。在宅でフレックス勤務のため、時間の融通がきくので実家に出向いて甥っ子と遊んでいた。私によく懐いている甥っ子は、工作作品を作っては「ゆりちゃん、みて!」と見せてくれたり、外で遊ぶ時は何かにつけて「ゆりちゃん!みてて!」「ゆりちゃん、これみて!」と自分が出来る事を私に見て欲しくて、口癖のようにいつも私を呼んでいた。

 めちゃめちゃ可愛くて、その都度「うわぁ、すごいね〜よく出来たね〜」と褒めていたのだが。


 この世界で公爵令嬢として産まれた私は、産まれてすぐに第2王子であるクラウス殿下の婚約者に決まった。4歳上の第1王子であるカエサル殿下の婚約者が派閥違いの公爵令嬢であったため、貴族の均衡を保つ目的として当然の事だった。

 6、7歳で前世の記憶を思い出した私は、婚約者として常にクラウス殿下の側にいたのだが、前世の甥っ子の記憶を持つ私は、殿下が甥っ子にみえて可愛くて仕方なく……

「みて!」と言われるたびに賞賛し承認欲求を満たしてきた。

 けれど……前世の記憶を思い出し……

 この世界が前世と全く違う世界である事に興味津々となった私は、凄まじい勢いで、この世界の事を知識として網羅し、魔法を使える事も不思議で楽しく、魔法を追求し極める事にも夢中になる。好奇心と向上心が果てしなく、知識を浴びるように吸収し、使える魔法を破竹の勢いで増やし、身体強化をかけて動いても壊れない身体作りをしているうちに、心技体、全てにおいて人類の最高レベルに自然と達してしまっていた。

 そんな私の横で、私に賞賛を受けながら成長していった殿下は、元々のスペックが高い上に負けず嫌いの性格も相待って、私に負けじと最高レベルの人類に育ってしまったのだ。


 その結果……

 魔術師としても剣士としても最強の私達二人が、常に前線で魔獣討伐する事となり、私達のレベルに誰もついてこれない事から、魔王のいる魔塔へ向かうのは私たち二人で十分となり、二人で魔塔に踏み込んだのが1時間前。向かってくる魔獣を二人で難なく討ち取り、そして、あっさりと魔王のいる部屋に到着し、魔王に向かっていった殿下の背中を見送っての今現在である。


「アリ!みて!!魔王の核を破壊したよっ!」

 殿下が満面の笑みを浮かべてこちらをみた。

 殿下の持つ剣の先には魔王の心臓に当たる心核が刺さっている。

 突っ込んでいった勢いそのまま、一瞬で心核をついたようだ。


「さすがですわ!クラウス様!!クラウス様の瞬発力は世界一ですわね!!では、王城に戻りましょうか」

「ああ。もっと手強いかと思ってたんだが、大した事なかったな。魔王の核がなくなればこれ以上魔獣は増えないだろうし、あとは残っている魔獣を討伐するだけだな」

「どこに魔獣がいるかわかりませんが、きっと出てきても騎士様や魔術師様方で討伐可能だと思いますわ。クラウス様、お疲れ様でした。しばらく、二人でゆっくり旅行いたしませんか?」

「そうだな。最近は魔獣討伐ばかりしていたからな。アリの行きたい国があればそこに行こうか」

「そうですわね……まずは、ヒマリア国に行きたいですわ。海に入りたいです!」

「ああ、いいな。食べ物もきっと美味しいぞ。楽しみだ!」


 二人で足取り軽く、ヒマリア国の事を話しながら王城へ戻った。


――――――


「クラウス、アリアドネ、お前達の偉業は他国からも賞賛されている。ご苦労様だった。この国の誇りだ。

 ただ…… 早速他の国々から魔獣討伐の依頼がきている。すまないが、ドラゴンや飛竜などの最強種の討伐に出向いてくれないか?まずは、ドラゴンの被害が大きいサーキュラス国に行ってくれ。待遇は最高のものを用意すると言ってるから…… 討伐が終わればゆっくり観光してくるとよい。まあ、その後も討伐依頼のある国に向かってもらうから、さほどゆっくりも出来ないと思うが…… いや、まあ、2日くらいならゆっくり出来るだろう。という事でよろしく頼む」

 陛下が申し訳なさそうに告げてきた。

 私達は、チラッとお互いの顔を横目でみて共に小さくため息を吐きつつ

「承知いたしました」

 と揃って頭を下げた。



 ただの公爵令嬢として産まれたはずなのに、なぜこうなった……

 いや、まあ、私も殿下もまだ16歳だし。他国に討伐の旅に出ても、数年後にはきっと落ち着いた生活が送れるはず!

 前世の甥っ子のような可愛らしい男児の側面を持つクラウス殿下は昔も今も変わらず愛しいし、ここ数年でぐっと男性としての魅力が増してドキドキときめくことも多い……

 これからのクラウス殿下の成長がとても楽しみであるとともに、将来の伴侶としての生活を想像するだけで嬉しくて幸せな気持ちとなる。


 なので、しばらくは冒険者かつ勇者かつ、貴賓としての他国巡遊を殿下とともに楽しむことにします!!




お読みいただきありがとうございます!


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何卒よろしくお願いいたします!(*´ω`*)

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