木こりのお手伝いっ!
あれからしばらく経ち、再びみんなと打ち解けてやっと本調子になってきた私は、みんなと一緒にお小遣い稼ぎのために森へとやって来ていた。
·····まぁ、私の所持金は既に一生遊んで暮らせるレベルの額になってるから、依頼を受ける必要なんて必要ないんだけどね?
でも縛りプレイ的な感じで、みんなと遊ぶためのお金は自分の手で稼ぐ·····
いや貯蓄もお米とか味噌とか醤油を売ったお金なんだけどね?
ちなみに、最近は校長先生が主導で醤油・味噌の販売を開始し始めた。
それと同時に、お米を使った『麹菌』の採取と培養の実験も始まり、本格的に味噌と醤油の製造も視野に動き始めてる。
あとは先生に栽培用のお米の種籾も渡してあって、栽培方法の利権も売ったのでめちゃくちゃお金が入ってくるのだ。
あとあと、他にもウナギの蒲焼きのレシピとかを教えてあげたら売り出す事にして、これまたお金が·····
ここまでくると校長先生のお財布が心配になって聞いたんだけど····· その、校長先生の貯蓄、国家予算より多かった·····
あとあとあと、ついに校長先生の事を金ヅルと呼んでたのがバレて、私は本気の百叩きの刑に処された。
さすがは元勇者パーティーというだけあって、めちゃくちゃ痛かった。
しばらく椅子に座れないくらい腫れ上がったし、久しぶりに子供みたいにギャン泣きした。
まったく、私のぷりちぃなお尻をデカくしようなんて、なんて酷い校長先生なんだ!
ぷんぷん!
◇
「で、今日の依頼って何だっけ?木こりの伐採?」
「ソフィちゃん、それだと木こりさんを切る事になっちゃうよ·····」
「確か『木を切るとき邪魔になる草を刈る』っていう木こりさんからの依頼だよ」
あっ、それだ!
·····木こりを伐採するって何よ?
「あっ、多分あの人たちが依頼主じゃないかしら?」
「斧おっきい!すごーい!」
「ほう····· いい斧なのじゃ」
ほほう?
グラちゃんの言う通り、確かに森の中のポッカリと開けた場所に、木こりらしき人と付き添いの奥さんっぽい女の人が話をしていた。
その傍らには、なんか禍々しいまでにデカい大斧が置いてあったからあの二人で間違いないだろう。
ええと?
依頼主はあのいかにも木こりっぽいムキムキのおじさんかな?
「すいませーん!依頼を受けて来た、ちびっ子冒険者です!」
「ん?おお!君たちがお手伝いの冒険か!それじゃあ早速頼むぞ!」
「草を刈って欲しい所には地面に印がついてるから、そこをお願いね」
ちらっと周囲を見渡すと、確かに木の根元に生えてる邪魔になりそうな草むらに木の棒が刺さっていた。
あれを引っこ抜けばいいのだろう。
『『はーい!』』
「んじゃ、各自散開!一気に終わらせるよー!」
『『りょーかい!』』
《クエスト開始》
『木を切る時の邪魔になる雑草を刈れ』
達成条件:指定地点の草を刈る
刈り場環境:安定
◇
〜5分後〜
「ふんっぬぬぬぬぬぐ!!!」
しーん
「ふんぬぁぁぁああああ!!!」
しーん
「はぁ、はぁ、ふっ、なかなかやるな·····」
私は木の根元に生えていた邪魔な草を引き抜くのに苦戦していた。
いや、私が全力で引っ張っても微動だにしないんだもん·····
·····仕方ない、魔法の使用を解禁しよう。
「すいませーん!雑草って根っこまで引き抜く方がいいですか?」
「ん?あぁ、引っこ抜けそうなら根っこまで引き抜いてくれると助かる、じゃないとすぐに生えてくるからな····· あーその草か、そういう抜けないのは残しとくか刈ってくれ、後で俺が引っこ抜くから小さいのを頼む」
「えっ、おじさん木こりでしょ?斧は·····」
「俺は木こりじゃないぞ?木こりはアッチだ」
「·····は?」
木こりっぽいおじさんが指さしした方をみると、お淑やかで優しそうな奥さんが、死に覚え系な洋ゲーに出てくるゴツイ悪魔みたいなミノタウロスが持ってそうな、めちゃくちゃデカい斧を肩に担いで森の中を歩いていた。
あの斧って大人より大きいんだけど·····
たぶん重量100kgとかそういう単位の斧っぽいんだけど·····
あの人、優しそうな表情を一切崩さないで平気で持ち歩いてるし、でも重いのか地面に深い足跡付いてるし·····
「·····あの人ってオーガか何かだったりします?」
「アクシアは純人間だ、ハーフとかでも無いな」
「えぇ·····」
あっ、アクシアさんが斧を構えた。
「よいしょ〜」
ドゴォンッ!!!
みぢみぢみぢみぢ·····
ズズーン·····
うわぁ·····
1発で大木をへし折った·····
「あなた〜運ぶのおねが〜い」
「はいよ」
「あれ?奥さんが運ばないんですか?」
「アクシアが切って俺が運ぶんだ、役割分担ってやつだな、それとあの斧は重すぎてアクシアしか持てねぇ」
「ほほー·····」
たぶんアクシアさんには斧に対する補正系のスキルがあるのかな?
んで、力仕事とかは木こり?のおっちゃん担当か·····
一見アンバランスだけど、ちゃんとバランスが取れてる良い夫婦なんだなぁ·····
「よいしょっと」
なんて思いながら、私は魔法で雑草を根っこごと引き抜いた。
◇
そんでしばらく雑草を引っこ抜き続けて手が雑草汁で臭くなり始めた頃、エビちゃんがアクシアさんに話しかけた。
「のぅ、この木なのじゃが、ワシが切ってみても良いか?ちょっと試してみたいのじゃ」
「ん〜?いいですよ〜、がんばれ〜」
およ?
エビちゃんが挑戦するの?
「なになにー?エビちゃん木こりやってみるの?」
「うむ、この大剣を試してみようと思ったのじゃ」
そう言うとエビちゃんは、私がダンジョンを攻略して、ボスのオークキングを倒した時にドロップした『オークキングの大剣』をナイフサイズから本来の大きさに変更した。
その大きさはアクシアさんの大斧に匹敵するほどで、小柄なエビちゃんが持つと更に大きく見えた。
「あら〜、すごい力ね〜」
「うむっ!お主の斧·····はさすがにキツいが、それなりに力はあるのじゃ!」
ブォンッ!
エビちゃんが力自慢をするかのように大剣をその場で振り回した。
そして大剣は、近くにいた私を直撃しかけた。
「あらあぶないっ!!」
でも頭を下げればぶつかりません。
「もー!エビちゃん危ないよ!」
「あっ、すまぬのじゃ·····」
「いいよいいよ、それよりも·····」
「うむ、少し離れておれ」
「はーい」
エビちゃんは大剣を構えると、目付きがいつものアホっぽい顔から、ガチの顔に変わった。
「ふぅぅ····· ゆくぞッ!」
ヒュゴッ
バガァァァアアアンッ!!
バチバチバヂッ!!
「うわっ、木片飛んできた!ぺっぺっ!」
「すごいわね〜」
エビちゃんが思い切り薙ぎ払った大剣が木に直撃すると、大剣の質量と速度とパワーが大木の幹を粉砕してへし折った。
·····弾け飛んだ木片を全身に浴びたし口に入ったんだけど?
「ふふん!どんなもんじゃ!すごいじゃろ!」
「·····あのさ、木が半分くらい木片になってるんだけどさ、木材にするには失敗じゃない?」
「そうね〜、もっと威力を下げればいいかも〜、そこが難しいのよ〜」
「むぅぅううううう····· ならソフィ!お主もやってみるのじゃ!!これ割と難しいのじゃ!!」
お?
テメェ喧嘩売ってんのか?
「おうおうおう!やってやろうじゃないの!·····切っていい木ってあります?」
「えっとね〜、あそこの木だね〜」
「はーい」
見せてやるよ、真の木こりってヤツをよォ·····
◇
私はインベントリから新作の包丁
『先丸柳刃包丁 星核合金三号鋼 尺寸 世界樹柄 鞘付き《星断》』
を取り出し、世界樹の1番良い枝から作った鞘から抜くと、群青色に輝く美しいスラッとした刀身が現れ、星雲の如く輝いた。
材質は『ラズワルド・ロッド』とは違う、研究を重ねて完成した究極の星核合金『星核合金3号鋼』だ。
ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトという普通は混ざり合わない金属達を魔導的に結合させたこの合金は、今までずっとその最適な比率の研究を続けて来ていた。
その結果、3種の魔導金属は33%ずつが最適解で、用途によって比率を変えると効果も変わるが、33%が1番バランスが良かった。
そしてそれよりも、残り1%の方が重要だった。
今回はつなぎとして私が作れる『水色魔結晶』の微細な粉末を全体比率の1%になるように均一に混ぜる事で、金属間の魔導結合力と親和性を高められたのだ。
で、その魔結晶を作るのに必要だった魔力は5億と凄まじい量を消費したものの、無事に3号鋼は完成した。
·····ちなみにこれを1トン作るのに使った魔力は数十億、たぶん超新星爆発とかじゃないと自然界でコレと同レベルの合金は出来ないだろう。
ちなみに、一号がラズワルドロッドなどに使われていて、二号は失敗作だったけど変な用途に使えたから記録した合金比率、三号がこの《星断》に使われてる最新の合金だ。
そして、この包丁は私でさえチートと呼ぶべき性能を持っている。
「御託はここまで、斬るよ」
私は目標の木に軽く刃先をあてると、ピッと表面を撫でるように包丁を振り抜いた。
「·····ぶはははは!!その大木は包丁じゃ切れぬじゃろ、切れ込みさえ入っておらぬのじゃ、あっはははは!おっかしのじゃ!ぷーくすくすっ」
「練習かしら〜?」
「んにゃ、斬れた」
私は目標の木を指で軽く小突くと·····
すすっ·····
ズゥン·····
「ね?」
「「·····は?」」
木がつるーっと切り株の上を滑り、地面に落ちた。
うん、綺麗に切れてるね、完璧で究極の平面で摩擦ゼロっ!
そう、この包丁、なんと斬撃を飛ばせるのだ。
しかも斬れ味がヤバすぎて切ったところが摩擦ほぼゼロに、つまり物理の問題で出てくる架空の平面みたいになってしまうのだ。
ついでに、斬りたいと思った物しか切断出来ない効果も継承してるから私が狙った物しか切れていない。
あと、斬撃を飛ばすと言ったが正確には違う。
斬りたいと思った所を離れていても切断してしまう、と言った方が正しい。
包丁を振る事が『切る』という事象のトリガーとなり、魔力が『切ろう』という『意思』を汲み取る事で特殊な斬撃魔導現象が発生、刃が触れていない場所あっても即座に切り裂くようだ。
だから実際には『翔ぶ斬撃』では無いんだけど、起きてる事は翔ぶ斬撃だし説明が面倒臭いからそう呼ぶ事にしてる。
ちなみに色々検証した結果、どうやら『世界の根幹を成すシステムに干渉して切断を優先する』という何気にヤバい事をやっているようで、私のめちゃくちゃ強靭な魔導障壁も豆腐のように斬ってしまった。
·····我ながらヤバい代物を作ってしまった気がするけれど、そう思うほど性能は高いから使わない理由は無い。
「そそそいっ」
ついでに枝も翔ぶ斬撃で全部切り落として、丸太を魔法で浮かして私の所まで持ってきて、その上に腰掛けた。
「んで、これどこに運べばいい?」
「えっ、ええと〜、あなた〜!丸太はどこにおいてるの〜?」
「あそこだ、って浮いてる?」
「りょーかい〜」
私は丸太に乗ったまま、丸太置き場へと飛んで行った。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「この包丁すごく切れるんだけどさ、切れすぎて斬った感触が無くてちょっとつまんないのがたまに傷なんだよね·····あっちゃんとコンニャクも切れるよっ☆」
名前:エビちゃん
年齢:7才
ひと言コメント
「それは良いとして、ソフィがやってた丸太乗り、楽しそうなのじゃ····· ワシも無属性魔法の練習しようかのぅ·····」
名前:『なかよし組』
平均年齢:7才
ひと言コメント
ア「なんか遠くで爆音がするんだけど?」
フィ「どうせあの2人だから気にしないでいいよ····· うううううぅぅッ!!この雑草抜けないっ!!·····はぁ、筋トレしなきゃ」
グ「·····依頼書読み返したのだけれど、引っこ抜く必要無いわね、刈り取るだけでいいのね」
ウ「あっ、またヘンな色のキノコ!!」




