晴れた空の向こう側に
「んっ····· いたっ·····」
私は手に走った鈍い痛みで目が覚めた。
·····あれ?
知ってる天井だ。
あと私、いつ抱き枕なんて使ってたっけ?
「邪魔っ」
ゲシッ
「あうっ·····」
私はフィーロ君を蹴飛ばしてベッドから落とすと、上半身を起こして手を見た。
「うわ痛ぁ····· 貫通してるじゃん·····」
昨日は気が付かなかったけど、針は私のプニプニな手のひらを貫通していたようだ。
親指の付け根のぷにっとした所の左右に赤い点があるし、なんか違和感があるからわかった。
「いちち····· 『ヒール』」
私は回復魔法を使って傷口を塞ぐと、ベッドから立ち上がろうとした。
「あえっ、ううぅ·····立ちくらみが·····」
ステータス確認·····
あぁ、そうだ、昨日は私、めちゃくちゃ凹みすぎてて傷口も塞がないで放置してたから、いつの間にか貧血になってたのね·····
「私の血液を増やせ『ブラッドインジェクト』」
あぁぁ、血が増えてってるぅ·····
なじむ、実に!なじむぞ
フハハハハハ!
だってそりゃ私の血だし。
◇
「よいしょ」
「ぶみぇ」
「·····よいしょっと」
昨日は泣きまくったり血を流したりしたので、私の体はカラッカラになっていた。
なので血を足したり経口補水液というかスポーツドリンクを飲んだりして何とか回復した私は、ベッドから降りようとして間違えてフィーロ君の顔を踏んずけてしまった。
フィーロ君を踏んずけないように場所を変えて立ち上がった私は、体を伸ばしたり我流ラジオ体操で軽く運動をした。
「·····あれ?パジャマこれフィーロ君のだ、んじゃフィーロ君は?」
「ぅぅぅ····· 重い····· 巨人に潰される·····」
·····ベッドというか、ソファから落っこちたフィーロ君は何やらブツブツと失礼な寝言を言っていた。
なのでもう1回踏んづけといた。
そしてフィーロ君が着ていたのは、私がこのパジャマを渡す前に着ていたパジャマだった。
あぁぁ·····
だんだん思い出してきた·····
なんでフィーロ君のパジャマを着てるのかは知らないけど、昨日お風呂で落ち込んでたらフィーロ君が慰めに来てくれたんだ。
そんで、イジけてた私をハグしてくれて、ちゃんと楽しかったって言ってくれたんだった。
で、その辺で疲れた私は寝落ちして·····
「·····あれ?楽しかったって言ってくれた後、なんて言ってたんだろ?」
「うぅ·····僕の覚悟はやっぱり無駄になったんだ·····」
相変わらず寝ぼけて寝言を言ってるフィーロ君は無視して、私はフィーロ君の寮の部屋から自分の『ディメンションルーム』の部屋に向かった。
ゲートをくぐる直前、フィーロ君の机の1番いい所に昨日プレゼントした人形が丁寧に飾られているのがチラッと見えた。
それを見た私は、貧血気味だけど無理してスキップしながら自分の部屋に向かった。
◇
「·····祭りの後って感じだなぁ」
私は放置してたパーティーの後始末をするために、まず最初にパーティー会場の月面基地の実験用ドームへとやって来た。
ドームの中はアキさんが片付けてくれたお陰で綺麗になっており、使った机や椅子は1ヶ所にまとめて置かれていた。
「よし回収完了っと」
机や椅子は私が地上から持ってきた物なので、インベントリの中に入れて回収した。
「·····はぁ、後でみんなに謝らないとなぁ」
不機嫌だった私は、昨日の最後あたりでみんなに素っ気ない態度を取ってしまった。
せっかくの誕生日パーティーをぶち壊しにしちゃったなぁ·····
◇
次に来たのは、2日前にアキさんとほぼ徹夜で料理をしていたキッチンだ。
こちらは既に片付けをしていたが、いつの間にか信じられないほどピカピカになっていてアキさんがやってくれたんだとわかった。
「アキさんありがと·····」
◇
「はぁ、固まった血ってなかなか落ちないんだなぁ」
今度は、私が昨日大暴れした作業部屋の机の上の掃除をやっているのだけど、こびり付いた血がなかなか落ちなくて苦戦している。
とりあえずは水で濡らして、いらない布でガシガシと拭いていけば何とか落ちるので頑張ってる。
〜5分後〜
「おわったー!あー疲れた·····」
血の汚れはかなり広範囲にあったのだが、途中で
『私の血に含まれる魔力に干渉して魔法で加水して、水魔法で動かす』
という裏ワザを見つけたお陰で、かなり簡単に掃除が終わった。
そして次は、私が散らかした裁縫道具などの片付けをするのだが·····
「動け」
私くらいの魔法使いになると、散らばった道具全てを魔力で動かして、触ることなく片付けが出来てしまうのだ。
「ん?あっこれ·····」
ひっくり返った裁縫箱を元に戻すと、下敷きになっていた私を模した人形が出てきた。
「·····来て」
魔法で人形を手元に引き寄せると、私はそのままギュッと抱きついた。
「·····昨日はごめんね」
私は人形に謝ると、魔法を使わずに私の手で優しく机の上にちょこんと座らせた。
「それじゃ、行ってくるね」
そう人形に声を掛けると、人形の頭を優しくポンポンと叩いて私は作業部屋から出ていった。
◇
「うん、着替えOK、パジャマの洗濯OK」
自室に戻った私は、フィーロ君のパジャマを脱いで、最近お気に入りの『天使の服』を着て、麦わら帽子を被りショルダーバッグを肩からかけて、お出かけモードにした。
フィーロ君のパジャマは魔法で洗濯乾燥して、ちゃんと畳んで手に持っている。
そして身だしなみの最終チェックも完了した私は、『秘密基地』へと続くドアに手を掛け·····
·····大丈夫、私はいつもの私、みんなと仲良くアホやってる私、元気で無邪気な普通の女の子、大丈夫だソフィ、私はいつもの私。
私はいつも通りの笑顔になると、ドアを開けた。
ガチャッ
「みんなお待たせー!それじゃ街に探索にいこー!」
「遅いよソフィちゃんっ!早く行こっ!」
「だね、あぁAセット楽しみ·····」
「まぁ大丈夫よ、ソフィはいつも遅れるから、集合時間は30分早めにしているから」
「すやうなぁ·····」
「ほれ起きろウナよ、む?ソフィ、お主何を持っておるのじゃ?」
「あっ、これフィーロ君のパジャマだよねね····· その、ありがと」
「ふえっ、えっと、ど、どういたしまして·····」
私は借りてたパジャマをフィーロ君に返してお礼を言った。
「き、昨日はごめんね、すごくたすかったよ、ありがとう」
「ぼぼくの方こそお礼言わなきゃだから!ありがとうソフィちゃん、最高の誕生日だったよ?」
「いやいや、私の方がフィーロ君に感謝しないとだから、ありがとうフィーロ君」
「僕も····· うん、ありがと、その·····」
「·····のうアルムよ、今日はしょっぱい物を中心に食べぬか?ワシ、口の中がゲロ甘なのじゃが·····」
「ワタシも····· 今日は甘いもの少なくしよ·····」
「というか、なんでソフィがフィーロのパジャマをもっていたのかしら····· 確実にゲロ甘ね」
「ソフィちゃんてフィーロくん、なかいいなぁ····· あれ?みんな甘いの食べないの?わたしたべたーい」
「フィーロ君·····」
「ソフィちゃん·····」
『『いい加減甘すぎるっ!!行くよ!!』』
「「はーい」」
お互いに感謝し合ってた私とフィーロ君は、みんなが割り込んできて止められたので、そろそろ出発することにした。
◇
「フィーロ君ちょっと待って」
「ん?どうしたの?」
「あのね、ごにょごにょ·····」
「·····っっっ!!?」
「んふふ····· じゃ、先行ってるよ!」
フィーロ君を引き留め、ヒソヒソ話をした私はタタタッと駆け足でみんなの所に向かった。
んふふ、今日は散歩日和の晴れたいい日だ
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「私!完全☆復活!·····フィーロ君になんて言ったかはナイショだよっ☆」
名前:アルム
年齢:7才
ひと言コメント
「口から砂糖出すぎて糖分が足りないからやっぱりスイーツ食べたい」
名前:フィーロ
年齢:7才
ひと言コメント
「·····(思考停止中)」
名前:グラちゃん
年齢:6才
ひと言コメント
「甘い物を食べたら塩っぱい物を食べたくなるわよね····· 今日は冒険者セットのソースマシマシにしようかしら·····」
名前:ウナちゃん
年齢:6才
ひと言コメント
「あれ?フィーロ君どうしたの?·····し、死んでる!(※生きてます)」
名前:エビちゃん
年齢:7才
ひと言コメント
「ヒトって口から砂糖を出せるなんて知らなかったのじゃ····· はぁ、この大量の砂糖を売ってひと儲けでもしたいのじゃ·····(※マジで口から砂糖が溢れてきた人の感想)」




