ダブル誕生日パーティー!
遮光状態が解除されてパーティー会場の全貌が見えるようになった瞬間、みんなは目を輝かせて会場を見渡した。
「んっふっふ、この前頑張って月まで飛んで作ったんだ!すごいでしょ!」
「すごーい!!でもお月様ってなんにもないんだね、だったら私はアッチの方が好きかなぁ」
「これがお月様····· ねぇソフィちゃん、外って出られないの?」
「みんな上見て!アレが私たちが暮らしてる星よね!あんな感じなのね!すごい!」
「ぷりんだー!!いただきまーす!!」
「すごい景色なのじゃ····· ワシもどこまで飛べるか試した事はあるけど精々『霊峰』の倍くらいで呼吸が出来なくなったのじゃ····· ソフィはどうやって呼吸をしたのじゃ·····」
「ウナちゃんまって!それはみんな揃ってから!あとフィーロ君!もし外出たら100度の高熱と危険な光線で焼かれるし空気が全く無いから死んじゃうよ!」
「ひっ!?」
私は外に出たら死ぬことを教えると、窓に張り付いて外を見ていたフィーロ君はビクッと飛び跳ねて窓から離れて怯えてしまった。
「ねぇソフィちゃん、ここ本当に大丈夫なの?ガラスだから割れたりしない?割れたら死んじゃうよね?」
「大丈夫!私がそんなヤワな物を作ると思う?」
「そこまで言うなら大丈夫かな····· うーん·····」
フィーロ君は何とか納得してくれたみたいで、まだ不安そうな顔をしているが落ち着きは取り戻した。
·····やっぱり、月に作るの辞めた方がよかったかな。
「それじゃみんな席について!誕生日の2人はそことそこの席!」
『『はーい!』』
んじゃ、パーティーを始めよっか!
◇
「フィーロ君!ウナちゃん!誕生日おめでとう!」
「おめでとー!」
「おめでとう」
「おめでとうなのじゃ!」
「あ、ありがとうみんな!ソフィちゃんも僕のためにこんなすごい所をつくってくれてありがとう!」
「んへへ····· 気に入ってくれてよかった!」
「ソフィちゃんありがとー!だいすきー!」
「おわっ!んふふ、私もウナちゃん大好きだよっ!」
ウナちゃんが私に飛びついてきた。
ふふふ、やっぱりウナちゃんは仲良し組の癒し枠だよなぁ·····
◇
ウナちゃんがソフィちゃんに抱きついたのを隣で見ていた僕は、うじうじと悩んでいた。
ううぅ·····
どうしよ·····
うーん·····
僕もウナちゃんみたいに·····
うううううう·····
でも嫌がられたら·····
うーん·····
でも僕もソフィちゃんに·····
「ほれフィーロ、何をモジモジしておるのじゃ?見苦しいからさっさと行ってこい!」
「ひゃっ!?」
うじうじと悩んでいたら、後ろからエビちゃんに蹴っ飛ばされて、僕はソフィちゃんに触れるくらいの距離まで来てしまった。
「あれ?フィーロ君どうしたの?」
「あっ、えっと、その····· ぼ、僕····· ぁぅ·····」
ぼっ、僕も、ソフィちゃんに·····
◇
私はウナちゃんの頭をよしよしと撫でていたら、フィーロ君が私のすぐそばまでやって来て、何やらボソボソと喋りながらモジモジしていた。
「ぅぅ····· そ、ソフィ、ちゃん」
「·····どうしたの?」
「あっ、えっと、あぅ·····その·····えっと····· ぼ、ぼく、·····ぼく、ぼくっ!そのっ!
「フィーロくんだいすきー!みんなだいすきー!」
「うわっ!?ウナちゃん!?」
判断が遅い!
ウチのハグ魔がフィーロ君に抱きついちゃったじゃないか·····
·····なんかフィーロ君、ここに来てからずっと表情があんまり良くない気がする。
2人同時にやっちゃったの、あんまり良くなかったかなぁ。
「もういいや!パーティー開始!みんなドンドン食べてー!」
『『わあーーいっ!!』』
「ぷりんー!!あの大きいプリンわたしのだから食べちゃだめー!!」
「あうっ·····」
ありゃま、ウナちゃんが抱きついてたフィーロ君を捨ててバケツプリンの所に走っていっちゃった。
はぁ、フィーロ君の扱いが雑だなぁ·····
もっと丁寧に扱わないとダメだよ?
そのフィーロ君は、私の方を見て何やらモジモジとしていた。
「あれ??フィーロ君は混ざんないの?」
「えっ、あっ····· そうだね····· うん·····」
フィーロ君は少し俯き、残念そうな、悲しそうな顔をしながら、私の顔をチラッと見て、みんなのところに行ってしまった。
·····何よその顔
◇
「こらー!ウナちゃんまてー!それは私のカニだよー!かえせー!!」
「何を言っておる!アレはワシのカニなのじゃ!ソフィもウナも横取りするなー!!うがー!!」
「これはわたしのカニだよー!!はむっ」
「「あー!!食べたー!!返せー!」」
そのあとは私もパーティーに加わって、いつもみたいにバカ騒ぎして、エビちゃんと料理の取り合いでケンカをしたり、その隙にウナちゃんに横取りされたりして楽しく2人の誕生日を祝っていった。
けど、私の心の中にはさっきのフィーロ君の表情がずっと残っていた。
◇
そして、モヤモヤしている間もパーティーは進んでいて、結構長いことやってたし作った料理も大半は食べ終えてしまい、もうすぐ終わりの時間となってしまった。
はぁ、切り替えないと·····
「みんな集まってー!そろそろプレゼントの時間だよー!」
『『はーいっ!!』』
私が声を掛けると、みんなが私のところに、特設のステージの所に集まってきた。
「それじゃ、フィーロ君とウナちゃんはそこのステージの上に立って!」
「「うん!」」
2人がステージの上に移動して振り返ったタイミングで、私もステージに上がって、2人のために用意した誕生日プレゼントをインベントリから取り出した。
「改めまして、誕生日おめでとう2人とも!2人に私からのプレゼント!フィーロ君とウナちゃんの手作り人形だよっ!」
私は前々からこっそりと頑張って布と綿でちゃんと手作業で作った、デフォルメしたフィーロ君とウナちゃんの人形を2人に渡した。
もっと凝った物にしても良かったかな?って思うけど、思い出に残る物を作りたかったからね!
「これは·····僕?そっか、人形なんだ·····」
「かわいいっ!ありがとうソフィちゃん!!」
ウナちゃんは喜んでくれたみたいでホッとした。
やっぱり手作りの物を渡して喜んでくれると、めちゃくちゃ嬉しいよね!
·····
という訳で私はプレゼントを渡し終えたので、ステージから降りてアルムちゃんと交代した。
「次はワタシのプレゼントだよ!はいっ!フィーロ君には冒険者Aセットの食券!ウナちゃんにはスイーツ食べ放題のチケット!」
「えっ!?いいの!?やった!ありがとう!」
「わーい!みんな明日いこっ!」
·····
「次は私ね、私のプレゼントは本よ、フィーロには勇者の冒険物語、ウナにはお姫様の本よ」
「うわぁっ!すごい!欲しかったんだこの本!」
「お姫様だー!かわいいー!」
··········
「最後はワシじゃな、ワシからはアクセサリーのプレゼントじゃ、フィーロはドラゴンの剣を象ったキーホルダー、ウナは花の形のキーホルダーなのじゃ!」
「やった!これ欲しかったけどお母さんから買っちゃダメって言われてたヤツだ!ありがとうエビちゃん!」
「お花かわいいっ!リュックにつけてもいい?」
「もちろんなのじゃ!でも、絶対無くさないよう気をつけるのじゃ」
「うんっ!」
···············
·····全員、プレゼントを渡し終わったしパーティーはもう終わりでいいよね。
「じゃあそろそろ誕生日パーティーを終わらせるよ、2人ともおめでとう」
『『おめでとー!』』
「ありがとう!」
「ありがとー!」
「じゃあ、帰りはこのゲートね、私は片付けするから、みんなは気にせず、先に寝てていいよ」
私はみんなをゲートに誘導して『秘密基地』に帰らせると、ゲートを閉じて来れなくした。
「·····アキさん、っ、かたづけ、おねがい」
「はい、お任せ下さい」
アキさんは何も言わず、私の命令に従ってくれた。
私はゲートを開いてディメンションルームの自分の部屋に帰って行った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◇
「ぅ····· ッ·····」
わたしは、じぶんのへやにいた
色とりどりの布の切れ端や、糸クズや、綿が、たくさん散らばってる机の上に突っ伏していた
「っ!」
ダンッ
机を拳で殴ると、端切れや綿が飛び、床に落ちた
「っ·····」
ガンッ!
床がよごれるのも厭わず、私は机を殴った
「わたしの、なにが、だめだったの·····」
バンッ!
あのときの、フィーロくんのかおは、ぜったいに、よろこんでないかお、だった。
それに、わたしが頑張って作った人形も、みんなのプレゼントに比べたら、あんま喜んでくれなかった。
「みんなのは、おおよろこびしてくれてたのにっ!なんで、なんで·····!なんでわたしのだけ、ダメなの·····っ!!」
よろこんでくれるとおもったのに、おもいでに残るプレゼントがつくりたかったのに·····
「わたし、人形、つくったこと、ないから、がんばったよ·····」
「けがも、たくさんした、なんども、しっぱいした、だから、やめようと、おもった」
「でも、よろこんでもらいたくて、よろこぶかおが、みたくて、すごく、がんばった、のに·····」
裁縫なんてやった事のなかった私は、本を読みながら、毎晩ずっと何時間も作業をして、練習して、何度も何度も手に針を刺して、ケガをして、何度も魔法で治して、血まみれになりながら、それでも頑張ってやっと完成させたんだ
この机で、ずっと、まいちに、ここで、がんばって、作ってたんだ
「よろこんで、くれると、おもったのに·····」
でも、フィーロくん、嬉しそうじゃなかった
みんなのプレゼントのほうが、うれしそうだった
わたしの、プレゼント、いやだったんだ
「ぅぅう····· ぁぁぁああぁ·····」
パーティー会場も、よろこんでくれるとおもったのに、がんばって、アキさんとじゅんびしたのに
ねないで、ずっと、がんばってたのに
ふぃーろくんは、こわがってた·····
「あ゛あ゛あ゛あアアあぁぁァァぁあああッ!!!」
ズダンッ!
ダンッ!
ガンッ!
バキッ!
「なんで!がんばったのに!わたし、みんなが、みんながよろこぶとおもって!がんばったのにっ!!どうして!なんで!なんで!なんでダメなの!!」
激しく机を何度も殴ると机が揺れ、わたしの上に、ふたりの人形をつくるまえにつくった、わたしそっくりな人形が落ちてきた。
·····ううん、似てない。
こんなヘタクソなやつが作った人形なんて、全く似てない。
初めて作ったやつだから、いびつで、きたなくて、ぜんぜん私に似てない、ひどい人形だ。
「きたない·····へたくそ····· へたくそ!わたしの!ヘタクソ!わたしなんて!こんなヘタクソ不器用おんななんて!死ね!死んじゃえっ!死んじゃえばいいんだ!!うぁぁぁああぁあ゛あ゛あ゛っ!!」
ガッシャァァアン!!
わたしは、汚いにんぎょうごと、つくえのうえを、手でなぎはらった。
「いたっ!」
すると、手に激痛が走った
激痛が走った手を見ると、さいほうに使ってた針が、てのひらを貫通してした
「っ·····ぅぅぅ····· いたい····· いたいよぅ····· ぅぐっ、えぐっ、んう゛っ·····」
痛みに堪えながら針を引き抜くと、また激痛が走り、傷口から真っ赤な血がサラサラと溢れ出てきた
血は手からポタポタと私の涙と一緒に机に溢れ落ちて、憎い憎い月の光によって照らされ、キラリと鈍く光っていた。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
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