天使はソラへと昇る
【7月某日 深夜】
私はある事をするため、深夜に魔法を駆使して街の外に出ていた。
「天使の服OK、天使族なりきりセットOK、エンジェル・ハイロゥOK、伝説のパンツOK、結界展開OK、須臾準備OK、飛行魔法準備OK、マップ準備OK、ビーコンOK、シュノーケル準備OK、圧力固定OK、重力軽減OK、放射線遮断結界OK、紫外線遮断結界OK、視界保護OK、リスポーン地点OK、風速風向きOK、気温OK·····」
私はこの前ダンジョンで手に入れた天使の服と天使のコスプレセットに伝説のパンツを穿いた、フル装備状態になって盆地の人気の居ない場所にポツンと1人立っていた。
今からやるのはめちゃくちゃ危険な事だ。
「この装備なら大丈夫だよね····· でもやっぱり怖いなぁ····· 宇宙へ行くのは」
そう、私が行こうとしてるのは遥か空の彼方
宇宙空間だ
◇
私の計画としては、ありとあらゆる環境に適応できて物理も魔法も熱も低温も無効化する『天使の服』と『伝説のパンツ』を装備して、更に身体の周囲を強固な魔導障壁で硬めて内部を一定の気圧に保って酸素を供給、そして重力魔法で発射時の強烈なGを軽減、ついでに魔導障壁に宇宙線などを防ぐ機能を付ける。
そして発射に関しては『須臾』と『飛翔魔法』を使う予定だ。
まず飛翔魔法で空に向かって飛び、聳える『霊峰』の山頂を超えたあたりで『須臾』の時間遅延を1/150にして1秒間だけ発動して加速する事で第一宇宙速度を超えて宇宙へと打ち上がる計算だ。
空を飛べる魔法の事前計測では
・飛行魔法『レビテーション』
最高時速約100km/h
・飛空魔法『フライ』
最高時速約200km/h
・飛翔魔法『フライト』
最高時速約300km/h
という結果で、飛翔魔法『フライト』が1番操作性も良くスピードも出やすかったためこれを選んだ。
しかし、衛星軌道に乗るために必要な速度は·····
秒速7.9km
なんと時速にして28400km/h、飛翔魔法の実に95倍もの速度が必要だ。
そこで私は『須臾』による強制加速により速度を150倍にして、時速45000km/hで宇宙へと向かう。
本当なら100倍でもいいけど、私の場合は動力が無いに等しいので150倍の勢いだけで宇宙に行くつもりだからこの数字だ。
ちなみに時速45000km/hは第二宇宙速度、地球から離れて月に行けるレベルの速度を超えているが、多分地球の重力で最終的には第一宇宙速度に減衰するだろうし、いざとなったら『空間固定魔法』で一気に速度を落としてしまうから問題ない。
「っと御託はこのまで、いざ宇宙へ!」
◇
「発射30秒前·····」
私は飛翔魔法を発動し、背中に生えた純白の羽を広げて空を飛ぶ準備をした。
「発射20秒前·····」
天使の輪っかが頭にあるのを確認して、飛翔魔法を発動して地面から足を離した。
次に足を地面に付けるのはいつになるだろうか?
「発射10秒前·····」
『ごぶ?』
は?ゴブリン!?ちょっ!足にしがみつくな!
「9」
てめ!離れろっ!
「8」
いでででっ!登ろうとすんな!
「7」
おーりーろー!!\げしっげしっ!/
「6」
『ごぶっ!?』
「5」
いい加減離れろ!
「4」
あぁもう、時間が無い!
「3」
くっそ!離れないっ!
「2」
ダメだ
「1」
もういいや、宇宙へご招待!
「発射ァ!!」
『ごぶううぅぅぅぅううう!?!?』
飛翔魔法、最高速へと加速開始っ!!
飛翔魔法に魔力をつぎ込み、私はゴブリンを足につけたまま、空へと飛び上がった。
◇
「えー、本日はソフィ宇宙航空をご利用いただきありがとうございます、当機は現在宇宙空間を目指して飛翔中です、30秒後、当機は高度4000mを超えた時点で『須臾』による超加速を利用して、瞬間的に第二宇宙速度まで加速致します」
『ごぶぁぁあぶぁあばば』
私は今、時速300kmで真上に向かって飛んでいる。
この速度だと『霊峰』を超えるのに約50秒必要で、今は出発から20秒経っており高度1600m付近だ。
眼下に広がる景色は既に小さくなっており、魔法学校のある街も既に相当小さくなってしまった。
ちなみにゴブリンはまだしがみついてる。
重いから足が痛くなってきたわ、まぁ宇宙に行ったら関係ないと思うけど。
そうそう、私が加速ポイントを高度4000mに選んだのにはワケがあって、この高さなら衝撃波が地上に到達しないだろうと思ったからだ。
音は知らん。
◇
「えー、乗客の皆様にお知らせします、当機は間もなく加速ポイントを通過して、時速300kmから一気に時速45000kmまで加速致します」
『ごぶぁぁあああ!!!』
さて、ふざけてる暇は無い。
もう加速ポイントだ。
「ふぅ、じゃあね地球·····ん?この惑星って地球だっけ?まぁいいや!いくよ!速度そのまま、進路よし、『須臾』発動っ!ヨーソローッ!!」
視界に映るホログラムの高度計が4000mを超えた瞬間、私は須臾を発動した。
1秒経過
ッッダァァアアアアァァァァアアアアアァァァアアァァァアアアアァァァァァアアアアン!!!
「うぐぅぅぅうううううっ!?!?」
『ごぶぅぅぅぅぅううう!?!?』
私の身体は一気に時速45000kmに加速され、ほぼ生身の私の身体からとてつもない衝撃波が発生し、同時にとんでもないGが掛かり、意識が朦朧とし始めた。
やばい、死ぬ、重力魔法、もっと·····
「っはあ!死ぬかと思った!」
私はなんとかGを軽減した事で生き延びる事に成功した。
ちなみに効果範囲にゴブリンも居るからヤツも生きている。
あと、急加速したせいで私の周囲が大気との摩擦でとんでもない温度になってる。
·····が、ゴブリンは私が大気を切り裂いた後ろの安全圏にいるようで無傷だった。
無賃乗車しやがってこんにゃろ。
とか言っているウチに、もう宇宙空間についてしまったようだ。
◇
宇宙空間とは、高度80kmより上と定義されている。
私の今の速度では、たった7秒で高度80kmを突破してしまうのだ。
そして私の目標は高度1000kmなので約1分半で到着する予定だ。
◇
〜1分半後〜
私は宇宙空間に漂っていた。
ここは静寂に包まれていて、物音1つ聞こえない。
ちなみに足にしがみついてたゴブリンは窒息して死んだ。
なので私の足から無理やり離して世界初の宇宙ゴブリンになってもらった。
「ほんと、綺麗·····」
私の眼下には美しい緑と青色に包まれた惑星が広がっている。
真下には私の住んでいる『サークレット王国』が見え、ポツポツと明かりが見える。
たぶんあの一際輝いてるのが王都なのだろう。
そしてアレが魔法学校の街で、あっちがたぶんフシ町かな?
「·····で、校長先生の話だと日本に似てるって言ってたけど、似てるなんてもんじゃないわ」
眼科に広がる景色は、前世の地球と瓜二つだった。
少なくとも日本=サークレット王国、朝鮮半島、ユーラシア大陸の一部、樺太は目視で確認できた。
·····この世界、もしかしてだけど異世界じゃなくて遥か未来の地球だったりするのでは?
「あっ違うわ、ちゃんと異世界だ」
が、私の心配は杞憂に終わった。
よく見てると、列島の形が少し違うことに気が付き始めた。
なんというか·····
日本の形を55%くらい覚えてる人がうろ覚えで書いた日本みたいな形してる。
いや、粗雑なデフォルメされたみたいな形って訳じゃなくてちゃんとしてるんだけど、色々おかしいのだ。
まず伊豆半島がデカいし、北海道らしき土地もめっちゃデカい、倍くらいあるんじゃないかな?
他にも色々と違和感のある地形があちこちにあるから、挙げてるとキリが無い。
「·····だから植生が日本と似てたんだ、それに火山が多いのも、鉱物資源が豊かなのも、これが理由か」
それと今色々計算してたんだけど、今いる高度は相当なはず、だいたい人工衛星と同じ高さのはずなのに写真で見た景色より地表に近く感じる。
たぶんだけど惑星の大きさがこっちの方が少しデカいのだろう。
「·····まぁいいや、それは後で考えよっと、それよりも凄いなぁ、これが宇宙なんだ」
私はその場でクルクルと周り、無重力空間の感覚を楽しんだ。
◇
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、私は今、衛星軌道上でフワフワと浮いて遊んでいます。
ちなみに、今の私は特に結界とかを使っていない。
私の体には容赦なく宇宙線が降り注ぎ、酸素も無くなり一気に減圧され、今は星の影にいるからマイナス百何十度という極低温に晒されている。
だけど·····
「この服やべー····· 宇宙空間でさえ平気なら深海も行けそう·····」
私はピンピンしていた。
宇宙空間に滞在してしばらく経ってから気がついたのだが、なんか結界とか無しでも平気な気がしてきたのだ。
まだ使った事はないけど、仮に死んでも『リスポーン』の効果で『ディメンションルーム』にある私の部屋で生き返るから、試しに全部解除してみたのだ。
その結果がコレだ。
真空でも息が出来る·····というか呼吸は要らないし、減圧その他諸々も全く気にならない。
ステータスを確認しても何の異常もなかった。
·····いや、種族が『人間(擬似天使形態)』とか書かれてて不安になったくらいはあった。
ちなみに今はバク宙の世界記録に挑戦中だ。
回数は忘れたけど、たぶん500回転くらいしてる。
「·····回るの飽きた」
でも飽きてきたので、私は移動し始めた。
宇宙空間での移動方法はすごく簡単だ、『飛翔魔法』を使えば上下左右前後に自由に動けるし、角度も自由に変えられるから好きな方向に行ける。
ほんと、宇宙空間は飽きないなぁ·····
「そうだ、ここにビーコン設定しておいていつでも来れるようにしよっと!」
宇宙空間って寝るのに丁度いいって知ってる?
身体が固定されてないと少し不安だけど、フワフワ浮きながら寝れるのは良いし、音を伝える気体も無いから完全な無音だ。
つまり、ここは最強の寝床なのだ。
というわけでビーコンを設定して準備OK
「よし!じゃあ行くよっ!まっててねお月様!」
◇
この星から月までの距離は大体40万km、さっきの速度だと9時間は掛かってしまう。
さすがに夏休みとはいえ、そんなに時間を使ってられない。
だから·····
「ふぅ、久しぶりに時間停止使うなぁ····· よし!がんばらなきゃっ!」
月へ着地するには、角度の誤差を0.00001度以下にしないと狙いが外れてたぶんそのまま宇宙のモズク····· モクズになってしまう。
速度が45000km/hとかだったら何とかなるけど、時間停止で光速を超える速度で打ち出されるから少しの誤差が命取りになるはずだ。
·····この魔法の1番怖い所は『身体を魔力に一時的に置換する』所だ。
魔力とは、質量を持たないが質量も持つ謎のエネルギーだ。
そして質量を持つ物体は光速には至れない。
否、質量を持つ物が光速に至るには無限大のエネルギーが必要となる。
つまり私の身体を一時的に魔力へ変換する事····· 魔力に私という情報を記録する事で、質量を持たずして『私』を存在させる事が出来るという訳·····
·····らしい。
なんか、魔法の説明欄にそんな事が書いてあった。
正直訳分からないし怖いけど、好奇心が勝っちゃった私は使う事にした。
だって私が死んでもリスポーンするもの。
たぶん。
「はぁ怖いなぁ····· うん、角度よし、誤差ゼロ、『須臾』完全停止モードで発動っ!」
カチッ
·····うん、やっぱり時間を完全に止めちゃうとなんも見えないや。
光さえ止まってるからね。
それと身体が軽い、いや軽いというか何も感じない。
身体が魔力になってる、いわゆる精霊状態とか霊体になってるんだろう。
そんで角度はもう記録してるから、その方向にちょっと動いて『須臾』を解除すれば·····
カチッ
「にょわぁぁぁああああっ!?!?!?目がぁっ!?めがぁぁぁああっ!?へぶちっ!?」
時が動き出すと、真っ暗だった私の視界の中心に突然ものすっごい強い光の点が現れ、その光の点がブワッと拡大し虹色に光り輝いた次の瞬間、私は月面に大の字で叩きつけられた。
あぁ、そうだった、光速に達したら確か光が進行方向の一点に集まるんだっけ·····
私の場合、光速スタートで減速するから光が広がっていったのね·····
「あいたたたた····· って!クレーターできてる!?質量が無いはずじゃ····· いやそれだったら月が吹っ飛んでるはず、たぶん余剰エネルギーが爆発したのかな?まぁこれなら月の質量的にも軌道変わって無いでしょ!·····たぶん」
まぁ、何にせよ無事に月へやってこれたから問題ない、さて早速·····
「おほんっ、1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ、それじゃ、旗をぶっ刺すよー!」
私はインベントリから事前に作っておいたビーコン代わりの旗、私の似顔絵に平仮名で『そふぃ。』と書かれた旗を月面に突き刺した。
うん、ダサいのは分かってるよ?私は好きだけど。
そして、いつか月に降り立った人がこの旗を見て「月面にクソみてェな旗立てやがって·····」って言って欲しいからねっ☆
ついでに地面に指で
『月面一番乗りは天使みたいに可愛い女の子、ソフィ・シュテインちゃんだよっ☆』
ってサインしておいて手形と足型も付けておいた。
「さーて!月面探査でもしよっと☆」
満足した私は、早速月面探査に出かけた。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
種族:人間→擬似天使
称号
『天使』←New!!
ひと言コメント
「そういえば地上からはどう見えてたんだろ?」
名前:『なかよし組』
平均年齢:6才
ひと言コメント
ア「すやぁ·····」
フィ「むにゃむにゃ····· ソフィちゃん·····」
グ「すぅすぅ·····」
ウ「すぴー·····」
エヴィリン(エビちゃん)
「む?なんじゃ?なんか空に向かって光が·····」
ッッダァァアアアアァァァァアアアアアン!!
「ひっ!?な、何の音のじゃ!?」
〜数十分後〜
「なんじゃ!?空が一瞬光った!?一体何が起きておるのじゃ·····」
エヴィリンは何が起きたか考えたが、結局よく分からなかったので夢ということにして寝た。




