ソフィ・シュテインと賢人の石
『賢者の石』
前世では中世ヨーロッパの錬金術師たちが、鉛などの卑金属を金に変換するときの触媒となると考えていた霊薬で、不老不死の薬と関係があるとも言われていたモノだ。
ラノベやゲームではド定番魔法アイテムの1つなので、知名度はとても高い。
どこぞのポ〇ターの1作目も賢者の石だったしな!
◆
「ふっ、まだまだだな」
先程見つけた、賢者の石の作製方法が記載された論文を読んでみたがやっぱり役に立たなかった。
どうやらコレを書いた人は、硫化水銀鉱物で丹などと呼ばれていた赤色の顔料でもある有毒鉱物の『辰砂』を熱したりして水銀を取り出し、一緒に薬草や魔石を入れたりして賢者の石を作ろうと試行錯誤していたらしい。
ちなみに、辰砂という鉱物だけならそこそこ安定した無毒な鉱物だったりする。
辰砂が有毒と言われる由縁となったのは、表面に付着する『水銀』の影響だ。
水銀は皮膚や消化器からの吸収に関してはゆっくりで、有機化合物の水銀じゃなければ健康被害はすぐには出ないが、それでも十分に危険だ。
この水銀、金の鉱山などでも使われていて公害の元になったり、坑道内で揮発した水銀が肺に入ったりすると物凄く危険になるので、もしウチの鉱山でやってるなら止めさせなければ·····
みたいな感じで、辰砂(水銀)に触れるのは危険なので触るのは絶対にダメだ。
まぁ、どっちにしろ辰砂は非常に柔らかいので素手で触るのはNGだけどね?
◇
それはさておき、これだけなら他の失敗例と何ら変わりは無い。
·····いや、この賢者の石の資料はどっちかというと奈良の大仏のメッキとおなじ『金アマルガムによる金メッキ』の方法について書かれた古い資料だったから、健康被害を除けば有益な物だったけど。
そんで私がこの論文に目を惹かれたのは『賢者の石』という言葉だ。
そう!私の能力に確か『賢者の石』があったずなのだ!!
「ふっ、わたしはおまえらとはちがうんだよ·····」
敗北者たちの痕跡を後目に私はドヤ顔をカマしながら自分のステータスウィンドウを開き、スキルを確認すると·····
◇
《スキル》
ユニークスキル『賢人の石』
◇
·····くそがァァァァァッ!!!!
なんでっ!よりによってっ!私のっ!!前世の名前なんだよぉおおおお!!!
「はぁ、はぁ····· おちけつ····· おちけつわたし·····」
冷静になって見てみると、説明欄にちゃんと『賢者の石の下位互換』と書いてあったわ。
読みはそのまんまで『けんとのいし』というらしい、なんでわざわざ俺の名前なんだよ·····
あのクソ女神にまた呪詛を送っといたわ。
うん?まてよ?下位互換ってことは、頑張れば賢者の石に出来るって事だよね?
よーしっ☆私の魔改造能力でチャッチャと賢者の石にしちゃうぞ〜☆
◆
生後10ヶ月
私はベビーベッドの上でウロウロと歩き回って考え事をしていた。
あれから1ヶ月は経つが、まだ賢人の石を賢者の石に出来ていない。
というか、私の魔法改造····· 正しくは『魔法創造』の力を以てしても、有り余る魔力を使っても賢人の石はビクともしなかったのだ。
不思議に思って『賢者の石』について調べてみると、何となく理由が分かってきた。
この世界の賢者の石はどうやら魔法版永久機関のようなモノで、錬金に使える原理は私のやっている『魔法改造』と似ており『大量の魔力で強制的に物質を変換する』という副次効果によるm
「ちょっ!?えっ!?ソフィ!?何してるの!?ねぇ!?聞いてる!?」
·····
そして、この『賢人の石』は特に記載は無かったが、どうやら『賢者の石』とよく似たモノで、私が『賢人の石』に魔力を充填する事で擬似的に賢者の石の効果を再現するチカラのようだ。
わかりやすく例えると、某汎用人型決戦兵器みたいな感じで充電してれば神の如き力を発揮できるが、本当の永久機関を持つ〇徒には敵わない、みたいな感じだ。
某エ〇ァンゲリオンと違う点としては、私は自家発電?でエネルギーを補給して動けるという所だろう。
つまりアンビリカルケーブルに繋がった状態のエ〇ァだ。
「ソフィ!?あなた歩けるようになったの!?この前やっとはいはいし始めてたわよね!?えっ!?ちょっとー!!アナタぁぁぁああ!!!ソフィが立って歩き回ってるわぁぁああーーー!!!」
なんか騒がしいなぁ·····
まぁいいや。
これだけ聞くと『不老不死になれるんじゃね?』と思うが、魔力の供給源である私が死んでしまうと供給が止まるので、結局は不老不死になれないだろう。
出来たとしても、安定しないからいつ死ぬか分からない状態だと思われる。
「ねぇソフィ?大丈夫?何か悪霊とか悪魔に憑かれてない?というかアナタ本当にソフィ?」
「ちょっとおかーさんうるさい!だまってて!」
「えっ、喋っ····· いやっ、えぇ·····?」
気を取り直して、賢者の石について結論を出すと
・賢者の石にするには決定的な何かが足りない
・『賢者の石』の起動には、莫大な量の魔力が必要
・現状はどうしようもない
うーん!八方塞がりっ!!
◇
とまぁ、こんな感じでやはり生成方法は不明だったが、実験を重ねてきたおかげで賢人の石については色々判明している。
まずは怖くて出来なかった『魔力結晶』の生成に挑戦してみたところ、見事におしりからプリっと1cmほどの綺麗なアクアブルーの結晶が出てきた。
ちょっと臭うので消臭魔法と浄化魔法を使ってから観察したところ、かなり上質な魔石と同等の性質があるという事が判明した。
他にも色々練習をした結果、『賢人の石』の魔力流路の中継地点を身体の外部に生成し、魔法発動の触媒のように出来る事も判明した。
これとあの魔結晶があれば、自分で魔法使いっぽい杖が作れるかもしれない。
こんな感じで、『賢人の石』は『賢者の石』に及ばなくとも十分に役立つスキルという事が判明して満足したので、賢者の石の作製と不老不死の研究は暇つぶし感覚でやる事にした。
◇
あと、よく考えたら私まだ1歳にもなってないし、少し成長が早くなった所でまだピチピチだからねっ☆
·····あれ?お父さん、お母さん、悪魔でも見るような目で私を見てどうしたの?
ほーら、可愛い可愛いソフィちゃんだぞー☆
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:生後10ヶ月·····?
ひと言コメント
「あのー、お父さん?お母さん?顔が凄く怖いんですけど····· 私、赤ちゃんらしく泣いちゃうよ?」




