ヒトには言えぬ過去
みんながお風呂からあがった後も、私とエビちゃんはお風呂に残っていた。
でも逆上せそうだったので私たちは裸のまま露天風呂のフチに腰掛け、涼みながらみんなには言えない共通の秘密を打ち明けた。
「·····エビちゃんってさ、元々男だったんでしょ?」
「·····うむ、校長の奴に聞いたんじゃな、そうじゃ、ワシは前世は男じゃった、すまぬな、お主らは女子なのにワシは中身が男じゃ、本当はフィーロと共に入るべき存在なのに、お主らの裸をみてしもうて·····」
「んふ、ふふふふふ、何言ってるのエビちゃん、今はもう女の子なんでしょ?中身なんて関係ないよ!」
「そうか····· そうじゃの·····」
「それにね、私もなんだ」
「っ!! まさか、お主も·····」
私も本当は男だった事を打ち明けると、エヴィリンは目を見開いて驚いた。
「うん、私も元男だよ、まぁ生まれ変わったら女子だったってだけなんだけど、エビちゃんの悩みとかはよく分かる、元男だったって聞いたからエビちゃんと会った時校長先生からエビちゃんを守ったんだ····· あっ、そうそう、転生前とかの事はあんまり言いたくないから秘密だけどね」
「·····そういうワケじゃったか、ありがとうな。それにワシもあまり前世の話はしたくないのじゃ、今の世ではワシは極悪人扱いじゃからの」
「本当はそこまで悪くないのにね」
「·····うむ」
エビちゃんは空に浮かぶ月を見上げ、昔の事を思い出しているようだ。
「·····お主の出自じゃが、ワシはもう見当が付いておる、ワシに言いたくない理由もわかる、だから言っても構わぬのじゃ」
「·····バレちゃった?」
「うむ、ソフィ、お主はニホンから来たのじゃろ?勇者やあの魔導師が言っておった、この世界とは異なる世界の国の名前じゃ、もしそうであれば色々合点がいくのじゃ」
「·····うん、私は元々日本に居たよ、死んじゃってコッチに来たんだけどね」
「やはりのぅ·····」
「あんまり言いたくない話だからね、もちろんみんなにはナイショだよ?」
「ワシの話もナイショじゃぞ?魔王とバレたら何をされるかわからぬからの」
·····
私たちは言葉を交わさず、何をする訳でもなく、空を見上げた。
思えば私の人生もなかなか面白い事になってしまったものだ。
男として生まれ、そして死に、異世界で女として生まれ、いまこうして空を眺めている。
「ねぇ、エビちゃんはさ、今世で女の子になってどう思った?」
「そうじゃのう····· 最初は生き延びるのに精一杯で何も思わんかったのじゃが、落ち着いた頃に自分の体で如何わしい事でもしてやろうと思ったのじゃが、子供の身体では無理じゃったし、いつの間にかやる気も無くなった、今では皆と共に遊ぶ事が1番楽しいと感じるのじゃ」
「わかる、私も最初はそう思ったんだけどね、いつの間にか性欲が全く無くなってた、そんなことよりもみんなと遊んだり美味しいものを食べたり、話しながら寝ちゃったりするのが楽しいな!」
「確かにの、睡眠欲と食欲は今も····· いや、以前よりあるかの、じゃが性欲だけはまるで無いのじゃ·····」
「でもその分美味しいものを楽しめるし、寝るだけでも楽しいから良いよね」
「うむ、甘い物は特に美味しく感じるようになったのじゃ、それはお得じゃのう」
「あっ、やっぱりエビちゃんも!?私もこの体になってから甘い物が好きになったんだよね!」
「お主もか!ちなみにじゃが、ソフィのオススメすうぃーつは何じゃ?」
「私のオススメはね、揚げドーナツだよ!特にチョコが掛かってるやつ!」
「あーわかる、アレはガツンと美味いワケではなくジワジワと優しく美味しい味じゃよな」
「うんうん、エビちゃんのオススメは?」
「ワシはまだこれと言ったのは無いのう·····」
「そういえばさ、急に下品な話になっちゃうけど、トイレとか大変じゃなかった?」
「あー、そうじゃの、今まで通りいかんから最初は変な所に飛んだりして大変じゃったわ····· 最近は座ってしとるのじゃ、あと体を洗うのも勝手が違くてほんと苦労したのじゃ····· 特に股とかの、その点に関してはお主の方が先輩じゃから教えてくれて助かるぞ、髪の手入れの仕方なんかは教えてくれてすごく役立っておるぞ?」
「んふふ、ありがとっ」
「こちらこそじゃ、ありがとうなのじゃ」
私とエビちゃんの昔話はいつのまにか女の子らしい話やTS者にしか分からない話に変わり、その後は女の子らしく美味しいスイーツの話やオシャレの話や可愛い物の話ばかりしていた。
◇
「よし、そろそろ上がろっか!」
「うむ、そうじゃの」
女の子らしい話でひとしきり盛り上がった私たちは、話題も尽きてきたのでお風呂から上がって寝ることにした。
·····けど、その前に。
「エビちゃん、最後の質問、いまエビちゃんの心の中には前の自分って居る?」
「居るも何も、ワシはワシじゃ、性別が変わったところで本質は変わらぬ」
「·····そっか」
「それじゃワシの番じゃな、ソフィ、お主はフィーロの事をどう思っとる?」
ん?
そこは私にも同じ質問してくるんじゃないの?
·····フィーロ君かぁ、うーん
「イジり甲斐のある友達?それと大切なツッコミ役」
「·····はぁ、そうか、苦労しとるのフィーロの奴も」
「でも楽しそうじゃない?」
「いやそれはフィーロがお主····· いや、皆と共に居るのが楽しいからじゃろうな」
「ふふっ、ときどきイジりすぎたかなって思ってたから安心した、じゃあ今まで通りイジりまくろっと!」
「酷い奴じゃのう·····」
エビちゃんに呆れた顔をされた。
なんでや·····
「まぁこれで質問は終わり!今日はゆっくり寝よ!」
「うむ!また明日からも学校頑張るんじゃ!」
こうして私たちはお風呂から上がり、ちょっとダラダラしてから眠りに就いた。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「明日は何をたべよっかな」
名前:エヴィリン・アマイモン・ファゴサイト―シス
年齢:年齢数え直してるのじゃ、たぶん6才なのじゃ
ひと言コメント
「ちなみにワシの名は前世から変わっておらんのじゃ」




