エヴィリンとフィーロの実力
ゴブリン軍団と私たち『なかよし組』による膠着状態を先に破ったのは、元魔王のエビちゃんだった。
「うらああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
『ギャギャッ!!』
エビちゃんは人間とは思えない脚力で地面を蹴って一瞬でゴブリンに肉薄すると、手前で軽くジャンプし、ゴブリンに向けて飛び越しざまに杖を持った右手をパンチするかの如き勢いで突き出し·····
「喰らえ!『エヴィルプロージョン』ッ!」
『ゴギャッ!!?』
ドガァァァァアアアンッ!!!
エビちゃんがゴブリン相手に暗黒属性の爆破魔法を発動すると、逆手に持った杖が輝き真っ黒な爆発が発生、下にいたゴブリンを消し飛ばした。
そして元ゴブリンの肉塊を飛び越えたエビちゃんは、木っ端微塵になったゴブリンに目もくれず次の獲物目掛けて走っていった。
「どりゃぁぁぁああ!!」
『ギュガッ!?』
今度は魔法を使わず3匹のゴブリンに目にも止まらぬ速さで突撃し、両手に持った短杖をナイフのように振り、3匹のゴブリンの首を正確に切り裂き絶命させた。
「おおー!エビちゃん強い!」
『ギャギャッ!?』
あと私の後ろからゴブリンが近付いてたので、1番発動が楽な無属性の『マジックバレット』で脳天を吹き飛ばしておいた。
◇
その頃みんなは·····
「あっ、なんかゴブリン近付いてきたよ!」
「うーん、さすがソフィちゃんの障壁、ゴブリンの石斧程度じゃビクともしないなぁ·····」
「ゴブリンをこんなしっかり見たのは初めてだわ····· やっぱり醜悪な見た目をしてるわね」
「やーいゴブリンさんのばーかばーか!あっかんべーだ!わー!おこったー!!」
1匹のゴブリンが近づいてきて、皆を襲おうと必死に結界を叩いてきていた。
·····が、ソフィがMP約50万を込めたせいで想像を絶する硬さに仕上がった結界はビクともしない。
そしてゴブリンは苛立ちウナが煽った事で更にキレ散らかして結界を殴るが結果は同じだった。
「ねぇ!あのゴブリンを的にして魔法の練習しない?丁度よさそうじゃん!」
「だね、確かソフィちゃんの結界は内側からは攻撃出来るんだったよね?」
「確かめてみるわ、土よ彼の者の足を掴み地に張り付けよ『アースバインド』」
『ギャッ!?ギャギギャッギャ!!』
「あっ、動けなくなっちゃった!ばーかばーか!」
グラシアルが放った『アースバインド』は、立ち止まって結界を殴っていたゴブリンの足を地面へと固定し、動けなくさせてしまった。
もちろんゴブリンも拘束を解こうと暴れるが、伝説の魔導師の血を引くグラシアルの魔法は強く、ゴブリン程度では外せなかった。
「じゃあワタシからいくよ!土よ我が元に集まり硬き礫となりて撃ち出されよ!『ストーンバレット』!」
『ギャッ!?ギギギィ·····』
「やった!当たった!お腹だけど当たったよ!」
「おお!アルムちゃんすごい!僕はなんか使える魔法····· むむむ·····」
次はフィーロの番だが、彼はまだ魔法の発動に成功した事が無く、適正属性も今のところ無いためどうしようか悩んでいた。
·····とここで、ウナが気配を消してフィーロに近づいてきて耳元で何かを囁いた。
「フィーロくん、ソフィちゃんが見てるよっ!がんばって!」
「へっ!?あっ!そ、そうだね!ううーん····· そうだ!たしかこうだっけ?『サンダーボルト・アヴェンジャー』!」
彼はソフィにいい所を見せたくて、以前に彼女が使っていた魔法を真似して雑に詠唱をした·····
すると虚空から魔力でできた砲身が現れ、ゴブリンに向けてとてつもない勢いで魔力の弾丸を発射した。
『ゴブブブブブブブブブブブッ!?!?!』
だが、彼はその魔法の仕組みをほぼ理解していなかったが故に、劣化コピーされてしまったその魔法の弾丸は豆鉄砲の如き威力しか出ず、ゴブリンの全身に少しアザを付けただけだった。
「えっ!?はっ!?えっ!!?う、撃てた?威力は弱いけど、撃てた·····?」
「えっ!?フィーロ君いま『サンダーボルト・アヴェンジャー』使ったの!?何でっ!?」
そして彼の魔法は、狙い通りソフィを釘付けにする事に成功したようだ。
◇
私が魔法でゴブリンを弄んでいると、わざと見逃して結界の近くでサンドバッグにされていたゴブリンに向けてなんとフィーロ君が私の必殺魔法である『サンダーボルト・アヴェンジャー』の劣化版を放った。
おかしい、あの魔法は1万を超える量の魔法を複雑に組み合わせて作った複合魔法で、消費魔力もフィーロ君の魔力じゃ絶対に撃てないはず。
弾丸1発でさえ作るのにMPが千単位で必要で、しかも魔法を複雑に組み込んであるから発動は絶対に無理なはずた。
それにフィーロ君には属性魔法の適正があんまり無いはずなのに·····
「みんなちょっと待ってて、いますぐゴブリン全滅させてそっち行くから!」
「えっ!?」
「よっ、ほっ、はっ!」
私はマジックバレットを複数生成し、魔力眼でゴブリンの位置を把握して正確に脳天をブチ抜いて私が担当していたゴブリンを一瞬で全滅させた。
今はゴブリンを弄んでいる場合じゃない、フィーロ君が私の魔法を使えた仕組みを調べなくては·····
◇
私はみんなを守っていた結界の中に入り、フィーロ君に話しかける。
「ねぇフィーロ君、いまの、何?」
「えっ、何って言われても····· 僕もなんで使えたかわかんない·····」
「『鑑定』」
《鑑定結果》
名前:フィーロ
年齢:6才
性別:男
Lv:13
HP:40
MP:215
物攻:7
魔攻:14
防御:3
魔防:8
器用:23
速さ:6
《スキル》
ユニークスキル『マジックエミュレーター』
1度見た魔法を1/10になる代わりに完全コピーして発動する事ができる
発動にはコピーした魔法をしっかりと見て覚えている必要がある
その魔法についての理解が無い場合、威力は極限まで低下する
使用した魔法は使えなくなる
再使用したい場合は、もう一度その魔法を見る必要がある
コピーした魔法ではMPを消費しない
使用上限:1日5回まで
『魔法の心得:錬金術』
錬金術に関する魔法に適正(小)
努力次第では初級程度ならば基本属性の魔法を使用可能になる
魔法に錬金術で様々な効果を付与可能
(※隠しコメント:科学魔法と互換性あり)
称号
『ラッキースケベ』(※効果あり)
思いがけず異性の陰部を複数回見てしまう等、不可抗力でスケベな展開に遭遇しやすい者に送られる称号
効果:更にラッキースケベな展開に遭遇しやすくなる
注意:わざとやった場合、称号が『変態』に変化します
◇
·····ヤバいスキルもってる。
あと最後のは見なかったことにする。
「フィーロ君、理由がわかったよ」
「えっ、わかったの!?」
「フィーロ君にはユニークスキルがあったよ、名前は『マジックエミュレーター』って言って、見た魔法を1度だけ何でも再現できる魔法らしいよ」
「ほんと!?じゃあソフィちゃんの魔法を見れば·····」
「無理だと思うよ?私のアレはとんでもなく複雑な仕組みで構築してるから、今のフィーロ君だと言われても分からないと思う」
あの魔法、私の脳内で····· というかアカシックレコード内で3Dモデルを構築してガトリング部分とかも上手く再現して作ってるから、それを完璧に脳内でイメージ出来ないとコピーは不可能だ。
「えぇ····· でも僕も出来たじゃん·····」
「威力低かったでしょ?ちゃんと仕組みを理解してないからそうなるっぽいね」
「うう····· じゃあアルムちゃんのなら出来る?」
「たぶん」
「じゃあ発動のやり方とか手伝うよ!」
私は『鑑定』で出た詳細をフィーロ君に教えながら、魔法を撃つ練習を補助してあげた。
ちなみにサンドバッグにされたゴブリンはみんなの魔法の威力が低くて殺しきれなかったため、ボコボコになって気絶していた。
◇
一方その頃·····
「ふぅ!いい運動になったのじゃ!」
ゴブリン10体を皆殺しにしたワシは、丁度いい感じの大きさのキノコに腰掛け休んでおった。
それにしても、ソフィが作ったこの杖はとてもワシの手や魔力に馴染み、ワシの身体の一部かのように扱う事ができた。
まったく末恐ろしい娘じゃ、ソフィが復活前におったら確実に負けておったのじゃ·····
いや、もう既に負けておるけども、敗北が惨敗に変わっていたであろう。
逆にソフィが配下になっておればワシは世界を·····
「いや、ワシは元より征服なんぞに興味は無い、今は皆と同じ制服を着て共に遊ぶ方が楽しいのじゃ」
この体になって、この人生になって、ワシは全て変わった。
王として産まれ、王として育てられ、形だけの王として君臨して、最後は悪の魔王として勇者に股間を貫かれて死んだワシはもうおらん。
ううっ、アレを思い出すだけで寒気がするわ。
勇者のヤツめ、ワシの魔剣を聖剣で貫きおって·····
お陰で女として転生してしまったではないか。
そのうえ、復活までに3000年以上経ってしもうて、もう我の家族も友人も慣れ親しんだ城も街もこの世に存在しない。
じゃが、そのお陰でワシはみんなと出会え、こうして普通の少女として楽しく日々暮らせておる。
復活前では有り得ない、ワシが本当に望んでいた平和な日々を暮らせておる。
「·····勇者よ、そこだけは感謝するのじゃ」
ワシは既にこの世界から去った異なる世界から来た勇者に、今日初めて感謝の言葉を述べた。
「·····何はともあれ、この杖はホントいい性能なのじゃ!気に入ったのじゃぁァァァァァアアア!?」
ワシが皆の元へ向かおうとしたその時、ワシは何故か上空にブッ飛ばされてしまった。
そして地面に顔面から激突してしまった。
「あいたたた····· 貴様!何をするの····· じゃ·····?」
『Smuuuuuuuuush·····』
顔を上げると、ワシの前にはやたらムキムキなキノコがシャドーボクシングをして、まるでボクシングの試合で対決する前の選手のような動きをしておった。
もしかしなくても、対戦相手は·····
「·····ワシ?」
『Smuuuusssshhh!!!!』
「ちょっ、まっ、お主の不戦勝でよい、わ、ワシの負けじゃ!やめ、やめるのじゃ!ヒギャァァァァァアアアアアッッ★」
その後、マッチョマッシュ?に顔面をボッコボコに殴られたエビちゃんが泣き喚きながら『なかよし組』の元に現れ、その顔を見たみんなが大笑いして、エビちゃんは更に大泣きしたのはまた別のお話·····
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「もしかしたらフィーロ君と私のタッグが1番ヤバいかもしれない」
名前:アルム
年齢:6才
ひと言コメント
「ワタシも魔法がんばろっ!」
名前:フィーロ
年齢:6才
ユニークスキル:『マジックエミュレータ』
称号:『ラッキースケベ』
ひと言コメント
「ユニークスキルは嬉しいんだけどさ·····この称号なんなの?でも解除しようとすると変態になるって·····うぅ·····」
名前:グラちゃん
年齢:6才
ひと言コメント
「·····え?私の魔法のシーンはカット!?」
名前:ウナちゃん
年齢:6才
ひと言コメント
「わたしが撃った魔法、ゴブリンさん当たったの気が付かなくて残念·····」
名前:エビちゃん
年齢:6才
ひと言コメント
「みんな酷いのじゃ、顔を見て笑うのじゃ····· あのキノコ絶対許さんっ!!」




