地元歩きは進めないっ!
「っし、準備OK!んじゃおかーさーん!ちょっといってきまーす!」
『いってらっしゃい、気を付けるのよー』
「へーい」
リリアの前世の捜索が終わった翌日、私は現世の実家に戻ってきていた。
そして珍しくちゃんとおめかしもして出かけようとしていた。
·····そういえばこうして実家からフシ町に出てのんびり探索するのは久しぶりだなぁ。
実は私、そんなにフシ町を歩き回ったことないのよね。
だって産まれてからずっとお父さんとお母さんに『外に出ると何をやらかすかわからないから出るな』と硬く禁じられていてロクに出ることもできなくて、出れても絶対に家族同伴で子供の演技をしなきゃいけなくてマトモに探索できなかったんだもん·····
そして6歳になると私は学校に入れさせられてしまい、魔法学校のあるマグウェル街ばっかり探索していてフシ町は探索していなかったという訳だ。
「よーし!今日はたっぷり探索するぞーっ!!」
そして私は学校を卒業し、自由の身となったので自由気ままにフシ町を探索することができるようになったのだ!
という訳で、今日はフシ町を探索する事にしたのだ!
ちなみに待ち合わせている人がいるからまずはそこに向かうつもりだ。
『·····おねーちゃん、まだ行かないの?』
「行くけど、なんでまたイデアが居るん?」
『えへへ·····』
「まぁいいや、いってきまーす」
確かにイデアの言う通り、ぼへーっとしてて靴を履いた状態で止まってたわ。
よし、行こうっ!
そして私はつい先日産まれたばかりのイデアに見送られてフシ町内の探索に出かけた。
·····イデアがいる事に関してはもうツッコまない事にした。
◇
家を出た私は、フシ町の大通りを通ってとある場所に向かっていた。
「んっ?おお珍しいな、町長さんの所の娘さんか、そういや帰って来たんだったっけな」
「あっ久しぶりです、お元気でしたか?この前腰が痛いと言ってましたけど·····」
「大丈夫だ、この前治療院に行ってきて治したからな」
「それは良かったです、あっそれって新キャベツですか?」
「そうだ、丁度旬の時期で美味いぞ、ロールキャベツにすると絶品だ」
「ほほう····· んじゃ5玉もらえます?」
「あいよ、ちょっと待ってな」
·····向かってたんだけど、さっきから沿道のお店の人とか通りすがりの町民に話しかけられてるせいで数分で到着する予定だったのに20分くらい経ってもいまだに200mくらいしか進めてなかった。
今もデート用の服装でキッチリおめかししてたのに、八百屋のおっちゃんに話しかけられて普通の主婦みたいにお買い物をしちゃったわ。
でもキャベツが美味しそうだったから仕方ないよね、うん、私は悪くない。
今日の夜ご飯はロールキャベツかなぁ·····
って今やってる事完全に主婦じゃんっ!!
あーもういいやぁ·····
「あらやだ町長さんの娘さんじゃないの」
「まぁ小奇麗になっちゃって····· どうしたんだい?今日はおでかけかい?」
「もしかして·····コレだったり!?」
「あー、まぁ、はい、今日は彼氏とデートする予定なんですけど、皆さんに話しかけられてなかなか進めなくて····· あはは·····」
せっかくデート用の服装で出てきたっていうのに、通りすがりのオバチャン達に絡まれてしまった。
そして普通に井戸端会議を始めてしまった。
·····今の私どっからどう見てもただの主婦じゃんっ!!
「ほれ商品だ、代金は5個で550円だが一個オマケで入れておいたぞ」
「えっ!?いいんですかっ!?いやー流石にわるいですよ」
「いいんだ別に、今年は豊作だったからな、それに嬢ちゃんや町長が頑張ってくれてるから俺たちは生活できてるわけだしな、持って行ってくれ」
「ありがとうございますっ!·····あー、小銭無いんで1000円で、おつりは要らないです」
「そうか、ありがとうな」
「いえいえこちらこそー」
·····あっ、せっかくサービスしてもらったのに品物以上の額を渡しちゃったわ。
ま、いっか!だって財産数十億円あるし!
そしてキャベツの入った袋を持って移動しはじめたら、また絡まれそうになったので私は秘策を使った。
別に人気なのは嫌じゃないし話しかけられるのもすっごく嬉しいんだけど、今日は待ち合わせがあるからちょっと迷惑かもしれない。
って訳で、私は裏技を使う事にした。
「っすー····· よしOK」
何をやったか分かりにくいだろうけど、私はウナちゃんの得意技を再現した。
そう、ウナちゃんの特技、『誰にも気が付かれなくなる』をパクった事で町民が私を見ても私だと気が付かなくしてしまったのだ。
ちなみにこの能力を使うと面白い事が起きて、ステルス魔法で姿を消している時と違って、人混みにはいっても人がぶつかってこなくなるのだ。
要は『そこに誰かいる』とは認識できるんだけど、意識を向けられないというか、ただの通行人でそこに誰か居た程度にしか認識できなくなるようになるのだ。
って訳で、私は既に30分近く遅刻して待たせてしまっている待ち合わせしている人の元まで掟破りの地元走りで向かった。
◇
「ついたー!はぁ、大変だった·····」
数分後、やっとの思いで到着したのは·····
「アルス魔道具店、·····の前で待ち合わせって言ってたんだけど居ない?あー中入っちゃったかな?」
この町で一番繁盛している魔道具店で、私の彼氏のフィーロ君の実家、『アルス魔道具店』だ。
ちなみにアルス錬金術店が同じ建物内にあるのでどっちがどっちかわかんなくなるけどどっちも正解だったりする。
んで、お店の前でフィーロ君と待ち合わせしていたんだけど、店の前に姿が無かった。
·····うん、私が寄り道しすぎたせいだねっ☆
「あー謝らないと····· とりあえず入ろっと」
私はフィーロ君を呼びだすため、お店の中に····· 入る前に、さっき買ったキャベツをインベントリに収納してからお店の中へと入って行った。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あんまりフシ町でぶらぶらしたことないんだけど、この町の危機を何度も救ったり、生活の質の向上とか色々やってたせいで皆に顔を覚えられてるし、この町出身のSランク冒険者で町長の娘って言う立場だから普通に有名だし、前にあった超大雪の時に目立ちすぎたのと頑張った姿が覚えられててねぇ····· うん、すごく人気なのよね····· だってフシ町出身のSランク冒険者って、いわばオリンピック金メダリスト以上のすんごい存在だから····· ただ、みんな話し掛けてきてまともに町の探索ができなくて嬉しいけどちょっと悲しかったり····· でもでも、こんなフシ町と町民が私は好きだなぁ·····」




