わるいこイデア
「·····で?」
『ナンデショウカ』
「お姉ちゃんに何か言う事は?」
『あー、えーっと、えへへ·····』
「えへへじゃないわこんにゃろめーっ!!!」
『ひゃへひぇ、ほっへはのひひゃうぅぅぅうううっ!!』
「ソフィ、それくらいにしなさい、イデアもソフィにちゃんと謝りなさい」
「『へーい·····』」
ったくもう·····
私はイデアのモチモチのほっぺたを引っ張るのを止めると、元居た場所に戻った。
そして今回の騒ぎの元凶である生後二週間くらいの私の妹イデアは、相変わらず簀巻きにされたまま更に椅子に縛り付けられて絶対に逃げ出せないようになっていた。
「イデア?ちゃんと謝るべきことは沢山あるでしょ?」
『はぁい····· おねーちゃんごめんなさーい·····』
「·····一応反省はしてるっぽいし、私もまさか身内からやられるとは思って無くて対策が甘かったのもあるから今回は許すけど、次はかなりガチめに怒るからね?」
『はぁーい·····』
まったくもう·····
一応イデアのアカシックレコードに逆ハッキングを仕掛けて危険なデータだけは奪い返してきたけど、ホントに規格外よねこの子·····
「ソフィ、そろそろそっちの大きいイデアについて教えてくれないか?」
「そうね····· またとんでもない方法なのでしょうけど、一応教えてくれないかしら」
「あー、えーっと····· ちょいまち、ちゃんと説明するわ」
さっきイデアのこの状態について精査して、簡単にまとめてみた。
まず私の妹イデアには、哲学の概念で四次元世界に存在する万物の雛形『イデア』を手に入れ、それを四次元世界で照らして三次元世界であるこの世界に投影することでありとあらゆる物を疑似的に作り出すことが可能となるユニークスキルがある。
今回はイデアのアカシックレコードが私のアカシックレコードの記録保管庫に侵入し、勝手にデータを盗んで、赤ちゃんでは入手できないような情報を集めた事で精神が急激に成長したのだが、イデア自身の赤ちゃんの肉体と精神の乖離が発生し始めてしまったため、私が記録している肉体データをもとに四次元世界で『成長したイデア』のイデアを作成し、この世界へ投影したことで今私たちと会話しているイデアが生まれたという訳だ。
そんでここからが複雑なんだけど、まずあのイデアと本来の赤ちゃんのイデアは同時に存在できないはずなのだ。
一応イデアは概念の方のイデアを用いれば肉体を急成長させたりすることができる。
理屈としては、イデアのイデアに割り当てられた肉体の形を改変し、成長したイデアの肉体を反映させてやればこちらの世界のイデアは成長した姿になるはずだった。
しかし、イデアが使った肉体の基礎データは私の『分体』、私の死体を蘇生してアカシックレコードと接続して疑似的に私を増やすためのシステム用のデータを盗んでしまったため、イマイチそこらへんについて詳しくなかったイデアが適当に改竄した結果、赤ちゃんのイデアと成長したイデアの2人に分裂してしまったという訳だ。
更に成長したイデアはイデアの能力によって生まれた影でしかないため、多分大きい方のイデアは殺したら消えてしまうだろう。
この状態のイデアを元に戻すには、多分私がイデアのアカシックレコードを乗っ取って一時的に操作をして『分体解除』をしてやれば自動的に元に戻るはずだ。
ちなみにイデアも捕まってから自分で元に戻そうとしてたけど、ずっと自爆コマンドを入力してたから止めるのが大変だったわ·····
もし私が自爆したら世界地図を書き換えなきゃいけなくなるし。
「って事で、大きい方のイデアは本当は赤ちゃんのイデアがそのままこの姿になるはずだったけど失敗しちゃって、同一人物で同一の思考を持って共有している二人のイデアになっちゃったって事だね」
「·····詳しくはわからなかったが大体わかった、イデアがソフィがよく複数人になるアレをパクって失敗した結果という事だな?」
「そうそう、そういう感じね」
「ふむ、なかなか便利そうな能力なのじゃ」
「ソフィ、イデアを元に戻せるって本当なの?」
「あー可能だよ、記憶も私のを盗んでアカシックレコードっていう記憶の保管庫に入れてるだけだから、それを抜き取れば元のただの赤ちゃんのイデアに戻せるけど····· どうする?」
「どうしようかしらねぇ·····」
「俺としては赤ちゃんに戻すべきだとは思うが·····」
「ワシは反対じゃの、逆に知恵を与えてこの危険極まりない能力をちゃんと制御させた方がいいと思うのじゃ」
「確かに、ボクもイデアの能力が暴走するとよくないからそこらへんは何とかするべきだと思うな、でもこの成長した体はあまり良くないなって思う、それに記憶は能力の制御以外の基本的な事はちゃんと勉強で学ぶべきだと思う」
「私もそう思います、力が制御できなくて困るのは皆様だけでなくイデア様もですからね」
「うーん····· んじゃやっぱり本人に聞くのが一番だね、イデアはどうしたい?お姉ちゃんの力なら、今なら普通の赤ちゃんにも戻れるし、このまま成長した姿にできるし、ある程度なら好きな精神年齢にもできるけど····· あっでもどれを選んでも能力の制御ができるように記憶データを強制的に入れるのは変わりないからね?」
『ううん····· 決められない·····』
やっぱりね。
うん、ぶっちゃけ絶対そう答えると思ってた。
まぁそりゃ記憶を消されるのって結構怖いからなぁ·····
「お母さんはどうする?どうしたい?どうしてほしい?」
「難しいわねぇ····· でも、この子は私たちと会話をしたくてソフィの知恵を盗んだのよね?」
「確かそうだったはずだけど·····」
「だったらお母さんはイデアとお喋りしたいわね、でも赤ちゃんらしくも居てほしいわ、だから最低限コミュニケーションが取れるくらいの年齢と知識を持ってほしいわね」
「·····そうだな、イデアも悪気があってやったわけではないんだよな、だったら仕方ない、それくらいの年齢なら許すかな」
「あー、確かにそれくらいがちょうどいいかも?そうなると····· 2歳くらいの思考能力と知識にするべきかな?」
「あぁ、そうだな」
「そうね、2歳くらいでお願いできるかしら?」
「オッケー、後はイデアの返答次第だけど·····」
『おねーちゃん達とお喋りできなくなるのはさみしいけど、その方がいいなら従う·····』
「一応簡単な会話はできるし、今の記憶も一部は残すから大丈夫だと思うよ、そこはお姉ちゃんに任せてねっ☆」
『信用ならない·····』
「うぐっ····· いやそこは信用してとしか言えない·····」
『まぁおねーちゃんなら大丈夫かな?·····うん、任せた』
「了解、任された、じゃあお父さんもお母さんも、イデアを2歳児並みの知能に巻き戻すけどいい?」
「いいわよ、元々ソフィも生まれたての頃はそれくらいの知恵はあったのだから許容範囲内ね」
「あぁ、頼む」
「はーい」
って訳で、私はイデアをほぼ元通りにするための作業に取り掛かった。
◇
十数分後·····
「それじゃイデア、これから分身体は消去して記憶も改竄して、知能も2才児のものに切り替えるね」
『うん·····』
「んふふ、心配しなくてもいいよイデア、赤ちゃんの成長は凄く早いからね、だから成長したら沢山お喋りしようね」
『うん····· すぐにおしゃべりできるようになるから·····』
「ゆっくりでもいいんだよ?それじゃ、そろそろやるよ」
『わかった、最後に、おねーちゃん』
「なに?」
『んへへ、おねーちゃん大好きだよ』
「っ····· あーそれ卑怯、泣いちゃうし記憶消すのできなくなりそうじゃん·····」
『んへへへ····· 最後の悪足掻きだよっ☆ じゃあねおねーちゃん、それにおとーさん、おかーさん、おにーちゃん、ルーベさん、エビちゃん ·····ありがとうね』
「じゃあ行くよ····· 『アカシックレコード:トリニティ』フル稼働、逆ハッキング開始っ!!」
◇
あれから数日が経った。
イデアの記憶とアカシックレコードからは無事に余計なデータは消え去り、年相応·····よりちょっと上の知恵を持った赤ちゃんになって、今日も元気に赤ちゃん人生を謳歌している。
戻った後も一応言葉は理解できているようだが、まだ喋ることはできないみたいだった。
いつかちゃんとイデアとお喋りができる日が来るのが楽しm·····
『おねーちゃーん、露天風呂使っていいー?』
「あっいいよー、私も入r····· まてまてまてまてまてまてまて!!!なんでイデア(大)がここに!?ディメンションルームにはまだ来れない····· あ、あんたまさか·····ッ!!!!」
『·····えへっ、おねーちゃんの魔法までコピーしちゃった☆』
「てんめこのやろー!!!私の苦労と悲しみ返せやゴルァぁぁあああああっ!!!」
『きゃーっ!にげろー!!』
·····その日の夜、イデアとたーーーーーーーーーーーっぷりお話した。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「さ、策士め····· こやつ、アカシックレコードじゃなくて魂にこっそり記憶を書き込んでやがったんだ····· そこにやられると不安定な赤ちゃんの魂にはおいそれと手出しできないし····· しかも私が制限してもいつの間にか解除して勝手に遊び始めるし····· ヤバいイデア思ったより悪い子かもしれない····· 『悪のイデア』って存在しないはずなのになんで·····」
名前:イデア・シュテイン
称号:『わるいこ』←New!!
ひと言コメント
『だっておねーちゃん達とお話ししたいんだもん!』




