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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第四章 TS賢者は世界を往くっ!
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青い海と蒼い空の狭間にて



 高度1500m付近でロケットエンジンによる超音速飛行試験や曲芸飛行試験を行っていた私は、満足できる結果を得られたため一時的に操縦をオートに戻し、玄武さんの甲羅の上をゆっくりと飛び回らせていた。



「曲芸飛行は急旋回、背面飛行、宙返りが可能っと、あとは大気圏内の超音速飛行も可能で、戦闘用機動も問題なしっと·····」


『いやあ凄かったね、これじゃ並大抵の魔物だと太刀打ちできないね、ドラゴンでもかなり厳しいかな?』


「でしょうね、しかもこれまだ本気じゃないんで」



 ええと、戦闘や装備のテストはまだやらないとして、あとやるべきことは·····


 ·····うん、やっぱりアレしかないよね。



「魔導式スクラムジェットエンジンの最終試験を行う、コックピットハッチ、対閃光耐熱対有害光線()()()()防御隔壁を展開」


 ぎゅぅぅぅうううん·····


『おや?薄暗くなったかな?』


「はい、これから危険地帯へ行くのでそのための防御壁を展開しました」


『なるほど、どこに行くのだい?』


「んっふっふ····· 玄武さん、空の更にその上、星々の領域へと行ってみませんか?」


『おお!それは魅力的だね!ボクは空へはいけないから雲のさらに上の世界は空想するしかなかったんだよ、この目で見れるのならば是非行ってみたいね』


「わかりました、では玄武さん、貴女を星々の領域、生きとし生けるものを拒絶する真空の宇宙空間へとご案内いたしましょう·····」



 この戦闘機に魔導式の超高出力ロケットエンジンを3基も積んだ目的を果たすとしよう。


 目標は····· 高度100km!大気がほぼ無く重力も低くなる生命の箱舟の外にある死の領域『宇宙空間』っ!!



「操縦システム切り替え、手動操縦に移行、続けて操縦システムを大気圏内航行から宇宙空間航行モードへ切り替えよ」


 きぃぃぃぃいいいいいいんっ·····



 操作系統を宇宙仕様に変更すると操縦桿も変化し始め、股の間にある操縦桿が収納されて代わりに左右から二つの操縦桿が出てきた。

 何故宇宙と大圏圏内で操縦桿を変化させているかというと、宇宙と大気圏内では微妙に操縦に差があって、間違って宇宙用の操縦方法で大気圏内を航行するという操縦ミスをすると大変な事になるからしっかりと分けておいたのだ。


 ちなみに地上で宇宙と同じ感覚で操作すると重力に引っ張られて墜落するから注意ね。



「御託はここまで····· まずはマッハ2まで加速を開始、エンジンフルスロットルっ!!」


 ゴォオォォォォオオオオオオオッ!!!


『わわっ、速っ』


「まだまだぁっ!!」


 魔導エンジンが轟音を響かせながら加速を始め、あっという間に音を超え空を駆け抜けて加速を続けた。


「1.7、1.8、1.9····· マッハ2.0到達!エンジンを閉鎖サイクルに移行、機体変形開始·····完了!1次加速開始ッ!」


 グォォォォン·····


 ッッッッゴァァァアアアアアアアアアアアア!!!


「んぐぅっ!!」

『うっ!』


 速度が規定値に達した所で吸気口を切り替えると、魔導エンジンがラムジェットエンジンに切り替わり燃料の燃焼効率が上がり凄まじい勢いで炎が背後から放出された。


 それに伴い機体はグングン加速し、結界によって5mも拡張された鋭いノーズコーンが大気を切り裂きながら突き進み、その速度は音速の5倍へ至ろうとしていた。


『す、凄い、あっという間に景色が流れて行くね』

「まだまだぁっ!第2次加速を開始·····の前に航空魔法の強度を上昇、緊急脱出装置の確認·····完了、よし」


『おや?何をしたのかな?』

「こっからは未知のシステムを使うんで保険です、分身とはいえ玄武さんも死にたくないでしょう?」


『そうだねぇ、この体を作るのもコストがだいぶかかるもの、レディクルスと違ってね』

「ですよね、それに私も死にたくないですし、前というか未来を先取りしてみた映画だとマッハ10を超えて飛んだら爆発してたんで保険掛けてるんですよ」


『へぇ、エイガはよく分からないけど面白そうだ、やってみてよ』


「モチのロンですよ、·····ラムジェット・システム変形、スクラムジェット・システムに転換開始!」


 その瞬間、ラムジェットエンジン内の狭窄部が粘土のように変形し構造が変化した。

 狭まる部分で圧縮され亜音速まで減速していた大気はエンジン内を極音速で素通りすると、そこに更に効率を上げた燃料を吹き掛けられ燃焼を開始、先程までと比べ物にならない爆炎を背後に放出した。


「っっくぶっ、速、操作が·····っ」

『おちついて、だいじょーぶさ』


「わかってるって、ッこのじゃじゃ馬がぁっ!!」


 ギィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!


 もはやエンジン音とは思えない音を轟かせながら突き進む私の戦闘機は、マッハ10を超えた。

 ·····その瞬間、予期せぬ事態が起きた。


『ねぇ石の子、エンジン後方に光の環が出来てるのは物理現象なのかい?』

「えっ!?·····うわ、アレは·····ッ!!」


 ズドォォォォォォオオオオオオオオオオンッ!!!


「んきゃっ!?加速してるっ!!?」

『おおおー、どうやら想定外みたいだね』



 音速の10倍に達し、超高出力の魔力を帯びた爆炎は自然に魔力光環を発生させ、爆炎をより加速させてしまった。

 その影響で機体の速度メーターは振り切れ、ホログラムのデジタル式速度メーターはマッハ13を表示してしまっていた。


『試験中止しなくて大丈夫なのかい?』

「·····んっふっふっ、大丈夫なんですよそれが」


『へぇ?』


「この機体はもっともっと速くても飛べる設計になってますから!その速度はマッハ33、今の3倍でも耐えられますから!」

『·····その速度で何をする気なんだい?』


「決まってるじゃないですか『上へ外へ(UP AND OUT)』行くんですよ!·····ロケットエンジン燃焼開始、爆裂魔法『Rocket Boost』を発動!!」


 ッドッッッッガァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


『ぐわぎゃっ』

「んっぐぅぅぅううっ!!んふふふっ····· 行くよ!空の上、宇宙(ソラ)へ!!」



 今まで起動していなかったロケットエンジンから先ほどと比べ物にならない、それこそ宇宙用ロケットの如き威力の炎が噴射され、私と玄武さんが乗る戦闘機はあっという間に音の速度を超えてソニックブームを身に纏いながら空の彼方へと消えていった





 数分後·····



『ほらキミ、これを見てくれ!水が球状になっているんだ!魔法を使わずとも球形になるなんて不思議だと思わないかな?』


「わーかーりーまーしーたー!!この中は精密機械が沢山あるんですからあんまり出さないでください!壊れると大惨事になるんでやめてください!!」


『そうなのかい?なら仕方ない·····』


「ったくもうこの人は·····」



 私たちは宇宙空間に漂っていた。


 現在の高度は地表から約230km地点で、左側には地表が、それ以外の方向には真っ黒な宇宙空間が広がっている。


 そして、私たちが生存可能なこの狭い空間の中で、玄武さんは無重力状態や水が球体になる現象に大興奮して後部座席で大暴れしている。


 まったく、いい歳した大人なんだから落ち着いてよ·····



『·····だけど、やめるには条件があるよ?』


「なんですか?」


『コレ、どういう仕組みなんだい?』


「あーーーー·····」



 玄武さんは水の玉を指さし、ニコニコと笑っていた。



「簡単に言うと表面張力です、多分玄武さんもよく四神さんと飲み会をしているなら見たことあると思うんですが、コップにお酒を限界まで注ぐとフチをこえてもこぼれずちょっとだけ盛り上がるじゃないですか」


『ん?ああ、そういえばなぜか漏れないね、酒の席だから疑問には思ったけど気にした事はなかったよ』


「アレは水の中にある水分子····· あー水とかこの世界にある物質は実は物凄く小さい粒が集まってできてるんですけどね、その粒がお互いに引き合って合体することで物質になるんですけどね、水は0度から100度までの間はその結合があまり強くないためある程度自由に動き回れるんです、でもある程度はこの結合力があって、そして水がコップの縁からあふれると一番外側の粒は外には自分と同じ粒が無いので内部の粒と引っ張り合うんですけど、そうすると内側に引き寄せられてある程度であれば盛り上がれるようになるって事ですね、そして無重力空間だとそれが全方位に働くので小さな粒が内側に引き寄せられて球形になるって訳です」


『なるほどなるほど····· もっと要約してくれないかな? ちょっとイメージが難しいからね』


「あー、組体操で『扇』ってあるじゃないですか」


『あるね、何人かで手を取り合って引っ張る事で半円状になる技だったね』


「よかった知ってた····· で、扇を構築する人がその小さな粒で、隣の人とつないでる手がその引っ張る力ですね、後はなんとなくわかります?」


『大体わかったよ、でもこの場合は引っ張る力は本来足の位置にあるはずではないかな?』


「あー多分そうですけどそこは気にしないでください、イメージなので」


『ああそこを聞くのは野暮だったね、·····ところで、その『小さな粒』について詳しく教えてくれないかな?この世界の全てを構成する小さな粒があるんだね?』


「·····説明がめんどくさいんで後日ちゃんと教える形でいいですか?あと教えるにしてもかなり面倒な内容なので対価無しとはいきませんよ?」


『もちろんだよ、何が欲しいんだい?』


「今度バカンス用の別荘を作らせてください、そしてバカンスさせてください」


『その程度だったらお安い御用さ、だけど根掘り葉掘り聞くからね』


「うへぇ·····」



 玄武さんからの質問攻めにあった私は、気を紛らわすため無事に到着した既に見慣れている宇宙空間に目を向けて現実逃避した。





「さてと、そろそろ日暮れなので地上に戻りますよ?」


『もうちょっと居させてほしいかな、まだこの乗り物の力を見てみたいし、このフワフワする空間についてもっと研究したいな、例えば炎はどんな形になるかとか、水を噴射するとどうなるかとか·····』


「あーもういいや····· 実は近くに衛星····· この空間で実験ができる建造物があるんでいつか案内しますよ、それでいいですか?」


『おお、そういう物もあるんだね、·····見せてくれないかい?』


「へいへい、仰せの通りにっと」



 そろそろ日暮れで帰りたかったけど、このいい年した亀がダダをコネてうるさかったので最後に私の衛星『賢者の杖』の近くまで行ってから帰ることにした。



「移動開始っと、ちなみにここから衛星まで約700km以上あるので超高速移動をしますよ、ただ早く帰りたいんで1分で移動しますね」


『異常な速さだね』


「そりゃそうですよ、だって音の40倍の速さですし」



 700kmというとピンとこないかもだからわかりやすいように日本地図で例えると、『東京の皇居から広島県の世界遺産宮島・厳島神社間』とほぼ同じ距離を1分で移動すると言えばその距離と速さが伝わるだろう。



「あー、でもマッハ40は反動推進だとちょっと厳しいかな····· よし、せっかくなら魔導力推進システムもテストしてみようっ!」



 理論上では光速を超えられる最強の動力の実力、見せてもらうよっ!!


名前:ソフィ・シュテイン

ひと言コメント

「·····私、別にこの戦闘機のコックピットの外でも平気で生きていけるんだけどね、だって神族って本来呼吸も食事も必要ない種だし、宇宙線とか高温低温も効かないから月面でお昼寝とかもできるんだけどね」


名前:玄武

ひと言コメント

『まさか青空の向こうには漆黒の空間が広がっているとはね、最初上に行けば行くほど青くなったから綺麗な青色の世界だと思ってたよ、いやぁまさか夜空は宇宙と同じ色だったなんて驚きだったよ、永く生きたボクでも知らないことは沢山あるんだね、ところでキミ、この空間で排せt

「わーわーわー!!!それは後でちゃんと教えるんで黙ってください!!」

 しかたないなあ、わかったよ、でも他にもいろいろ教えてもらうよ?えへっ』

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