異世界の空を翔ぶ戦闘機
滑走路をジェットエンジンの轟音を響かせながら移動すること約3分、私と玄武さんの分身が乗った戦闘機は玄武飛行場第一滑走路の出発地点へと到着した。
辺りには轟音を聞きつけた魔物が集まって遠巻きに眺めていて、どうも魔物も私の戦闘機に興味津々なようだった。
「さてと玄武さん」
『なにかな?』
「シートベルトをちゃんとつけてくださいね、一応この中は重力魔法で慣性やGを大幅に軽減してますけど、それでも急旋回などを行うと壁にたたきつけられる可能性があるのでお願いします」
『シートベルト?ああ、もしかしてこれのことかい?』
彼女は背中と座席の間をまさぐると、シートベルトを引っ張り出してきた。
やっぱりつけてなかったよこの人·····
流石に魔導コランダムでも、化身と言えど四神の中でも一番硬い玄武さんの頭突きに耐えられる気がしないからシートベルトは装着してほしい。
というかつけてないと後部座席が酷いことになりかねないからつけて?
「そうそれです、付け方はここに書いてあるので読んでください、もうすぐテイクオフですのでなるべく早く····· あー読みふけらないでください、時間無いんで!」
『おっと失礼、挿絵もあってわかりやすくて興味深かったからつい熱中してしまうところだったよ』
ったくこの人は·····
まぁ、本をたくさん読んでるだけあってさらっと説明書を読んだだけで複雑な戦闘機のシートベルトの着用方法を理解してあっという間に装着してしまったから、頭は物凄く良いっぽいのよね。
·····性格に難はあるけど。
まぁいいや、離陸準備しよ。
「主機出力上昇、各動力部への魔力流路オープン、メインエンジン及び補助エンジン出力上昇、推進方法は反動推進で行う!」
私は命令を口に出しながら機体を飛行モードへと切り替え始めた。
主機は私の賢者の石で、それを座席と一体化した魔力伝達システムを通して三機のロケットエンジンに流入させ、出力の上昇を開始した。
当然推進力は昔ながらの反動推進型エンジンで、魔法で強化しまくっている上に魔法で強化されたジェットエンジンは普通の戦闘機よりも圧倒的に出力は上のはずだ。
ガコンッ!
ギュィィィィイイイイイイイイイイインッ!!!
「やばっ、時空間アンカー射出!発進時まで固定っ!」
そして出力を増加させたことで車輪のブレーキでは耐え切れなくなり悲鳴を上げ勝手に機体が前進を始めたため、機体を空間に固定して強制的に動きを止めた。
割と出力ナメてたわ、これはヤバい。
ちゃんと試験しないからこうなるのよね·····
「よし、一気に終わらせよっと!進路上に障害物ナシ、風向き南南東方向に2m/sで問題なし、機体角度よし、各種計器展開!ええと、あとは····· 魔改造飛行魔法『航空魔法』発動っ!」
流石に機体が震えはじめてヤバくなってきたので、私は進路上に障害物が無いかを確認し、風向きや機体が滑走路の中央にあるかなどを確認し、速度計などをホログラムで表示させた。
そして私が戦闘機の飛行用に改造した飛行魔法『航空魔法』を発動した。
航空魔法は飛行魔法と同じで、魔力で対象を包み込み、魔力を操る事で内部の物体も動かすような仕組みになっている感じだ。
ぶっちゃけ言うと、これだけでも十分飛べるしなんなら垂直離着陸も出来るくらい推進力が高いというか、生身で使うと私でもちょっと厳しいくらい高出力の操作を行う魔法なのよね。
これを相手の体に掛けて左右に引っ張ったら軽々『ぶちっ☆』ってなると思う。
今回は航空魔法で翔ぶつもりは無くて、あくまでジェットエンジンによる飛行が上手くいかなかった時の保険だ。
「さーてさてさて、発進準備OKっと、ホログラムコックピット展開、AR誘導灯表示」
次は最終仕上げとして、戦闘機でよく見かける『グラスコックピット』、簡単に言うと戦闘機のゲームで画面に表示される『韮』みたいな模様が表示される透明な板を魔法のホログラムで展開した。
そしてそこに誘導灯もAR、拡張現実の技術を応用して疑似的に表示させた。
コレで飛びやすい·····はず。
うん、ぶっちゃけ役割はほとんど理解してないんだけど、それっぽいから使いたかったのよね。
兎にも角にもキノコにも、これで離陸前の準備は完了したので、あとは固定を解除して推力を上昇させ、離陸推力まで出力を上げて加速し、時速約400kmまで到達すれば浮かび上がるはずだ。
「補助翼展開っ!」
ぎゅぉぉぉぉおおん·····
『おや?翼が開いたね、面白い····· 普段は格納のために翼を閉じておいて、飛行時は展開する事で翼の面積を増やしたのかな?』
「んふふ、それもあるんですけど、本来の目的はそっちじゃないんですよ」
『へぇ、それは気になるね、·····でも羽ばたくわけでもないのに飛べるのはなんだか不思議だなあ』
「んっふふ····· 人類も昔は羽ばたいて飛ぶ方法を考えてたみたいですけどね、無理だったんでこうしたみたいですよ?」
人類は鳥を真似して空を飛ぶ事に憧れた。
だが人類は鳥にはなれなかった、だが人類は叡智の力で翼を得た。
それがこの航空機の翼なのだ。
「今度こそ準備OKです、玄武さんもいいですか?」
『もちろんだよ、いつでもいいよ』
「了解、ではこれより離陸を開始します、アテンションプリーズっ!!」
ギギギギギッ!
ガコンッ!!
ギュオアァァァァァァアアアアアッ!
キィィィィィィイイイイイイイイイインッ!!
私がスロットルレバーを倒すと、それに応じて左右と後方にあるエンジンから一気に熱気が放出されて空気が揺らぎ、白紫色の焔がガスバーナーのように直線に噴出された。
そして想像を絶する魔導式エンジンの出力によって噴射口から少し離れた位置に真っ白に光り輝く衝撃波の塊が発生する現象『ショックダイヤモンド』が発生していることからも、このロケットエンジンの出力の高さがうかがえるだろう。
これにはさすがの玄武さんも大はしゃぎしていた。
『キミ、あの光の節は何かな!?教えてくれたまえ!ぜひ!』
「エンジン出力上昇、発進準備OKっ!!玄武さん、喋ってると舌噛みちぎりますよっ!!」
『なぁあれは何なんだい?物凄い魔力と熱量を感じるのだけど、全く未知の現象だ、仕組みを詳しく教えてくれたまえ、なぁいいだろう?』
「·····発進5秒前、5、4、3、2、1····· 空間固定アンカー抜錨っ!!発ッ進!!」
カキンッ!
ズッッッドォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
「んぐっ!?」
『なあ教えてくれなびぎゅりゅっ!!?』
玄武さんがうるさかったので空間固定のアンカーを抜錨した瞬間、機体が物凄い勢いで加速され始めた。
それと同時に私たちの体が座席へと物凄い力で押し付けられた。
魔法で大気を圧縮して初っ端から超高出力になったエンジンの推進力は半端じゃない。
そんな超高出力のエンジンの力を余すことなく受け取った機体は物凄い勢いで加速し始めた。
その瞬間に私たちに掛かったGはなんと約4G、コックピット内で感じられる普通の人間が耐えられる限界ギリギリのGに設定した値をいきなり出してきやがった。
·····多分重力魔法無しだったら確実に私はぺしゃんこになっていただろう。
普通なら私たちには下手したら3桁単位のGが掛かっているはずだが、流石は魔法の力、私でもギリギリ通常通りに操縦できるGにまで軽減してしまっているのでぺしゃんこにならなくて済んでいるのだ。
おいそこのテメェ、誰が『もともとペッタンコだろw』だ!加速度じゃなくて虫の方のGをてめーの部屋に召喚すっぞゴルァ!!
私が読者にケンカを吹っかけている間にも、機体は物凄い勢いで加速し、2kmもある滑走路をあっという間に半分以上走り切ってしまった。
だが、戦闘機は滑走路の半ばまでしか走ることはできなかった。
「浮いたッ!!テイクオフッ!!」
機体は航空力学と魔導力学に従い、滑走路の半ばで大空に向けて飛び立っていった。
◇
『いたたたた····· 血が出てる·····』
「もう、だから黙ってって言ったでしょう?治してあげるので舌出してください」
その後、私たちを乗せた戦闘機は高度1500mまで上昇し、そこで一旦水平飛行をしながら玄武さんの本体の周囲を旋回していた。
そして旋回する戦闘機の中で、さっき発進時に思いきり舌を噛んだ玄武さんの治療を行っていた。
『たしゅかるよ、あー·····』
「どれどれ····· って、ほぼ嚙み切れてるじゃないですか!?」
『あー、みたいらね』
うわぁ····· いや確かにあの巨体の玄武さんからしたら少しの出血かもだけど、舌を噛み切って平気そうな顔をしてるのヤバすぎるって·····
あーあーもう服が血だらけじゃん。
「まったく····· はい治しましたよ」
『おお、凄い回復力だ、ふんふん、失われた血液まで再生されてるみたいだね、これは凄いね、キミが作った魔法かな?』
「そうですよ、生憎私もよく大怪我をするんで治療法は確立させてあるんですよ」
そう、最近私は死亡回数を減らすために努力をしているのだ。
主に即死以外の致命傷から回復して死亡しなくて済むように、なおかつ失血死もなくなるように複合回復魔法を構築しているのだ。
いやー、人って案外強靭なのよね、即死でなければ首を撥ねられても魔法で回復して生き残れるくらいには頑丈なのよね!
意識さえ残ってれば全身がバラバラになっても魔法を発動できるって気が付けたのはマジで怪我の功名だったわ。
まぁ私専用の再生魔法を他人に使うのは初めてだったけど、無事に治って良かった。
『·····で、後ろに見えてるあの光の節はなんなんだい?』
「はぁ····· 言わないとしつこく聞きそうなんで教えますよ····· それはショックダイヤモンドっていって、衝撃波とか熱が色々な影響で一ヶ所に集まる点でして、その影響で光り輝いて見えるんですよ」
『ほほう、大雑把だけどなんとなくわかったよ、多分口頭では詳しく説明するのは難しい仕組みなんだね?』
「そうですよ、あー詳しくはコレ読んでください」
『おお、ありがたいね、後で読ませてもらうよ』
私もショックダイヤモンドの仕組みは詳しくなかったから、インターネットから資料を印刷してきて玄武さんに手渡した。
「·····にしても、やっぱり戦闘機は最高だなぁ」
『いやあ凄いね、こうやって飛ぶ方法があるなんて思わなかったよ』
「んふふ、驚かせられたみたいでよかったです」
私はシートベルトを装着しなおすと、再び操縦桿を握って自動操縦から手動操縦へと移行した。
「さてと、それじゃ飛行試験をやりますよ!舌を噛まないよう気を付けてくださいねっ!」
『もちろん、痛覚は殆どないけど痛いのはもうこりごりだからね』
「へいへい····· あっやべ」
『うん?どうしたんだい?』
「この機体の名前決めるの忘れてましたっ☆今決めても間に合うかな·····?」
『どうぞご自由に』
うーん····· 名前どうしよっかなぁ·····
『SS-01(SophyStein-01)』はロボットで使っちゃったし、何かほかに·····
あっいいのあるじゃん!
「よし、機体名は航空宇宙戦術魔導戦闘機『PS-01 PhiloSophy』だっ!」
『おお、いいんじゃないかな』
んふふ·····
我ながらいい名前思いついちゃった·····
という訳で、名前も決まったので早速試験飛行をしようっ!!
いやーワクワクするねぇ!!
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「いやーやっぱり戦闘機はカッコいいねぇ····· ちょっと出力が強すぎるけど少ないよりはマシだもんねっ☆」
名前:玄武
ひと言コメント
『いやぁ、やっぱりレディクルスから聞いた通り『石の子』は面白い子だね、彼女が気に入るわけだよ』




