超ド級戦艦空母亀『玄武』
ガゴンッ
私の乗った魔導戦闘機は組み立て場から搬出されると、とある場所に出てきた。
出てきた先は飛行機の格納庫なのだが、ここは少し面白い場所に作られている格納庫なのだ。
「っと、到着っ!いやーまさか『玄武飛行場』を借りれるとは思わなかったわ」
『おっ来たようだね、元気だったかい?』
「はいっ!そりゃもちろん元気いっぱい·····って訳でもないんですけど、今日は元気をつけるために来ましたよっ!」
『そりゃよかった、で、それがセントーキとやらかな?』
「ですですっ!玄武さんもわざわざ飛行場を貸して下さりありがとうございますっ!」
『気にしなくてもいいよ、それにボクも戦力が増えるのは嬉しいからね』
戦闘機が搬出されると、格納庫内に居た、普通の服に黒の生地に深緑色の縁が特徴的な中華風なローブみたいなのを着た、つかみどころのない、中性的な見た目のニンゲンが近寄ってきた。
彼·····ではなく彼女はこの格納庫があるインディペンデントフォートレスの甲羅の上、通称『甲板』の主である『インディペンデントフォートレス』の玄武本人だ。
そう、彼女は前に私がブッ飛ばして従わせたあの独立要塞亀の『玄武』の本人が人の町にやってくるために生み出した分身体なのだ。
『そういえば、キミが作った滑走路は役立たせてもらってるよ、これで飛ぶのに助走が必要な子も配備できるようになったからね』
「ほほー、どういう魔物を加えたんですか?」
『ええと、グライディングタイガーとアルボンバトロスとツンドラボルトワイバーンだね』
「わぁおこれまた凶悪なのを仲間に加えましたね·····」
グライディングタイガーは翼を持つ虎で、助走をつけながら風魔法で空へと飛びあがって滑空する虎の魔物だ。
アルボンバトロスはかなり大型の体長5mはあるアホウドリみたいな魔物で、飛ぶの助走が必要だがひとたび飛びあがると高高度から可燃性の糞を落として爆撃する厄介な魔物で、上に他の魔物を乗せて輸送なんかも行う爆撃機みたいな魔物だ。
ツンドラボルトワイバーンはメッチャかっこいい氷で武装したワイバーンで、羽ばたいてもその場で飛べない羽の形をしているせいで走って魔法で加速しながら飛ぶ必要のある魔物だ。
その代わりに飛行時の機動力と速度と安定性は物凄くて、私のガトリング魔砲『サンダーボルト・アヴェンジャー』に引けを取らない速度で氷の弾丸を連射したり、地中貫通型爆弾を投下したりと物凄く厄介で強い魔物だ。
『まだまだこれからさ、召喚する魔力が足りなくなっちゃったから後日また増やそうと思うよ』
「うっわー凶悪·····」
『今度はキミを倒して見せるから、今のうちに兵力を貯め込まなきゃだからね』
「またまたぁ、ご冗談が上手ですねぇ、あっはっは」
『あはははっ』
·····多分8割くらいガチで言ってるなこの亀。
◇
さーてと、ちょっと長話しちゃったし、いい加減飛行試験をやろうかな。
·····やりたいんだけど、玄武さんがニコニコしながら戦闘機の前に立って動こうとしないんだけど。
「すいませーん玄武さーん」
『なにかな?』
「そこに居ると轢いちゃうんでちょっと移動してもらっていいですか?」
『おっと失礼·····』
玄武さんは1歩下がった。
「·····あの、どいてくれません?」
『いやぁ、その乗り物、構造的に後ろに1人くらいなら乗れそうじゃないかな?』
「あー····· これまだ安全の保障無いですからおススメしませんよ?まだ飛行試験もしてないんで·····」
『大丈夫だよ、ボクのこの体はいくらでも作り出せるからね、さぁ是非乗せてくれたまえ』
くそっ、複座式なのバレてる。
いつかフィーロ君と一緒にヴェルグ地方の洋上を遊覧飛行するために複座式にしたんだけどミスったな·····
「·····ちっ、怪我しても知りませんよ?それにかなり遠くにも行く気なので本体との通信が切れても知りませんよ?」
『問題ないよ、魂の廻廊で繋がっているから切れることはないからね』
「あぁそうですか····· じゃあ今開けるので乗ってください」
なーんか玄武さんが退かないしずっと私の方を見てニコニコしていて変だと思ってたけど、乗りたかったのね。
この人めっちゃ好奇心旺盛だったの忘れてたわ。
何も言わなければ賢者とか仙人言われても違和感が全くないくらい綺麗な男装の麗人なんだけどなぁ·····
私は心の中で文句を言いながらもハッチを開けて玄武さんを後部座席に案内すると、彼女はその緑がかった黒色のショートヘアを揺らしながらコックピットへと飛び乗ってきた。
ちなみにこの戦闘機には一応後部座席もある2人乗りだけど、本来の戦闘機は後部座席の人も役割りがあるけどコイツには無い。
だって私1人でなんでも出来ちゃうし、操作が複雑すぎて一般人には扱えないだろうし·····
『よっと、おお、見たこともない魔道具が沢山あるね』
「そりゃ私の手作りですし」
『こんなものを手作りできるなんてキミは凄いね、尊敬に値するよ』
「んへへ····· じゃぁ玄武さんはとりあえずコレ被っておいてください」
『これは何かな?みたところ····· 甲羅みたいだけど?』
「ヘルメットです、頭を保護するための装備ですね、ついでにホログラムで計器なんかも出せるので必ずつけておいてください」
『わかったよ、おお、これは凄いね、たしかに安全そうだ』
「んじゃ出発するんで閉じますよ?」
『どうぞご自由に』
「はぁい」
私は出発するためコックピットのハッチを閉じて最終安全確認を行い、エンジンの点火を開始した。
「ふぅ····· 基礎エンジンシステム用魔法、水魔法『湧水(燃料油カスタム)』および火魔法『点火』発動、続いて風魔法『大気圧縮』発動····· 完了、全魔法を操作系統に接続、·····接続良好、スロットルテスト·····完了、フラップ、ラダー問題なし、魔導式時空間重力制御問題なし、操縦系統に問題なし····· 行くよ戦闘機ちゃん、エンジン出力上昇ッ!」
ガコココッ
ギュォォォォオオオオオンッ!
『おおっ!すごい音だ!ふむふむ、油を火魔法で燃やして空気を放出して加速するんだね、空気を圧縮してるのは燃焼効率を上げるためかな?面白い仕組みだ、魔物の身体機能を模したのかな?』
「違いますよ、でも私が考えたわけではないですね」
『という事は、ヒトが考え出した技術という事だね、流石は知恵でこの過酷な世界を生き延びた種と言うだけはあるね』
「まぁそんなところです、あとそろそろ動くので気を付けてくださいね」
『わかってるよ』
なんか出力を上げたら玄武さんが興奮して質問してきたけど私は作業を止めず、機体のブレーキを解除して進み始めた。
今いる場所はまだ滑走路脇にある格納庫なので時速10kmと自転車くらいの速度しか出していないが、それでもこの大型の機体で操作するとかなり早く感じる。
おおお·····めっちゃワクワクしてきたっ!
『おぉ、動き始めたね』
「ですね、このまま滑走路の所定の位置まで移動しますよ」
『了解、訓練中の魔物たちに一旦避難するよう通達するね』
「お願いします、あと離陸時に物凄い音が出ると思うので、音に敏感な魔物の避難と通達もお願いします」
『わかったよ、その代わりにキミは早く出発地点に行ってくれないかな?』
「はぁい」
どうやらワクワクしていたのは私だけではなかったみたいだ。
んふふ····· じゃあ早速行こうっ!
「格納庫、シャッター開けっ!」
ガラガラガラッ!
私が玄武さんの背中に作った格納庫のシャッターが自動で開くと、まぶしい光が格納庫の中に入り込んできて、灰色の戦闘機らしい見た目の戦闘機を照らした。
そして私は光の道を機体を走らせて進み、とうとう私の戦闘機は格納庫の外へ、大空の下へと·····
·····青空にしちゃ青すぎる、それに揺らめいてるんだけど。
「·····あの、玄武さん?」
『なにかな?』
「·····浮上してくれません?」
『おや、あぁこれは失礼、まだ潜ったままだったね』
私たちの真上には海が広がっていた。
何を言ってるかわかんないと思うけど、100mくらい上に海面があるのよね。
そう、玄武さんは亀というだけあって海の中に潜ることも出来て、その際は背中にあるほぼ自然の島になってしまった森などの自然や、彼女が作り上げた魔物で構成された軍事拠点や海中で活動のできない陸軍と空軍の魔物を保護するために、背中に巨大な酸素のドームを形成しているのだ。
ちなみに攻撃されてもこの泡は壊れないらしく、そもそも泡といってもバブルじゃなくて甲羅の上を『海中』から『地上』へと概念を書き換える事で地上と同じ環境を保っているらしい。
うん、流石は神話級の生物、概念に干渉できるレベルにまで至ったんだからマジで凄い。
『それじゃあ浮上するよ、振り落とされないようしっかりつかまっておくんだよ』
「りょーかい」
今度は玄武さんと立場が逆転し、玄武さんの上に乗っている戦闘機に乗っている私は振り落とされないように戦闘機を格納庫前の待機スペースに固定した。
次の瞬間、地面が揺れて地面がどんどん傾き始めた。
どうやら玄武さんの本体が海面へと浮上を開始したようだ。
流石にこの規模の物体が浮上すると大津波が起きそうだけど、どうやら魔法で海水を制御しているようで衛星で上空から見ても波一つ発生していない。
·····ところで、直径5kmもある潜水強襲揚陸戦艦ってヤバくね?
◇
5分後·····
ザッパァァアアアアアアアンッ!!!
『はい、浮上し終わったよ、これで発進できるかい?』
「ありがとうございます!これならいけると思います!·····まぁこれ海中からでも発進できるんですけどね」
『おやおや、それを早く言ってくれないかい?まぁそろそろ浮上しようと思っていた時期だから構わないけども』
「いやぁ、だって最初は普通に発進したいじゃないですか」
流石にこの巨体が浮上するのには時間が掛かったのか、5分経ってようやく甲羅が全て海面へと現れた。
さてと、やっとこれで発進できるわ。
「それじゃ滑走路に移動しますね」
『どうぞ、楽しみにしているよ?』
「はーい」
私は戦闘機のブレーキを解除すると、エンジンを吹かして再び移動を開始した。
◇
私が居る玄武飛行場第一滑走路は長さ1kmで、玄武さんの頭を上に見て甲羅の右側の外縁部付近に作らせてもらった飛行場だ。
ちなみに『第一』と付けただけあって、飛行場は計2か所あってここの反対側の左端に飛行場がある。
んで普通の亀の甲羅は傾いてるんだけど、あまりにも甲羅がデカすぎるのと向こうの世界最大の亀『オサガメ』のように背中になだらかな山脈が3本走っててその谷あたりがちょうど平坦になってるから山林を開拓して飛行場にさせてもらった。
彼女は最初乗り気じゃなかったんだけど、粘り強く交渉したら渋々了承してくれたけど、その代わりに他にもう1ヶ所バランスよく作ってと言われて増設した感じだ。
そんで私が借りている飛行場は右側の第一滑走路で、ここにだけ私専用の格納庫も設置させてもらっている。
ちなみに、なんで玄武さんの甲羅に滑走路があるか言うの忘れてたね。
「いやー、流石は洋上ですね、邪魔な物も全くないし騒音被害も無視できるって最高ですね」
『ああ確かにそうだね、町の近くで大きな音を出すと迷惑だものね』
そう、この戦闘機のロケットエンジンの燃焼試験をしているときに発覚した問題があったのだ。
それは『騒音被害』、コイツマジで音がヤバくて多分フシ盆地で飛ばそうものならフシ町と魔法学園都市から何事かと警備兵がゾロゾロ出てきて町民が大混乱すること待ったなしな大騒音をまき散らすのだ。
昔ゴブリンの巣に爆音スピーカーをねじ込んで音楽流しまくって鼓膜破壊した上にノイローゼにしようとしたら、町に近すぎて警備隊がゾロゾロ出てきてめちゃくちゃ怒られたし·····
ちなみにロケットエンジンでの飛行よりも星間航行用の『魔導力推進システム』の方が音がヤバい。
魔導力推進を稼働すると速度が上がるにつれて周囲に甲高い悲鳴のような絶叫のような、音割れした不快な音が鳴り響くから市街地の近くじゃ使えないのよね。
でもその現象が起こるのはマッハ5以上の出力にした時だから、通常時だとクジラの鳴き声のような重低音の出る管楽器のような神秘的な音が鳴り響くんだけど、それはそれで異常な音だし大音量だから控えたいのよね。
一応消音飛行も出来るし、ソニックブームなんかも風魔法で制御してやれば無くせるんだけどね?
でも試験飛行ではまずは素の状態の実力を知りたいから何も無しでやるつもりって訳だ。
なので周囲に民家もなく障害物も全くないという、騒音被害を一切気にしなくてもいい海上で試験飛行を行う事にしたという訳だ。
「さてと御託はここまでっ!飛ぶよっ!!」
そろそろ話も長くなってしまったので、さっさと滑走路のスタート地点に行くとしよう。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「えっ?飛行機の免許?持ってるわけないじゃん、というかこっちの世界に航空機とかまだほとんどないし?あっても『ワイバーンライダー免許』か『竜騎士認定証』的なのしかないから、空飛ぶ魔道具を使っても罪には問われないよっ☆·····まぁヴェルグ地方の飛空挺に乗る免許みたいなのはあるけど空賊が山ほどいる時点で要らないって分かるから関係ないよ☆」
名前:『インディペンデントフォートレスタートル』
二つ名:『玄武』
年齢:推定数万~数億歳
ひと言コメント
「いやあ空を飛ぶのはいいね、ボクは陸と海しか行けないから、空を飛べる朱雀や青龍に乗せてもらう事しかできなかったからね、こうしてヒトが作った物が空を飛んで、それにボクも乗れるとは思ってもみなかったよ、久しぶりにワクワクするね」




