望郷
「んぐへへへ····· 100万円も····· んふふへ·····」
即金で100万円を貰った私は、校長先生の話を半分以下に聴きながら札束を数えていた。
お金が78枚、79枚····· んふふふふ·····
「それじゃ外出の準備をしてくるわ、あっそういえばソフィちゃんの田んぼはどこら辺にあるのかしら?」
「·····んぇ?なんか言いました?」
「·····ソフィちゃん、指に唾付けて札束数えないの、はしたないわよ?というかオヤジみたいよ」
「元々27歳で今と合わせて33なので」
「エ゛」
校長先生が変な声を上げてるが、私は無視してお金を数えるのを再開·····
「い、いいから聞きなさい!ソフィちゃんの田んぼは何処にあるのって聞いてるのよ?」
「あー、んふふ、秘密です、あと汚れても問題ない服で来た方がいいですよ!」
「えっ?·····分かったわ、ちょっと待ってて」
先生はソファから立ち上がり、隣の部屋へと行ってしまった。
たぶんあっちが先生の私室かな?
あっそうだ私も私服に着替えとこ。
インベントリから昨日着てたのと同じTシャツと短パンを取り出して〜
この部屋に誰も居ないのを確認して、さっと制服を脱いで私服に着替え、制服をインベントリに入れて着替え完了!
やっぱりこのラフな感じが良いな、あの場所にカッチリした服は似合わないし、かといってパジャマみたいなモコモコ可愛い服も合わない。
だからこそ、この安っちいTシャツと短パンが丁度ピッタリなのだ。
「あっ、鏡あるじゃん!」
ちょうど校長室には全身が見れる大きな鏡があったから、その前に立ってみると·····
田舎のガキンチョみたいな格好をした私が写った。
しかし私は満足していなかった。
「·····なんか、こう、ダサ味が足りない?」
白一色のTシャツでは決定的な何かが足りなかったのだ。
なんというかシンプル過ぎて物足りないのかもしれない、という事はもうちょっとダサい柄があった方がいいアクセントになるかも!
「·····そうだ!そうしよう!」
私は白Tシャツに書く柄が思い浮かんだので、シャツを脱いで上半身裸になり、床に脱いだシャツを広げて魔法のペンを使って堂々と文字を書き込んだ。
そして、完成したダサいTシャツを着て鏡の前に立った私は、その完成度に満足した。
◇
十数分後·····
学校で使いそうなジャージに着替えた校長先生がようやく自室から出てきた。
そして私を見るなり吹き出して笑った。
「またせたわねソフィちゃ····· んぶっ、えっと·····そ、ソフィちゃんも、ふっ、くふっ·····!私服に着替えたのね、·····私服、よね?」
「むぅ····· 笑うなんて酷い····· まぁ私服というか、農作業用の服ですよ」
「し、白のシャツに、大きく平仮名で『そふぃ。』は、·····はふっへ!!はっ反則よ!!」
よしウケた!
私はあのときTシャツに、日本語の平仮名のヘッタクソな太文字で『そふぃ。』と書き込んだのだ。
特に無駄に『。』を書き足す事で意味不明な面白さを醸し出す、究極のクソダサTシャツだ。
日本人ならこれでイチコロよ。
「んじゃ、私の田んぼに行きますか!」
「そうね、先導をお願いするわんぶっふ!!」
「どうしました?」
「ふ、あはふっ!せっ!背中にも書いてるのはッ!!卑怯すぎるわよっ!!!」
ちなみに背中のは書き損じたやつ、久しぶりに日本語書いたから『そ』の下が逆向きになっちゃったのよね。
それがどうやら校長先生にクリーンヒットしたらしい。
そして笑いを堪えまくってる校長先生はフラフラとドアの外に向か·····
「せんせー!そっちじゃないです!!こっちです!」
「えっ?」
◇
ディメンションルーム『瑞穂の里』への通行許可を私と校長先生だけに設定をして、校長先生の部屋に仮にゲートを設置した。
するとヴンッという音と共に『ディメンションルーム』へ繋がるゲートが展開された。
「·····貴女今、さらっと時空属性魔法を使ったわね?」
「·····てへっ☆」
「はぁ····· 貴女なんでこの学校に来たのよ」
「学校からスカウトされたっぽいんですけど·····」
「·····そうだったわ、というか私の責任ね」
ゑ゛
私の事魔法学校に推薦したの校長先生だったの!?
そういや誕生日パーティーの時いたような·····
なんか話がややこしくなりそうだったから、私は校長先生をグイグイ押してゲートを潜り、何だか懐かしい気配のする『瑞穂の里』へと到着した。
そして少し進んで家のある台地の縁のあたりにやってくるとゲートの方に振り返り先生を待つ。
その状態で少し待っていると、校長先生がゲートの外から警戒しながらチラリと覗いて来た。
「ソフィちゃん居るかしら····· えっ!?日本!?まさか、次元まで超えれると言うの!?」
「残念ながら違いますよ、ここは私が日本を再現して『ディメンションルーム』に作った米の栽培場『瑞穂の里』です!」
「·····凄いわ、日本そっくりじゃない」
「そりゃこだわって作りましたから!それじゃ改めまして·····」
「校長先生、ようこそ望郷の部屋『瑞穂の里』へ」
◇
「で?何かしらこの散らかし具合、ちゃんと片付けはしなさい」
「うげっ案の定言われたわ····· ま、まぁちょっと、その〜····· 一旦縁側に座って下さいっ!」
「·····わかったわ、片付けるまで待ってあげるわ」
私は先生を家の縁側に座らせ、片付けはしたくないからここに住んで貰っている魔物たちを呼び出して誤魔化すことにした。
「みんな集まってー!」
「さて何が来るのかしら····· あら可愛い猫じゃない」
『ぶなぁ』
「その子はプリティアサシンキャットのもっふすっていんだよ!可愛いでしょ!」
「ひっ!?ちょ、超危険な魔物じゃない!!」
「え?もっふすそんなに危険なの?」
私はもっふすの両脇を掴んで持ち上げる。
するともっふすがなんかニョーンと伸びた。
ああぁ····· モフモフだぁ·····
「危険も何も、数多の猫好き冒険者を暗殺してきた超危険な魔物よ····· 私も1度殺されかけたわ·····」
「ええー?もっふすはそんな事しないよね?」
『ぶなぁ』
私は契約した魔物の考えてる事が分かる、今もっふすは「そんな事しねぇよ」って言っていた。
「ね?」
「·····わからないわ、でも見る限りでは安全そうね」
「もっふす、先生をもっふもふにしてやりなさい!」
『ぶなぁ!』
「えっ!?あっ!?ちょっ!!·····最高の触り心地ね、暗殺されてもいいくらいだわ」
先生の膝にもっふすが乗ると、先生がもっふすのモッフモフに負けてモフモフし始めた。
その間に私は先生に湯のみに入った緑茶を渡す。
「先生温かいお茶です」
「あら、ありがとう····· はぁ、美味しいわね·····」
「わかります、この景色を眺めながら飲むお茶はホント最高なんですよ、露天風呂にも負けな····· やべ」
「ソフィちゃん····· 今露天風呂って言ったかしら?」
やっべ·····
口を滑らせちゃった·····
「実は露天風呂も作ってあるんです·····」
「本当に!?今日じゃなくても良いわ、また今度入らせて貰ってもいいかしら?」
「もちろん!先生はお得意様なので、後でここに来れるゲートを先生の部屋に繋げておきますよ!もちろん制約とかもありますけど·····」
「構わないわ、·····ところでお米はあの田んぼで作ったのかしら?どうやったの?」
「実は田んぼは見た目だけですよ、やろうと思えばこんな感じで····· 稲よ生えろ『グロウフラワー』!ほら、私はこんな感じでどこからでも稲を生やす事が出来るんです」
私は地面に向けて『グロウフラワー』を発動し、足元から稲穂を生やした。
「び、びっくりしたわ、本当に稲ね····· 必要無いならなんでここを作ったのかしら?」
「うーん····· 気分?」
まぁ形から入るのも大事だからね!
◇
その後先生と一緒に里の仲間たちと戯れたり、お米を食べたりしていたが、そろそろ値段の話をしよう。
「それじゃ先生、このお米、何円で買います?」
「1袋1億円でどうかしら?」
「はっ!?えっ、いやそんなに沢山は·····」
なんと先生は私の予想を遥かに上回る値段を提示してきた。
ぶっちゃけ500万くらい貰えたらいいなとか考えていたので、いい意味で予想を裏切られた。
「でもそんなにお金を使ったら·····」
「ソフィちゃん、私が年間でお米の開発に使ってるお金って何円だと思う?」
「わからないです」
「年間約10億よ、芋や小麦に変わる新たな食料として随分前から研究調査をしてるし、大半は個人的な財産から出してるから問題ないのだけれど」
「ひええ·····」
「だけどその研究も今日でお終い、だから予算が有り余っちゃう事になったのよ、なんなら10億払ってもいいと私は考えてるわ」
「い、いちおくでおねがいします·····」
「はいこれ1億円ね」
「えっ早っ·····」
先生はインベントリから1億円分はあろうかという量の札束や硬貨を取り出して並べた。
ちなみにこの世界のお金は硬貨タイプと紙幣タイプの2つが同時に使われている。
黄金で出来た10万円硬貨があったり紙製の10万円紙幣があったり様々だ。
念の為数えてみたが、ちゃんと1億円あった。
「で、でも流石に多いので、次回の代金を先払いしたってことにしておきます····· というか、多すぎるのでオマケにコレを·····」
「あら?何かしらコレ····· は!?星核合金!?希少魔導金属3種の合金!?星の核!?どういうこと!?」
相場から大きく外れた値段で買ってくれた先生に対してなんか申し訳無い気持ちが出てきたので、私は先生に『星核合金』のサンプル用インゴットをプレゼントした。
その後、私が先生によって質問攻めにされたのは言うまでもなかった。
◇
その後よ校長先生と会話をしたりここへ繋がるゲートの調整をやっていると、いつの間にか私の寮の夕食の時間になってしまった。
「先生、今日はありがとうございました!」
「いいのよ、私はもうちょっとここで休んでいくわ」
「はーいっ!それじゃ、また今度遊びに行きます!」
そして私は夕飯を食べたり、仲間と集まったり、昼間に買ったお弁当をご飯で食べたりしたいので、先生に別れを告げ帰ろうとした。
しかし、校長先生が帰ろうとする私のことを呼び止め、最後の質問をしてきた。
「ソフィちゃん最後に一つ質問させてもらうわ」
「なんですか?」
「貴女は日本に帰るつもりはある?」
·····日本、か。
「ふふっ、先生、日本に住んでいた普通のサラリーマン『藤石 賢人』はもう死んじゃってますよ?だから故郷なんて関係ないです、それに私はこの世界で彼の記憶を受け継ぎこの世に生を受けただけの、ごく普通の女の子なんです、だから私の故郷は·····」
「にほ····· あっ間違えた、この世界のフシ町ですっ!」
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「私の故郷はコッチだけど、いつか日本にはみんなと一緒に行きたいなぁ····· 未練がないといえば嘘になるし」
名前:加藤 郷美
年齢:3671歳
ひと言コメント
「転生者と転移者で感性が違うのかしら?まぁ何にせよお米が買えて良かったわ、入り浸るつもりは無いけれど温泉も和風な風景を見られる場所を見つけられて、未知の金属も手に入って良かったわ····· しまったわ、お米の美味しい炊き方聞いてなかった····· 後で聞かなきゃなぁ」




