同じ釜の飯を喰う赤の他人
熾烈な戦いを繰り広げた私たちはお腹が空いてしまい、一旦空腹を満たすついでに第五ラウンドを行う事にした。
「第五ラウンドはお料理対決ーっ!パチパチパチパチっ!」
「先生、本日のお料理のコンセプトは?」
「ズバリ、『炊き込みご飯』です!」
「あっ、キノコさん椅子ありがとう、そろそろ床に座るのも疲れてきてたんだ」
「拙は自分で出せるから大丈夫だ」
\にょっきり♥/
『Mush!Mushr!!』
「では早速対決開始ですっ!両者位置について····· よーい!どんっ!」
「「うおぉぉぉおおおっ!」」
私は特設のキッチンに向かうと、早速私特製キノコの炊き込みご飯を作り始めた。
しかし今日の相手は強敵だ、何せキノコの炊き込みご飯と対を成すほどの人気を誇る炊き込みご飯の覇者、タケノコご飯だ。
だが私には秘策があるっ!
種類の少ないタケノコとは違うのだよ!キノコはっ!
「いでよキノコの王!松茸だぁっ!」
「な、なんだと!?それはっ!!」
「ふっ····· タケノコご飯に追いつくためにはこれくらいしなきゃ勝てないわっ!」
「て、てめぇ····· ならアタシも禁じ手を使うぜっ!いでよ隠し味のひね鶏だっ!」
「ひ、ひね鶏だとっ!?」
「ねぇひね鶏って何?」
『Mushr····· MushMuuushhh!!』
『Mushhh!!』
「あっ、絵なら書けるんだ····· なになに?ニワトリが?卵を産んで?卵の山?ニワトリが杖を持って?お肉になる?うーん····· ごめん、ちょっとわかんないや·····」
「ぬ?うぬはひねどりがわからぬのか?」
「料理するのいつもソフィちゃんだし·····君は知ってるの?」
「しらぬ」
「なら首突っ込まないでよ·····」
あー、2人ともひね鶏がわかんなかったのね。
ひね鶏は別名『親鳥』といって、養鶏場で卵を産んでいたが年老いてこれ以上産めなくなってしまったニワトリを精肉してできる肉の事だ。
つまり、採卵できなくなって価値がなくなったニワトリをお肉にしちゃったのがひね鶏だ。
特徴としては、ブロイラー(若鳥)よりも歯ごたえがある、悪く言うと身が硬いのが特徴なのだが、旨味が強く、噛めば噛むほど旨味が増えるし、出汁にするとすごく良い出汁が出るという特徴がある。
つまり、出汁が決め手の炊き込みご飯においてひね鶏は最強の組み合わせであるが、ひとたび調理法を間違えれば硬い身質が炊き込みご飯の邪魔をする高度な技術が必要な食材なのだっ!
更に、分量を間違えれば目的の食材の旨味や香りを超えてしまう諸刃の剣っ!
「くっ、私にそれを使う度胸はない·····」
「ふんっ!アタシならその程度楽勝よ!」
「す、すごい····· 珍竹林のくせに料理が得意なんだ·····」
「誰がチンチクリンじゃゴルァ!!ってか料理なんてマトモにやったことないぞ?」
「えっ?でも·····」
「このコメって言うのも初めて見たぞ?なんじゃこりゃ?」
「えぇ····· ソフィちゃん、これ卑怯すぎるんじゃない?」
「しかーしっ!!」
「びっ!?ビックリしたぁ·····」
「タケノコ神拳とっ!」
「キノコ神拳がパッションすればっ!」
「「不可能など、無いッ!!!」」
\ずぎゃぉーん!!/
「あぁそう·····」
「んじゃ調理にもどろっと」
「あぁ、そうだな!」
「·····もうお腹空いたし大人しく待ってよっと」
「拙もそうするぞ」
◇
しばらくして·····
「「できたー!!」」
「やっと?僕もうお腹すごく空いてるんだけど·····」
「ごはんだごはん、ごはんのじかんだ」
「確かに私ももう限界かも·····」
「アタシもだ·····」
やっと私は渾身の出来栄えのキノコご飯が完成したが、先ほどからキノコ神拳の奥義や究極奥義を多用しすぎてお腹がペコペコだ。
流石に久しぶりなのにこんだけキノコ神拳を使うのはちと無理しすぎたかな·····
どうやらそれはリリアも同じだったようで、向こうからずっと腹の虫の音が大音量で響き渡っていたし、私の腹の虫も大合唱中だ。
「·····ここはまた一時休戦にしない?」
「あぁ、決着は飯を食ってからにしようぜ?」
「じゃあ第五ラウンドは引き分けって事で良いよね?」
「もちろんだ、それより早く飯食おうぜ!」
「はいはい、んじゃフィーロ君もおいで?」
「はーい」
という訳で、仁義なきキノコ神拳VSタケノコ神拳の道場破り戦は一時休戦してお昼の時間をとることにしたのだった。
◇
私は神拳:キノコの拳を外すと、インベントリから簡易テーブルと椅子を取り出し、その上に先ほど作った炊き込みご飯の入ったおひつを置いた。
「·····で、タケノコ神拳の力で作ったはいいけどさ、コレなんなんだ?見た事ねぇぞ?」
「んふふ、最近私が見つけた新たな主食の『お米』だよ、穀物の種だね」
「あー穀物か、アタシはそんなに喰わねぇからわかんなかったぜ」
「ふーん?普段は何食べてるの?」
「果物とかだな!それと肉と石だ!」
「·····石?」
「フィーロ君知らないの?ドワーフは岩石も食べれるんだよ?」
「あぁ、案外行けるぜ?お前も食ってみるか?」
「いや、流石にドワーフの末裔の僕じゃ食べれないから·····」
「拙も食べれないぞ」
リリアにそこら辺の石ころを差し出されたフィーロ君は、苦笑いしながら軽くツッコミを入れた。
ちなみにドワーフは石を消化できる特殊な臓器が体内にあり、そこに石を蓄えて特殊な液体と魔力で溶かすというか分解しながらミネラルを摂取するらしい。
あとドワーフはリリアの髪を見ればわかるけど体から金属や岩石や鉱物を晶出することが可能で、骨格にもリン酸カルシウムだけでなくケイ素やその他金属元素などを多量に含む特殊な体質をしている。
ドワーフの肌が褐色なのは、一説によると皮膚にも岩石から取り込まれた大量の鉄分が含まれて酸化してるかららしく、これは砂漠地帯や火山地帯を好むダークエルフにも同じような現象がみられるらしい。
ちなみにドワーフには磁石がくっつく。
多分褐色の原因は鉄だと思う。
そうだ、今度リリアに頼んで全身を磁石にさせてもらおっと。
理科の実験で釘を磁石にするヤツの要領でやればきっと磁力を持つはずだし。
「さてと、そんじゃ早速たべよー!飲み物は何がいい?」
「僕は麦茶で」
「アタシはNJANUで!」
「拙はしいたけ茶でたのむぞ」
「·····NJANU?」
「あー、なんていうんだ?余った果物をツボん中に入れて放置してできる酒だ」
「あー猿酒····· 果実酒でいい?」
「おう!」
私も聞いたことない言葉が出たけど、どうやらNJANUはいわゆる猿酒、木のくぼみに溜まった果実が自然酵母で醗酵してできる天然のお酒みたいなものだったらしい。
ちなみにドワーフ語だそうだ。
もちろん私なら出せない事もないけど、それよりかは果実酒の方がいいだろう。
って事で私は魔法でリリアが用意した竹を切って作られたコップに緑茶と麦茶と果実酒を注ぎ、早速炊き込みご飯を食べることにした。
「くぁぁああっ!この酒うんめぇな!」
「でしょ?今日はトロピカル風、南国の木の実を入れて水の大半をココナッツジュースにして発酵させたお酒だから美味しいと思うよ」
「でもちょっと酒精が弱いな、これなら水だな!·····水じゃねぇな、フルーツジュースだな!」
「·····アルコール5%なんだけどなぁ、まぁいいや、んじゃ早速オープンっ!」
私は自分の炊き込みご飯の入ったおひつを開けると、ふわっと醤油の香ばしい香りと複数入れたキノコの強い旨味のある香りが漂い、私の食欲を激しく刺激した。
そして私からワンテンポ遅れてリリアが自分のおひつをあけると、今度は同じ醤油の香りが漂ってきたが、そこにはタケノコの香りと共に鳥とカツオと昆布の出汁が効いたような複雑で優しい美味しそうな香りが漂ってきていた。
「「おいしそー·····」」
「「はっ!?いや私の方が美味しそうだっ!!」」
一瞬相手の炊き込みご飯に見とれてたわ·····
くっ、キノコ神拳継承者としてタケノコに目移りするとは·····不覚っ!
でも、私のキノコご飯には松茸だけじゃなくて、いろいろなキノコを入れたり工夫もしているのだっ!
私はしゃもじで3人分の茶碗にご飯をよそいながら、キノコご飯の解説を始めた。
「私のキノコご飯には5種のキノコが入ってるんだ、まず香りの王である松茸、そして旨味の爆弾の椎茸、炊き込みご飯の定番のシメジ、そして裏技で高級な松茸のかさ増しだけど松茸の香りで誤魔化して同化させたたっぷりのエリンギっ!そして栽培が可能になって価値が落ちたけど天然物は舞い上がるほどに美味しく貴重な天然のマイタケ!それとキノコ以外には細切りの人参と若鳥をちょっとゴロっとしたサイズで入れてあるよ!出汁は昆布だけだけど、キノコから十分すぎる旨味が出ることを計算した黄金比の炊き込みご飯よっ!」
「アタシのは昆布とカツオの合わせ出汁にひね鶏の旨味を追加した複合出汁だな!タケノコは程よくシャキシャキになるくらいにして香りがよく出るようにしてあるんだ!ちなみにひね鶏は堅いから小さめにしてあるから喰いやすいはずだぜ!そして!秘密兵器に油揚げだっ!これを入れると一気にタケノコご飯が完成するんだっ! だが!色々やってはいるがこのタケノコご飯はシンプルさを極めた究極のタケノコご飯だ!一口食ったら惚れちまうぜ?」
「·····食べていい?」
「拙、もうお腹ぺこぺこだぞ」
「「どうぞどうぞ」」
「じゃあいただきます」
「「いただきまーす!!」」
長々と話した私たちはようやくご飯を食べ始めた。
私はまずは自分の作ったキノコご飯から食べることにした。
「ん~っ♡ 松茸がいっぱい·····っぽく感じられて口の中が幸せだぁ····· あぁ口の中でキノコ達が暴れまわってる·····」
「んっ、キノコの食感も香りも全部のバランスがいいな····· ちきしょう·····うめぇ·····」
「うん、普通に美味しい」
「さすがは大家族の大黒柱、この頃から料理が上手だったのだな」
「え」
「ぬ?しらんのか」
「知らないけど····· 君、何者なの?」
「うぬらのディメンションルームに住んでる居候だ」
「·····こんな子居たっけ」
「そんじゃ次はタケノコご飯を頂こうかな?もちろん厳しく評価するよ?」
「おう!かかってこいやぁ!!」
次に私はリリアのタケノコご飯を口に入れると·····
「んふっ♡ あっすごっ! 第一印象が『タケノコご飯だぁぁああああっ!!!』って物凄いインパクトだ、素材全部の旨味と香りが引き出されてる····· あぁ、でも食べてるとなじみ深いタケノコご飯になっていく····· 一石二キノコとはまさにこの事か·····」
「う、うめぇ····· アタシこんなの作ってたんだ·····」
「うん、こっちも普通に美味しい」
「タケノコは宗派で食べられないのだ、·····と言いたいが、残したらフェニカやフロウといっしょにあるじに怒られるから食べるぞ、拙は偉いおねえさんだからな」
「·····誰それ?」
「あぁ、これならもう他の料理は何もいらない····· ご飯だけでいい·····」
「そうだなぁ····· マジでうめぇ·····」
その後、私たちはどっちが上かを競う事もなく、ひたすら食事に没頭s·····
「·····肉がたりないかな」
「拙もおもったぞ」
「「あ?」」
「よいしょっと、唐揚げ買っといてよかったっと」
「おー!拙もほしい!たべるたべる」
没頭しようとした瞬間、フィーロ君がマジックバックからアツアツの出来立ての唐揚げを取り出しやがった。
「ま、まさか!フィーロ君それはっ!!」
「お前!お前はまさかっ!」
「「長ネギ神拳の継承者っ!?」」
「·····は?う、うぬはもしや長ネギ神拳の継承者だったのか、に、逃げるが勝ちだ、たすけよ過去のあるじよ」
\しゅばっ!/
「·····なんで?いや普通に買ってきたの出しただけだよ?」
「まさか第三の刺客が混ざっていたとはっ!くぅ、裏切ったのか·····唐揚げよっ!!」
「想定外だ····· あんなの食べたらアタシたちの繊細な炊き込みご飯の味が·····」
「でもからあげ····· じゅるり」
「·····一個食べる?」
「「「食べるっ!!」」」
私は長ネギ神拳の奥義に屈し、禁断の唐揚げを一個受け取ってしまった。
あぁ、キノコの神よ、罪深き私をお許しください·····
ちなみに、唐揚げを食べても炊き込みご飯は普通に美味しかった。
名前:フィーロ
称号:『長ネギ神拳継承者?』
ひと言コメント
「·····あのさ、長ネギ神拳って何?普通にこれ町の屋台で買っておいた唐揚げなんだけど」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あれ?長ネギ神拳の奥義『唐揚げ イン・トゥ・ザ・マウス』だと思ったんだけど違うの?マジか·····偶然にも程があるよ·····」
名前:リリア
ひと言コメント
「あぁ、長ネギ神拳の奴らの策に嵌められたのかと思ったぜ····· アイツら過激派だからな····· あぁあの長くて白いスラッとしたフォルムを思い出すだけで震えが止まらねぇ·····」
名前:????
ひと言コメント
「長ネギはだめだぞ、じごうじとくでカゼ引いたらお尻にさされるからな」
名前:もう一回フィーロ
ひと言コメント
「だからなんで長ネギなの?というかなんでそんなに長ネギを怖がってるの?もう本当に意味わかんない····· もういいや、無視して炊き込みご飯と唐揚げ堪能しよ····· ついでにマヨネーズも·····」
「「まさかマヨラーか!?」」
「だからっ!僕はナントカ神拳なんて知らな·····ッッッ!! いや今のは普通のツッコミかぁ····· あぁ、もう、疲れる、誰か助けて·····」




