披露宴は疲労もマシマシで
私たちが豪華なディナーを楽しんでいると、新郎新婦のウナちゃん夫婦が私たちの元までやって来た。
何の用なんだろ?
·····わかったそういう事かッ!!
「·····パセリはあげないよ?」
「もー、パセリはソフィちゃんくらいしか食べないじゃん!ていうかいつも勝手に取って食べてるじゃん····· それにご飯目的じゃないよ!挨拶に来たんだよ!」
「あっそっちね」
てっきり私の作った至高のワンプレートと大切なパセリを奪いに来たのかと思ったよ·····
そういえばさっきからウナちゃん達が席に出向いて挨拶しに回ってたな。
そーゆーことね、なるほど納得。
「·····とりあえず祝福した方がいい?」
「した方がいいんじゃない?さんざんやったけど」
「うん、一応一番偉い人が座る場所に居るわけだし、やった方がいいと思うよ」
「当たり前よ、新郎新婦を無視して食事なんてあり得ないわよ?それ以前になぜそういう選択肢が浮かぶのよ·····」
「ん、おめでと」
「やさい食べるー?」
「·····貴女達、もう一度私の学校に入学するべきかしら?今度はAクラスがいいかしらね?」
「うわヤバッ、とりあえずウナちゃん、イルミア君、結婚おめでとう、これご祝儀ね」
流石にちょっとノリが軽すぎたのか、校長先生が怒り気味に『お嬢様クラスでマナーを学べ』と言ってきたから、私も真面目に2人に祝いの言葉とご祝儀袋を渡し·····
\ゴッ!!/
「旱芹菜ッ!??」
「あっ、久しぶりに変な断末魔出た」
私は校長先生に目にもとまらぬ神速のゲンコツを喰らって机に臥した。
なんで殴られたん·····
「あのねぇ····· ご祝儀の桁を間違えてるわよ?」
「い、いや流石にご祝儀に1億円は多すぎますって····· 私でもちょっと厳しいですよ?」
「なんで貴女は何かものをあげる時いっつもいっつも桁が上がってるのよ····· 1つか2つくらい下げなさい?」
「えっ、王族の結婚式のご祝儀ってそんなもんで良かったんですか?」
私は頭にできたタンコブをむりやり引っ込めながら、イルミア君が引きつった顔で持っている横幅と縦幅が正方形なご祝儀袋を見た。
うーん·····
王族の結婚っていうから5千万でも足りるか不安だったけど、多すぎたとは·····
50万円くらいでよかったのかな?
「3桁下げなさい」
「えっ?5万でいいんだ····· まぁ二人のお小遣いにしていいよ、そのくらいなら1週間あれば軽く稼げるから」
「そ、そんなになんですか·····?」
「イル君、ソフィちゃんは規格外だから気にしなくていいよ」
「ぴえん·····」
◇
その後ウナちゃん達は校長先生にも挨拶して、今度は私たちの後ろの列、侯爵の席の方に挨拶回りに行ってしまったので、私たちは引き続きご飯を楽しんでいた。
「いやーやっぱり美味しいねぇ····· 美味しすぎて無限に食べれちゃうわぁ」
「·····ソフィちゃんは食べ過ぎよ? お腹膨らみ過ぎて妊婦みたいになってるじゃない」
「えー?まだまだいけますよ!」
「ワシもなのじゃ」
「ワタシも全然いける!」
私とエビちゃんは盛りに盛りまくったディナーのブッフェの料理をたらふく食べていて、既にお腹がぽんぽんに膨れている。
でもまだ全然食べれちゃうのよね。
まぁ今日はドレスを着てるせいでちょっとお腹がキツくて沢山は食べれないかもだけどねっ☆
でもそこはノープロブレムっ!
「食った端から消化してエネルギーに変えちゃえばいいんですよ!」
「うむ、この程度の量なら10分で腹ペコなのじゃ」
「わかるー!特に今の状態になってからすっごくお腹空いちゃうから全然足りない!」
「貴女達ねぇ·····」
そう、私たちはめちゃくちゃ燃費が悪いが故に燃料を大量に食べてそれで瞬発的なパワーを稼ぐことができるのだ。
アルムちゃんは以前まではそんなに食べない子だったのだけど、勇者に覚醒してから沢山食べないと全力全開で動けなくなってしまい、今では私たちと同じくらい食べれるようになってしまったのだ。
ちなみにカロリーも脂肪も糖もすぐにエネルギーに変えて消費するからどれだけ食っても太らなくなってしまっている。
あとあと、私とエビちゃんに関しては全力で動く時は消費エネルギーを魔力に切り替えることで長時間持続することができる。
正確には、消化によって生まれたエネルギーを魔力で増幅することで少ない量のご飯でも猛烈に長時間動けるという仕組みだから魔力だけで生きて行けるわけではない。
·····まぁ、神化すると肉体が魔力に置き換わるから魔力だけで食事とエネルギーを得る事ができるんだけどね。
でも今は人間の体だからお腹は空くし、魔法でエネルギーを消費して無理やりお腹を空かせて沢山食べれるから問題ない。
あとアルムちゃんは勇者のあの力強さを引き出すためには莫大なカロリーを消費する必要があるみたいで、それを使えば常にお腹ペコペコ状態になれるとか。
まぁ、グダグダ長く喋ったけどひと言でいうなら·····
「「「無限に王宮料理人の料理が食べれるっ!!!」」」
「·····やめなさい、無くなり次第追加で作ってるとはいえ、他の来賓の方の分はちゃんと残しなさい」
「「「えー?」」」
「や め な さ い」
「「「はーい·····」」」
ちっ、沢山食ってやろうって思ったのに·····
校長先生に止められたら流石に無理やりやるわけにはいかないしなぁ·····
だって校長先生、怒ったらめっちゃ怖いんだもん。
神の私でさえ怖くて逆らえない最強の説教の鬼なのよ·····
◇
結局、校長先生に止められてお皿に乗ってる食材を食べつくした後は、おかわりは常識の範囲内に収まる程度の量しか食べなかった。
·····それでもブッフェの料理が足りなくなって、しかもめっちゃおいしくてお代わりしようとしていた牛頬肉の赤ワイン煮とか私の大好物ばっかりなくなるもんだから、急遽私が厨房に立ってレシピを教えてもらいながら爆速で、たった1分で不足した料理を完成させる神技を披露し、赤ワイン煮を無事に食べることができたりした。
あと開始1時間くらいしたら私が披露宴用に国に献上したリヴァイアサンのステーキが配られてプロの焼きで舌鼓をうったり、ワインの飲み過ぎでちょっと酔ってヤバくなって急いで酔い覚ましの魔法を掛けたりと色々あった。
そして·····
「疲れた····· ねむ·····」
「大丈夫?」
「ちょっと大丈夫じゃない····· 今日忙しかった·····」
料理を5kg近く平らげた私はようやく満腹になり····· 正確には満腹中枢が白旗をあげて限界を迎え、これ以上食べられなくなり食欲が満たされると、急に激しい睡眠欲に襲われたのだ。
そりゃお腹いっぱいになったところに、ウナちゃんの護衛や結婚式と披露宴の警備、更に急遽料理をしたりという昼間の疲れがどっと押し寄せたらさすがの私でも眠気が限界になるに決まってる。
私は三大欲求に正直な女の子なのよ·····
えっ?性欲はどうなんだって?
疲れすぎて0よ·····
今はとにかくめちゃんこ眠いのよ·····
「ソフィちゃん?いくら貴女といえど流石に王族の披露宴で寝たらダメよ?」
「わかってますよ····· 親友の披露宴でそんなことしませんって·····」
「·····意外ね」
「ああん?私だって礼節くらいわきまえてますって·····」
誰が失礼な事しかしない女じゃい。
「ところで、この後の予定ってどうなってましたっけ?ケーキ入刀とかありました?」
「ないわよ? 本当はそういう文化も作りたかったのだけど、流石に贅沢過ぎるし衛生面も良くないからやめにしたのよ」
「ほほー?·····ってことは、もうすぐ終わりです?」
「まだあと45分はあるわよ?」
「ぴえん····· ちょっと夜風に当たってきます·····」
「あっ僕もついて行ってきます」
「行ってらっしゃい、抜け出して寝るんじゃないわよ」
「わーかってますって、ミカちゃんじゃあるまいし·····」
「んぅ、ひどくない·····?」
私は眠気覚ましも兼ねて、私たちの席とは真逆の右側の壁沿いにある、昼間演説したのとは別のバルコニーへと向かった。
◇
バルコニーに出ると、披露宴会場の喧騒が遠ざかって急に静かになり、空には日本の都会じゃ絶対に見れないような星空が広がっていた。
そして、まだ冬を抜けきっていないのか突き刺すような寒い空気がドレスを貫通して私の柔肌に突き刺さり、酔いと満腹と眠気でポカポカしていた私の体を一気に冷やした。
「あー涼しい····· いやちょっと寒いかも」
「やっぱり言うと思った、僕の上着掛けとくよ」
「あっ、ありがとう·····」
流石に春とはいえ夜はまだ冷えて寒く、半そでのドレスではちょっと厳しかった。
でもフィーロ君が燕尾服の上着を掛けてくれて随分あったかくなった。
そして私はバルコニーの手すりに寄り掛かると、ほっと一息ついた。
「あー今日は疲れた·····」
「·····正直、僕も疲れたかな」
「おっ、フィーロ君も?」
「うん、流石に貴族様が沢山集まる場所に居ると緊張して疲れちゃった」
「だよねー·····」
明るい披露宴会場の中を見ると、色々な爵位の貴族が集まり、爵位をあまり気にせず談笑をしているのが見えた。
·····まぁ、政治とか金とかそういう裏のある話をしてる人も半分以上いて、ある意味貴族のパーティーらしい感じになってるかな?
私たちは貴族並みの権限を持つ上級冒険者であり、一部の子は貴族の令嬢や王族の子、更には伝説の魔王さえも居るけど、見た目はただの子供で政治にもかかわる気のない場違いな存在だ。
「そういえば、パーティーを抜け出してこういう暗い夜のバルコニーでイチャイチャするの夢だったんだ、まさか本当にできるとは思ってなかったなぁ」
「よかったね、憧れがかなって」
「うんうん、·····フィーロ君、私さ、まだ憧れてるシチュエーションあるんだけど」
「何?」
「んふふ····· フシ町の教会でさ、純白のウェディングドレスを身に纏って、フィーロ君と永遠の愛を誓うっていうシチュエーションなんだけど·····」
「·····結婚式だよね?」
「大正解っ!」
「僕もソフィちゃんと同じかな」
「んふふふ、でさ、ウナちゃんの結婚式を見てさ、やっぱり私も早く結婚式したいなぁって思ったんだ」
·····結婚式も後回しって考えてたけど、ウナちゃんの結婚式を見たら私も式を挙げたくなっちゃった。
やっぱり、好きな人とちゃんと結ばれるのっていいなぁってさ·····
「そっか、じゃあ早いところ式場を予約したりドレスの準備とかもしないとね」
「うんうん、でさ、いつ頃がいい?私は6月がいいなって思ってるんだけど·····」
「なんで?·····前世の風習だったっけ?」
「そうそう、ジューンブライドね、やっぱり結婚と言えばって思ってさ····· それかどっちかの誕生日もいいなって思ってるんだけど·····」
「どっちにせよ、2か月は時間があるって事かな」
「そうそう、逆に言えば2か月しかないって事だからさ?早く決めて準備しちゃわない?」
「·····うん、そうだね」
「よし!んじゃ日付決めちゃおう!·····って言っても、会場を使えるかは教会の人に聞かないと·····」
「あーそっか、でも別にフシ町にそんな風習なかったし、いつでも大丈夫じゃないかな?」
「·····確かにっ!」
よく考えたらジューンブライドっていう概念はこの世界に無いから6月の結婚式の予約を取り合うなんてことないわ。
まぁ、フシ町の教会は月1回くらいのペースで結婚式をやってるから予約が重なる可能性もあるし、ちゃんと聞きに行くのが吉だろう。
「とりあえず6月中に結婚式を挙げるってことでいい?」
「もちろん」
「んふふ·····んじゃ帰ったら早速予約しに行かないとね」
よし、結婚式を挙げるって決まったからには頑張らないと!!
頑張るぞーっ!!
っと、その前に。
「フィーロ君、改めて言います、私の夫になってくれませんか?·····いや、私を奥さんにしてください」
「こちらこそ、夫として、ソフィちゃ····· 最愛の妻であるソフィの事を精一杯守ってみせます」
「んふふ····· 呼び捨ては結婚してからにしよ?まだ今は恋人同士だからさ?」
「あっ、そうだね····· そうだ、結婚した後の呼び方も考えなきゃだね」
「何がいい?『アナタ』?『フィーロ』?『ダーリン』?私は何でもいいよ、フィーロくんが呼ばれたいのでいいからね」
「それは結婚してからのおたのしみ、でしょ?」
「うわ言い返されたっ!んへへ、なかなかフィーロくんもやるようになったじゃん」
「そりゃ毎日ソフィちゃんにツッコミしてたら慣れちゃったからね」
「あちゃー、もっといいネタ考えなきゃかぁ····· 次は夫婦漫才なんてどう?」
「あはは····· もう夫婦漫才って陰で言われてるけどね、ほら特にあそこで見てる僕たちの親友とか」
「うひゃんっ!?えっ、みんないつ来てたの?」
フィーロ君が指さした方を見ると、バルコニーの入り口からウナちゃんを除くなかよし組のみんなが私たちの事を見ていた。
「バレちゃったかー、ソフィちゃんが結婚式の話をし始めたあたりからだよ!いやーワタシでも口の中甘々になるくらいの見事な夫婦漫才だったね」
「そうね、こっちにまで甘々な雰囲気が伝わってたわよ?」
「ワシもそろそろ結婚式を考えぬといけぬのぅ····· よし、ワシもラクトとそこで相談するのじゃ」
「ん、そこ寒い?寝る場所ある?寝てもバレない?」
「ママたち結婚するの?おめでとー!」
「あちゃー、見られちゃってたかー、とりあえずみんなも結婚式には招待するよ」
「やっとなのね····· 今丁度貴女の両親も居る事だしちゃんと伝えるのよ?」
「わかってる分ってる、あとここ寒いからちゃんと中で寝·····ちゃダメだよ?家帰ってから寝てね?」
「ん·····」
「あとチェルもありがと、エビちゃんは·····もうお兄ちゃんの所いったか、そんじゃ私とフィーロ君はもうちょい話したいから先戻っておいて?」
『『はーい』』
「あーいい加減ワタシも女の子だけじゃなくて男の子も狙わなきゃなー、それじゃワタシは戻るね、2人も早めに戻ってきなよ?」
「そうね、体が冷えるのは良くないわよ、·····私も本格的に婚活するかしらね」
「はいはーい、2人も頑張ってねー····· さてとフィーロ君、話の続きしよっか」
「うん、でももう結構冷えてきたし、早めに決めちゃおっか」
「はーい、とりあえず····· フィーロ君、必ず結婚しようね」
「もちろんだよ、これからは恋人同士じゃなくて、夫婦になろうね」
私はまだまだ冬の気配を感じる異世界····· 今の私にとっての現実世界の寒空の下で、フィーロ君と夫婦になる事を誓ったのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「んへへ、ちょっと眠くて思考能力落ちてるのかも、でも言いたかったこと言えたからいいや、それにすごく幸せだし····· んふふ·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「ソフィちゃんとの結婚生活かぁ····· ····· ·····うん、今とそんなに変わらない気がしてきた、でもきっと今よりもっと幸せだと思う」
名前:アルム
ひと言コメント
「女の子って中々ゲット出来ないんだよねー、男ならいくらでも来るんだけど、みんなコレ目当てだしなぁ·····」バルンッ!
ソフィ「ちっ·····」
エビ「巨乳め·····」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「やっぱり一度クロベに帰るべきかしらね·····」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「結婚は良いよー、すっごく幸せだよー!」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
(ラクトと結婚式の相談中なのでありません)
名前:ミカちゃん
ひと言コメント
「結婚式よりベッドほしい、王城の極フワベッドほしい」
名前:チェル
ひと言コメント
「パパとママがけっこんしたら本当にパパとママがパパとママになるんだよね!おめでとー!!」




