四人目のウナちゃん
ウナちゃんの発光が収まり、地面へと落下したウナちゃんは花婿のイルミア君がキャッチしたことで怪我をすることなく地面に降りる事に成功した。
それを確認した私は、ウナちゃんの後を追って地面へと降り立った。
「イルミア君、ウナちゃんの様子は?」
「·····髪が真っ白になったまま戻らないし、揺すっても起きないです」
「うーん····· ちょいまち、今健診するからちょっとだけ時間頂戴」
「うん·····」
さーてと、この惨状を何とかしなきゃな。
ウナちゃんの覚醒で結婚式場も式場周辺もメチャクチャになっちゃったから、彼女が目を覚ましても結婚式は延期になっちゃうか最悪中止、なんとか行えても大雑把な感じで終わってしまうだろう。
だから、今ここでウナちゃんへの結婚祝いを私から贈るとしよう。
「ふぅ····· まずは『須臾』アンド『神化』っ!そして『Trinity』ッ!!!『泡沫ムゲンの眠り姫』『創世魔法』『消滅魔法』を『TS賢者は今日も逝くっ!』に合体進化!」
その瞬間、時間が停止し、私の背中から光の翼が出現して頭上には光環が回り始めた。
泡沫ムゲンの眠り姫は『世界を改変する力』
創世魔法は『世界を創る力』
消滅魔法は『世界を消す力』
この3つを私のアカシックレコードの3つの魂に割り当て、魂を一時的に一つに合体させることで発動する私自身の神としての力·····
違う、これは本来あるべき私の力。
世界そのものを過去未来現在すべてを書き換える禁断の神の力だ。
書き換える事しかできない泡沫ムゲンの眠り姫よりも、モノを創る事しかできない創世魔法よりも、モノを消し飛ばす消滅魔法よりも、圧倒的な力を持つ。
今日は全力全開じゃないし、あくまでも副次的効果で本来の使い道は別にあるっぽいけど、使える者は使ってしまおう。
·····当然、代償が無いわけがない。
この能力を使っている間、私は一度でも死ぬと生き返ることなく死亡する。
そりゃ普段は3つに分裂して一度死んで一つの魂が砕けても他二つ自己再生を行う事で魂を保持してるから·····
まって、だとすると本当なら2回しか死ねないんじゃ?
·····あーなるほど、3回死んだ4生目は魂の断片を集めて機能を保持するのね。
なるほどなるほど·····
って違う、今はそれは重要な事じゃない。
つまり、この力を使っている間は3つに分裂していた魂が一つになっているから1度でも死ねば私は本当に死んでしまうという事なのだ。
だから、私はなるべくこの力を使いたくなかった。
でも、使わないのも勿体ないし、今が使うべき時だろう。
「いくよ····· 改変っ!!!」
◇
えーっと、まずは今起きたことを記憶している人物の指定と時間指定っと·····
確か発生時刻は午前11時14分21秒7183(以下四捨五入)だから11時14分以降の記憶を全面カットする感じかな。
で、ええと····· 見ていた人は·····
あーダメだこりゃ、巨大な光の少女が成層圏を超えて宇宙にまで達してるわ。
多分惑星の裏側とかじゃなかったらほぼ人類全員見えてるわ。
そんじゃ指定は人類全員で、ブラックリスト登録で私、アルムちゃん、フィーロ君、グラちゃん、ウナちゃん、エビちゃん、ミカちゃん、チェル、イルミア君を指定する感じで記憶を改竄っと。
あとは衝撃で吹き飛んだ椅子とか周囲の被害とかを全部なかった事にしちゃって、立ち上がってる人とか驚いてこけた人とかも11時14分時点の位置に巻き戻してっと。
こんなもんかな?
あー光の精霊忘れてた、どーしよっかな、ウナちゃんに取り込まれてるし·····
·····まぁいいや、放置で。
いやまてよ?
ここは『ウナちゃんが光の大精霊に気に入られて守護精霊になった』って事にしちゃえばつじつまが合うじゃん!
んじゃ世界の時間を11時15分に改竄、その間の記憶をでっちあげて·····
光の大精霊さんのセリフは
『ウナ・ウェア・ラ・サークレット、私は汝を気に入った、守護精霊として汝を見守ろう』
でいっかな?
よし!んじゃこれとさっき見た光の大精霊さんのイメージを記憶が改竄された参列者の脳にインプットして偽造してっと·····
こんなもんかな?
よし、んじゃ『TS賢者は今日も逝くっ!』解除っと。
◇
っと危ない危ない、まだ終わってないことあったんだった。
私は世界を編集し終わった後、まだ起き上がらず倒れているウナちゃんの元へと駆け付けた。
ちなみに既に世界の編集が終わっていて、今は再び世界が動き出し始めているから、そのうち倒れているウナちゃんとそれを見守っているイルミア君と私を見て観客がザワついてしまうだろう。
ってことで!またしても普段使わない能力を発動っと!
「時は金なり増やせば大富豪っ!『アディショナルタイム』っ!!」
この魔法はちょっと面白い効果があって、ある時間の間に私しか感じられない追加の時間を差し込むことができるのだ。
わかりやすく言うと、Y○uTubeで動画を見てると邪魔な広告が入るでしょ?あれって見ていた動画の時間の隙間、例えば1分30秒と1分31秒の間に広告が挟まると最低でも5秒が追加されて、その間は本来の時間の流れが止まっているわけでしょ?
あっ最近のクソすぎる15秒×2回広告のクレームは受け付けてないです、Go〇gleのカスタマーサポートにお願いします。
この『アディショナルタイム』はいわば広告の時間、たった1秒以内のごくわずかな時間に私しか知覚できない空白の時間を生成する魔法なのだ。
今回は私が解除するまで空白の時間を追加する設定にしてあって、対象者にウナちゃんを含めている。
「·····さてと、ウナちゃん、起きて」
「んん····· あれ?ここどこ?」
私がウナちゃんを揺すって起こすと、ウナちゃんはアッサリと目を覚ました。
「私が創った時間の中だね、で、精霊を取り込んだ感覚はどう?」
「うーん····· ちょっと待ってね·····」
起き上がったウナちゃんは再び目を閉じて集中し始めた。
すると髪色が白一色だったウナちゃんと、いつも通りの白黒のウナちゃんの二人に分裂した。
「おー、やっぱり分離できるんだ」
「できた!」
「もうやだぁ····· おうち帰りたいぃ·····」
「·····白い方のウナちゃん大丈夫?大分ヤバそうだけど?」
「えっ?あっサーちゃん大丈夫!?」
「もうやだぁ!!うえーんっ!!」
分裂した白い方のウナちゃんこと『サーちゃん』は突如その場に頽れ、わんわん泣き始めてしまった。
「だ、大丈夫です·····?」
「誰のせいだとおもってるの!?アンタが無理やり魔力を大量に込めたせいで取り込まれて召喚に応じざるを得なくなって····· うえええええんっっっ!!!」
「えっ?私のせい?」
「·····ソフィちゃん?」
「わ、私悪くないもん」
「悪いわこのクソっ!!」
「ぴゃんっ!!」
怒ったり泣いたり落ち込んだりで情緒不安定なサーちゃんが光の速度でぶん殴ってきた。
そしたら当然だけど顔面どころか上半身が消し飛んだ。
これで『光の速度で殴られたことはあるかぃ?』って言われても堂々とありまぁす!って言えるね☆
「サーちゃ~ん?」
「だいたいなんなの!?勝手に取り込んで····· 私は光の大精霊サークレットよ!····· えっ?いや、私の名前はサークレット·····違う、私はサークレットなんて名前じゃない!どうして!?私の本当の名前がいえないの!?」
「えっ?だってサーちゃんはサーちゃんでしょ?」
·····およ?
なんか上半身の再生中に事態がこんがらがってる?
サーちゃんがウナちゃんに取り込まれて本来の名を失ってこんがらがってるのかな?
まぁ、だってそりゃ混沌の神でさえ取り込んで強制的に『ラーちゃん』にしてしまうほどの力だもんねぇ、ラーちゃんはギリギリ自分の名を失わないで神格を維持できたけど、光の大精霊程度だと下手したら完全にウナちゃん化する可能性もあるからねぇ·····
「違う!私は、私は····· そこの召喚したヤツ!私の名前覚えてないの!?」
「えっ?私?」
「そうよ!助けてよ!どうにかしなさい!聖地に案内するから!」
「·····んふふ、サークレットだよ」
「あああああああああああああああああああああっ!!!違う違う違う違う違う違う違う!!!」
あーもうダメだこりゃ、完全におかしくなってるわ。
「私、わたしの名前はサークレットなんかじゃないもん!本当の名前があったはずだもん!」
「サーちゃん、もうあきらめてわたしになってよ」
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!」
·····違う、おかしくなってるんじゃない、どんどんウナちゃんに侵食されていってるんだ。
なんか可哀そうだしちょっとだけ自我が、『光の大精霊ルミナリア』としての精神が残るようアドバイスでもしてあげよっかな。
「ウナちゃんちょっとこの人と話していい?」
「いいよー」
「おけおけ、んじゃ·····」
「なによ!わたしをたすけてよ!」
「あー、もう残念だけど助からないよ」
「どういうこと!?いいから、なんとかしてぇ!!」
「·····もう助からないけど、抵抗ならできるはずですよ?精神の大半はウナちゃんに侵食されますけど、根底の部分だけだったら貴女の力を一点に収束すれば保持できますよ、今ならまだギリギリ自我を残すことができますけど、やってみません?」
「なんでよ!!たすけてぇっ!!」
「·····光の大精霊ルミナリア、貴女はもうサークレットという名になりましたけど、今なら抵抗をすれば名前が変わって思考が少し変化する程度で済みますよ」
「·····るみなりあ?るみなりあ·····るみなりあ····· そうよ、わたしの本当の名前は『ルミナリア』よ!」
ウナちゃんの魂の浸食は一応だけど対応策がある。
一度取り込まれたらもう戻ることは不可能だけど、戻ろうとせず抵抗をし続ければ根底を残すことは可能となっているのだ。
例として、まだ稼働していなかった魂の仮称『ウェア』ちゃんはウナちゃんの浸食を抵抗する事ができずに完全にウナちゃんになってしまった。
だが、次に取り込まれたラーちゃんこと『ナイアルラトホテップ』は喰われた瞬間己の運命を悟り、『何者でもなく何者でもないが故に何者にでもなれる』という自身の力を本気で使用し、無限の貌を持つナイアルラトホテップという現象の本体を『ラーちゃん』にすることで、『ナイアルラトホテップ=ラーちゃん』という因果関係を完成させて固定化、自己を保持することに成功したのだ。
それでもかなり浸食されてしまったらしく、通常の人間如きでは知覚できない『ナイアルラトホテップ』の本体がかなりウナちゃん化してしまって大変らしい。
ちなみに私たちの前に現れる『ラーちゃん』がナイアルラトホテップの本体らしい。
この前絶淵都市の酒場で『無限の貌を持つのに本体のデフォルトがこの姿に固定されたら闇の大精霊失格だよぉ·····』って度数の高い酒を飲みまくりながら嘆いて愚痴を言いまくってた。
もちろん私もナイアルラトホテップの主だから酒の席に付き合って愚痴を聞いてあげたけど、結構大変みたいだ。
でもウナちゃんと同化しているこの生活も悪くはないらしく、早めのレジストのお陰で呼び出された時以外は自由気ままにできるから結構楽しめているそうだ。
本人も混沌で予測できないことが大好きだから、全く予想できなかったカオスな事態に巻き込まれて楽しそうにしてたし。
·····って事で、本気で抵抗すれば多少なりとも自我は保てるはずだとアドバイスしてあげた。
アドバイスというか、名前を知りたがってたから教えてあげた。
「光の大精霊ルミナリアの名において、必ず取り戻してみせるわ、はぁぁぁあああっ!」
「ちょっとソフィちゃん~」
「大丈夫、多分無理だから」
光の大精霊元ルミナリアは全身全霊で魔力を集中させ、自らを取り戻すために頑張っていた。
だが、どんどんウナちゃんの浸食は進んでしまい·····
ぽんっ☆
「やった!サーちゃん完成っ!」
「だめだった····· うっうっ·····」
「やっぱりぃ·····」
「ふ、うふふ、うふあはははははははっ!!ざまぁみろ!!あーおっかし!!最高に混沌としてるわ!!美味しい感情、ありがとうね『サーちゃん』?」
こうして、光の大精霊ルミナリアはウナちゃんに取り込まれ、サークレットという名へと、『サーちゃん』というあだ名の真っ白いウナちゃんへと変化してしまった。
それと光の大精霊も取り込まれてご満悦の御様子で煽り散らかしてるラーちゃんには校長先生直伝のゲンコツを喰らわせて黙らせておいた。
◇
って事で、私とウナちゃん(ウェアちゃん)とサーちゃんは3人で会議を開いていた。
床で伸びてるラーちゃんは数には含めてない。
「えーっと、まずサーちゃんはどこまでウナちゃんになった?」
「んーとね、ラーちゃんよりはわたしになったかな?」
「·····うん」
「ってことは能力はウナちゃん+サーちゃんで、精神はウナちゃんにかなり上書きされたサーちゃんってかんじ?」
「そうそう、完璧にわたしじゃないけどほとんどわたしって感じだよ!」
「奥底はまだルミナリアが残ってるからね、わたしは光の大精霊ルミナリアだから·····」
「もー!だからサーちゃんって言ってるじゃん!」
「嫌だよ!わたしはルミナリアだもん!」
あーもう、ウナちゃん同士がケンカし始めた·····
サーちゃんはまだウナちゃん化を認めてられてないっぽくて呼ばれるのを嫌がってるみたいだ。
「·····そうだ、ルミナリアさん」
「なに?」
「名前、『ルミナリア・サークレット』って名乗るのはどうです?それでウナちゃんの守護精霊になったっていう感じにしたらどうです?」
「·····妙案ね!わかったわ、わたしは貴女の守護精霊になって『ルミナリア・サークレット』を名乗る、これならわたしは『ルミアナリア』だけど『サーちゃん』と呼ばれても問題ないわ!どう?どうかしら?どうかな?」
「うーん·····」
「いいんじゃない?精霊を自分の物にした上に更に精霊と契約まで結べるんだからかなりいいと思うよ」
「わかった、じゃあサーちゃん、よろしくね」
「うんっ」
よし、予定調和っと。
確かさっき改変した内容は光の大精霊ルミナリアがウナちゃんと契約を交わして守護精霊になるって感じだったから、これでつじつまが合うはずだ。
んじゃ追加でルミナリアさんが降臨した時点で姿がウナちゃんになってたと参列者の認識を書き換えて····· よしOK!じゃああとは『アディショナルタイム』を解除して元通りの結婚式を行うだけでいいはずだ。
「って事でウナちゃん、そろそろ時を元に戻すけど、戻ったら精霊への結婚報告と祝福が終わって次の場面だから気を付けてね」
「えーっと、次何だっけ····· そうだ、誓約と指輪交換だ!」
「おー、頑張ってね!·····というかよくセリフとか覚えてられるよね、やっぱりさすがは王族だなぁ·····」
「えーっと····· 実は裏でラーちゃんが台本を見てて、記憶の共有でわたしもみながらやってるんだ、ホントは殆ど覚えてないよ!」
「えぇ·····」
ウナちゃんは今までミスひとつなく結婚式を進められてたから記憶力とか凄いなぁって思ってたけど、どうやら裏でもう一人のウナちゃんがバッチリカンニングしていたらしい。
まぁそりゃカンペなしでなんてふつうは無理よね!
「じつはイル君は全部覚えてるよ!」
「·····マジで?」
ウナちゃんの彼氏くんヤバっ·····
◇
その後、白色のウナちゃんことサーちゃんはウナちゃんの中に戻り、私も『アディショナルタイム』を解除して通常の時間の流れに戻すと、予定通りに結婚式が再開した。
ちなみに私の力で世界を書き換えたおかげで私たち以外は誰もウナちゃんの変化に気が付くことも無く、あの校長先生でさえ『まさか精霊と契約するとは·····』みたいなことを言ってて見事にだまされていた。
そして·····
「新郎新婦、誓いの言葉を」
「「はい」」
結婚式のメインイベントが始まる·····っ!!
名前:ウナ・ウェア・ラ・サークレット
ひと言コメント
ウナちゃん
「これで四人目!もうこれ以上はいらないかな?」
ウェアちゃん
「う~····· セリフをカンニングしてても緊張する·····」
ラーちゃん
「ええと?次のセリフは····· ここだったかな? 全く、絶淵の混沌神がカンニング役とは堕ちたモノね····· ふっ·····」
サーちゃん
「もうどうにでもなぁれ、聖地には帰れるみたいだしもうどうでもいいやぁ~」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「あー大変だった、もう何も起きなければいいんだけどなぁ····· 起きるよなぁ·····絶対」




