結婚生活、その始まりの儀式
しばらく待っていると、聖堂内の横のドアが開いて聖衣を纏って分厚い聖書·····じゃないな、魔導書らしき本を持った神父が出てきて、聖壇にやってくると拡声の魔道具の調子をテストしたあと喋り始めた。
「本日はお忙しい中、また遠方の国々より『ウナ・ウェア・ラ・サークレット王女』と『イルミア・レ・キルン』との結婚式にご列席いただきまして誠にありがとうございます、ただいまより新郎新婦が入場いたします、正面入り口にご注目し、どうぞ盛大な拍手でお迎えください」
·····まって、聖衣じゃない、なんていうんだっけ神父さんが身に着けてるサークレット教様式の本格的な儀式とかに使う衣装の名前。
ヤバいこっちのモノだからネット検索じゃ出てこない·····
Fonmeralde Zec Vicm Galvikmってなんて翻訳すりゃいいんだ·····
直訳すると『聖なる光を受けた布で織られた聖職者の為に捧ぐ衣』みたいな感じなんだけど、長すぎるし上手い翻訳が思いつかない·····
ええい!聖衣と書いて聖衣でいいや!
私たちは神父の言葉に従って席から立ち上がると、入り口の方を向いて拍手をした。
そして、正面入り口の扉が開き·····
·····見えん。
私たちは最前列だったせいで後ろにいた大人たちが邪魔になって全くウナちゃんとイルミア君が見えなかった。
多分身長167cmのアルムちゃんならギリ見えてるんじゃないかな?
私は152cmだから見えないけど。
まぁ私は千里眼で真正面から撮影したりしてたから見えてるけど、肉眼では確認できなかった。
んで、まずは新郎のイルミア君が入ってくるとまっすぐ聖壇の方へと向かい、聖壇前の所定の位置につくと入口の方へと振り返った。
そしてそのあと、今日の主役が現れた。
「·····きた、ウナちゃんだ」
ウナちゃんは純白のヴェールに包まれ、父親である王太子インディ・クリス・ラ・サークレットと腕を組んでヴァージンロードをゆっくりと歩み始めた。
ちなみに私はベストショットを探して千里眼で撮影とこの空間を三次元データとして取り込んで後から再現して再撮影できるようにしたりとカメラマンに徹している。
いやー、いいねぇウェディングドレスって·····
すっごい綺麗だわ·····
いいなぁ、私もウェディングドレス着たいなぁ·····
なんて見惚れてる間にもウナちゃんはゆっくりと新郎のイルミア君の元へと歩み寄って、そこでウナちゃんの父親から新郎へと腕を組みかえて、新郎新婦が共に聖壇の前へと歩んで行った。
◇
新郎新婦が聖壇の前に到着すると、司会も兼任する神父さんが開式宣言を読み上げた。
「それではこれより、イルミア・レ・キルンとウナ・ウェア・ラ・サークレットの結婚式を始める」
そして次に始まったのは、えーと·····
教会で歌う神へ捧げる歌というか、校歌の教会&宗教バージョンというか·····
なんて言うんだ?
私は日本式のとりあえず宗教関係なくイベントの恩恵にあやかっちゃう派だったからわかんないわ·····
だっておせちを探しに来たのにクリスマスを過ぎて安くなったケーキを買ちゃっておせちケーキを持ったまま除夜の鐘を突きにお寺に行って朝に初詣に神社に行く男だったのよ?
わかるわけないじゃん·····
·····あっ、讃美歌か。
私は何とか名前を思い出したサークレット教の讃美歌をうろ覚えの歌詞を思い出しながら歌った。
讃美歌はいいねぇ、なんか世界の終末感がして。
これって私だけかな?
◇
讃美歌を歌い終わると参列者は着席するよう促され、新郎新婦の紹介が始まった。
·····そしてこれが結構長い。
大分簡潔にまとめられてたけど、それでも二人合わせて10分くらい掛かっていた。
途中ウナちゃんが足が疲れたのか痛そうにしてたから魔法で何時間でも立ってられるように疲労回復と強化を施してあげたりした。
もちろんイルミア君にも掛けてあげた。
んで内容だけど、ウナちゃんの情報はもう全部聞いたことがあったからカットするとして、イルミア君の話は結構面白かった。
イルミア君の家が治める土地はキルン町といって、フシ町と同じで鉱業が盛んな町だそうだ。
だが沿岸部と山の間にある狭い平野に作られた町という事もあって鉱業だけでなく採れた金属資源を運ぶための海運の要所にもなっており、なおかつ採れた金属資源を精錬するために工業も発達した街だそうだ。
ちなみにキルン町の主力鉱物は鉄鉱石で、鉄鉱石の産出量だけならフシ町を圧倒的に上回る恐ろしい量が採掘されている。
あとは鉄系の魔物が大量に表れるダンジョンもあるらしく、そっちの採掘量も桁違いに多いとかなんとか。
·····ここで言うのもなんだけど、実はダンジョンって二種類あったりする。
一つは私が小さいころに落っこちて攻略して今はグラちゃんと一体化した自然発生型のダンジョンらしいダンジョンだ。
そしてもう一つは『資源ダンジョン』という人類の活動に有益な資源となる魔物が大量に表れるダンジョンで、敵もそこそこ弱い上に安定して現れ、更に金属資源やスパイスなどの貴重な食料品などで構成されていたりする魔物が数多く出てくるのが特徴だ。
見分け方は自然発生型が魔物を倒すと消滅して素材を落とすのに対し、資源ダンジョンは倒してもそのままになるという特徴がある。
また、ダンジョンコアがあるのは同じだが、自然発生型にはダンジョンマスターというボスが必ず存在するのに対し、資源ダンジョンはダンジョンマスターが存在しないのが特徴となっている。
で、後者のダンジョンは必ず出現する魔物に共通する特徴がある。
肉として美味に食べられる魔物だけとか、香辛料を生やす魔物とか、金属資源になる魔物とかばかり出てきて、逆に資源として使えないゴブリンとかは全く出てこない。
·····で、この後者の明らかに人類文明のためにあるダンジョン、何かおかしいと思って調査したことがあるのだ。
そして調べた結果、ヤバい事が判明した。
なんと資源ダンジョンの正体は『宇宙空間航行時及びサイトーシスフォーミング初期用魔力式資源・食糧・生活用水等生活必需品生成ユニット』という、かつて魔族が故郷である金星を捨てて他の星に移住する際に使用した宇宙船の備品だったのだ。
このユニットはかなり頑丈に作られていて、宇宙船が龍脈の活性化のためにぶっ刺さって着陸した時に破損して船から飛び出して世界へと散らばり、長い年月をかけて地中に埋まったり落下の衝撃で変なところに落っこちたり、魔族が運び出したりして結構アチコチにあるのだ。
んで超長期間使用できることを想定して頑丈になってるから今でも動くものがあって、それを後世の人間が『ダンジョン』と定義して有効活用している感じだそうだ。
っと、話が逸れたけど、イルミア君の領地にあるダンジョンは鉄系の資源を生産するためのユニットらしく、アイアンゴーレムやアイアンアントといった魔物を生み出し続けて周囲に鉄鉱石を生成する仕組みになってるそうだ。
ちなみに日本地図でいうところの長野県の群馬県より辺りの場所に貴重な香辛料を生産するユニットがあるお陰でこの国ではスパイスを使った料理が格安で数多く出回っていたりする。
まーた話が逸れた·····
とりあえず、イルミア君の町は私の町と違って採取された鉱物資源の精錬・加工までやったりその場で武具を作ったり道具にしちゃったりと、鉱業というより鉱業&工業と言った感じらしいってことが判明した。
あと特産品は明太子らしい。
そのおかげで今日の披露宴は明太子食べ放題らしいからめっちゃワクワクしてる。
◇
新郎新婦紹介が終わると、次は結婚の誓約····· のはずなのだが、この国の様式ではもう一工程存在している。
「これよりサークレット教の祭神である光の精霊様を召喚いたします、皆様魔力をお貸し下さいますようお願いいたします」
そう、この世界だと『神』が実在しており、重要な儀式などでは神と崇めるモノを呼び出す儀式が行われる宗教がいくつも存在しているのだ。
ちなみにガイア様を祭る宗教もあるけど、何をやっても呼び出せたことはないとか。
·····だから代わりに光の精霊を呼び出してるんだけどね、この宗教も。
え?私が呼び出せばいいじゃないかって?
ガイア様からの伝言
『神はそう簡単に地上には降りないよの? あーめんどくさ、呼びだされて行く訳ないじゃん、ネット注文の荷物も受け取るのめんどくさくて置き配にしてるのよ?
あーーーーーーーーめんっっっっどくさ!!わざわざひと声掛けに行くためだけに3次元世界に行く訳ないじゃん、しかもやってたらキリ無いしさぁ·····やっべ、通話切ってなかった、ソフィちゃん今のナシ!!』
·····との事。
そりゃめんどくさがりの駄女神が降臨するわけないもんね。
って事でこの宗教では光の精霊を崇めていて、なおかつ我々が生活するこの世界を創ったと言われている女神ガイアと自然環境を司り制御していると言われている各属性の精霊たちも崇めている多神教だ。
その中でも、温泉好きの初代国王が温泉探しをしていたら遭難して、日本で言う栃木県の山奥にあるカルデラ湖の湖畔で出会って助けてくれた光の大精霊を特別視して崇めているらしい。
あとそのカルデラ湖とカルデラを作った火山は聖地になっているらしい。
·····日光かな?
んで、今から精霊を呼びだすから私たち参列者の魔力を借りるっていう感じらしい。
それで全員の魔力を渡して召喚する事で、新郎新婦の結婚を認める決断を精霊に任せるという形で間接的に認めるみたいな意味もあるんだとか。
ちなみにだけど、召喚する精霊は光属性であれば格は関係ないらしく、一般の結婚式だったら精霊魔法が使えれば基本誰でも呼びだせる低級精霊でも十分だし、王族の結婚式でも低級精霊が出てきたという例も多々ある。
そして、召喚方法は魔法陣だ。
実は聖壇の後ろにある····· 名前分らん、あのキリスト教だと十字架が飾られてるところに光の精霊を召喚するための魔法陣が飾られていて、小さめの教会だと等級の低い簡単な魔法陣が、ここみたいに最上位の教会だと特大の最高レベルの魔法陣が飾られている。
あと魔法陣はなんとステンドグラスでできているという贅沢仕様だ。
「それでは合図とともに魔力を魔法陣に向けて送ってください、魔力が無い物は手を翳してください、ではどうぞ」
私たちは一斉にステンドグラスに向けて魔力を送り込みはじめた。
·····オラに元気を分けてくれーっ!!って言いたくなるけどいったらブッ殺されるから言わないで大人しく魔力をステンドグラスへ送っている。
·····ふんふん?私の魔力を追跡してなんとなく仕組みがわかったわ。
よーし、最上位の大精霊、呼びだしちゃうよーっ☆
精霊魔法で精霊を召喚する場合、いくつか条件がある。
まず魔力の量によって召喚に応じる可能性が変化し、けれど多ければ多いほどいいという訳でもなく魔力の質が良ければ少なくても上位の精霊が出たり、逆に量ばかり気にして低級の精霊が出ることもあるそうだ。
そしてあとは精霊のきまぐれだ。
精霊に近い魔物であるシルキーを召喚したときみたいに、精霊事務所的な場所に連絡が来てそこから精霊たちが召喚に応じて現れるという仕組みだから、大精霊が来るのは完全に運と気まぐれだ。
·····でもね?
私、むりやり大精霊級のすんごいのを召喚する方法知ってるのよ。
えーっと、ステンドグラス魔法陣を過剰魔力で壊れないよう強化して·····
えいっ☆
\ゴボボボボッ!!!!/
魔力を50億くらい注ぎ込んでやったわ☆
すると、魔力を注ぎ込んで数秒も経たないうちにステンドグラスが後ろでマグネシウムでも燃やしたのかってくらい爆裂的に輝き始めて、急激に魔力が高まり始めて光が収束し、人の形になり始めた。
よっし!最上級の大精霊が来たっ!!
·····そう、ワガママな大精霊を無理矢理呼ぶ方法はいたって簡単だ。
精霊界につながる召喚魔法陣にアホみたいな量の魔力をぶっ放してメチャクチャにしてやるだけだ。
すると向こうの魔法陣では50億というアホみたいな量の魔力が出てきて爆発しかけるから、最上位の精霊が大慌てて魔力の供給を止めるために召喚に応じるって訳だ。
例えると、普通なら水がチョロチョロ出るはずのホースが差し込まれたと思ったら、突然ダムの放流レベルの水がドパッと溢れてきたようなモノだからね。
そりゃ一番偉い人が大慌てで止めに来るに決まってるよねっ☆
そして光が完璧に人の形になると、直視できない程の光から、柔らかな春の日差しのような優しい包み込むような光に変化し、中から一人の美しい女性が現れた。
髪は美しい金髪で黄金色の光を纏って淡い金色に輝いていた。
体は精霊らしく白くスベスベで美しいプルツヤ肌だ。
服装はいかにも精霊らしい白色に金色の装飾が施されたギリシャ神話の神が着ているような、少なくともガイア様は絶対着ないような神衣を纏っていた。
そして光の大精霊は閉じていた凛々しい目付きの瞼を開き、その美しく輝く黄金色の瞳を動かし·····
「·····私を呼んだのは貴女かしら」
「はい、光の精霊様、わたしは『ウナ・ウェア・ラ・サークレット』と申します、本日はわたしたちの結婚式の証人となっていただきありがとうございます」
·····あのー、瞳、私の方向いてません?
やっべー、光の大精霊さん、ウナちゃんじゃなくて私の方見てるよ·····
あれ絶対めっちゃ怒ってるよ·····
目の中に光じゃなくて怒りの焔がメラメラしてるよ·····
こっち見ないで·····
今日の主役そっちだから、お願いだからウナちゃんの方見て?
·····追加で500億くらい
あっ、大慌てでウナちゃんの方に顔向けたわ。
これで良しっと!万事解決っ☆
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「質より量、量より質って言うけど、質と量どっちも最強でやれば万事解決っ!ゴリ押し戦法が一番手っ取り早いのよっ☆」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「·····またソフィちゃんかな、光の精霊さん一瞬ソフィちゃんの方みてたし」
名前:なかよし組
ひと言コメント
アルム
「うわぁ····· 酷い事してる·····」
フィーロ
「あー、またソフィちゃんがやらかしたんだ····· 後で謝らないと·····」
グラちゃん
「今魔法陣にエグい量の魔力が····· ひっ!?お、お姉さまからおぞましい魔力が流れてきてるわ····· これは、ソフィ、死んだわね·····」
エビちゃん
「·····もう控えめに言えないのじゃ、大声で言うのじゃ、あやつアホじゃな!?」
ミカちゃん
「おー、いい陽気····· ぽかぽか····· ねむ·····」
チェル
「お日様みたいだー!」
名前:光の大精霊『?????』
ひと言コメント
「法外な量の魔力を流してきた愚か者は····· アイツね、光の速度で殴られたいのかしら?」




