さようなら、私の大切な母校
卒業証書授与も無事に終わり、私たちは校長式辞や来賓祝辞、来賓紹介、祝電披露とかをじっと座って聞いていた。
·····うん。
せっかくの涙もすっこんでったわ。
いやね?薄情な奴なんじゃなくて、ただ単になっっっっっっっっっっっがいのよ、特に来賓紹介と来賓祝辞が。
まぁ、そりゃ全国から貴族の子供や裕福な商人の子供が来てる学校だからさ?
わが子の卒業式を見に来る親が貴族だから全員来賓で、それが少なくとも200人は居るから一人ひと言でもものすごく時間が掛かるって訳だ。
あーあ、ほら長すぎてエビちゃん寝ちゃったじゃん。
そして来賓関係が終わったと思ったら次は祝電披露の時間だった。
これもまた長くて、30分くらいずっと紹介してた。
一番長かったのはなんとこの国の国王、ウナちゃんのおじいちゃんからの祝電で、途中で『ワシの孫かわいすぎね?そろそろお披露目だからヨロシク』って言い始めて脱線して、なんやかんやあって読み切るのに15分以上かかるというね·····
要約すると『今年も無事に卒業おめでとう、ところでワシの孫可愛くてすごくない?卒業式終わったら城で孫の結婚式やるから来いよ?』って感じだった。
·····ほんと孫大好きだよなぁ、あの人。
そして国王様の祝電紹介が終わり、他の人の祝電披露も終わると、とうとうあの時間が来てしまった。
『卒業生答辞、卒業生代表 ソフィ・シュテインさんお願いします』
「はいっ!」
「頑張って!ソフィちゃんっ!」
「うん、頑張るね!」
私は卒業生代表として答辞を·····述べる?言う?スピーチする?·····わかんないけど、そういう感じのアレをするために再び壇上へと向かっていった。
◇
今回も転ばないで無事に登壇できた私は、魔導式マイクのある演台に立つと早速答辞を読み始めた。
「本日お忙しい中、私たちの卒業式のためにご臨席くださいました皆様、誠にありがとうございます」
私は珍しく噛んだりもせず、私たちが入学してから起きたことや9年間の学校生活で学んだこと、やった行事、学校生活のアレコレ、そして9年間授業をしてくれた先生たちへの感謝の言葉、学校に通わせてくれた親への感謝の言葉を長々と読み上げた。
·····内容は心に刺さって感動する感じでちょっと感極まっちゃったけど、ちゃんとしたしっかりした口調で読まなきゃだったから、さっきの校長先生の言葉と比べたら全然平気だった。
それにしても、ほんとに濃い9年間だったなぁ·····
みんなと出会って、山を何個も消し飛ばして、いろんな魔物を倒して、沢山美味しい物を食べて、たくさん勉強して、あちこちへ冒険しに行って、恋をして·····
私、ほんと良い人生を送ってるなぁ·····
·····この学校に来て、本当に良かった。
「最後に、これまで私たちを見守ってくださった皆様、時に厳しく叱って私たちを正しい方へ導いてくださった先生方、そして私たちを育ててくれたお父さん、お母さん、本当にありがとうございます」
「私たちは今日でこの学校を卒業し、新たな人生を歩んで行きます、その中でたくさんの壁に突き当たるかもしれませんが、この学校での経験があればきっと乗り越えていける力強い人生を送っていけると思います」
「私たちを育ててくださり、本当にありがとうございました、マグウェル魔法学校のますますのご発展を心より祈念して、答辞といたします」
「建国1228年3月21日 卒業生代表 ソフィ・シュテイン」
ふぅ、やっと読み終わった·····
長かった·····
終わったけど私は気を抜かず、丁寧に礼をすると綺麗に見える所作で階段を降り、私の席へと戻って行った。
その後は保護者代表でなんか見覚えのある公爵家令嬢の親が謝辞を述べ、校歌を斉唱して、校長先生が閉式の言葉を言って、いよいよ卒業生退場となった。
·····まぁ、入場の時とは逆の順番で1クラスずつ退場するから、前から2番目の私たちB組はすっごい時間かかるんだけどね。
そしてしばらく待ち、ようやく私たちは卒業式会場を後にした。
◇
教室へと戻ってきた私たちは、全員分の卒業証書を職員室に取りに行ったビオラ先生が戻ってくるまでの間に、クラスメイト全員とおしゃべりしていた。
「みんなっ!卒業おめでとう!」
「おめでとー!」
「そっ、卒業できてよかったです·····」
「はぁ、緊張したぜ·····」
「ソフィちゃんお疲れ、どうだった?緊張した?」
「あっフィーロ君もお疲れさま、そりゃもうめっちゃ緊張したよ、あぁ喉乾いた·····」
「何か飲む?」
「んー、自分で出すからいいや」
「そっか、わかった」
私は緊張すると喉がカラッカラになる体質だから、今の私の口の中は砂漠みたいに絶望的に乾燥していた。
いやー久しぶりにすっごい緊張したわぁ、早く飲み物のまないと脱水症状でソフィちゃんジャーキーになっちゃうわぁ·····
私は喉を潤すため、水魔法を改造して健康に良いミネラル豊富な麦茶の玉を出すと、それをパクッと食べた。
う~ん、気分は宇宙飛行士だ。
「やっほーソフィちゃ~ん、私にもお茶ちょうだい~」
「ん?あぁディスタちゃんか、いいよー」
「じゃあ俺にも!」
「アタシにも!」
「ぼくにもお願い」
「私もお願いしていいかしら?」
「はいはいはいはい、ちょっとまって!喉乾いてる人手あげてー!」
『『はーい』』
「ほぼ全員かな?はいどうぞ!」
私は麦茶玉を手を挙げた子の分だけ生み出して、お好きに飲んでもらった。
ちなみに魔法でキンキンに冷やしてるからクールダウンにもつかえるよっ☆
·····まだ冬だから寒いけど。
そういえばこの魔法も魔法学校に入ってから使うようになったなぁ·····
いくら全知全能でパーフェクト可愛い私でも、知らないことはたくさんあった。
だから、知らない事が学べて、沢山友達もできて、新しい発見が沢山あったこの学校には感謝している。
そんな凄く良い学校とも今日でお別れかぁ·····
最初は学校行くの嫌がってたのに、今じゃ卒業するのが寂しいって思うくらいになっちゃったなぁ·····
私は寂しい気持ちを紛らわすため、もう二度とこうして一緒に話せないであろうクラスメイトたちと沢山会話をした。
◇
「はーいそれじゃ席についてー、最後の帰りの会をするわよ!」
「やばっ!先生きた!」
クラスの子と話をしていると、とうとう担任のビオラ先生がやって来てしまった。
あぁ、もうこんな時間なんだ·····
ホントはもっと話をしてたかったけど、最後の最後で説教をさせるのは嫌だったから私はおとなしく自分の席に座った。
「全員いるわね?それじゃ最後のホームルームをするわ、まずは皆、卒業おめでとう、そして9年間私の下で学んでくれてありがとう」
「·····本音を言うと、今までで一番キツかったわ、特に若干2名のせいで物凄く大変だったわ」
「ぎくっ·····」
「ナ、ナンノコトジャロウカナー?」
「·····心当たりはあるみたいでよかったわ、ほんとこのクラスは異例な事ばっかりで疲れたけど楽しかったわ」
「あんまり長く話しても良くないわね、この後卒業記念で皆でパーティーでもするのでしょう? だったら早く終わらせるわ·····」
「こうして入学した時と変わらない51人全員····· そういえば入学した時は50人だったわね、なんにせよ、誰一人欠けることなく卒業できたのだから、あなた達には幸せに長生きしてほしいわ、先生が望むのはそれだけよ」
そういうと先生は目から零れ落ちた涙を拭いた。
あと教室中からすすり泣く声も聞こえてきてる。
·····この世界は日本より厳しくて、比較的日本に近い治安のこの国でさえ普通に老若男女問わず死ぬような危険な世界だ。
優秀な子供が集まるこの学校でも毎年死者が出て、入学した時と同じメンバーで卒業できる事なんて滅多にない。
だから、ビオラ先生は無事に教え子が全員卒業できて安心してるし、これからもずっと生きていてほしいと思ったんだろう。
·····ここまで誰一人欠けることなく来れたのは、私がみんなに危機が迫らないよう頑張ってたからだから、私の元から離れたら誰かは死ぬかもしれない。
でも私もみんなにできる限りのことは教えた。
きっとみんな、自分の身は自分で守って生き抜いてくれるって信じてる。
だから、いつかまたこうしてみんなに会いたいなぁ·····
「しんみりしちゃったわね、それじゃ気分を変えて、卒業証書を渡すわ!1から順番に取りに来なさい!」
『『はーい!』』
教室の雰囲気がしんみりとしていたが、ビオラ先生が卒業証書を配るとなると空気が一変した。
そして出席番号1から順にビオラ先生から卒業証書を受け取り、先生からひと言送る言葉を言われていた。
私はなんて言われるかなぁ·····
散々迷惑かけたしちゃんと謝らなきゃなぁ·····
·····って、あれ?
私、先に貰ってるから呼ばれない·····?
「次、ソフィちゃんよ、もう受け取ってるでしょうけど来なさい」
「はーいっ!」
やった!呼ばれた!!
私は卒業証書をもって、先生の所へと向かっていった。
◇
「先生これお願いします」
「はいはい、じゃあ行くわよ」
卒業証書をビオラ先生に渡すと、私は姿勢を正した。
「卒業証書 ソフィ・シュテイン 以下略、卒業おめでとう」
「ありがとうございます!·····先生、9年間怒らせてばっかりでごめんなさい、でも、私の事をちゃんと毎回怒ってくれてありがとうございます、」
「良いわよ別に、教師は生徒が間違ったことをしたときに怒るのが仕事よ、気にする必要はない····· と言いたいところだけど最後の説教よ?」
「え゛っ!?」
「いい?これから先、貴女の事を怒ってくれる人は殆どいないわ、貴女の行動が間違っていても犯罪でなければ基本的には怒られないわ」
「そして私が貴女を····· いえ、ソフィちゃん以外のクラスの皆を怒っていたのは、怒られる様なことをした貴方たちの責任を私が代わりに背負っていたからよ」
「でも貴方たちの身代わりになれるのは今日でおしまい、明日からの行動の結果は自分で責任を負うと思って行動しなさいね」
「·····責任を負うからって好き勝手やっちゃダメよ?その時は私がまたゲンコツを喰らわせに行くわ」
「·····はい、わかりました、心に刻んでおきます」
「わかったならいいわ、·····ソフィちゃん、私は貴女の事を怒ってばっかりだったけど、貴女の事は信用していたわ、こうして無事に全員卒業できたのも貴女のお陰という事もわかっていたわ、生徒に頼るなんて教師としては失格でしょうけどね?·····ソフィちゃん、9年間、ありがとうね」
「·····はいっ」
「私からは以上よ、もう貴女を縛る鎖は無いわ、好きにしなさい?でも間違ったことをしたら先生が説教しに行くから覚悟しなさいね?もうゲンコツは喰らいたくないでしょう?」
「はいっ!先生、本当にありがとうございましたっ!先生もお元気で!」
私は先生から卒業証書と····· 何これ?まぁいいや、卒業証書と記念品?を貰って、ビオラ先生の居る教卓の前から去って、あともう少しの間しか座れない私の席へと戻って行った。
◇
席に戻った私は、貰った記念品?の箱をちょっと開けてみた。
「おーぷんっ、·····んぇ?なにこれ?バッジ?」
「·····ソフィちゃん、まさかソレしらないの?」
「え?知らない·····」
「この学校を卒業したことを示すバッジだよ?大事な物だからちゃんととっておいてね?」
「·····マジか」
これ卒業記念品じゃなくて、ホンモノの卒業した証だわ·····
ちなみにコレを身に着けておくと、この町に入りたい放題になるというか入るときに身分証の提出が必要なくなるらしい。
ほかにも卒業後で学校に入るときにコレがあると手続きがスムーズになったり、一部の店で割り引きがあったりするらしい。
·····いい物もらったわ、たっぷり悪よゲフンゲフン活用させてもらおうっと!
◇
十数分後、ビオラ先生がクラス全員に卒業証書を渡し終え、最後の時がやってきた。
「さてと、じゃあこれが本当に最後ね····· 皆、卒業後も頑張って生きていくのよ、先生は····· 再来年辺りまた担任をやるかしらね?まぁ未来の事なんてそれこそ神でもなければわからないわ、だから自分の手で未来は切り開くのよ」
「皆に会えるのは最後と思うとやっぱり後ろ髪を引かれるわね、でももう時間よね、あぁ名残惜しいわ·····」
「·····みんな、先生も卒業記念パーティーに呼んでいいかな?」
『『おっけー!』』
「んふふ、じゃあ先生も卒業パーティーに来ます?」
「いいのかしら?じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ、·····おほん、じゃあさっさと最後の挨拶をするわよ!皆、起立っ!」
私たちはビオラ先生の号令で立ち上がった。
「気を付け!」
そして次に姿勢をピシッと正した。
「礼っ!」
その状態のまま、私たちは息をそろえて、9年間の感謝を込めて先生へ礼をして·····
「それじゃ、さようなら、元気でね」
『『さようなら!!』』
こうして、私の学校生活は終わりを迎え、新生活がスタート·····
「それじゃ飲みに行くわよ!早く荷物をまとめていくわよ!そうだったわね、ソフィちゃんもエヴィリンちゃんはもうお酒を飲んでいいわよ?卒業生の飲酒は咎めないわ」
「「やったぁ!!」」
·····する前に、卒業式の打ち上げというか学校生活お疲れ様会というか、飲み会をすることになっている。
ちょっとしんみりしていた私たちは、急にテンション爆アゲになったビオラ先生に釣られてハイテンションになり、さっさと荷物をまとめて教室の外へと、学校の外へと向かっていった。
◇
「みんな!ちょっと待って!」
『『んっ?』』
校舎から出ると、私は一旦みんなを呼び止めた。
そして、インベントリから一台の機械を取り出した。
「ちょっとサプライズがあるからそこに並んで!えーっと、早々そういう感じ、前の日とは座って真ん中の人は中腰で!あーあとビオラ先生は先頭の真ん中で!」
そう、私がやろうとしているのは集合写真の撮影だ。
ちなみに撮った写真は印刷してみんなに渡すつもりだ。
「はいOK!じゃあ動かないでよ~?」
私は日本で買ってきた高級一眼レフカメラのタイマーをセットして、三脚が無いのでカメラを空間に固定して撮影ボタンを押した。
「急げーっ!!フィーロ君隣開けて!」
「えっ!?ちょっ!」
そしてタイマーが0になる前に猛ダッシュでフィーロ君の隣という定位置に収まると、カメラに満面の笑みを向けた。
「じゃあみんな笑って!!さん!にー!いち!」
パシャッ!!
「·····もういっちょ!」
パシャッ!
ちょっと心配だったからもう一枚撮っておいた。
「えーっと?うん!おっけー!みんなありがと!みんなにもとった写真····· 超リアル絵画保存魔道具に記録した絵を贈るからまっててね!·····はい届いた!忘れないように思い出にしておいてね」
実は裏で撮影した写真を時間を止めて印刷してて、劣化しないように魔法を掛けて額縁に入れたのをみんなに配った。
そしたらみんな大喜びだったから、あとで卒業式の写真もこの後撮る卒業記念パーティーの写真も全部印刷してアルバムにして渡そうと私は心に誓った。
「それじゃみんな!パーティー会場へGO!!」
『『おーっ!!』』
そして、私たちは9年という子供にとってはとても長い月日を、こっちでの人生の半分以上を過ごした母校を後にした。
·····が、私は校門を出る前にちょっと止まった。
「あれ?ソフィちゃんどうしたの?」
「うんん、なんでもない、ただね、ここから出たらもう生徒じゃないんだって思うとなんか、足が止まっちゃってさ·····んへへ、情けないよね·····」
色々あったけど、私は怒られて笑って悲しんで喜んで過ごしたこの学校が大好きだ。
でも、校門の外に出たら私はもう学生じゃない、こっちだともう大人とみられる一般人になっちゃうんだ。
学生としてはうまくいってたと思うけど、こんな私が、一般人、社会人になって、上手くやっていけるのかな·····
·····そう思うと、足が動かなかった。
「全く····· ソフィちゃん、行くよ?」
「フィーロ君·····」
そんな立ち竦む私に、先に校門の外に出ていたフィーロ君が手を差し伸べてきた。
·····私は強い女の子だ、女は度胸よっ!やればなんとかなるっ!よし!私は卒業するよっ!!
私はフィーロ君の手を掴み、一歩前へと歩み、学校の外へと出た。
「ほら行けるじゃん、じゃあ行こうよ、もうみんな先行っちゃったよ?」
「うん、でもちょっと待って·····」
学校の外に居る、もう学生じゃない私は、9年間通った母校を振り返った。
「·····ありがとう、校長先生、ほかの先生たち、マグウェル魔法学校、いつか私に子供が生まれたら、きっとここに通わせるよ、·····さようなら」
そういうと私は正面を、夕日に照らされるフィーロ君の方を見た。
「もういいの?」
「うん、いいよ、サヨナラって言えたから」
「わかった、じゃあ行こう」
「うんっ!」
私とフィーロ君は手を恋人繋ぎにして、一緒にかつてのクラスメイト達の後を追うようにゆっくりと歩いていった。
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TS賢者は今日も逝くっ!
完
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「えいっ!(っ'-')╮ 三 未」
バキャッ!!
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TS賢者は今日も逝くっ!
_人人 人人_
未 完 <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
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「まだ終わらせないよっ☆」
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「私の好きな映画のセリフにね、こういうのがあったんだ
『さようならは、また会おうっていうおまじない』
·····ってね、校長先生ともまだ沢山絡みたいし、時々遊びに行くつもりだよっ☆」
「·····っていうか、たぶん私なんやかんやあって教員やらされる気がするし」




