表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第四章 TS賢者は世界を往くっ!
399/478

卒業式



 時は流れ、冬も終わりを迎え初め春が訪れはじめた3月21日·····



「髪型セットよし、化粧よし、服装よし、身だしなみよし、うんっ!今日もバッチリ可愛い!」



 私は鏡の前でいつも以上にちゃんと制服を着て髪形をセットして、やっと覚えられたアルムちゃん直伝のメイクをして、入学式の時みたいにビシッとした格好になるように頑張った。



「ソフィちゃんまだ~?」

「もうみんな準備終わってるよー」


「あっはーい!私も今終わったから行くー!」



 と言いながらも、私は鏡の中の私と向き合った。



 今日はマグウェル魔法学校の卒業式、つまり私たちが9年間通った学校を卒業してしまう日なのだ。


 ·····これで卒業式は何回目だったかな、前世を含めると小中高大の4回とこっちの魔法学校で計5回ってところかな。

 幼稚園の卒園式は含めるべきか迷ったけど含めないことにした。



「·····転生した時は、学校に行くなんて、ちゃんと女の子になれるなんて、彼氏ができるなんて、思ってなかったなぁ」



 鏡に映る私は、自他共に認める絶世の美少女だ。

 でも、私の目にはその背後に男だった私の影が今でも映っている。



 『男の私』は心も体も女性になった私にとって黒歴史だ。



 でも男だったという記憶と体験は、日本で生活していた『藤石 賢人』という男性として過ごした経験は、今の私、女になった私に活きている。



 ·····()は、フィーロ君が言ったように生き急いでいる。


 一度死んだ経験は俺にとって物凄く怖い事、トラウマになっている。

 だから俺は人はいつ死ぬかわからない、だから死ぬ前にやりたいことは全部やっておきたい、何があっても後悔しない人生を送りたい、突然死んでも満足できた人生を送りたい。


 そう思って突っ走ってた。


 まぁ、純粋にバカみたいに突っ走って好き勝手やるのが楽しかったって言うのもあるけどね。



「でも、もう急がない、みんなと一緒に居られればそれでいい、せっかちな私も今日卒業だよ」


「ソフィちゃん急いでよー!!遅れちゃうよーっ!!」

「そうだよ!今日は朝から色々予定が詰まってるんだから早く来てって言われてたじゃん!」


「あっ!はーい!!」



 ·····でもたまには急がなきゃいけないかもねっ☆



 私は鏡に映る私にプリティーでキュートなスマイルを贈り、大切な大親友たちの元へ急いで向かった。





 学校に到着してしばらくすると最後の朝礼が始まり、卒業式の順序の再確認をやっていた。


 まぁ、流れとしては異世界転移してきた校長先生が作っただけあって日本式で私もよく知ってるから聞き流してるんだけどね。



 ·····って言うのは言い訳で、ホントは私の家族を千里眼で探していた。



 おっ!いたいた、あー結構いい宿に泊まってたんだ·····ってお爺ちゃんもお婆ちゃんも来てる!?

 ヤバい緊張してきた·····



 私の視界には、卒業式を観覧するためちゃんとした服に着替えて宿を出発した私の家族が映っていた。

 お兄ちゃんはもう青年って年齢だからピシっとした恰好をしてかなり大人っぽくなってて、お父さんは滅多に着ないスーツ的な恰好で、お母さんはもうすぐ出産という事もあってお腹の子供に負荷がかからないようゆったりめのドレスを着ていた。

 あとお手伝いのルーベさんはいつも着ているクタクタなメイド服じゃなくて、ちょっと豪華なしっかりしたメイド服を着ていた。


 んでお爺ちゃんたちは、なんか、すっごい高級そうな燕尾服とドレスという、それ絶対王宮とかに着ていく用のだよね?って服装だった。



「あれっ?ソフィちゃん顔色悪いよ?」

「緊張した?大丈夫?」

「ソフィでも緊張する事があるのね·····」

「学年主席だから壇上でスピーチするもんね」

「·····ワシ、主席じゃなくてよかったのじゃ」



 ·····そう、私はうっかり学年主席になっちゃったせいでクラス代表で卒業証書を受け取り、しかも卒業生の言葉的なのを言わされる羽目になったのだ。

 おかしいな····· 私、実力と学力は確かに1位だけど生活態度とかに関しては最下位レベルだったと思うんだけど·····


 まぁ、私の家族もそれを聞いて喜んでたから満更でもないけどさ。



 あぁめっちゃ緊張する····· もし嚙んだり言う事忘れたらどうしよ····· いっそのこと時を戻すかな·····



「ソフィちゃんっ!目がヤバいよ!魚河岸に連れてこられたマーマンみたいな目になってるよ!」


「えっ?」



 何かひどい例えをされたけど、うん、なんとなくどんな目かわかるわ·····


 あぁ、めっちゃ緊張する·····




 だが時間は無慈悲に流れ、保護者が卒業式会場に到着したとの事でいよいよ卒業生入場の時間となってしまった。





『それでは卒業生の入場となります、皆様拍手でお迎えください』



 パチパチパチパチパチパチ!



「それじゃ行くわよ、皆の晴れ舞台だから最後くらいちゃんとするのよ?」


『『はい!』』



 私たちは番号順に2列に並び、卒業式会場の入場口前で待機していた。


 そして入場が始まったけど、このクラスはB組で一つ前にA組があるからちょっと時間に余裕がある。

 ·····といってもすぐなんだけどね。


 ヤバい緊張がヤバい、さっき間違えて両手両足を同時に出してひっくり返ったから気をつけないと·····



「大丈夫、僕がついてるから」


「フィーロ君·····」


 私の隣には最愛の彼氏、フィーロ君が居た。

 それだけじゃない、私の後ろには親友のグラちゃんとウナちゃんも居る。


 ·····エビちゃんは転入生だから一番後ろで仲間外れなんだけどねっ☆


 私は一人じゃない、一緒に歩く仲間が、友達がいる。



「そろそろね····· じゃあ行くわよ、背筋を正して!」


『『はいっ!』』



 そしてA組の一番後ろの子が進み始め、少し時間をおいて私たちも卒業式会場へと入場していった。





 会場に入ると、沢山の保護者と豪華絢爛に飾り付けられた会場と豪雨のような拍手の音に、巨大独立要塞亀や超巨大海龍と戦った私でさえ圧倒された。


 あぁ、やっぱり5回目でもこの感じには慣れないわ·····


 しかも私はこの学校の有名人で暫定世界最強の力を持つ少女として期待も集まっているからなのか、他クラスの保護者もいろんなメディアの人も先生も全員私を見ている。


 ヤバい、両手両足が同時に前に出そう、それに朝食のカツ丼が口から出そう·····



 なんてガチガチに緊張してたら、フィーロ君がこっそり私の手を握ってくれた。

 驚いてちらっと顔を見ると、いつもの優しいフィーロ君の顔じゃなくて、キリっと真面目で男の子から少年や青年のような凛々しい顔つきになって、私をエスコートしてくれていた。


 ·····なんかその瞬間会場がどよめいてたけど、逆に私の心は落ち着いて緊張も一気に薄れていった。


 そして私にのしかかっていた重責も、緊張も、何もかもが無くなった。



 あぁ、体が軽い、こんな幸せな卒業式なんて初めて·····



 もう何も怖くない·····っ!!



「あぴゃんっ!!?」


\ずっこけ☆/




 私は敷かれていたカーペットの皺に足を引っかけて盛大にすっ転び、止まれなかった後続のアルムちゃんやクラスメイトに踏まれてしまった。




『『·····』』


「·····『TimeReverse』ッッッッ!!!!!!!!」




 カチッ!




 私はアルムちゃんに顔面を踏まれたまま、時計の針を逆さに回した。







 盛大にすっ転びクラスメイトに踏まれるという最悪の結末を迎えた私は、普段は使わないようにしている時間遡行魔法で入場からやり直した。


 その結果、私は無事にミスをすることなく完璧な入場をすることができて、無事に卒業生の席に座ることができた。



 ·····みんなに踏まれるって言う最悪の経験をしたお陰で逆に緊張しなくなったから結果的に良かったかもしれない。




 そして、その後は特にヘマをやらかすこともなく、開式の言葉や国歌と校歌斉唱をやって、いよいよその時がきてしまった。



『卒業証書、授与』


「はひゅぅぅぅぅぅ·····」

「頑張って、大丈夫、応援してるから」

「うん·····」



 私はこのクラスの代表として卒業証書を受け取りに行くことになっている。

 ホントなら全員で行きたいらしいんだけど、この学年の生徒数は約500人、何人か退学や死亡で減ってはいるものの四捨五入して500人は居るので一人一人渡していたら時間が掛かり過ぎてしまう。


 だからクラスごとに代表者1人が受け取り、あとで教室で全員に担任の先生から卒業証書が渡されるという形になっている。


 そして代表者はそのクラスで最も成績が良く実力がある者が選ばれるのだ。



 ·····私はもう入学した時からこうなる運命だったのよね。



 私が緊張を鎮めようと頑張っていると、早速A組の生徒が呼ばれて壇上に上がり、校長先生から卒業証書を受け取ってしまった。


 そして壇上の校長先生がチラッと私の方を向いた。


 来たっ·····!!



『9年B組、ソフィ・シュテイン』


「はいっ!」



 校長先生に呼ばれ私は立ち上がると、事前に練習しまくった『完璧に美しい歩き方』で壇上へと向かう中央通路を通って校長先生の元まで向かっていった。


 もう二度とヘマはしないっ!絶対にこけないっ!



 私の願いは届いたのか、無事に壇上に上がることができた。


 そして校長先生の前に立つと、先生が私の卒業証書を読み上げ始めた。



『卒業証書 ソフィ・シュテイン 貴女は本魔法学校の全ての課程を修め、本魔法学校を卒業したことを証する 建国1228年3月21日 マグウェル魔法学校校長 サトミ・ド・ウィザール·····いえ、()() ()()()


「うぇっ、校長先生、名前·····」


 だが、私ではなく校長先生がやらかした。

 こっちの名前ではなく、日本人としての名前を言ったのだ。


 これには私だけでなく卒業生も保護者も来賓も全員驚いていた。



『少し時間いいかしら? ソフィちゃんも、いいわよね?』


「えっ?·····なるほど、わかりました」


 けれど、何度もゲンコツされ何度も説教されてきて、目配せだけで説教部屋に行けという指示さえ分かるほど以心伝心してた私たちだからこそ、校長先生の意図を読み取ることができた。


『彼女、ソフィ・シュテインは私と同じ異世界、日本からやってきた存在よ、此方に来る前の彼女の事は秘密だけれど、彼女はこの学校で学び、この世界に取り残された最後の勇者である私を元の世界に送り返す魔法を開発するという偉業を達成したわ』


『3600年という長い月日をこの世界でたった一人で過ごしたわ、その間、私はずっと故郷に帰るための魔法を研究し、そしてその過程で魔法学が発展しこの学校ができたのよ』


『そして今日、ついにこの学校創立の目的が果たされたわ』



『·····結局、自力で見つけることは不可能だったわ、だけど、彼女のお陰でようやく私は故郷へと帰る事が出来たわ』


『貴女は間違いなくこの学校····· いえ、この世界で最も偉大な魔法使いよ』


「校長先生·····っ」


『長くなったわね、最後に私から、校長先生ではなく貴女に助けられた日本人として、貴女にお礼を言わせてほしいわ····· ありがとう、ソフィちゃん』


「っ·····!私の方こそ、ありがとう、ございます·····っ」



 救われたのは校長先生だけじゃない。

 私だって、異世界でたった一人の元日本人で、この記憶が、日本という存在が本当にあったのか不安になっていたけど、日本人の異世界転移者の校長先生と出会って心の支えになっていた。


 それに、校長先生が作ったこの学校のお陰で私は大切な人たちと出会え、最高の異世界ライフを送る事ができるようになった。


 ·····感謝したいのは、私の方だ。



『私が作った学校はどうだったかしら?』


「ぐずっ、んへへ、楽しかったです!」


『ふふっ、それなら良かったわ、じゃあ、卒業証書を受け取ってくれるかしら?』


「はい·····っ!!」



 私は卒業証書を校長先生から受け取った。



「校長先生、9年間、本当にありがとうございましたっ!」


『行ってらっしゃい、ソフィちゃん、そして私の大切な生徒たち!これからは学校の校則に縛られず、この美しい世界を好きに見て回ってきなさい、校長として·····貴方たちの先生として出す、最後の宿題よ』


「はいっ!いってきますっ!!」



 私は深々と礼をして、先生に背を向けた。


 そして宝玉のような瑠璃色の瞳から溢れた涙を拭う事もなく、涙を流しているのに満面の笑みのまま、壇上から可憐な少女のような所作で降りていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ