ドラゴンは酒飲ませとけば何とかなる
『カァァァアアッツ!旨いねぇ!これが異世界の酒かい!』
「ですです、これは米っていう穀物からできたお酒ですね」
『ほう?聞いたことが無い名前だね、どんなのだい?』
「こんな感じの穀物ですね、蒸したり茹でたり炊いたりして食べる感じです」
『ほほう』
レディクルスさんの住処に案内された私は彼女に酒をふるまっていた。
ちなみにこの部屋は火口の中にできた地割れの奥にある空間で、彼女が集めたお宝の中でもトップクラスにいいものを保管する部屋との事。
その証拠に、壁にはずらーっと伝説の勇者が大魔王に挑むために手に入れるような神話級のヤバい武器や防具が立ち並び、巨大な宝石や金塊、確実にヤバい魔導具、そして明らかにこの星の物ではない未知の機械なんかもおかれてる。
『で、石の子は吞まないのかい?』
「あー私は遠慮しておきます、未成熟の体に酒精はあまり良くないので·····」
『そうかい、でも石の子くらいの年になったら呑むのが普通だろう?』
「まぁ、そこは気分の問題ですよ、一応私が居た前の世界だと20歳にならないとのんじゃいけない感じでしたし」
『その理由は?』
「えーっと、人間の体が成熟しきって成長が止まるのが生まれてから20年だからですね」
『ほほう、そういう事かい』
「·····でも私お酒飲みたいんで16になったら呑むつもりですよ」
『そうかいそうかい、吞むとなったら私も呼んでくれよ?旨いツマミは大好物····· そうだ、リヴァイアサンの肉はまだかい?』
「あっ、ちょっと待ってくださいね····· ちなみに調理方法は?時間を止めて保存してるんで生でもいけますよ」
『おぉ、じゃあお言葉に甘えて生をいただこうかねぇ、ついでに焼きももらえるかい?』
「もっちろんです!あぁ、あとで本体の方でも満足できるサイズの肉も用意してますんで安心してくださいね」
『さすが石の子、気が利くねぇ』
「いやーそれほどでもー」
私はレディクルスさんに褒められながら、早速インベントリから裏で私がせっせと調理していたリヴァイアサンの肉を取り出した。
ちなみに今は2番目の私が星核合金製大包丁『ツナギリ』でリヴァイアサンを輪切りにしているところだ。
一応リヴァイアサンは既に内臓と血は抜いてそれぞれインベントリに保管してあり、ついでに頭部も切断してあるので切るだけだからすぐにでも終わるだろう。
そして今回レディクルスさんに渡そうとしてるのは、首から下の50mくらいだ。
ここはかなり脂が乗ってて美味しい部位で、私たちもすでに100mは確保してあるくらい美味しい部位だ。
まぁ直径が50m以上、長さに至っては1km以上もあるから普通に食べきれる気がしないけど。
そんなリヴァイアさんの肉を使った刺身とステーキをインベントリから出した私は、ついでに調味料を出してあげた。
「はいどうぞ、生の方は醤油····· 大豆から作った異世界の調味料をつけて食べてくださいね」
『おおぉ、黒い液体····· 大丈夫なのかい?』
「しょっぱいのでちょっとで大丈夫ですよ!あと美味しいですよ!」
『ほほう、ではいただくとしようかね····· はむっ····· おぉ!なかなか行けるじゃないか!』
どうやら醤油の味はドラゴンにも通用するようだ。
その後、レディクルスさんはリヴァイアサンの肉をツマミに酒をたらふく飲みまくり、足りなくなったので途中で魔法で酒を出して吞ませまくってあげた。
◇
呑み始めてから2時間後·····
お酒が飲めない私はノンアルコールのお酒を飲みながら彼女と色々雑談をしていた。
例えば『○○の星はつまらないとこだった』とか『異世界はこんな感じの場所』とか『ドラゴンの子供事情』とか『恋愛事情』とかそういう感じだ。
スケールはなんか凄いデカいけど、ノリはなかよし組で雑談をしてる時とそんな変わりなくなごやかな雑談をしていた。
あと途中で一度地上に行ってリヴァイアサンの肉を渡してあげたりもした。
んで、そろそろレディクルスさんも満足しはじめたみたいだから、本題に移るとしよう
「あー、レディクルスさんちょっといいですか?相談したいことがあって·····」
『おう?なんだいなんだい?言ってみなさい石の子よ』
「実は最初にもちょっと言ったんですけど、この国でゴタゴタが起きてまして·····」
『あぁ言ってたねぇ、凡そアレだろう?戦争かなんかだろう?』
「まぁ、そうなりますね·····」
『やっぱりねぇ、遅れるってなるとそれくらいしかないだろうからねぇ、で、私に参戦してほしいと?』
「んにゃ、戦争に関しては私一人で十分なんですけど、ちと面倒事が起きてまして·····」
『言ってみな、場合によっちゃ手伝ってあげるよ』
よし、それじゃ早速私の計画を手伝ってもらうためのプランを説明するとしよう。
「今回の対戦国は名目上は隣の『クリミネア共和国』で、実際は『シェラン王国』っていう独裁国家です」
『あー、アレか、あのあたりも住処にしたことあったけどちょっかい出されて出て行ったとこだねぇ』
「んで、和平交渉とか色々やったみたいなんですけど決裂して、多分冬が明けて落ち着いた時期に戦争が始まりそうなんですよ」
『あぁ、進軍するにしても海渡らなきゃだし、冬は海が荒れるし寒いからねぇ』
「で、ここからが本題です、その『シェラン王国』が進軍に先駆けてこの国に向けて禁術、人類の間で禁忌に指定されている魂魄を消費する超大規模魔法を使おうとしています」
『·····詳しく聞かせな』
レディクルスさんが真面目な顔になって食いついたところで、私はシェラン王国が実行中の計画を説明した。
まずシェラン王国は4つの禁忌魔法を発動しようとしている。
目標は当然の如くこの国。
魔法陣の大きさはなんと町と同じ大きさ····· いや、町そのものが魔法陣となっている。
そして発動と同時に町の人々の魔力や生命エネルギー、更には魂さえも砕いて発動する最悪のやり方で撃とうとしている。
四つの町は中央にある指令を出すために作られた魔術師のための町を中心に東西南北の方向にあり、それぞれが接続されて中央で指示を出して発動するような仕掛けになっている。
またこの5つの町でも魔法陣を作ってあり、効果としては魔法がかかる範囲や場所を指定していると考えられる。
あと禁忌魔法の中に天変地異を起こすものがあるから、もしかしたらこの山も噴火して巻き込まれるかもしれない。
『·····それは良くないねぇ、そんだけの魂を消費するのは流石のアンタらも黙っちゃいないでしょう?』
「ですよね、大体20万単位で砕くみたいなんで、輪廻転生のバランスが崩れる可能性があるんですよ·····」
『あぁ、それで、女神はどう判断した?』
「なんとしてでも食い止めろ、ですって」
『まぁそうだろうな····· 魂を砕かれちまうより普通に殺した方がマシだからな·····』
そう、禁忌魔法が禁忌と呼ばれる理由は非人道的な効果なのもあるが、それよりもこの『生贄の魂を消費する』という代償にあるのだ。
別に人を殺す魔法も、人の犠牲をもって発動する魔法も使ったって神は我関せずで気にしない。
·····が、魂を消費する禁術はダメだ。
死後の魂はあの世で浄化されるのだが、なんでこんなことをするかと言うと、魂を新しく作るより綺麗にして使いまわす方がローコストで済むからなのだ。
魂の創造はガイア様ほどの神様でも容易な事ではない。
ましてや神頼みせずに魂を製造するとなると一つ作るのに数週間は掛かるし、全力稼働しても20万もの魂が消費されるとなると復旧までには相当な時間がかかるし、魂の性質故に長期保存も難しいからストックもあまり多くないのよね。
だから、もし20万もの魂が壊されたら予備の魂が確実に足りなくなる。
それを補って元通りにするには年単位の時間が必要になるし、そうなると輪廻転生のバランスが崩れるから神が出張って自ら魂を造らなくちゃいけない事態になってしまう。
そうなると世界の運営が滞ってまた別の問題が発生するのよね·····
それを踏まえてガイア様は『魂を壊されるくらいなら救済して魂が綺麗な内に天に返すべき』と判断し、私に殺れと命じてきたのだ。
ちなみに輪廻転生に異常が発生すると生まれてくる子供が植物状態になる。
生命体として活動はするが、メインのCPUが無いせいで演算、つまり思考などができなくなてしまう。
そして結局は死に至ってしまうという最悪の展開が訪れるだろう。
これはそろそろ妊娠・出産を考えてる私たちにとってかなり影響が出るだろうから、なんとしてでも食い止める必要があるのだ。
『·····で、どうやって止めるつもりだい?』
「一応私は宇宙空間に衛星があるんで、それで爆撃をしようかなって思ってたんですよ」
『衛星?あぁ最近できたあの鉄の星か、石の子のモノだったとはねぇ』
「見えてましたか····· 一応アレに人工隕石を落とす仕組みがあるんで、それで爆撃しようかなって考えてるんですが····· ここで提案なんですけど、久々に思いっきりブレスぶっ放したくないですか?」
『·····魅力的な提案だねぇ、最近ヒトに向けて撃ってないから鬱憤がたまってたのよねぇ』
「やっぱり、今回は国も世界中の国々も許可を出してるみたいなんで、いっちょやってみません?って提案しに来た感じです」
『おっ?ヒトの子もなかなかやるじゃないか』
そう、実は禁忌魔法群を撃滅するにあたって彼女の力を借りようという計画があったのだ。
ちなみに発案者は私で、直接自分の手で殺人をしたくなかったから国に提案したモノだ。
前にレディクルスさんが『最近戦って無いねぇ····· 久しぶりに思いっきり攻撃したいねぇ』とか言ってたからそれを利用というか、利害関係が一致したので提案しに来たという訳だ。
·····本音?
超凄いドラゴンの本気のブレスを見てみたいってだけだけど何か?
『で、いつやるんだい?今かい?今すぐかい?もう出ちまいそうだ!』
「あー大丈夫ですよ、でも計画の概要とか撃ち方とか指示しなきゃなんでちょっと説明する必要がありますんで待ってくださいね」
『·····仕方ない、ちょっとだけだぞ?』
という訳で、ノリ気みたいなので私は計画の説明を始めた。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ほんとは全員救う方向でやりたかったんだけど、町ごと全てを破壊するのが最良の手段だったのよね····· 神さまとか偉い人の事情に一般人を巻き込むの嫌なんだけどなぁ·····」
名前:レディクルス(ソフィ命名)
年齢:不明、数百億年前にどこかの銀河が誕生するときに産まれたという説あり
ひと言コメント
「ブレスを我慢するのは無理だな、シャックリを我慢するようなもんだからな····· 我慢してても大体百年に一回くらい出ちまうんだ、でもヒトの町に撃つなんて何千年ぶりだ?楽しみだなァ·····!!!」




