山の上のドラゴンさん
標高3000m付近
「はぁ·····はぁ····· キッツ·····」
雪崩に巻き込まれかけてから3時間後、私はようやく標高3000mのあたりまでやってきていた。
私の経験上、3000mより上に一気に行くと高山病にかかりやすいので一旦この辺りで休憩しないとぶっ倒れてしまうとわかっていたので、今は休憩をしている真っ最中だ。
この高度になると酸素が薄くなったのがはっきり感じ取れるようになり、ちょっと無理するだけで息切れを起こしてしまうほどだ。
「·····でも、いい眺めだなぁ」
この山は富士山と同じで周囲に山が無く孤立した成層火山なので、さえぎる物ナシで遠くまで見通せる。
現在時刻は7時、高い山に囲まれたフシ盆地にもようやく朝日が入り込み、あそこに住む人々の1日が始まる時間だ。
ちなみに魔法学園の生徒たちもそろそろ登校の準備をしだす時間で、今から戻るとなっても遅刻は確定だろう。
でも私は学校から許可も得て国公認できてるから問題ない。
つまり今の私に校長先生はゲンコツを喰らわせる事は出来ないって訳よ!!!
ふはははははは!!あー愉悦愉悦っ!!
「さてと、そろそろOKかな?·····血中酸素濃度よし、高山病の予兆なし、おっけー!んじゃしゅっぱーつ!」
という訳で私は周囲に展開してた風よけの結界を解除し、高山特有の強い紫外線&雪による照り返し対策のサングラスを掛けると、ふたたび傾斜角30度はあろうかという山肌を登り始めた。
◇
さてと、登りながらだけど暇つぶしでもしよう。
なんで私は飛べるのに直接山頂に向かわないかって疑問に思う人が居るかもしれない。
でもこうして直接歩いて登るのにはちゃんと理由があるのだ。
どんな理由かって?
学校サボって山登るのがたのしいからだよっ☆
私は効率よりロマンを求める女、こうして歩いて自分の力で登りきる事こそが楽しいのだ!
あと山登り以外だってそうだ、私の創世魔法なら完成した料理だって出すことができるけど、そこをわざわざ自分の手で作っていくのが重要なんだ。
愛情をこめて作った料理はぱっと作った出来合いのご飯より圧倒的に美味しいのだ。
だからこそ私は魔法に頼り過ぎないで、わざわざ手間を掛けている。
この手間こそが私が一番楽しく感じる瞬間なのだ。
「あー楽し····· でもキツイわ·····」
登るのは楽しいんだけど、さっきから時々魔物に襲撃されたり、どんどん傾斜が厳しくなって雪も深くなってきて、歩いて登るのに限界が訪れ始めている。
いや歩いて登りたいっちゃ登りたいんだよ?でも雪が深すぎて一歩踏み出すのもキツいしよく滑るし雪の中から時々魔物が飛び出してきたりでホントもう無理なのよ·····
「·····うわいつもの登山ルートが雪で埋まって無くなってる····· 物理的にもう無理かな?よーし、もうあきらめた、飛んで行こっと」
この先はさらに傾斜が厳しくなり、地面にも尖った岩がゴロゴロ転がり始めて危険になってくるので、私は飛んで山頂まで行くことにした。
◇
標高4138m
「よっと、とうちゃーく!」
さっきの地点から飛ぶことたったの数分、私はあっという間に山頂までやってきてしまった。
いやーやっぱり飛行魔法は便利ねぇ·····
私としてはこの山の山頂直前の急に傾斜が険しくなるポイントが大好きなんだけど、流石に今日はちょっと無理そうで残念だった。
まぁ過ぎたことは仕方ない、早速火口の中でネコみたいに丸まってるドラゴンさんを呼ぶとしよう。
「おーーーーーーーい!!ドっラゴ〜ンっさああああああああああああああああああああああん!!!!!」
『うるさいわあああああああああああああああああああああああ!!』
ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
「きゃんっ!?」
大声で呼びかけると、ドラゴンさんも超大声で叫び返してきた。
あまりの音圧で耳栓は間に合ったけど私の体は吹っ飛ばされてそのまま山肌を下りかけてしまった。
まぁギリギリのところで飛行魔法を使って止まったからセーフ。
『まったく、なんだい!こちとら気持ちよく寝てたって言うのに····· おや?おやおやおや、石の子かい?』
「そうですよ、まったく、私じゃなかったら死んでますからね?」
態勢を立て直すと、火口の淵から超巨大なドラゴンが顔を出して私の事を見ていた。
大きさは顔だけで私の何十倍もあり、火口の淵に掛けた手でさえ私よりも大きいというとんでもないサイズだ。
たしか全長300mで高さ60mくらいある一番シンプルなドラゴンらしいドラゴンで、色はくすんだ赤色って感じだ。
どうやったらこんなデカい生き物が動けるのか不思議になるけど、多分魔力のせい。
大体ありえないことは魔力が原因だからそう言っておけば何とかなるのがこの世界の仕組みなのだ。
ちなみに普通に話せてるのは魔法のせいじゃなくてドラゴンさんが人の言葉をしゃべれるからだよ!
あと石の子って呼ばれてるのは、私が山頂にあった軽石で角質取りを作ったり庭石にしようと思って回収してたのと、巣までお呼ばれしたときに巣の中に蓄えてあった鉱物や宝石をやたら熱心にみてまわってたせいでそう呼ばれるようになった。
『で、どうしたんだい石の子よ、今日は冷えるのによく来たね』
「えーっと、今年はちょっとゴタゴタしちゃったみたいでプレゼントを届けるのができなかったみたいなので、私が代わりに来た感じです」
『おぉそうかい、確かにちょっと遅かったねぇ·····何があったんだい?』
「まぁそれを言う前に、預かったプレゼントとオマケの私からのお土産、受け取っちゃいません?」
『おぉいいねぇ、早速貰うとするよ、ほれ石の子、こっちに来なさい』
「あーい、お言葉に甘えてー」
ドラゴンさんが火口の淵から離れて巣の中央、富士山の二倍はあろうかという超巨大な火口の真ん中あたりにあるドラゴンの寝床へと案内された。
もちろん私もその後を追って、流石にサイズがアレなので飛行魔法で急いで後を追っていった。
◇
『さてとさてと、今回の贈り物はなんだい?』
「えーっと、いつもの火酒、魔物肉、魔石とか·····いつもの感じですね」
『おぉありがたいねぇ、ドラゴンは酒が好物だからねぇ』
ドラゴンさんの巣に案内された私は、早速荷物置き場に醤油づくりの樽かよってくらい大きい樽に入った度の高い酒を大量において、ほかにも新鮮な魔物肉や巨大な魔石などの貢ぎ物を置いて行った。
「ふぅ····· んじゃここからが私の贈り物ですね·····レディクルスさん、極上のお肉、いりませんか?」
『なんだいなんだい?極上とな?こう見えても我は結構グルメぞ?人如きの舌が我に通用するとでも·····』
「んっふっふ·····リヴァイアサンの肉でも?」
『·····詳しく聞かせて頂戴』
おっと早速釣れた、やはり食べたことがあるな?
リヴァイアサンの肉は極上中の極上、食べたら一週間は他のご飯が味気なく感じて満足できなくなっちゃうくらい美味しい最強のお肉だ。
やっぱり世界最強クラスの存在でもその味は通用するようだ。
「この前海に現れたんで狩ったんですよ、でもデカすぎて解体できなくて保管してるんで、ちょっと別けようかなって思ったんです」
『ほぅ?あの海の者の末裔を狩るとな?流石ではないか』
「んっふ~ん、私だって強くなってるんですよ!これでも一応神様ですし!」
『おぉそうだ、確かに神の力を感じるねぇ····· こりゃ我も負けそうだねぇ』
「まぁ戦う気はない·····あっ·····」
『どうしたんだい石の子よ?』
「いやちょっと面倒事が起きてて思い出しちゃって····· まぁ今は美味しい肉で一杯ぐびっと行きません?」
『それがいい、我は酔ったら安請け合いしてしまうからな!丁度良いだろう!·····だが我を満足させられる量をもってるのかい?』
「んふふふふ····· 私をなめてもらっちゃ困りますよ!逆に酔いつぶれないでくださいね?」
『ほぅ?中々威勢が良いではないか、だがとびきり旨い酒じゃなきゃ満足しないぞ?』
私は魔法でいくらでもお酒は出せるけど、流石にこの巨体を満足させる量を出すとなるとちょっと厳しいというかめんどくさい。
そこで私は秘策を使うことにした。
「·····異世界のお酒と5000年モノのワイン」
『·····なんだと?石の子よ、こっちにこい、話し合おうじゃないか』
「あーでも酒瓶一本分しかないんだよなぁ、あーあこれじゃ味もわかんないだろうなぁ」
『·····ちっ、仕方ない今回は我の負けだ、少し待ってな』
そういうとドラゴンのレディクルスさんは魔法を発動し、胸のあたりにある外部に露出した結晶体から魔力の塊が飛び出してきた。
ちなみに前にアレ欲しいってダダ捏ねたらガチで叩き潰された事ある。
そして肉眼で見えるほど高密度に圧縮された魔力が彼女の固有魔力によって魔法へと置き換わり·····
『ふぅ、どうだい?ヒトの姿なんて何千年ぶりだったか忘れちまったわ』
「あー大丈夫ですよ、でもちょっと胸が大きすぎますね」
『それは石の子の感想だろう?』
ちっ、この巨乳め·····
魔力はヒトの形をかたどると、一気に光から実態へと形を変えた。
そして鱗と同じ色の髪とカッコいい角が生えたツリ目でセクシーな巨乳で褐色肌のお姉さんになった魔力は、私に話しかけてきた。
そう、このドラゴン実は人間の姿にもなれる。
正確には、人間の体を疑似的に魔力で構築して意識を移して行動できるという、私の分身みたいなことをできるという訳なのだ。
「ちなみに前に人間になったのは数年前ですよ、もう忘れたんです?」
『·····そうだったかい?まぁそれより、本当に飲ませてくれるんだろうなぁ?』
「あったりまえですよ!ふふふ····· そしてこれが異世界のお酒ですよ·····!」
\ドン!/
私はレディクルスさんに見せつけるようにインベントリから日本酒の瓶を取り出して彼女に見せつけた。
『ほうほうほうほうほうほう····· 不思議な香りだねぇ····· さっ、早く飲ませておくれ』
「·····いやあの、寒くないんですか?」
『ドラゴンの体は丈夫だ、この程度ヘップシ!』
「·····一旦家に入りません?あるんでしょう?」
『·····そうしようかね』
ってわけで、私はレディクルスさんに案内され、火口の中にある下へと続く亀裂の中へと下って行った。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「ちなみにこの人と私が戦ったらギリ私が勝つくらい強いよ!·····まぁ、多分本気で戦ったら地球がぶっ飛ぶくらい大激戦になるよ、まぁあの胸部の結晶体の余剰次元構造に格納されてる本体出されたら勝てないけどね、だって超大質量ブラックホールよりデカいらしいし単体で銀河数個潰せるバケモンだし·····」




