Sランク冒険者専用クエスト!
アンデッドさんとの会談の前日·····
私はまたしても早朝、それも朝4時30分にフル装備で玄関に出てきていた。
お迎えはチェルの村に行ったときと同じでフィーロ君だけだ。
ちなみに今日は平日だけど私は学校を免除されてるから気にせず出かけられる。
「そんじゃ、いってきますー」
「ほんとに大丈夫なの?」
「大丈夫、登山は慣れてるから!」
「いや、そうじゃなくてさ····· フシ山の頂上ってドラゴンが住んでて危険なんだよね?」
「まぁそうだね、でも一応顔見知りだから大丈夫!それに、この町·····いや、この国を守る重要な依頼だからね!」
今日の依頼はなんと国から私に指名で依頼されたSランク冒険者専用のクエストなのだ!
目的地は天高くそびえるこの国を誇る超高山であり成層火山の『フシ山』の頂上にある巨大な火口の中だ。
まぁ、火口といってもフシ山は休火山で前に噴火したのは600年前らしいので、火口は既に冷え固まりクレーターみたいな感じになっている。
だが、ぶっちゃけ今は溶岩湖があった時より危険な場所になっている。
確か噴火が終わった100年後、今から500年前にドラゴンが火口を住処にしてしまったのだ。
そのドラゴンが普通のSランク冒険者3人とAランク冒険者15人、その他冒険者数百人と国軍何千人程度で倒せる相手なら問題はなかったのだが·····
「古代種、ねぇ·····」
「たまに飛んでるの見るよね····· 遠くにいるだけなのに凄い威圧感がするよね·····大丈夫?」
そう、火口に住んだのは『古代種』と呼ばれる、一説には人類誕生以前から存在し、この星が生まれるよりはるか昔から生きてるドラゴンだ、なんて言われてる凄いやべぇドラゴンだ。
ちなみに彼女は長い月日の果てに肉体はすべて魔力で置き換えられ、『ドラゴンという自然災害であり概念』という自立行動する魔法のような存在になってしまっているようだ。
んで、そんなのに暴れられたらこの国どころか世界が危ういけど、倒すのは絶対に無理だし、追い出そうとして怒られても確実に大惨事を招くと判断した国は、なんとドラゴンとの共生を提案し、毎年貢物などを贈って住んでもらうことにしたのだ。
そして交渉の結果、人間側はドラゴンに対して『人に危害を加えたり大きな自然災害を引き起こさなければ好きに住んでいいし毎年2回貢ぎ物を贈る』という約束を決め、居心地の良さに満足して上機嫌になったドラゴンは人間に対して『もし国の危機が訪れたらちょっとだけ手伝ってやる』と宣言、これによりサークレット王国は世界最強クラスのドラゴンがバックについた、海に囲まれた島国ということも含め防衛に関しては世界最強と言っても過言ではない国になったのだ。
んで、今日はそのドラゴンさんに挨拶と貢ぎ物のプレゼントに行く日なのだ。
ホントは9月頃の予定だったんだけど、戦争関連でゴタゴタして遅れちゃったそうだ。
んで、そろそろ年末も近付いてきて開戦待ったなしとなって交渉とかの機会が減って逆に落ち着いてきたのと、最終防衛ラインとしてドラゴンさんに手伝ってもらうお願いと遅れたお詫びをするために私が行くことになったのだ。
ちなみに前回までは校長先生がやってて、私は時々ふらっと遊びに行く知り合いのニンゲン?って感じの仲だったりする。
んで、校長先生が行方不明になったので代役として私が行くことになったのだ。
あと山も雪で覆われてて、荷物をもって集団で登山するのが不可能に近い状況なのも原因だそうだ。
「えーっと、荷物よし、私からのお土産よし、あの計画の準備·····ヨシっ!」
「忘れ物ないようにね?」
「大丈夫だよ!忘れてもすぐにとりに帰れるから!」
「はーい、じゃあいってらっしゃい」
「うん!いってきます!」
私はいつも通り行ってきますのチューをして自宅の玄関を開けて、まだ日が昇らず暗く寒い冬の朝の町へと一人で飛び出していった。
◇
「はうううぅぅ·····さむっ·····」
私は今、標高2000m以上の地点に立っていた。
ここまでは飛行魔法を使って飛んできたのだが、この上からは自力で歩いて登る予定だ。
しかし周囲は一面雪に覆われた銀世界で、傾斜角は20度から30度近くもあるためまるで超広大なスキー場の中に立ってるような感覚に陥ってしまう。
そして気温は既に氷点下を下回り、更にさえぎる物のない成層火山故に風が吹き荒れ極寒地獄となっている。
「はふぅ·····よし、いっちょやりますか、冬の登山」
実は私は前世から山登りが好きだった。
まぁ目的は鉱物を採取することで、そのついでで山を登ってたから結果的に好きになっちゃったんだけど、それでも富士山に登ったりするくらいは登山に慣れてて好きだった。
そして今世でもこの富士山の異世界版『フシ山』に登りたくて仕方なかったからドラゴンさんに交渉に行ってしまったくらいは好きだ。
ちなみにすでに15回は登ってドラゴンさんには呆れられてる。
「でも、冬の登山は初めてだから気を付けないと·····」
経験豊富な私でも冬の雪山の登山は実質これが初めてだ。
だから私は耐寒魔法を掛けて厚い防寒着に身を包んだその中に、魔導式メカニカルアーマーを装着して耐寒・対戦闘装備をしっかり整え、背中にはソフィちゃんの三種の神器『ガイウスの槍』『ラズワルド・ロッド』『星核合金製先丸栁刃包丁『星断』』を装備し、更に禁忌武器『冷凍バナナ』を携えている。
ちなみに冷凍バナナは私のオヤツだったけど凍っちゃって食べられなくなったバナナね。
「よし、行くか!」
早速私は登山道も山荘も無いエクストラハードモードの雪山に一歩足を踏み出して山肌を登り始めた。
山頂まで残り2500m
◇
標高2500m
出発地点から500mほど登ったあたりで早速問題が発生した。
「ちっ!魔物か!」
『ギィェアアアアア!』
雪に覆われた斜面と同じ真っ白い羽毛に包まれた足が恐竜みたいなエグい形の鳥が走ってわたしの元へ向かってきた。
ヤツの名前は『ユキクイドリ』、見た目は実在するヒクイドリに似てるけど脚力・スピード・爪の鋭さ・凶暴さが格段に上がっているB級魔物だ。
アイツに蹴られたらまず間違いなく私くらいの少女であれば死ぬ、肉は引き裂かれ骨は粉砕骨折し逃げようにも足の速さで追いつかれて蹴られ、そのまま全身ズタボロにされて死に至るだろう。
あと雪の上を走るのが得意で真っ白な羽毛で雪に紛れるから接近に気が付けない危険なヤツだ。
北の方の国では毎年死人を出している危険な魔物だ。
ちなみに肉の味は筋肉質でしっかりした味で、脂ののったダチョウ肉って感じの味だ。
つまり、コイツは美味しい食材という訳だ。
「ネギがカモ背負ってきた!いただきまーすっ!」
私は高速で接近するユキクイドリよりも早く腰に下げた脇差のような形の包丁を世界樹製の鞘から引き抜くと、そのまま包丁を振り抜いた。
いわゆる居合切りというヤツである。
そして真っ白な世界を一閃した一振りの藍色の包丁は陽炎のような光の歪みを生み出し、揺らぐ歪みの刃はユキクイドリめがけて飛翔し、一瞬でその首を切断して絶命させてしまった。
この星核合金製の包丁はありとあらゆるモノを切断する力があり、なんと『斬る』という現象を飛ばして遠距離にあるモノでも切断する事ができるのだ!
そして飛翔した斬撃は空間をも切断するため、無色透明であるはずなのに空間の歪みによって光も歪み、陽炎のような透明な刃が目で見えるようになるのだ。
これメッチャかっこいいのよ?
そして首が切断され絶命したユキクイドリは雪の中に倒れこみ、真っ白な雪と羽毛を赤く染め上げてしまった。
あっ、イチゴかき氷っぽい·····
レモン味はさっき作ったからこれで2つ目かな?
「ひゅーっ!さすがの切れ味!」
ズズズズズ·····
「へ?何の音?·····雪崩だあああああ!!?」
私はドジっていた。
空を裂いてユキクイドリの首を切り裂いて飛んだ斬撃は勢い余って背後の斜面をも切断し、深く積もった雪にクレパスの如き切れ込みを作っていたのだ。
そしてそれが発端となって、降り積もった雪が斜面を一気に駆け降りる現象、雪崩が発生してしまったのだ。
「んぎゃああああ!!!」
まぁ、巻き込まれたらまず間違いなく助からないので、私は大急ぎでユキクイドリの恐ろしい足をつかむと逆さにして血抜きをして雪の上に赤色の線を引きながら走って雪崩から乙女とは思えない絶叫をあげてユキクイドリの走りの如き華麗な足さばきで雪の上を走って逃げて行った。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「え?レモン味のかき氷のシロップはどこから出したんだって?·····サァ?ナンノコトカナー?·····ちなみにヒクイドリの血は滋養強壮に効果があるって噂だけどただでさえ肉が血っぽい臭いがするからしっかり血を抜かないと食えたもんじゃないよ、あと肉の色はカモ肉みたいに真っ赤よ、よく動く鳥は肉の色が赤くなるんだってさ、ところでレモンかき氷にチョコトッピングってアリだと思う?あとユキクイドリは寒冷地にしか現れないから分厚い脂肪の層で身を守ってるからすごくおいしいよ!イノシシ肉とカモ肉とダチョウ肉をかけ合わせた感じだね!んで、この肉はそのまま焼いて食べても美味しいし、太い骨からも出汁がよく出るから鍋とかにしても最高なんだよ!だから危険だけど狩りをする人が多い魔物だね!·····ちなみに弱点なんだけど、近距離特化型だから遠距離攻撃されるとどうしようもないのよね、まさに一撃必殺の近距離特化型って感じだよね!」




