渋谷事件
それはある日の渋谷で起きた。
「えーっと?さっきフィーロ君用の胃薬は買った、生理用品もOK、コタツで食べる用のミカンも買ったし····· あとはアルムちゃんを901に案内する予習で下見しとくくらいかなぁ」
その日、私はなかよし組のみんなからの依頼で一人で日本に来て買い物をしていた。
ちなみに日本に来れるようになって以来、私はちょいちょい日本でしか入手できない物を買って向こうに輸入してるのよね。
その中でも人気というかなんていうか·····
需要が1番多いのは生理用品だ。
生々しい話になっちゃうけど、向こうの世界の生理用品って正直サイアクなのよね。
無理やり布に染み込ませて対策したりとかだから不潔だし動きにくいしでさ·····
一応乾燥スライムを使った吸水ゲル式みたいなのもあるけどかなり高額だし数も少ないから多用も出来ないし·····
で、そんな所で日本の生理用品が手に入ったもんだから、あの利便性を味わってしまったらもう2度と戻れなくなってしまった。
そんでなかよし組は女子6人も居るせいで消費量がまぁ早い早い。
それとトイレットペーパーも向こうはガサガサの紙とか雑巾で拭く事もある感じなんだけど、まぁうん、日本の上質なトイレットペーパーなんて使ったらもう戻れないよね。
って訳で、今日も今日とて色々買い溜めに来たって訳よ。
ちなみにフィーロ君は追い付かないツッコミに時々胃痛を起こしてるからよく胃薬を飲んでる。
·····苦労を掛けさせてるみたいで申し訳ないから胃薬代は私が払ってる。
まぁそこら辺の買い物はもう終わらせたし、外国人っぽい見た目なのを利用して免税店で買わせて貰ってるから安上がりなのよね。
そんで次に私が向かってるのは、アルムちゃんのご要望でモデルをやるために必要な服の下見に渋谷901に行く下準備だ。
まぁ下見しなくても大丈夫だと思うけど、何せ前世はこういう所に無縁だったオッサンだから、近付くだけで魂が拒絶反応を起こして体が無為〇変する可能性があるから、予め近付いて死なないか確かめに来たってわけだ。
あとスムーズな案内が出来るようにする目的もあるけどね。
「んー····· やっぱり901行くの躊躇っちゃうなぁ、見た目は世代の女の子だけど中身おっさんなの抜けてないし·····」
が、特徴的なそのビルと増える若者女子の比率が増えると、まるで同極の磁石を合わせたような反発力を感じた。
·····こういう時は、鏡を見るに限る。
「んー、女子だな私、しかもバリ世代の女子だぁ」
近くのビルのガラスに反射した景色を見ると、そこには渋谷に居ても何らおかしくないかわいい女の子が居た。
そう、私だ。
·····
·····私だけだったら良いんだけどなぁ。
余計なもの見えたわ。
「·····はぁ」
しかし、ビルのガラスに反射した風景に、黒づくめの怪しい集団がこちらを伺っていて、さっと裏路地に隠れるのが見えてしまった。
っていうか、さっきから買い物中も付け回してきてるしさぁ·····
「なーんで私、厄介事を引き寄せちゃうんだろ····· ギャグ補正のせいかなぁ」
その渋谷に居るにはちょっと所ではない違和感を感じさせる黒スーツの一味を無視して、私は渋谷901の中に逃げ込んだ。
◇
〜1時間後〜
「·····疲れた」
うん。
渋谷901の中ああなってたのね。
めっちゃ中混んでるしごっちゃごちゃで迷い散らかしたわ。
死ぬかと思った。
「で、外出ても待ってるしさぁ·····」
が、こんだけ迷い散らかしても奴らは外で待っていた。
流石にちょっと暇そうにしてたのは千里眼で見てたけど、それでも近くから離れる事はなくて正直転移で逃げようかと思ったくらいだ。
「まぁいいや····· 鬼が出るか蛇が出るか気になるし、ちょっと引っ掛けてみるか」
私は1日に3回生き返る事ができる。
故に、割とこういう危ない状況になっても別にいいやって思ってしまって、つい手を出してしまう癖がある。
前に雷雨の日に鉄のポール持ってたら雷落ちるか試して本当に落ちてきて爆散したり、竜巻に飛び込んだらどうなるか試して地面に叩きつけられて即死したり、溶岩湖で焼きマシュマロしようとして丸焼きソフィマロになったり·····
まぁいっつもそんな感じだから、今日も今日とて危険に手を出すとすることにした。
「おー、目的のお店、こっちの裏路地通った方が近いなー!危なそうだけど通っちゃおうかなー!」
「·····!」
ガサッ
私はわざとらしく行き先を伝えてから、有言実行とばかりに人通りがほぼ無い裏路地へと踏み込んだ。
次の瞬間
「超能力者強制収容プロトコルを開始、総員、手短に収容せよ!」
パンッ!
バヂヂヂヂッ!!!
「あいででででっ!!!!?あばっ!!アババババッ!!!!」
「なっ!?」
「テーザー銃もう1つ頼む!」
パァンッ!
バヂヂヂヂッ!!
「ぐぁいででででっ!!!?!?しびっ!しびれびれーっ!!!?」
「効かない·····!?少なくともクラス5だ!私がやる!皆下がれ!」
「あばば····· あっ切れた、んで次は?」
テーザー銃を2発喰らったけど、そもそも雷に打たれても気合い入れてれば耐えられる私にテーザー銃程度の攻撃は意味をなさない。
もし今の私に効果を出したいならもっとギャグ的なノリでやらないとそもそも効かないのよね。
何せ、キノコ神拳を使ってるもの。
「急急如律令ッ!!」
シュバババババッ!!
「アイエエエ!?印を結んでる!?ニンジャ!?」
「霊魂達よ、拘束せよ!」
「うわっと!?なん、まさか呪術師!?いや陰陽師ってやつか!!ホントに居るとはっ!!」
リーダーっぽい女性が表に出てきた瞬間、まるでニンジャのように印を結んで何やら呪術を繰り出してきた。
渋谷だからてっきり呪術師かと思ったけど、よく見たら陰陽珠のバッジを付けてるからたぶん陰陽師だ。
それに、呪術を繰り出した途端に私の周囲の気温がぐっと下がり、霊魂が現れて私にしがみつこうとしてきた。
しかも魔物ならかなり高ランクな幽霊ばかりで、相当な実力者なのが見て取れた。
「だけど!破ァッ!!」
『オオォォォォ····· ジョウカサレチャウ·····』
『オオォ····· カミサマ·····』
私は生憎魂の管理者、神なのよ!!
「なっ!?呪術まで使いこなすか·····!!危険度を最大まで上げます、総員第一種戦闘配置!」
『『はい!』』
「そっちが呪術で行くなら····· こっちだって呪術よ!キノコ神拳究極奥義『キノコが無料?食うっしょ!』」
\にょきーん/
「なっ!?体からキノコが!?」
「隊長下ネタはやめ、うわ本当にキノコが生えてきた!?」
「よ、養分が吸われ·····」
「あっまてお前、松茸生えてきてるぞ!!動くな!」
私が領域を展開した瞬間、黒づくめの集団からキノコが生え始めた。
それだけではない、周囲のビルの壁や地面からもキノコがにょきにょき生えてきた。
しかもなんと全部食用の美味しいキノコばかりだ。
この術式は究極奥義レベル、通常なら毒キノコとかばかりな所を美味しいキノコだけにするには、少なくとも師範代クラスの実力が必須なのだ!!
「くっ、邪魔だ!キノコが邪魔で印が結べない·····!!指の間からエノキ生えるのが邪魔だし気持ち悪い!!」
「それ茶えのきですね」
「くっ!だから何だ!!!」
「鍋の具材にするとそれ絶品なんですよ〜」
「そんな事聞いてない!!くそ、大人しく収容されろ!!」
パァンッ!!
隊長と呼ばれてた指の間から茶えのきが生える女性がなんとかテーザー銃を構えて撃ったが·····
「な、なんだこれ!?」
「ナメコ」
「ふざ、けるな·····!!!」
テーザー銃からはナメコが飛び出した。
そう、これこそが私の領域なのだ!!
「待てお前!松茸狩りの時間だ!!」
「追い掛けて来るな!俺はトリュフ拾いで忙しいんだ!!」
「くそ、隊員はキノコ狩りに夢中に····· 精神攻撃もしてくるのか·····!!」
「いや何それ知らん、怖·····」
ちなみにこの術式····· 違った、究極奥義は別に喰らった人に無理やりキノコ狩りをさせる効果なんてない。
なんであの人ら急にキノコ狩り始めてんの?
「こちら『アンデッド』!発砲許可を願う!!」
『了解、発砲を許可する』
「殺意は無いが····· 死にたくないなら動くな!」
チャカッ!
「うわっ!?実銃出したきた!!?·····ん?ニューセイブM60リボルバー拳銃?って事は、ただのゴロツキじゃない····· 公務員かっ!!」
「そうです、私たちは超能力者の保護と収容を目的とした極秘組織です、事情は後で説明しますので····· 失礼」
「ふんっ!!」
\カァンッ!!/
カチッ
\ぶにょ/
「なっ、くそ!!撃鉄にキノコが挟まった!!!?」
「セーフティが掛かってるぞルーキー!」
「セーフティじゃなくてキノコよ!!?」
ガッ!
「うっ!?がはっ!?」
ドガッ!!
私は仮称『アンデッド』さんにCQCを仕掛け、リボルバーを手際よく分解するとそのまま顎とお腹に軽く一撃喰らわせ、怯んだ所に足を掛け腕を掴んで地面へと薙ぎ倒した。
「いっちょあがりっと、それじゃ私はまだ用事あるんでこの辺りで失礼しますね」
「くっ、なぜ····· 抵抗する·····!!」
「いやだって、問答無用でテーザー銃打ち込んできたのそっちでしょ·····」
「だが、収容プロトコル·····」
「·····その前にさ、社会人としてまずは挨拶して話し合いすべきでしょ?まぁアイサツ前のアンブッシュは1度に限り許されてるけどさ」
「むぐ····· 確かにそうだが·····」
「えっこのネタ通じた·····?いや、えーっと、話し掛けて来たら応じようかなとか思ってたんだけど、そっちが手荒な手段で襲ってきたんだからやり返すに決まってるじゃん」
「くっ····· 殺せ·····!」
「いや今そういうのいいんで、あのさ?こっちはテーザー銃2発も喰らってんの、わかる?しかも問答無用で」
「·····」
「全くもー····· これだから融通の効かない公務員は····· もし話をしたかったらちゃんと席を設けてくださいね、一般常識として」
「·····だが」
シュトッ!
「連絡先はここに書いてるんで、決まったら連絡下さいね、暴力には暴力を、対話には対話を返すつもりなんでそこんところヨロシク」
私は連絡先が書かれたメモをアンデッドさんの目の前のコンクリートの地面に投げて突き刺した。
ちなみにちょっとカッコつけてみた。
ぶっつけ本番だったけど出来て嬉しい。
「んじゃそのキノコは好きに食べてくださいね、再見〜」
私は手のひらをヒラヒラと振りながら、キノコまみれの裏路地から抜け出し渋谷の人混みの中へと消えていった·····
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「よし、良い感じにキマッ····· うわ!?いきなり連絡来た!?すんげぇ鬼電されてるんだけど!?うわうわうわうわ!通知がもう100超えたしトラッキングされてんだけど!!ええい!ミュートじゃミュート!!一旦落ち着けゴルァ!!」




