移ろう季節を楽しむために
私が宇宙空間で宇宙戦争ごっこをしてからはや数ヶ月も経過し、季節もほとんど冬になってしまった。
そんな冬まっしぐらな景色に変わる11月某日の事·····
「ねー、フィーロ君、ウチに薪ってあったっけ?」
「ないよ?フシ町の方には····· 無いかな、だってうち魔導ストーブじゃん」
「だよねー·····」
今日はマグウェル街の商店街にフィーロ君と二人でデートと言う名の買い物をしに来ていた。
目的はというと、私が気まぐれで薪ストーブを作ったので、その上であったかいホワイトシチューでもコトコト煮込んで食べようという話になってその買い出しにきていたのだ。
·····というか、ストーブは作ったんだけど肝心の薪が一個もなかったし、シチューの具材用のソーセージが無かったから買い出しに来てるんだけどね。
あと実は薪を世界樹の枝で作ってみたんだけど、燃えなかった。
1500度に熱しても燃えなかった。
マジでどうなってんのアレ·····
って事で諦めてちゃんと薪を買いに来たって訳だ。
ちなみに後で気合いで燃やしてみたら薪ストーブが先に融けて泣いた。
薪は燃えなかった。
「でもなんで急に薪ストーブなんか思いついたの?」
「ん?なんとなく」
「あー、いつものね」
「そうそう、いつものいつもの」
なんか最近、フィーロ君が私が思い付きで行動することに慣れてきた感がある。
まぁ私が思い付きで行動しすぎてなれちゃうくらいやってたのが原因だけどねっ☆
ちなみに今回は珍しくフィーロ君も賛同してくれた公認のプランだったりする。
その理由は、うちには火魔法を使って温める暖房設備しかなかったからだ。
もちろん火魔法式暖房器具は燃料いらず(日常生活で排出される魔力で稼働するため実際には燃料は必要)だからエコだし、火魔法といっても炎を使わず大気を直接温めてるため一酸化炭素中毒が発生する心配もなく、温度もエアコンみたいに自由に調節できる、下手したら貴族とか王様でさえ持ってないような超ハイテクな魔導式暖房器具なのだ!
でも、欠点としては調理に使えない事や、遠赤外線を放出しないため手を近付けてもあのピリピリジワジワするような熱気が感じらない事、そして何より炎が見えないからなんか味気ないのだ!!
って訳で、家を建ててから半年以上経ってやっとこさ作る気になったという訳だ。
いやね?家を建てたのが2月とかで、そのあとはもう暖かくなる一方で暖房がそこまで必要じゃなかったからで、やる気がなかったとかそういうのじゃないからね?
「えーっと、薪ってどこらへんで売ってるかな·····」
「フシ町の薪売り場なら知ってるんだけど····· この町のはどこにあるんだろ」
そして、今まで燃料いらずな暖房を使っていた弊害が早速発生していた。
どこで薪を買えばいいか知らなかったのだ。
フィーロ君の家では薪ストーブとか暖炉を使ってたからフシ町の薪売り場を知ってるっぽいけど、この町に来てからはずっと寮で生活してたから無縁だったし、寮を出てからは私の作った暖房を使ってたから一度も薪を買いに行ったことが無かったのだ。
一応自分で木を生やして切り倒して脱水して割って·····という作業をすれば自分でも作れるんだけど、めんどくさくて今日は買いに来てたのだ。
魔法を使えば時間のかかる脱水の工程も一瞬で終わらせられるけど、めんどくさくて仕方なかったので買いに来たという訳だ。
「うーん····· 誰かに聞くしかないかなぁ·····」
「それしかないんじゃ····· あっ」
「ん?あった?」
「いや、薪持ってる人が·····」
「どこ?あーあの人か、ほんとだ」
フィーロ君の視線の先に、金太郎じゃなくて櫻井じゃなくて·····なんだっけ、動く銅像の····· 思い出した、二宮金次郎像っぽい感じで薪を背負った女性が自宅と思わしき方向へ歩いて行っていた。
それだけじゃなくて、同じ方向から薪を背負ったり手に持ったり荷馬車に積んだ人が複数やって来ていた。
「あっちかな?」
「そうじゃない?」
「んじゃいってみよー!」
「はーい」
薪を持ってる人がやってくる方に薪売り場があると推測した私たちは、早速そっちの方へと·····
「ちょいまち、ドーナツ屋近いから買ってくる!」
「あー、わかった、僕も行く」
·····ちょっと寄り道してから行くことにした。
◇
寄り道しに来たのは、顔なじみというか最早店員になりかけてるくらい来てるお気に入りのドーナツ屋·····じゃなくてパン屋だ。
私はここのチョコ掛けドーナツ、いわゆるオールドファッションと呼ばれる昔ながらのドーナツが大好物で、一時期食べ過ぎて太ってしまったほど好きなのだ!
ちなみにオールドファッションっていうと私も大好きな某紳士なドーナツ屋の商品と思われがちだけど、実際はドーナツの種類の名前で誰でも使ってもいい名前だそうだ。
って日本に行ったときネットで調べたら出てきたから、これからはバンバン言おうと思う。
「おっちゃん!いつものセット!」
「おぉ久しぶりだな、もちろんあるぞ、ちょっと待ってろ」
「あっ、僕も食べたいんで一つ追加でお願いします」
パン屋の前にやってきた私は、早速おっちゃんに話しかけていつものセットを注文した。
ちなみにいつものセットはプレーン2:チョコ掛け6:お任せフレーバー2の私がいつも頼んでいるセットの事だ。
私ならこの程度一日で食べちゃうけど、さすがに太るので一日2個までと決めている。
あと、お砂糖は今もエビちゃん印のお砂糖を使っている。
ちなみにエビちゃんが砂糖を吐く発作は収まったんだけど、代わりに魔力を砂糖に変換する謎スキルを覚えたらしくてお小遣い稼ぎで有り余る魔力を砂糖に変えて売ってるそうだ。
実はエビちゃんが砂糖を供給し始めてからこの町でスイーツ大革命が発生して、甘い物が贅沢品から誰でも手が届くレベルまで下がったし、全国から砂糖を求めて買いに来る行商人や有名パティスぃ·····ぱてしえ·····パティスウェ····· むぐぐ····· ビゥッヘとかそういう言葉言うの苦手なのよ·····
えーっと····· そう、パティシエだ、やっとうまく言えた·····
で、そのパティシエの人達が沢山来てこの町で開業してるから、急にレベルの高いお菓子が出回り始めたのだ。
そしてアルムちゃんとエビちゃんは既にお金稼ぎの作戦を立て始めてて、表では女子向けの雑貨や日本からの異世界輸入品や私の作る安価な魔道具の販売をして、裏では砂糖の卸売りやお金持ち向けに私の作るハイレベルな魔道具の販売をする感じで計画を進めているようだ。
ちなみに首謀者のアルムちゃんの欲望はいつか金貨で満たしたお風呂に入る事だそうだ。
·····金って滅茶苦茶重いから入ったらつぶされると思うんだけど、楽しそうに語ってたから黙っているというか言えないでいる。
「あれっ!?ポトフ始めたんですか!?」
「おう、もう寒くなってきたからな」
「やった!買います!」
「おう、コップは·····どうする?」
「もちろん持ってきてますよ!!」
とうとうこの季節が始まったか·····!!
このお店のポトフは私も参考にしたというか、一時期バイトさせてもらってレシピを教えてもらったくらい美味しいのだ!
そして冬時になると寸胴で大量のポトフを作って、コップを持っていくと1杯50円~でコップに入れてホカホカのポトフを飲み歩きできる最高のサービスが始まるのだ!!
ちなみに美味しい理由は総菜パンを作るときに余った色々な種類の野菜の切れ端とか余った肉類をありったけぶち込んで煮込んでるからだ。
後ポトフの味の決め手となるブイヨンには、ブイヨン用の材料に加えて余った野菜や肉もこれでもかとぶち込まれているけど、コンソメとは違って作り方は割と雑で濁り気味な感じだ。
自称プロの人とかが見たらネットに文句たらしまくりそうだけど、味のパンチ力は澄んだものよりはるかに強いけどとてもやさしい肝っ玉母さんみたいな味付けだ。
ちなみにちなみに具材にはあまりもの以外にも仲のいい肉屋から仕入れたポトフ専用のソーセージやたまにベーコンなんかが使われててこれがまた旨いのだ。
後ジャガイモがほっくほくで美味しい。
そしてこのポトフはもとより飲み歩きすることを想定されているから具材は小さめになっていて、ソーセージなんかは輪切りになって入っているから、歩きながら飲んでも具材が一口で入ってくるから飲みやすいし食べやすい工夫もなされている。
ちなみにこれ提案者は私ね、一回口に巨大激熱ジャガイモがガポって入ってきて大ヤケドしたから小さくしてみたら?って提案したのだ。
アレは痛かった、回復魔法が無かったらしばらく固形食が食べれないくらい酷かった。
·····で、長々といったけど結論をまとめると、寒空の下で歩きながらハフハフ言いながら飲むアツアツのポトフは最高に美味しいから買わざるを得ない、ということだ。
◇
「はふぅ·····」
「はぁ·····」
寄り道を終えて、本来の目的であった薪売り場へと私たちは向かっていた。
もちろんその道中は先ほど買ったポトフを片手に、ドーナツをもう片手にもって、アツアツのポトフを飲んで暖まりながらだ。
アツアツのポトフのお陰で私たちは体が冷えることもなく、体温で暖まったのか他の人たちより多い量の白い息を出しながら歩いてゆく。
「ん?あれってもしかしなくても薪売り場かな?」
「そうじゃない?というかあの人って·····」
私たちの視線の先には、なんかすんごい大木を一人で運んでる若い女性と、ゴツい筋骨隆々の男性が居た。
実はあの二人と私たちは面識がある。
というのも、あの二人は私たちが6歳のころから時々依頼で手伝いに行っていた木こりの夫婦なのだ。
あの巨木を一人で運んでる人は大斧をぶん回す可憐な女性、アクシアさん。
そしていかにも木こりっぽい男性は夫のストレングさんだ。
ちなみにストレングさんは意外と器用な作業が得意で、薪を結んだりするのは彼の役目だそうだ。
「おーい!アクシアさーん!」
「はい〜?あら〜、ソフィちゃんじゃない〜」
「お久しぶりです!」
よかった、やっぱりアクシアさんだ、あの間延びした優しい声はアクシアさんの最大の特徴だ。
ちなみにアクシアさんの口調は長時間いっしょにいると伝搬して間延びした口調になっちゃうのよ〜
「ん?おおっ!なかよし組の2人か!今日も依頼·····は出してないな、散歩にでも来たのか?」
「あっ、今日は薪を買いに来たんです!」
「そうなのか?前に薪は自分で用意してるとか言ってなかったか?」
「いや、実は薪は使ってなくて魔力式の暖房を使ってたんですよ、でも料理とかにも使えるんで薪ストーブを新調したから買いに来たんです!」
「おお!やっと薪の良さに気がついたか!」
「いや、いいなとは思ってたんですけど換気不要の暖房が便利すぎて·····」
「確かにな····· そうだ、薪は密室で燃やすなよ?毒が充満して死ぬぞ?」
「もちろん知ってますよ!換気設備もバッチリです!」
「よし、なら良い、で?何キロ買うか?」
「えっ?えー····· お試しで1週間分?」
「じゃあ大体150キロ····· ストーブの大きさは?」
「えーと、このくらいです」
私は手を広げてストーブの大きさを見せた。
ちなみに大きさは私が抱きつくと半分くらい包み込めるちょっと小型くらいのストーブだ。
「小さめか、だとすれば100kgあれば十分だろう」
「はーい、じゃあ100kgでお願いします!」
「おう····· 今更だが運べるか?子供二人で100kgは普通ならかなり無理があるぞ?荷車でも貸そうか?」
「いや大丈夫です、魔法で運ぶので」
100kgは私みたいな華奢な少女と、女の子みたいなナヨナヨな男の子の2人で運べるような重量ではない。
しかも薪は結構な量なので手に運ぶのも無理だろう。
ちなみに強化魔法とかを掛けてない私は精々35kgとかの体重より軽いものしか運べない。
えっ私の体重?えーと、えっと、えーーっと····· だ、だいたい300gだよ?
ごめんなさい嘘です43kgです·····
「はい〜薪持ってきたわよ〜、だいじょうぶ〜?」
「あっはい〜、大丈夫です〜」
言いたくもない体重公開をさせられている間に、アクシアさんが100kg分の薪を持ってきてくれていた。
ちなみに言っておくけど脂肪が多いとかじゃないからね?こう見えてそこそこアスリート体型····· は言い過ぎだけど、全国大会常連の陸上部員くらいの体型はキープしてるのよ?
だから体重の大半は脂肪じゃなくて筋肉なのよ!!
「ソフィちゃん〜?」
「あっ!すいません〜!」
まったく····· 体重公開なんかさせるから·····
なんてぶつくさ心の中で文句を言いながら、私はアクシアさんから大量の薪を受け取った。
「よっと、あーこれ次たくさん買う時は荷台付きケッテンクラートで来なきゃダメかな·····」
「うんうん、魔法で浮かして運べるけどこれくらいの量でも結構目立つからね·····」
「魔法って便利ね〜」
「·····俺も多少は使えるが、あんだけ沢山持ち上げるのは無理だぞ?」
ちなみにケッテンクラートは最近は専ら私の暇つぶしで一人旅したり爆走する時用にしか使われてない。
みんなで長距離移動する時は魔動トラックを使ってるからねっ☆
「じゃあ私はこのまま持って帰りますね〜、お代はおいくらです?」
「5000円だ」
「おぅ·····」
「意外と高いだろ?でもこれでも安い方だぜ?」
薪って意外と高いのね·····
でもキロ50円って考えると手間も含めたらかなり安いのかな?
「んじゃ、ありがとうございました〜」
「ありがとうございました」
「は〜い、時々買いに来てね〜」
「·····ウチの薪は高品質だからまた買いに来いよ」
「はーい!」
そんな訳で、私は頭上に大量の薪を浮かべながら、フィーロ君と一緒に手を繋ぎ、冬の寒さを蹴散らすくらい熱々でラブラブしながら自宅へと帰って行った。
·····そのまま帰ったらエビちゃんに砂糖を掛けられた。
塩じゃないのか·····
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「薪ストーブを作ったからスキレットとかもつくってあるよ!いやー楽しみ!焼くためのベーコンとかソーセージも買ってきたし、向こうでマシュマロも買ってきたから焼いて食べよっと!!」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「薪を浮かべて運ぶのほんと便利だなぁ····· 僕も出来るからこんどやってみよっと、でもすごく目立つのが欠点かな·····」




