やる気の無い日があったっていい
日本から帰って二日後のこと·····
私たちは日本で買ったゲームで1VS1の対戦をやっていた時の事だった。
「あー負けちゃった!んじゃ次はソフィちゃんね!」
「はーーーーーーー·····」
ぷつん
最近ゲームの腕が上がりまくってるウナちゃんに惨敗したアルムちゃんがコントローラーを私に差し出した瞬間、私の中で何かのスイッチが切れた。
このスイッチが切れるような感覚は時々やってきて、大体が『なんか、もうなんでもいいや』って感じの投げやりな感じというか、なんにもやる気が出てこなくなるのだ。
大体が忙しい仕事を終えた後か、やりたいことが多すぎる時に発生して、更に生理が重なるとかなり高確率で発生する·····現象?がコレなのだ。
「あっ、ソフィちゃんがダメになった」
「あー·····じゃあ僕が引き取るよ」
「助かるわ、こうなったらもう動かないものね」
「え~?わたしソフィちゃんとバトルしたかった·····」
「まぁ仕方ないじゃろ?代わりにワシとやるか?」
「おやすみ~」
「ママが変になっちゃった!?」
なんにもやる気が起きなくなっちゃってボケーっとしてる私を、同じソファに座ってたフィーロ君が抱き寄せてきて、私は彼の体に身を預けてぼーっとした。
この状態、眠いとか体調が悪いとかは全くないんだけど、ほんとに何をする気にもなれなくて思考もほとんど停止状態になっちゃうのだ。
「ソフィちゃん、今日はどうしたの?疲れた?」
「あー·····わかんない·····」
「うん、いつも通りだね、お疲れ様」
「あいあい·····」
私は時々暇を持て余したフィーロ君の問いかけにぼんやり答えながら、みんながゲームをする様子を眺めていた。
·····けど、途中でなんだかフィーロ君に甘えたくなったから甘えた。
◇
僕の彼女は時々動かなくなる。
今もこうして僕の体に寄り掛かって、ただひたすら喋ることもなくボーっとしている。
普段はケラケラ笑って賑やかにお喋りしているいっつも笑顔の明るい子だけど、この時だけはなんだか大人しくなっちゃって少し暗い表情をする。
まぁ、ソフィちゃんにも色々事情があるのはよく知ってるし、いっつも頑張ってるのを僕はしってるから、何も言わないでこうして一番心が安らぐであろう僕の近くでのんびりさせてあげている。
·····正直心配なんだけど、ソフィちゃんも特に何か病気な訳じゃないとは言ってるし、今回は事前に『疲れが溜まってるからなるかも』と伝えられてた。
実は、ソフィちゃんは向こうから帰ってきてからかなり頑張っていた。
温泉旅館で僕たちにも伝えた戦争の対応、チェルの家族から最後に依頼された仕事、学校の卒業試験の勉強、新しい魔道具の設計開発、チェルのお世話、みんなのご飯の調理、日本で買ってきたものの検査とか分別、それをみんなに配ること、ゲームができるようにするための整備とか、他にもいろいろな事をずっとやっていた。
僕なら一つ二つが限界そうなことを、ソフィちゃんはずっとやっていた。
いつも僕とソフィちゃんは同じベッドで寝てるんだけど、たまに夜な夜な僕が寝た後に起きて作業をしてたりする事がある。
ここ二日は僕が寝たのを確認すると、ベッドから出て彼女が自分で作ったというパソコンで何か作業を続けていたり、頭を悩ませるような仕草をしていた。
だからあんまり寝ていないだろうし、毎日ずっと作業をしていたからソフィちゃんの心は限界を迎えて動きを止めちゃったのだろう。
「·····お疲れ様、ゆっくり休んでいいよ」
「うん·····」
そういうと、ソフィちゃんは僕にピタッとくっついてきた。
ソフィちゃんはつい無理をしちゃう癖がある。
後からでも、先延ばしにできる事でも、なんでもいっぺんに早く終わらせようとしちゃうのだ。
そのせいで毎日寝ないでずっと作業をしたり、寝たと思ってもソフィちゃんの分身がやってきて作業を引き継いでたりしている。
そして本人は「一人の私が作業してる間にこっちは寝てるからへーきへーき!」って言ってるけど、それで休まるのは体だけで、精神はずっと使われてすり減っているのは僕から見てもわかる。
だって数日後にはフラフラになって変に笑い始めたりして、最後はこうしてピタッと動きを止めちゃうのだから。
たぶん、もう心が限界ってなって勝手に頭が働かなくなって、自分自身によって強制的に休まされちゃうのだろう。
だから、こうなった時は僕が近くに居て休むよう言ってあげるのが1番良い。
「あんまり無茶しないでね、急がなくてもいいから」
「·····うん」
ソフィちゃんは僕の問いかけにぼんやり返事をして、僕の胸に顔をうずめてきた。
あぁ、ソフィちゃんには申し訳ないけど、可愛い·····
こうして、疲れて甘えてくるソフィちゃんを独占するのは僕だけの特権だ。
そう、最近ソフィちゃんが僕に甘えにくる事が増えてきたのだ。
最初は疲れすぎて無意識でやってるんじゃないかって心配したけど、元気な時にも意味なく甘えに来たから癖になってるだけなんだろう。
でも、それが可愛いと僕は感じる。
ずっと元気いっぱいで1人で突っ走って、悩みなんて全くない元気な子だと思ってたのに、裏では誰にも見せないようこっそり1人で弱っていたというギャップが凄く良かった。
それと同時に、守ってあげたいって生まれて初めて思った。
だから、こうして人目もはばからず甘えに来てるソフィちゃんを、僕は精一杯甘えさせて元気づけて守ってあげたい。
僕はそんな些細な欲望を叶えるために、ソフィちゃんに寄り添った。
◇
「·····あのさ、アレどうにかしない?」
「そうね、ゲームに集中できないわ」
「あのままだと風邪ひいちゃいそう·····」
「全く、あやつら本当に人目もはばからずイチャつきやがって·····」
「ん、なかむつまじい」
「パパとママ、ラブラブだなぁ·····」
結局、甘えてくるソフィに構っていたフィーロもソフィと一緒にソファに座りながら寝てしまった。
残されたなかよし組のメンバーは、イチャついていた2人に毒ではなく砂糖を吐き、口の中を甘ったるくしながら2人に布団を掛けてあげた。
「さてと、これから何やる?」
『『徹夜でゲーム!!』』
「だよね!!徹夜はお肌の敵だけど····· たまにはいいよねっ!!よーし!みんな!今日は寝ないよー!!」
『『おーっ!!』』
なかよし組の長い長い夜は····· 始まらなかった。
1時間後には、全員がフィーロとソフィの寝息に釣られて寝てしまったからだ。
まぁ、たまにはこういうのんびりした日があってもいいだろう。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「たまにはおやすみ回····· 私も疲れる時は疲れちゃうんだよね····· 明日からは本気出す·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「ゆっくり休んでいいよ、ソフィちゃん····· 」




