どけ!私はお母さんだぞ!!!
ある日の放課後、私たちは魔法学園都市の家の作戦会議室で会議を行っていた。
「·····今日みんなに集まってもらったのは他でもない、アレの対策についてよ」
「うわぁ····· 何あれ·····」
「ここって2階だよね?」
「そのはずよ、ここって窓の外にバルコニーあったかしら?」
「ないよー!ストンってなってるよ!」
「·····あやつはトカゲか何かか?」
「·····何が変?」
私の後ろの窓には、いつぞやのやべーエルフこと『テュイェル・スェイゥルュゥ』が張り付いていて、「パパ!ママ!開けてよ!」なんて言いながら窓が割れそうなくらいめちゃくちゃなパワーで叩いてる。
うん、私の強化魔法がなかったら割れてるからね?
全部魔導コランダムで作ってても割れるもんは割れるからね?
というか、そこの窓って足場のない壁にあるはずなんだけど、なんで立ってるん?
「·····もう疲れてきた、なんか意見ない?」
「はーい!」
「はいアルムちゃん」
「魔法で強制送還!」
「·····したいんだけど、アレ絶対帰ってくるでしょ」
「だよねぇ·····」
「もう諦めて認めたらどうかしら?」
「絶対嫌だわ、めんどくさいもん」
「じゃあ追い払い続けるのは?」
「うーん····· 今のところ最有力·····」
「どうせ彼奴はこの国に知り合いがおらぬのじゃろう?ならば消せば良いのじゃ、存在そのものを消滅させたらバレないのじゃ、それにこの世界では旅人や迷子が何処かで野垂れ死にして見つからない事も多々あるのじゃ、じゃから死体を残さなければ大丈夫なのじゃ」
「いやぁ殺人は流石に嫌かなぁ·····」
「·····ソフィちゃん、話し合い、した?」
「最初にあった時に少しだけ、その後はめんどくさいから追い払ってるよ」
「·····ソフィちゃん、1度ちゃんと話してケリを付けなきゃダメだと思うよ」
えっ、フィーロ君も話し合い賛成派?
私、嫌なんだけど·····
でもフィーロ君の言うことにも一理あるんだよね·····
だって何度追い払っても、警備の人に捕まえて貰っても逃げ出したりうまく言い逃れして絶対に来るんだもん·····
あと、この子は悪意があってやってる訳じゃなくて、マジで自分が私たちの子供だと思ってるやべー子だからこそ、私は強制送還したり、最悪の手段を取るつもりになれないのだ。
基本的に私は優しいから、困ってたりする人を見るとほっとけない性格なのだ。
コラそこの読者、私の事を『極悪非道のドSサイコパスマッドサイエンティスト』なんて思ってるんじゃない、私はマジで割と優しいんだからね?
無益な殺生はしたくないし、重い荷物を運んでるおばあちゃんが居たら助けたり、迷子を親の所に届けたりするくらい優しいんだからね?
「よし、覚悟を決めて対談してみますかっ!」
「僕もそれがいいと思う····· ずっと張り付かれててまともに外にも出歩けないくらいだし·····」
という訳で、やべーエルフのチェルと話してみる事にした。
◇
とりあえず、エルフ語を話すチェルと会話ができるのは私だけなのと、もしかしたら戦いが始まるかもしれないからなかよし組には部屋から出てもらって、映像で見てもらうことにした。
そして遂に、私はアイツが張り付いてる窓を開けた。
「·····入っていいよ」
「やった!ありがとうママ!」
窓を開けて気がついたけど、この子地面から巨大なツタを生やして、その上に乗って2階まで来ていたみたいだ。
流石は自然と共に生きる種族のエルフと言ったところか、植物を操ったり生やす力があるようだ。
はぁ、後で草刈りしなきゃ·····
「なんで入れてくれたの?ママわたしのこと嫌いなんじゃないの·····?」
「はぁ····· いい加減しつこくなってきたから、ここらで一旦ちゃんと話そうって思ったんだよ」
「そっか、ありがとねママ」
「んじゃそこの椅子に座って、ちょっと真面目に話そう」
「わかった」
チェルは私の指示に素直に従い、会議室の椅子に座った。
そして私はチェルとは反対側の椅子へと座った。
「まどろっこしいのは嫌だから率直に聞くよ、君は私たちの子供になって何がしたいの?」
「何って言われても····· 一緒にご飯食べたり、おしゃべりしたり?」
「日常生活ってわけか····· んじゃ次、君の生みの親は?」
「えっ?ママでしょ?」
「私は子供を産んだことはないよ、じゃあ君の本当のママは誰?」
「ママはママって言ってるじゃん!何言ってるのママ!おかしいよ!」
「ふむふむ·····」
大方見当がついてきた。
やべーエルフって思ってたけど、これ思ったより深刻かもしれない。
よし、もうちょっと色々診断してみるか。
「おーけー、君のママは私だよ」
「そうだよ!ママは私のママなんだよ!わたし言ってるじゃん!パパもなんでだまってるの!?いるんでしょ!?パパのばかっ!しゃべってよ!!」
いらっ·····
「·····あのさぁ、私だって暇じゃないの、アンタみたいな狂人の相手してる間にも出来る事····· いや、やらなきゃいけない事は沢山あるし、保護したけどそれもよくある事、アンタにママと呼ばれて付きまとわれる筋合いは無いの」
「ちがう!ママはママだもん!だって居るじゃん!!ママもパパも村のみんなも!!」
「·····はぁ?私、君の事なんも知らない赤の他人なんだけど、ほらよく見てよ耳の形も全く違うしさぁ?だから早く本当の親のところ帰りなよ」
「違うもん!違う違う違うちがうちがうちがう!!!なんでそんな事言うのママ!!ひどいよ!!!どうして冷たくするの!!ママはそんな酷いことしないもん!!!」
「·····私、帰るように言ったよね?なんで守れないの?」
「まもる····· う、ぅぅう····· うあぁぁああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」
「もしかして親が死んだから、私たちを親代わりにでもする気?それこそ親に対して失礼なんじゃないの?」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うちがうちがうちがうちがうちがうちがう違うちがう違うちがうちがう!!!ママは、ママは生きてるもん!!ぜったいいきてる!!わたしもいきてる!!たがらみんな、いきてるもん!!!ワイバーンなんかに!!ああああああああああああぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁああああああああっっっ!!!!!!」
それを境に、彼女は聞く耳も持たず発狂し暴れ始めた。
私は諦めてつまみ出そうとも考えたけれど·····
「·····なんか変だな、ちょっと失礼?『アカシックレコード』アクセス開始」
ピピピ
私は発狂する幼いエルフの頭に触れると、神様の権能を使ってその記憶を覗き見した。
「っ·····!? うぷっ·····」
住人もろとも潰される家、食いちぎられたエルフの死体、家族の身体が噛み潰される嫌な音、踏み潰され挫滅する知り合い、尾で叩かれ四散する血やその他色々、為す術なく一口で喰われていく元友達たち、崩壊していく思い出の詰まった故郷·····
そして私に似た銀髪のエルフが、目の前で原型も残らないだったものにされる光景·····
私が見ても、吐き気を催すほどの凄惨な光景が私の脳内に流れ込んできた。
だから、私は·····
「·····落ち着いて、ママはここに居るよ」
「まま·····」
チェルを優しく抱きしめ、その頭を撫でてあげた。
この子、たぶんPTSDだったんだ·····
私や校長先生と同じ、故郷を失った存在だったんだ。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「·····魔法を使っても、砕けた心は治せない、だからこうするしかないのよね」
名前:テュイェル・スェイゥルュゥ
ひと言コメント
「まま····· ここにいたんだ·····!!ママぁっ!!」




