天才魔法外科医(※無免許)ソフィ・シュテイン
時刻は午後4時。
前世の実家に帰ってきて辰砂たちとも解散した私たちは、早速姉貴の治療をするため元私の部屋にやって来ていた。
もちろん両親の許可は得て、治せそうなら治してくれとお願いされいる。
「さてと姉貴、ここから先は私の中でも最重要機密が溢れてるから気をつけてね、父さん達にも秘密だからね」
「りょーかいっ!」
「あの、僕は·····」
「はいフィーロ君は自分の部屋でたっぷり女の子の服をご堪能あれ、·····というかそうしてくれる?じゃなきゃみんなにさっき撮った写真共有しちゃうからね」
「拡散するのやめて!!!!!?!?!分かった、分かったから!ソフィちゃん頑張ってね、お義姉さんも頑張ってください」
フィーロ君はそう言うと、明らかにルンルンな足取りで自分の部屋へと帰って行った。
「·····じゃあ行くよ、覚悟はいい?」
「もっちろん!」
私は姉貴の返事を聞いて、その手を取ってゲートの向こうへと入っていった。
◇
私たちが潜ったゲートの先は、先程新調したばかりの治療室の準備室だ。
「んじゃ姉貴、脱いで」
「いやーん、ソフィたんのえっちぃ」
「·····もうおふざけはナシ、本気だよ」
「わかった、脱いだ服はどこに置けばいい?」
「そこのカゴに入れて、帰る時に着るから」
「はいはーい」
流石の姉貴でも、私の緊迫した雰囲気を感じ取ったのかふざけるのを止めて服を脱いだ。
そして私も脱いだ。
「おっ?ツルツルじゃん、脱毛とかしてんの?」
「·····この先は防疫とか治療後の免疫低下時の感染予防のため汚れや細菌を徹底的に落とすよ、だから髪の毛以外全部削ぎ落とすよ」
「えっ、マジ?じゃあついでに永久脱毛お願い」
「·····VIOラインでいい?」
「OK!その他もお願いねっ!」
とりあえず明らかに汚れが溜まってそうな部分は徹底的に落とすことにした。
「·····姉貴、ちゃんと体洗ってる?」
「いやー自暴自棄気味になって雑にしか····· 正直風呂入るのもキツいし·····」
「はぁ、今日からはちゃんと洗ってね?普通に体に良くないから」
「はいはいわかったわかった」
◇
その後、下準備を終えた私たちは滅菌室へと入ってきた。
「おおー、工場見学とかでよく見るヤツっぽい」
「まぁ構造は似せてるよ、でも機能は大違いよ、んじゃ作動開始」
私の合図と同時に、滅菌室内に居る私たちに向けて『アナライズ』が発動、そして解析したデータから病原菌と成り得る細菌やウィルスを特定し、かなり強力な浄化魔法が掛けられてそれらを体内外から除去した。
まぁ一部の完全に消しても体に良くない細菌とかは残しているが、必要最低限な量にまで減らしてある。
また、浄化魔法は体の表面の汚れ等も綺麗にする効果があるため、シャワーを浴びたりしなくても大丈夫だったりもする。
そして一通りの処理が終わると、部屋の中に灯されていたランプが緑色に変わり、入ってきた時と逆方向の扉のロックが解除された。
「よしOK、じゃあ次に行くよ」
「えっ何もされてないけど?·····いや、魔法で何かした感じ?」
「正解、浄化魔法で汚れとかウィルスとかを徹底除去したよ」
「こりゃ便利だねぇ····· 綺麗さっぱりになった所で、次は何をするん?」
「次は本格的な検査だね、そこでちょっと色々作業をる予定」
「へーい、痛くない?」
「大丈夫魔法でやるから痛くないよ、それともお尻からカメラ入れる?」
「や〜んそれは嫌よ〜、まぁカメラくらいなら私のアナr····· ストップストップ、殴られたら死ぬから、私」
「病人は殴らないよ」
「も、もしかして治してオラオラするつもりですかァ!?」
「しないわ!!」
全くふざけるなって言ったのに·····
まぁ、姉貴の顔から余裕が無くなってきたから、多分恐怖とか不安を打ち消すために冗談言ったりふざけたりしてるんだろう。
だから私はあえて指摘しないであげることにした。
◇
滅菌室の扉を開けると、次の部屋には手術の時によく見る服を着た私が居た。
ちなみに今日はハイエルフになってる3番目の私だ。
「おっ?おおおっ?まさかエルフ!?·····ん?顔がソフィたん?」
「正解、私もソフィだよ」
「んで私もソフィって訳だよ」
「えっ?えっ?·····えっ?分身の術か何か?」
「それについて説明すると長くなるけど、私は自分自身を自己複製して、全部自分でありながらバラバラな行動を出来る手段があるの、それを使って役割分担して姉貴の治療に取り掛かってるって訳だよ」
「はひゃー、すっごい」
「んじゃ姉貴、あそこの診察台に乗って貰える?」
「はーい」
姉貴は私が指さした方向にある、簡易的なCT検査装置的な装置とベッドの方に行くと、ベッドに寝転がった。
とりあえず私は全裸なのもアレなのでパパっと看護服に着替え、アカシックレコード直結のデータモニタの前に座った。
「んじゃ姉貴、ちょっと動くから気をつけてね、あと超精密検査だから動けなくするけど許してね」
「ほっ?それってどういうっ」
私は慈悲なく検査開始ボタンを押すと、早速姉貴の体が魔法でしっかり固定されて動けなくなった。
これは妨害系魔法の一種で、対象を一定時間拘束して動けなくする魔法だ。
ちなみに原理としては肉体現象の方の金縛りとほぼ同じで体を強制的に睡眠状態に移行する感じなので、普通に声も出なくなってしまうが呼吸は可能だったりする。
そして体がピクリとも動かなくなった姉貴は、目をキョロキョロさせながら魔導式身体精密検査装置の中に搬入されて行った。
「あっ結果出始めたよ」
「おっ?どれどれ?·····ふんふん、なるほどこれはヤバめだわ」
「だね、じゃあ早速ドナー作成部にデータを送信するね」
「了解、ドナー作成部聞こえる?この条件を元に作成開始!」
『『了解っ!』』
とりあえずガンの進行具合や症状が把握出来たので、姉貴を装置から出して現状説明や治療方法を伝えるとしよう。
◇
検査台から降りた姉貴を椅子に座らせると、私は早速ディスプレイに表示されたデータを見せながら姉貴に現状や治療方法の説明を始めた。
「まず姉貴の今の体の状況だけど、かなり良くない、アカシックレコードのシミュレーションによると放置した場合の5年以内の生存率は0%くらい、1年以内の生存率も0%、半年以内でも0%、2ヶ月でようやく10%くらいかな····· いつ死んでもおかしくない、それが現状だね」
「知ってる、だって自分の体の事だもん」
「なら良い、そんでガンの状況だけど、全身に転移が始まってるね」
「マジで?」
「うん、基本的に人体には免疫細胞で治癒できるくらいの少量のガン細胞が発生するから確定ではないんだけど、全身の臓器に少し量が多すぎる怪しい場所があったから、もしガンのある部分だけ取り除いてもそこから再発すると思うし、骨のあちこちにも怪しい場所があるね」
「·····マジ?」
「本当だよ、この検査データを見て」
私は姉貴の方にディスプレイを向けると、そのデータを見せた。
その画面に映る臓器の模型には、何ヶ所も赤くなった部分が表示されていた。
「大きいやつが既にガンになってる部分で、小さいやつが怪しい部分ね」
「うわぁ····· こりゃ治すの無理じゃない?」
「まぁ現代医学じゃ絶対無理だろうね」
姉貴の体は、私でさえ匙を投げたくなるほどの本当に酷い状況だった。
「そこで、私はある作戦を思いついた」
「おっ?なになに?」
「かなり倫理ギリギリなモノなんだけどね····· 姉貴、『テセウスの船』って知ってる?」
「あーはいはい、確か船のパーツが老朽化したからちょこちょこ置き換えていってたら元あったパーツが全部無くなって、これは元々あった船なのか、新しい船なのか?的な話だったよね?」
「そうそう、それで合ってるよ」
「·····まさか、魂をホムンクルス的なのに入れ替える感じ?」
「あーその手もあったけど、ホムンクルスの技術はまだちょっと不安定だから今回は止めて、もっといい方法にした感じだよ」
「ほほう?どういう感じ?」
「私の死体を改造して、私の内臓や骨格を姉貴そっくりに魔法で作り替えて移植する方法だよ」
◇
そう、私が考えた計画はかなり狂気的なモノだ。
沢山ある私の予備の肉体をひとつ使い、姉貴から採取した全身の遺伝子のデータを元に私の死体のDNAを『泡沫ムゲンの眠り姫』の力で強制的に改ざん、更に成長度合いや大きさ等も変化させて姉貴の内臓とほぼ同じ物にする。
さらに内臓は私自身の魔力で強化した細胞で構築されてて、ガンなどの病気に対する免疫力を極限まで強化してあるし、時間とともに筋肉や残った骨にも細胞が移動して身体を強化するようにしてある。
そして出来た内臓を魔法で姉貴のボロボロの内臓と全て置き換える事で全身の病気を完治させるというのがこの計画の全貌だ。
ちなみに、今は裏で1秒が1時間に拡張される特殊な部屋で作っている最中だ。
まぁ昼頃に連絡したお陰で素体はほぼ完成していて、後は姉貴の遺伝子を注入して血液型も合わせて拒絶反応を起こさないように準備していたのだ。
「·····って感じだよ」
「こりゃ一大事だわ····· 確かにテセウスの船だわ」
「うん、残る内臓は心臓と卵巣と脳みそと目玉くらいだから、ほとんど残らないね」
「·····マジか」
「それくらい重症って事よ?」
「そうだよねぇ·····」
この4ヶ所は姉貴の内臓でも珍しくガンが一切発生していなかったため、魔法でガンが出来ないようかなり強力な対策を施すだけで済ませることにした感じだ。
あと、脳、心臓、眼球の3ヵ所は私が下手に手を出せない部分だし、卵巣に関しては卵子をイジるのが難しいから手出しが出来ないので対策しかできないのだ。
「姉貴、治療をするならここにサインをお願い」
「·····了解、ホモカのサインがいい?結構高値で売れるよ?」
「いらんわ」
「へいへい、穂乃花の方でしときますよっと」
姉貴はそんな冗談を抜かしてたけど、サインを書く手が少し震えて文字がガタガタになっていた。
やっぱり怖い物は怖いのだろう。
·····姉貴のために、この手術は必ず成功させる。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「私、医師免許が無いモグリの医者だけど、絶対に失敗しないから」
名前:藤石 穂乃花
ひと言コメント
「へへっ、やっぱちょっと怖いわ、足が子鹿みたいにプルプルしてやがるぜ·····」




