炎の玉ストレートっ!
グラちゃん、ウナちゃん、私の3人は魔法を使うためみんなから離れた所にある、河原にあるのが不自然な岩の塊の前にやってきた。
「うーん、砂岩っぽいかな」
「さ、さがん?」
「さがんってなに?」
「あ、いやっ!何でもないよ!岩の名前だから気にしないで!じゃあ魔法の練習しよっか!」
ついクセで岩の質を見てしまった。
私は前世で地質学が好き····· というより鉱物が好きで、採取もやっていたので岩を見る機会が多く、こういう岩を見るとつい種類を特定したくなっちゃうのよね。
ちなみに砂岩は微妙につまらない、稀に化石が入ってるけどこの辺りだと出ないし·····
「そうね、今は魔法の特訓をするべきね」
「うんうん、はやくやろう?」
「りょーかいっ」
私たちはそれぞれ自分の得物を手に持ち、全員が杖を活性化させるキーワードを言い放つ。
「ラズワルド『暁天』」
「エーデルワイス『開花』」
「ディサペア『出現』」
私の持つ『星々の杖 ラズワルド・ロッド』はキーワードを感知すると、先端のコみたいになった部分に私の魔力が渦巻いて青白い恒星に吸い込まれる、その輝きが増大し暗い藍色だった『星核合金』に沢山の白い小さな星が瞬き、杖全体が夜空のように輝き出した。
グラシアルちゃんの持つ真っ白で先端が蕾のようになった杖はキーワードを感知した瞬間、蕾部分に入った螺旋状の亀裂が白く輝き、フワッと優雅に開花して美しく高貴な気配を漂わせる白い花、エーデルワイスそっくりに花開いた。
ウナちゃんは虚空に手を伸ばしキーワードを発した瞬間、なんと虚空から真っ黒で不安定な杖が現れた。
杖は常にバグったゲームのテクスチャのようにジャキジャキと揺れ動き、ウナちゃんが杖を動かすと処理落ちしたかのように杖がカクカクと不気味に付いてきている。
そして自分の杖が使えるようになった私たちは、杖を手に持った状態でお互いの杖を見て·····
「「「なにその杖!すっごい!!」」」
お互いの杖の変化に驚いた。
◇
「まずは私の杖の紹介だね!私の杖の名前は『星々の杖 ラズワルド・ロッド』、私が地元の川で遊んでたら川底で拾った凄い杖なんだ!まぁ、後付けで色々改造はしてるけどね!」
「私の杖は『スノーホワイト・エーデルワイス』という杖よ、私の家に伝わる由緒正しい伝説級の杖だから1級品以上の代物ね」
「わ、わたしの杖はえっと、おじいちゃんのお家であそんでてね、お家の地下にいったらあったんだ!なんか、使える人がいないから捨ててたみたいだけど、わたしは使えるからおじいちゃんがわたしにくれたの!あっ!名前は『デスペア オア ディサペアー』って言うんだって!」
ん?ウナちゃんの杖の名前、もしかして
『Despair or Disappear』
なのかな?名前が『絶望か消滅か選べ』って意味の時点で分かるけど、あれって相当ヤバい武器なんじゃないのかな?
うん、鑑定でも『禁忌』とか出てるし相当ヤバいなアレ·····
「ウナちゃんの杖めっちゃくちゃカッコイイ!!あとグラちゃんの杖はめっちゃ可愛い!」
「ふふ、褒められて嬉しいわね、そういうソフィの杖も中々不思議で良いわ、見た事も無い形状よね?古代文明の遺物が流れてきたのかしら?ウナの杖はソフィとは別方向で不思議ね····· この世の物ではない感じがするわ」
「ソフィちゃんの杖の星かわいいなぁ、グラちゃんの杖はお花の香りがしそう」
私たちは魔法の練習そっちのけでお互いの杖の紹介をして、お互いに褒めあっていた。
それにしても、ウナちゃんの杖が怖すぎる。
アレ多分存在してるのこの世界のバグが原因だよ、私でさえ操れるか微妙な所なのに·····
というか、誰も扱えなくて当然のモノを操っている時点で只者ではないな?
「·····あ、魔法の練習」
「あっ、そうね、本当はそっちが目的でしたわね、皆準備はできてるかしら?」
「わたしはOK、だよ?」
「じゃ、魔法の練習しちゃおっか!」
「「おーー!」」
◇
私たちは戦闘モードに、切り替えた杖を手に持ち、魔法の的に指定された岩壁から20mほど離れた場所に横一列になって並んだ。
「じゃあまずは私から行くわ」
「りょーかいっ!」
まずはグラちゃんが魔法を放つようだ。
見た感じグラちゃんは基本4元素の適性があるから、何を放つか楽しみだ。
「ふぅぅ、炎よ我が元に集い燃え盛る球となりて撃ち出されよ『ファイアーボール』!」
グラちゃんが魔法を詠唱すると、杖の先に直径40cmほどの火の玉が生まれた。
火属性の初級魔法『ファイアーボール』だ。
·····杖、燃えないのかな?
と思っていたら、グラちゃんがファイアーボールを射出した。
「行きなさいっ!目標は岩壁よ!」
ヒュルルルルル·····
バァンッ!!
「「おおおー!」」
ファイアーボールは弧を描きながら飛翔し、岩壁に激突すると炸裂して岩壁の一部を真っ黒に焼き焦がしてしまった。
「えっ?こんな威力だっけ····· まぁいいわ!これが私の実力よ!」
「「すっごーい!」」パチパチパチパチ
私はお世辞で、ウナちゃんはたぶん本心でグラちゃんに拍手を送った。
うん、まだまだ改善の余地ありだね。
せめて真っ直ぐ飛ばせるようにならないと。
◇
「じゃ、じゃあ次はわたしがやるね·····」
続いてはウナちゃんの番だ。
ウナちゃんの適性はなんと光と闇、片方だけなら割と居るが両方同時に持っているのはかなり珍しい。
どんな魔法を使うか楽しみだ。
「ええと、たしか····· 闇よ深き闇夜より生まれ我が元に集まり球となれっ!『ダークボール』っ!」
「おおおー!」
「本当に真っ暗闇なのね·····」
ウナちゃんのもつ杖の先端から黒い闇の塊が現れ、フワフワと浮かびあがった。
そしてウナちゃんが杖を振ると黒い塊が·····
「ん?消えた?」
「あら?失敗かしら?」
「えっ?ちゃ、ちゃんと当たったよ?」
「「·····は?」」
射線上にある的の岩壁を見てみると、確かに何かが当たったようなヒビが入っている。
·····え?いつ撃ったの?早すぎて目に見えなかった?
いや違う、撃った事に私達が気が付かなかっただけだ、空中に魔力が通った痕跡が残ってる、それもフラフラとゆっくり飛んだ感じの痕跡だ。
ついでに言うと、ダークボールに認識出来なくなるなんて機能は無い。
たぶんウナちゃんの全く気が付かないアレが伝染してるんだと思う。
「·····確かに撃ってるっぽい、たぶん撃った球が認識出来なかったのかな?」
「そ、そうなの?」
「いつの間にか魔法が直撃しているって相当危険ね、でも隠密行動にもってこいかもしれないわ」
「わたしの魔法ってそんなに危ないの·····?」
うーん、評価は50点かな·····
まだ威力が弱いのが欠点だけど、あの隠密性に関しては私が真似できる気がしない。
◇
「それじゃ!最後は私ね!」
「ソフィの魔法は面白そうね、何を使うのかしら?」
「うーん、水とか?」
私は岩壁の前に立ち、ラズワルドを構えて魔力を込め始める。
今回はグラちゃんと同じ『ファイアーボール』を使おうと思う。
だが、私のは一味違うよ。
炎が赤いときは基本的に酸素の供給不足と言われている、つまり燃料が完全燃焼出来なくて温度が低くなってしまい赤く輝いてしまうのだ。
また、この世界では青い炎は一般的ではないから、イメージが直結しやすい魔法の炎も赤くなってしまい、温度が下がってしまうのだ。
·····じゃあ、私は?
私は前世で青色の高温の炎をよく知っている。
高校が工業系の高校で、金属溶断用のアセチレンバーナーを使った経験があるのだ。
その火力は3300℃、青色を超え限りなく白に近い水色の凄まじい閃光を放つその焔は、分厚い鉄板であろうと溶断してしまう超エネルギーを持っていた。
そして私は、その炎の美しさに魅せられ、今でも脳裏にハッキリと浮かべられる。
その焔を、いまここに魔法で生み出す。
·····でも大きくすると爆発したりして不安だから、小さめの球にしようと思う。
技能講習で結構怖い事例みせられたし。
シュゴォッ!
「わぁ!かわいいっ!」
「ぷっ、小さい炎の球ね····· って眩しいわね!!何よこれっ!?」
「そいっ」
青白い小さい炎の球が生まれたので、私は杖をバットのように振って射出する。
ヒュッ
ヂュンッ!!
「·····外れたかしら?」
「ばくはつ、しなかったね」
「え?当たってるよ?」
「「えっ?」」
2人が岩壁に近づいて着弾を確認しに行ったので、私もついて行く。
◇
「「·····」」
「よし狙い通り」
私の魔法の着弾地点を確認すると、岩壁にファイアーボールと同じサイズの穴が空いていた。
しかも穴の中は超高温で溶けたのか、真っ赤に赤熱していた。
·····あれ、予想より火力出てるかも。
確か某大怪獣の内閣総辞職ビームの温度が16万度で、そのくらいあれば岩石とかも瞬時に溶断できたはずだから、相当な温度だったのだろう。
出力の調整、まだ結構苦手なのよね·····
「えっ、貫通してるわ·····」
「ソフィちゃん、凄い·····」
「うん!凄いでしょ!」
「どうしたらこんな穴が空くのよ·····」
「努力次第だよっ!じゃあ引き続き練習しよっか!」
「「おーーっ!!」」
私たちはさっきの場所まで戻り、魔法の練習を再開したのだった。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「やっぱり魔法を使うのは楽しいねっ!」
名前:グラシアル・グラシアル・ド・ウィザール
年齢:6才
ひと言コメント
「ソフィに負けてられないわ!にしても、どうやったら炎が青白くなるのかしら·····」
名前:ウナ・ウェア・ラ・サークレット
年齢:6才
ひと言コメント
「わたしの杖も可愛いのが良かったなぁ」




