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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第二章 TS賢者は魔法学校へ行くっ!
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ソフィ・シュテインと秘密の部屋


「え、ええと····· それじゃ気を取り直して!この部屋の紹介をしていくね!」


「はーい!」


「う、うん」


 あの後、ガチギレしたアルムちゃんに恐れをなした私とフィーロ君は、さっきあった事を一旦全部忘れ、当初の目的であった部屋の紹介を行う事にした。


 ちなみに、ちゃんと服は着ました。



「まずここがさっき作ったばかりの集会所だよ!」


「「おおおおおー!!!何も無いっ!」」


「私の寮の部屋から直結でコッチの部屋に繋がっているのは流石にマズいと思ったから、みんなで集まれる集会所を作ってみたんだ!これからはこっちで集まって色々やろう!」


 そんな訳で、まず初めに紹介したのは私たち3人が集まれるリビングルームだ。

 まだ家具も揃ってない殺風景な部屋けど、そのうち色々増やしていく予定だ。


「いいね!そういえばソフィちゃん、僕たちしか知らない秘密の場所って秘密基地みたいだよね!」


「確かに!それワタシも思った!」


 言われてみれば、集会所というより秘密基地だ。

 用途としても秘密基地に近いし、いっそのこと秘密基地と改名してしまおう。


「じゃあ、これからは秘密基地って呼ぼう!」


「「さんせー!!」」


「じゃ、ここはみんなで作るとして、次の部屋に行こー!!」


「「おーー!!」」



「次の部屋は〜、これだっ!!」


 私は2人を引き連れ秘密基地の左側にある扉を開けて中に入る。

 この部屋は、私がゲートを作った時に直結させていた部屋で、元々は私専用にカスタマイズした部屋なので、ゲートから出ると秘密基地に行くようにして直接入れないようにしておいたのだ。


「あれ?ここ出かける前に来た部屋?」


「うん、私がリラックスするためだけに作った、私専用の部屋だよ!」


「あの、僕が入ってもいいの?」


「乙女のもっとプライベートな所見たクセに? 」


「それはソフィちゃんから見せに来たんじゃん!!不可抗力だよっ!!」

「まぁ、私は気にしないから入っていいよ、面白いモノは特にないけどね?」


「「おじゃましまーす!」」


 2人が部屋の中に入ってくると、床に敷いたフカフカのカーペットの質感に驚いていた。

 そして、私の使っているベッドにアルムちゃんが腰掛けると、その快適さに再び驚いていて、なんのフィーロ君も腰掛けて驚いていた。


 ちなみに全部魔法で作った。


「ふふふ、羨ましい?」


「うん、ぶっちゃけ凄く羨ましいかも·····」

「ワタシもこんな部屋で寝たいっ!!」


「まぁ、こんな感じの部屋を作るのは時間掛かるから、今は自分たちの部屋で我慢してね?」


「「はーい·····」」


 フカフカのベッドで寝れないと知った2人が露骨にテンションを下げたが、賢いフィーロ君は私の言葉の意味に気がついたようだ。


「·····まって、ソフィちゃん()()って言った?」


「言ったよ?どうせ2人も欲しいって言うと思ったから、準備は進めてるよっ!」


「「わーーーいっ!!」」


 あのベッドで寝れると知った2人は手のひら返しで喜び初め、ウキウキなテンションのまま、私たちは次の部屋へと向かった。



 続いてやってきたのは、秘密基地にあるゲートから見て右側のドア····· は無く、『ゆ』と書かれた暖簾が掛かった入口だ。


「さっきも来たから分かると思うけど、ここが私たちの希望!温泉だよっ!!」


「やったー!!!ねぇソフィちゃんっ!!ワタシも後で入ってもいい!?」


「もちろん!フィーロ君も入ってもいいよっ!!」


「えっ!?いやっ!!ぼぼぼぼくはっ!」


 うーん、さっきのショックで躊躇っているようだ。

 でも、ちょっと押してあげればコロッと行きそうなので、お手伝いしてあげよう。


 まずはアルムちゃんと一瞬作戦会議して·····


「入りたくないの?一応フシ町の温泉なんだけど」


「入る!! ·····はっ!?」


「「じゃ、一緒に入ろ?」」


「ひっ!?嫌あぁぁぁあああ·····じゃないけど、やめてぇぇええええっ!!」


 買い食いをした時のように、私とアルムちゃんはフィーロ君をガッチリ捕まえて温泉へ連行した。




 私たちは、さきほど大惨事になった露天風呂の縁にタオルを敷いて腰掛け、足だけを温泉に浸していた。


「で、湯加減はどう?」


「ちょっと熱いけど、すっごくいい!」


「·····あのさ、足湯なら先に言ってよ」


「ん?もしかして、みんなで仲良く温泉に肩まで入ると思ってた?」


「はぁ、勘違いしちゃうからやめてよ·····」


 あっ、これはやりすぎたパターンだ。

 フィーロ君がスネて反応が悪くなっちゃった。

 仕方ない、私が夜食で食べようと作ってたアレでも持ってきてあげますか。


 私は温泉の縁から立ち上がり、お湯がこんこんと湧き出る岩の窪みに向かって進む。


「あれ?ソフィちゃんどこ行くの?」


「ちょっといいモノを取りに·····ね?」


 あっ、おいこらフィーロ君『また変な事をやるつもりなんだろうなぁ』みたいな目で見るな!

 今度は普通にいいモノだから!



 白濁した温泉の中をパシャパシャと歩き、身長より高い岩を登って岩の窪みを覗き込むと、真っ白い卵が6個入っていていた。


 ここのお湯は源泉だから、手を突っ込むと火傷をしそうになるので魔法を使って優しく取り出す。


「うんうん、いい感じ!」


 いい感じに茹でられた卵を魔法で浮かべたまま、再び温泉の中を通って、足湯を楽しむ2人のいる場所まで戻ってきた。


「おまたせ!温泉タマゴ持ってきたよ!」


「「おおおおおっ!!!」」


「いまカップと調味料出すから待ってね!」


 温泉たまごはそのまま食べても美味しいけど、出汁とか醤油を掛けて食べるともっと美味しいからね!


 カップはインベントリに入ってるので、空間の亀裂に手を突っ込み、中からお椀を3つ取り出す。


「いやいやいやいや!ちょっとまって!?それ何!?どこから出したの!?」


「ん?インベントリだよ?何でも入るから色々入れてあるんだ!」


「·····うん、ソフィちゃんなら有り得るか」

「そうだね、ソフィちゃんだし」


 なんか酷いことを言われたような気がするが、そんな事より醤油は何処だ。

 醤油が無かったら塩で食べるしかないけど、それは許せない、出汁が無いのは許容範囲だが、醤油が無いのはマジで許せない。

 私の分だけでいいから、ほんと1滴だけでもいいから醤油よ、あってくれ!!


 だが、私の願いは届かず、私のインベントリには醤油も出汁も無かった。


 というか、よく考えたらこの世界に醤油や和風出汁は存在していないから入っていなくて当然だ。

 くそっ!この和風な露天風呂の雰囲気に飲まれて、完全にあるもんだと思い込んでた!



「ソフィちゃーん!はやく温泉たまご食べよー!」


「そんな····· 醤油も出汁も無いなんて····· 温泉たまごが食べられない·····」


「ねぇ、魔法で解決したらいいんじゃないの?ソフィちゃんなら何とかならないの?」


「それだっ!!!」


「水魔法『水球』魔法改造!『醤油球』っ!」


 私は早速水魔法を改造して、試しに構成する水を醤油にしてみると、見事に真っ黒な水で出来た『水球』が空中に生まれた。


 私の魔法は、イメージによって物質を構築する事ができる特異的な性能がある。

 実際は無から生み出してるのではなく、周囲の元素を拾い集めて再構築してるっぽいんだけど、結果が良ければ全て良しだ。



「おおお·····」


「えっ、なにそのヤバそうな色のウォーターボール」


「魔法を改造した·····?って!ソフィちゃん!そんなモノ舐めたら危ないよっ!!」


 私は醤油球に指を入れて、液体を味見してみると·····


「しょ、醤油だーーーーー!!!ふたりとも!ありがとうっ!!さぁ温泉たまごを食べよっ!!ついでに『出汁ウォーターボール』もっ!!」


「えっ、アレ美味しいの?僕食べるの怖いんだけど」


「わーい!!早く食べよー!!」



 役者が揃ったので、私はタマゴを1人2つずつとカップとスプーンを1セット渡して準備完了だ。


 まずはタマゴを1つ手に取り、カップの縁でコンコンと叩いてヒビを入れ、ヒビに指をあてて床に置いたカップの上でパキッと割る。


 すると、真っ白な殻の中からプルンとした温泉たまごが出てきた。

 白身からうっすらと黄身が透けて見える、物凄く美味しそうな温泉たまごだ。


「「「ふおおおぉぉぉぉ····· 美味しそうっ!!」」」


 私は醤油球にスプーンを突っ込み醤油を1さじ分取り出して温泉たまごに掛ける。

 続いて、出汁球にもスプーンを突っ込み、これまた1さじ分取り出して温泉たまごにかけて完成だ!!


「できたっ!!いただきますっ!!」


 私は温泉たまごを食べる時は軽くかき混ぜ、黄身が崩れ全体に行き渡って、なおかつ白身がある程度の大きさの塊で残るよう潰さないように慎重に崩してから食べる派だ。


 さっそく温泉たまごをかき混ぜて、出汁と醤油を馴染ませてからチュルッとかき込む。


 次の瞬間、私の口の中に温泉で煮詰まり暖かく、濃厚になったタマゴの黄身が舌にまとわりつくが、白身が嫌ではない程度までさっぱりした濃度に下げてくれている。


 次に感じるのは、タマゴと出汁と醤油の旨み。

 ふむふむ、特に指定はしなかったけど、出汁はカツオと昆布が入っているようだ。

 タマゴの濃厚な香りに負けないくらい旨みと香りの強い出汁だ。

 そしてその2つの香りと味を、醤油の香ばしい香りと塩分が見事に繋いで、1つの完璧な料理として完成させている。


「うっまぁああああぁぁぁぁああいっ!!」


「ソフィちゃんがあそこまで言うなら大丈夫そうだし、ワタシもショーユ?ダシ?ってのを掛けて食べてみよっかな」


「僕も試してみよ、少なくとも毒は無さそうだし」



 ひどいっ!

 この子達、私を毒味役にしたっ!!


 だが、2人が興味を持ってくれたみたいで良かった。


「ふたりとも!まずは軽く舐めてみてからの方がいいよっ!苦手だったら塩も出すから」


「確かに、アルムちゃん、まずは舐めてみよう」

「まぁ大丈夫でしょ!!」


「黒い方はしょっぱいから、スプーン1杯か2杯くらいが丁度いいよ!出汁は好きな量でも大丈夫だよ!」


 結局2人ともスプーンを突っ込み、軽く舐めて·····


「しょっぱ!あっ、でも香ばしくて、旨みもある!出汁もすっごく旨みが濃くて香りも凄いっ!」


「うんうん、これすっごい美味しい!」


 その味が気に入ったのか、2人とも醤油と出汁を温泉たまごに掛けてかき混ぜててから口にかき込んで·····


「「めちゃくちゃ美味しいっ!?!?」」


「でしょ?私の故郷····· っと、私の知り合いの故郷のモノなんだけど、凄いでしょ!!」


「これは色んな物に掛けても合いそうだね····· 串焼きとかにも凄く合いそう!」


「でもスイーツには合わないかなぁ·····」


「ふっふっふ、アルムちゃん、醤油を使ったスイーツもあるよ!!」


「マジでっ!?」


 その後、温泉たまごをもう1つ平らげた私たちは、温泉から離れ、部屋の紹介をしていた。

 まぁ、残りの1部屋は、私が趣味で集めている鉱物のコレクションルームなので、説明をすると時間が掛かるのでまた今度という事にした。


 その後、歯を磨いたり雑談をしていたら、もうすぐ点呼の時間になったので今日は解散して、また明日集まって街の探索に出かけようという事を決め、私たちは『秘密基地』から出ていき、それぞれの部屋へと帰っていった。








 点呼も終わり、私の寮の部屋にあるベッドに寝転がった私だったが·····


「寝れない·····」


 ベッドは硬く、掛け布団も薄くて肌触りが私好みではない。


「やっぱり私は『ディメンションルーム』の私用に作ったベッドじゃないとダメだねっ!」


 私はベッドの上から転がるようにして転移先を向こうの私のベッドにしたディメンションルームのゲートに入り、フカフカのベッドに転がる。


 はぁ、私に合うよう作ったから、全身に凄くフィットして、私を眠りに誘う·····





「寝れない、何かが足りない」


 ムクリとベッドから起き上がり、足りない何かを求めて彷徨い歩く。



「無い·····」


 結局、色々な眠り方を模索したが、ダメだった。


 私はベランダで夜空を長め、眠気が来るのを待っているが一向に眠気はやってこない。



 ·····あっ、アレだ。



 私は寮の部屋に備え付けてあった硬いベッドに潜り込むと、一瞬で眠気がやってきた。


 あぁ、やっぱりコレだよコレ。


 私に足りなかったモノ、それは·····





 抱き枕(フィーロ君)だ。


「これこれ、これが無いと寝れないわぁ····· すやぁ·····」





「もういいや····· 僕も寝よ·····」


 


名前:ソフィ・シュテイン

年齢:6才

ひと言コメント

「うーん、本格的に抱き枕の代替案を考えなければ·····」


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