海だ!ビーチだ!泳ぐぞーっ!
私が新たなる絶淵の支配者になった日の午後·····
ザパァン·····
ザパァン·····
美しい浜辺
漂う白い入道雲
燦々と輝く太陽
吹き抜ける夏の香り·····
「みんなっ!!泳ぐぞー!!」
『『おーーーーっ!!』』
そうっ!
私たちは予定通りルーラル海岸で海水浴をしに来たのだっ!!
もちろん私たちは全員水着に着替えて、ご丁寧にビーチパラソルやレジャーシートにビーチチェアなんかも設置したガチ海水浴バカンスをするつもりだ。
「ねぇソフィちゃん、ワタシもう早く泳ぎたいんだけど!行っていい!?」
「「わたしたちはもう行くねっ!」」
「私も遊びたいわ、氷で飛び込み台を作って飛び込みたいのよ!」
「ワシも行くぞっ!浮き輪で優雅にバカンスじゃ!」
「ん、砂風呂中、もううごけない·····」
「うわーーっ!!?ちょっ!ちょっとまって!?ロゴの準備がまだっ!撮影するからっ!待ってよちょっと!!あーー!!もういいや!!フィーロ君この画面内に入って!」
「えっ、いや、その·····恥ずかしいんだけど·····」
「顔だけ!顔だけでいいからっ!!ほら覗いてっ!」
「うぅ·····わかったよ·····」
「よしOK!あぁもうミカちゃんはいいや!さんにーいちっ!!」
\カシャッ!/
「よし撮れたっ!じゃあみんなもう行っていい·····ってもう居ないっ!?」
『『ソフィちゃん遅いよーっ!!』』
「あーもうっ!みんな勝手に行動しないでー!!」
私が写真を撮って振り返った時には、もうみんなが勝手に行動して海に行ったり飛び込み台を作ったりビーチで寝てたりしていた。
「フィーロ君は行かないの?」
「えっ、いや、そのっ!」
結局最後まで私の傍にいたのはフィーロ君だけだったが、フィーロ君も写真にはほとんど映ってないんだよね·····
まぁ私たちらしくていっか!!
「んふふっ、じゃあ行くよっ!」
「あっ!ちょっと!うぅ·····わかったよ!」
私はフィーロ君の手を引きながら海へと向かった。
◇
フィーロ君の手を引いて波打ち際まで来たところで、私は足をピタッと止めてフィーロ君の方を振り返った。
「そういえば、フィーロ君って泳げたっけ?」
「うーん·····一応川に落っこちたら自力で何とかできるくらいには」
「じゃあ微妙って事ね?」
「うん·····」
事前に聞いてて良かったわ、危うくフィーロ君を溺れさせるとこだった。
「んじゃこれ使ってね」
「うえっ!?·····何これ?」
「それ付けてたら水中でも息できるよ、あとゴーグルは海水が目に染みるから付けといてね」
「わ、わかった」
フィーロ君が溺れた時のことを考えて、私はシュノーケリングっぽい道具を渡しておいた。
構造は現代にあるのとと同じ目と鼻を覆うゴーグルを装着するのは変わりないが、口には咥えるタイプの魔道具を装着している。
この魔道具は咥えると内部に地上と繋がる転移ゲートが現れて呼吸ができる仕組みと、万が一溺れた際に顔全体を覆う空気の泡を作って保護するシステムを組み込んである。
欠点としては、なんか猿轡っぽく見えてしまう事だけど今は見た目を変えてメカメカしくカッコイイ感じにしてるので欠点はない!
いやあったわ。
「着け心地はどう?」
「もごごもごっ」
「·····なんて?」
「ぷはっ!これどうやって喋ればいいの?」
「あっ·····うーん·····」
結局改善出来なかったので、魔力波による通信、つまりテレパシーを私が管理して会話することにした。
「じゃあ泳ぐよっ!」
「うんっ!」
準備が完了した私たちは、早速海に向けて歩いて行った。
そして私たちの足が波打ち際より奥に入ると、波が私たちの足を押し返してきた。
それをものともせず、ザブザブと切り裂きながら海の中に進み、腰のあたりまで水に浸かったあたりで私は浮力に任せてプカッと浮いた。
「力を抜いて〜、そんでしっかり息を吸って〜」
「う、うんっ、はふっ」
フィーロ君は息を思い切り吸い込むと、海の中に座るような感じで中腰でプルプルし始めた。
「·····手伝おっか?」
「·····うん」
「じゃあ私に任せて力を抜いてね」
私は立ち上がると、フィーロ君の背中を支えながらゆっくり倒した。
「はいこんな感じ、あっ腰は曲げちゃダメ!そうすると沈んじゃうから!」
「い、いや、怖いからっ!」
「怖くない怖くない、私が居るから大丈夫だよ」
「·····うん」
その後フィーロ君は私の指示に従って海水に浮く方法を何とか習得して、プカプカと浮き始めた。
「凄い·····川だと沈むのに·····」
「理由知りたい?」
「あっ、気になるかも」
「比重って知ってる?私がよく鉱物の説明する時に使うやつ」
「えっと、1立方cmの水を基準にした時の差·····だったっけ?」
「大体合ってるよ、そんで水は4℃の時に密度が最大になるから比重1の基準として使われてるのよ、蒸留すればほぼ完璧な純水が出来て比重調べるのも楽だし」
「ふんふん·····」
「でも海水は塩が混ざってるせいでちょっと真水より重くて約1.03あるんだよね、だから水より3%くらい重いのよ」
「ってことは、人より海水の方が重いから、海水が人より下に行くって事?」
「そんな感じ、人間が普通は1.00±0.02で、息を吸い込めば0.95±0.03、息を吐いたら1.04±0.02かな?だから普通にしてても海水の方が少し重いのよ」
「へぇ·····」
後は肺に気体が溜まってるから浮いてるってのもあるんだろうけど、それはまぁ言わなくてもいいだろう。
「さてと、浮けるようになったから泳ぎ始める?」
「うん、泳ぐのは出来ると思う」
「っし!じゃああっちの磯あたりまで行こっ!」
「うんっ」
フィーロ君の返事を聞いた私は、早速近場の磯までパシャパシャと泳ぎ始めた。
(ソフィちゃんまってー!)
「あっ、ごめんごめんっ!」
なんて調子に乗ってたら、フィーロ君を置いていってしまったので、彼の隣まで行くとゆっくりと平泳ぎで並走して磯まで向かった。
◇
「ぷはっ!はぁ、はぁ、川より、泳ぎやすいけど、広いから、結構疲れるね」
「まぁね〜」
一緒に泳いで磯まで到着した私達は、岩に腰掛けて休憩しはじめた。
「でも結構泳げてたじゃん、凄いと思うよ」
「うん、川ではよく泳いでたからちょっとだけね」
「あっ、蟹っ!!」
「うひゃはっ!?」
ここは磯なので、陸上に時々カニとかが歩き回っている。
今もそこそこ大きいカニが横切ったので、物凄い速度でガシッと甲羅を掴んで捕まえた。
そしてフィーロ君の方にカニのお腹を向けて·····
「ほらカニだよ」
「うわぁ····· なんか虫っぽい·····」
「確カニ」
「さて、そろそろ泳ぐ?」
渾身のギャグを無視されちゃったわ。
残念·····
まぁいいや、それより私にいい考えがある。
「泳ぐよりさ、せっかく水中でも息ができるんだから潜ってみない?」
「えっ、でも·····」
「大丈夫っ!『泡沫ムゲンの眠り姫』っ!」
私は『泡沫ムゲンの眠り姫』を発動して、水中でも呼吸ができるようにしておいた。
ちなみに泳ぐ能力も向上するから水中でイルカみたいな動きをすることができたりするんだよねこれ。
だからフィーロ君が溺れてもすぐに助けられるって訳だ。
「じゃあ行くよっ!」
「わわっ!ちょっと!息吸えるやつ咥えるからまってよっ!はむっ!」
「よし咥えたねっ!ゴーッ!!」
「もごごーっ!!?」
ザッパァァアン!!
◇
海中はまさに魚のパラダイスといった様子で、普通の魚や色とりどりの熱帯魚っぽい魚まで色々な種類が集まっていた。
そんな磯というか海中の崖の横を私たちは潜航して行っていた。
目指す水深は20m、でもそこまで行くと水圧がヤバくてフィーロ君が耐えられないかもしれないので『泡沫ムゲンの眠り姫』の現実改竄能力で一時的にフィーロ君に掛かる水圧を無効化してあげていた。
「おおーすごいっ!綺麗っ!見てあの魚!」
(どれ?あっ綺麗なさかn)
「美味そうな魚っ!!」
(なんで美味しそうって感想が真っ先に出るかぁ·····)
「あっ、ごめん····· いやでも、丸々肥えて美味しそうじゃない?」
(たしかに言われればそうだけどさ····· あっなんか別の魚来た、あれは?)
「おーなんだろあれ、確か美味しい奴だよ!」
(·····食い意地)
「張ってないもん!!本能だもん!!」
そんな感じでお喋りしながら潜って行くと、ようやく目標の海底へと到着した。
(綺麗····· ソフィちゃん上見て上!)
「おー!海面がキラキラしてる!」
私は砂っぽい感じの海底に寝転がり、海底から海面を見上げた。
よく見てるとなかよし組のみんなが海面で遊んでいるのが目に入ってきた。
相変わらずエビちゃんは浮き輪に乗ってるのか、浮き輪の真ん中からおしりが丸見えになっている。
後でなんかぶつけておくかな。
そしてアルムちゃんは私たちの存在に気がついたのか、私たちの方を見ながら手を振ってきてたので振り返してあげた。
そんであっちで海面が凍ってるあたりにはグラちゃんらしき影が見えていて、ウナちゃん達は2人····· なんか3人いない?まぁともかく揃って浮き輪に捕まって泳いでいた。
ミカちゃんは多分まだ砂風呂してる。
海入る気無いなあの天使。
(·····ソフィちゃん)
「なに?」
(気になってたんだけど、なんで水中で普通に喋れてるの?)
「あぁこれ?私の能力だよっ☆」
(いや、それは分かるけど·····まぁソフィちゃんだからできるのかな、あっ!僕もコピーしたら出来る?)
「んー、それだけはちょっとやめて欲しいかな、この効果は副次的な奴で本当はめちゃくちゃ危険な能力だから」
(えぇ····· 暴走とかしない?)
「しないよ、でも使い方を間違ったら世界が壊れるような能力だけどね?完全に掌握してるから壊す様なことはしないよ」
(うわぁ····· やっぱりソフィちゃんはすごいなぁ·····)
「いやぁ、それほどでも〜·····うわっ!フィーロ君アレ見て!アジの大軍っ!」
(おおー!ソフィちゃんアレ捕まえられる?)
「できるよっ!おーいそこのアジたちこっち来てー」
私がそう呼び掛けると、数百匹も居るアジの大群が私たちの周囲に集まってきてグルグルと回り始めた。
(す、すごい····· えいっ!)
「あー、そんなんじゃダメよ」
フィーロ君が手を伸ばして捕まえようとしたが、スカッと避けられてしまい捕まえる事は出来なかった。
「そりゃっ!」
(うわっ!?)
私は狙いを定めて、手を一気に突き出して群れの中から1匹だけアジを捕まえた。
「こんな感じだよ」
(うーん·····僕には無理かなぁ·····)
「そっか、ごめんねアジさん逃げていいよー」
私は掴んでいたアジを離してあげて、集まるよう指示を出していたアジたちも解放してあげると、彼らは何処かに泳ぎ去ってしまった。
「で、この後どうする?一旦海から出る?」
(うん)
「じゃあ早速」
(まって!)
「ん?なんかあった?」
海から出ようと起き上がって水面に向けて泳ごうとした瞬間、フィーロ君に呼び止められた。
(あっ、あのさ、その·····)
「なになに?」
(あっ、明日さ、その、予定とかある?)
「んー、無いよ」
実はフィーロ君のパーティーの予定がある·····んだけど、今回は珍しく私抜きで準備したいとの事で私は関わってない。
その分プレゼントを豪華にしたくて色々やって、その準備も終わったんだけどみんなが『ギリギリまで準備する』って言ってたから遊ぶ相手も居なくて暇なんだよね。
(その····· 明日さ、朝から僕と一緒に出かけない?)
「いいよっ!じゃあ明日はデートしよっか」
(でっ!?·····うん、じゃあ明日の朝7時半に着替えて宿の前で集合でいい?)
「うんっ!よろしくねフィーロ君、明日は私のことをエスコートしてよ?」
(もももっ、もちろんっ!)
「んふふ、楽しみにしてるね、じゃあ上がろっか」
私はフィーロ君の手をとって、海面に向けて一緒に泳いで行った。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「デートかぁ·····冗談で言ったけど、いつか本当に恋人同士になってデートしたいなぁ·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「はぁ·····めちゃくちゃ緊張した····· でも何とか誘えたから、明日は頑張らないと····· あぁ緊張する·····」
名前:アルム
ひと言コメント
「何気にワタシの写ってるイラストって初めてじゃない?ワタシはこんな感じだよー!」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「流石に遠すぎて私の顔が上手く写ってないわね·····後でちゃんと写して貰おうかしら?」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「海たのしいっ!でもソフィちゃんとフィーロくんみたいに海底にも行ってみたいなぁ·····」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「こうして魔王らしく優雅にバカンスするのも良いのじゃ、まぁあとちょっとしたらワシも泳ぐのじゃ!·····ちなみにイラストに写ってるワシの持ってるグラスの中身はぶどうジュースなのじゃ、早くワインを飲みたいのじゃ·····」
名前:ミカちゃん
ひと言コメント
「·····あれ、もう夜?みんなどこ?まぁいいやおやすみ」
【オマケ】
昔、連載当時に描いた挿絵です
·····まだスマホで指で描いてた頃なのでクオリティ低めで、今見ると小っ恥ずかしいですが勿体ないので載せておきます。




