静かな夜空の下で
【移動初日 夜】
「じゃあみんなおやすみー」
「おやすみぃ·····」
「意外と寝心地が良いのよね、これならすぐに寝れそうだわ·····」
「すやうなぁ·····」
「ぐごぉぉぉおおっ、フガッ」
「·····うるさい」
時刻は夜の9時
今日の移動はもう終わり、学生たちは明日の移動に備えて大半が寝ている。
今起きているのは護衛の冒険者さん達と先生と、この停泊所の管理と護衛をしてる人だけだ。
あとは寝てない学生もちょいちょい居るけどね。
私とフィーロ君とか。
「ソフィちゃん·····」
「ん?どうしたの?」
「ほんとに隣いいの·····?」
フィーロ君は運転席ベッドの所までやってきたが、その前でモジモジとしてゴネはじめた。
まったく、恥ずかしがり屋さんなんだから·····
「いいよ、フィーロ君優しいから信頼してるし」
「優しいからって····· はぁ、わかったよもう」
そう言うとフィーロ君が私の隣に潜り込んできた。
するとフワッと石鹸とちょっぴり男っぽい香りが漂ってきた。
·····なんか懐かしいなぁ、私も14年くらい前までは嗅ぎなれていた匂いだ。
「どう?寝心地いいでしょ?」
「だね、それになんか落ち着く」
「私も·····」
この寝室はちょっと特殊で、上面に外の映像を投影して夜空を眺めながら寝ることができるのだ。
そして仰向けに寝ている私の目の前には、満点と言ってもいいほどの美しい星空が広がっていた。
「ねぇ、抱きついていい?」
「いや、うーん····· いいよ」
「ありがと」
私は感謝の言葉を述べてフィーロ君に抱きついた。
·····もうそんな事をする歳じゃないのも分かってるし、そもそも転生してる私はどんな歳でも甘えていい存在じゃないと分かってるけどさ。
でも、恋する乙女がやったなら神様だって許してくれるはずだ。
そして、ぴったりと密着した部分からフィーロ君の体温と鼓動が聞こえてきた。
「んふふ、なんかこの感じ久しぶり·····」
「うん····· 最近はそんなにやらなかったよね」
「1人で寝るのに慣れちゃったからね」
「そっか」
「でも、やっぱり一緒っていいね·····」
「うん」
「·····眠くなってきちゃった、じゃあおやすみ」
「おやすみソフィちゃん」
フィーロ君といると不思議と落ち着いてしまって、私はすぐに眠くなってしまった。
ここで長話するのもいいけど、明日も朝早くから移動するし、移動中にもたっぷり話をしたから別にいっかなって思った。
だから、私は目を瞑って久しぶりのフィーロ君抱き枕でぐっすりと眠った。
◇
夢を見た。
·····うん、内容を言おうと思ったけど言えないレベルのエッチな夢だったからやめとこう。
「んひゃあ!!?」
/ゴッ!!\
「あいだっ!!」
「·····何してんのさ」
「いてててて····· 変な夢見てた·····」
「どんな夢だったの?」
「えっ、いや〜、その〜····· ナイショ·····」
フィーロ君と私関係の夢を見てたなんて言えないに決まってんじゃん·····
告白して、そのままラブホテルに入ってえっちでムーディーなお風呂に入ってイチャイチャして、変な形の面白ベッドにベッド・インしようとしたら何故かでけぇプールとウォータースライダーあって、遊んでたら我慢の限界になったフィーロ君が怒って押し倒して·····
·····割とガッツリ言っちゃったな私。
「ふーん、まぁいいや、そろそろ朝ごはんを食べて出発だから着替えて行くよ」
「りょーかい」
私はちゃちゃっとパジャマを脱いで、移動用の動きやすい服に着替えた。
ちなみに着替えた服はダメージジーンズとノースリーブのシャツ的な服にサングラスを合わせた夏のドライブコーデだ。
ちょっとワイルドな方が私は好きだし、スカートみたいなヒラヒラした服だと運転する時に邪魔になるからねっ☆
「フィーロ君もういいよー」
「あっ、うんわかった」
「じゃあ私はちょっと先生のとこいってくるー」
着替えてる間ずっと後ろを向いていたフィーロ君に振り向いてもいいよと伝えて、私は一旦外に出て全員目覚めた事を先生に報告しに行った。
報告が終わった後は、朝ごはんをキャンピングトラックの中で食べて時間になったら私は運転席に座って昨日と同じようにキャラバンの後を追ってのんびりと移動していた。
◇
そんでお昼ご飯も食べ終わって、道程も半分くらいまで来たあたりでトラブルが発生した。
「·····ん?なんか止まった?」
「どうしたの?」
「いや、なんか急に隊列が進まなくなっちゃって·····」
突然馬車の列が止まってしまい、ピクリとも動かなくなった。
しかも前方では何やら騒ぎが起きているらしい。
私は窓を開けて、何が起きたのか尋ねてみた。
「すいませーん!なんかあったんですか!?」
「あぁ、なんか川に掛かっていた橋が壊れちまったみたいで渡れなくて困ってるそうだ」
「あー、じゃあ手伝いますよ、一旦隊列から離れて先頭に行ってもいいですか?」
「頼む、橋を直そうとしても予想以上に川幅が広がってて上手く行かなくて困ってたんだ」
「了解です!みんなー!橋が壊れたらしいから助けにいくよー!」
『『はーい!』』
私は一旦バックして、ハンドルをきって舗装されていない道に出るとギアを切り替えてオフロードモードにして突っ走っていった。
街道の外もある程度整備されてるとはいえ、石や凹み等で馬車では走るのが厳しい状況だ。
だが私の作ったキャンピングトラックは後輪がキャタピラになっていて、前輪はマジで万能な『創造魔法』によって作った不壊のタイヤでできているからパンクもしないしグリップ性能も抜群に良い。
最強の私のオフロードトラックは、荒地もなんのそのとガンガン走破して先頭へと向かった。
◇
「おーい!助けにきましたよー!!」
「ソフィちゃん!話は聞いてるわよね?」
「もちろんですよ!橋が壊れてたんですよね」
「そうよ、生憎私じゃ細かい調整はできないから悩んでたのよ」
校長先生は伝説の魔導師だけど、実は魔法の細かい調整が苦手なのだ。
氷属性や地属性など多彩な魔法が使える校長先生だけど、その魔法はパワー型で地面を隆起させたり凍らせたりして川の上に道は作れるけど、それだと川が氾濫したり車輪が滑ったり道がガタガタになったりしてしまうらしいのだ。
「任せて下さい!私たちなら楽勝ですよっ!ねっみんな?」
「もちろん!ワタシも橋くらいなら作れると思う!」
「僕はコピーしかできないから、必要だったらソフィちゃんのをコピーするよ」
「私はやるわ、ダンジョン編集能力でしっかりした橋を作ってみせるわ」
「わたしはむりー、光と闇じゃできないー」
「ワシはパスなのじゃ、パワー型じゃからの」
「ん、てつだう」
「ほんとに申し訳ないわ····· みんなお願いするわ」
『『了解っ!』』
という訳で、私たちなかよし組の一部メンバーによる橋の作成が始まった。
◇
まず必要なのは情報だ。
まぁグラちゃんのマップの仕組みを元に作った地図魔法で見たからわかるんだけど、川幅は約1kmもあるのだ。
流れに対し垂直ではなく斜めに掛けなければいけないのでこんな長くなってしまっているのだ。
「グラちゃんは川のこの地点の地下から岩を隆起させて、アルムちゃんもお願いね」
「りょーかい!」
「私1人でもよくないかしら?」
「まぁそうなんだけど、広いから2人ってことで」
「わかったわ、材質はどうするかしら?」
「うーん·····石英でお願い出来る?」
「ちょっと待って欲しいわ····· 厳しそうね、花崗岩じゃだめかしら?」
「花崗岩は風化したらグズグズになるからダメ、じゃあもうなんでもいいから土台になりそうな火成岩を隆起させて」
「了解よ、ほらアルムやるわよ」
「はーい!」
という訳で、アルムちゃんとグラちゃんには川に点線を打つように岩盤を隆起してもらう事にした。
これが橋の土台となる予定だ。
「とりあえずミカちゃんは結界で臨時の橋を作れる?この辺りからここまで、幅は20mくらいで端には落下防止用の柵もお願い」
「ん、できる、まかせて」
そう言うとミカちゃんは即座にユニークスキルである『アイギス』で橋を作った。
「校長先生、臨時の橋ができたので先を急ぐ場合はこっちを使ってください、私たちはちゃんとした橋を作るので先に行ってて大丈夫です」
「分かったわ、そう伝えてくるわ」
校長先生は拡声魔法を使って御者さんたちに指示して、ミカちゃんの作った橋を渡りはじめた。
「ソフィ、地盤の隆起が終わったわ」
「グラちゃん早すぎない?私5個しか出来なかったよ?」
「あら?私は20個よ?」
「まぁまぁ、ありがとね2人とも!あとはまかせて!」
2人が地盤を隆起してくれたおかげで、いい感じの土台が完成した。
そこに私は巨大な石英の柱を地盤の奥深くまで突き刺して橋脚を作った。
まぁ、石英というか濁った真っ白い少し平たい六角形の水晶で、川の流れに対して鋭角が向くように設置してある。
「この上に橋·····の素材どうしよっかな?まぁなんでもいいや」
川に乱立した真っ白い柱の上に、お城の石垣にも使われる安山岩でできた巨大な分厚い板が乗っかり、そこに同じ材質の石の柵ができていった。
そして橋と柱を岩石魔法でしっかり結合させて折れないように色々工夫もしていった。
イメージとしては古くて頑丈な昔の石橋みたいな感じで、石英柱だけだと不安だったのでそれは芯の部分にして安山岩でアーチ構造を作ったりしてみた。
みたいな感じで作業をしていたら、あっという間にオシャレな橋が完成してしまった。
「校長せんせー!作業が終わりましたー!橋が完成しましたよー!!」
「·····はぁ、ほんと規格外ね」
「じゃあ私たちはこの橋を渡って行くのでお気になさらず!」
「分かったわ、寄り道とかしないようにね?」
「もちろんですよ!」
という訳で、架橋工事を終えた私たちは魔動車に乗り込んで架けたばかりの橋を渡って、ずいぶん離れてしまったキャラバンの元へと向かった。
名前:ソフィ・シュテイン
ひと言コメント
「橋の作り方とかしらないから、もし崩れてもしーらないっ☆ ちなみに岩は周囲の山とか地下から引っこ抜いてきたよっ☆ あと石英に関しては宇宙にあった小惑星を1個かっさらってきて、それを原子単位まで分解してケイ素と酸素を再合成した人工石英だよっ☆」
名前:アルム
ひと言コメント
「やっぱりみんな凄いなぁ·····ワタシも魔法の練習頑張らないと!」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「僕の出番無かったなぁ·····まぁ寝不足だったからゆっくり休めたけど」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「やっぱりダンジョン編集能力は便利ねぇ·····」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「地面がずもももっ!って盛り上がるのすごかった!あとソフィちゃんの水晶の柱をズズズズガンッ!って地面に刺すのもすごかったよ!」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「別にワシらが渡れるならミカのあれで良かったと思うんじゃがのぅ····· 工事なんて別のやつに任せておけば良いのにのぅ、優しい奴らなのじゃ」
名前:ミカちゃん
ひと言コメント
「わたしの作った橋、渡り終わったから消しちゃった」




