土木作業もお任せあれっ!
「じゃ、じゃあいってきまーす」
『『行ってらっしゃーい!』』
まさかのカップル成立に動揺しまくっている私は、とりあえず頭を落ち着かせるためみんなを連れて最後の依頼をやりに一旦町の外に行くことにした。
·····しかし、エビちゃんは付いてこないようだ。
「のうラクトよ、少々話があるからお主の部屋で2人きりで話さぬか?」
「う、うん、いいよ」
「えっ待って付いてこないの?」
「うむ、ちと大事な用事があるからのぅ」
「·····大事な用事?」
「マーキングしてくるのじゃ、他の女に目移りせぬようにのぅ、くくくくく·····」
どうやらエビちゃんは何やらお兄ちゃんに話があるようで、私の家に残るらしい。
·····まって。
マーキングゥ!?!?!
うわー·····
マジすか·····
うわぁ·····(ドン引き)
「·····家にいても気まずいし、のんびり仕事しよっか」
『『さんせーい』』
うん、なかった事にしよう。
あれは気のせいだ。
エビちゃんの目にハートが見える気がするけど気のせいってことにしよう。
私は一旦ゴチャゴチャした脳内を整理すべく、ケッテンクラートを走らせて王都直通トンネル工事現場へと向かった。
◇
その頃エビちゃんとラクトは·····
「こ、ここがぼくの部屋だよ」
「ふむ、失礼するのじゃ」
ついさっきワシの彼氏になったラクトに連れられ、ワシは彼の部屋へとやってきた。
部屋の中は妹のソフィとは大違いで綺麗に片付けられていて、本棚には真面目な勉強用の本がズラっと綺麗に並べられ、とても真面目な感じがする。
「じゃあそこの椅子に座ってよ、ぼくは適当に座るから気にしないで」
「うむ、これはラクトが使っておる椅子かの?」
「そうだよ、その椅子は誕生日にソフィに作ってもらったんだ」
「またあやつか·····流石じゃのぅ·····」
ラクトに勧められて椅子に座ると、なぜか座り慣れたような感じがしたので聞いてみたところ、やはりソフィが作った物だったようだ。
ほんと彼奴は何でもできるのぅ·····
「·····」
「む?ソワソワしてどうしたのじゃ?」
「はっ、話って、何?」
「別に畏まらんでも良いのじゃ」
ワシは椅子から立つと、自身のベッドに腰掛けていたラクトの隣にドカッと腰掛けた。
「なっ、何?」
「別になんでもないのじゃ····· 何でもないのじゃが····· お主の隣に居たいのじゃ」
「っ!!」
そう言うと、ワシはラクトの肩に軽く頭を預けて寄りかかった。
角が邪魔かもしれぬが、ラクトはワシの角が好きと言っておったからご褒美じゃろう。
·····ソフィ達について行かなかったは、こうして恋人に甘えたかったからだ。
流石に魔王であるワシとはいえ、人前で、それも親友や新しい家族の前で堂々とイチャつく勇気はない。
先程はつい浮かれてキスをしてしまったが、内心は物凄く恥ずかしかった。
だが、彼の部屋に来ればそんな事は関係ない。
「ほれ、肩を抱かなくてどうする、恋人が甘えてきているのじゃぞ?」
「·····うん」
「そうじゃ、大好きな彼女を可愛がるのじゃ·····」
肩を抱かれたワシは彼に全体重を預け、目を瞑り、彼の暖かみを感じて、彼の心音を感じて、彼氏が居る喜びを噛み締めた。
◇
「はい現場とうちゃーく!」
「じゃあ責任者の所に行くわよ」
王都直通トンネルの工事現場に来た私たちは、早速工事責任者の元まで向かった。
ちなみにぼんやりしてて途中で川に落ちかけた。
「すいませーん、依頼を受けて手伝いにきました!」
「おおっ!最近話題のなかよし組じゃねぇか!じゃあ早速だが頼めるか?」
「もちろんです!工事中に出た巨岩の撤去と大量の土砂の移動、あとは地ならしでしたっけ?」
「あぁ、巨岩と土砂は見えてるから分かるな?地ならしについては範囲を教えるからついてきてくれ」
『『はーい!』』
私たちは責任者の後を追って地ならしの範囲を教えて貰い、早速作業に取り掛かった。
◇
ワシはラクトの肩に寄りかかって、ラクトはワシの肩に手を回してもう片手で頭を撫でてくれていた。
しかし、そろそろもっと甘えたくなってきた。
「·····そろそろ続きをせぬか?」
「続き?·····き、キスの?」
「うむ·····もっと大人のキスじゃ」
さっきのは軽い唇が触れ合う程度のキスだった。
実はもっとディープなのもしたかったが、人前で出来るほどの勇気が無く、しかもソフィ達が入ってきて中断させられてしまった。
「いっ!いや!まだ早いんじゃないかn
「うっさい!ワシがやりたいのじゃ!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!?」
ワシはラクトの唇に自分の唇を合わせ、無理やり舌をねじ込んで彼の口内を蹂躙し始めた。
◇
「センシティーーーブッ!!!」
「うわビックリした!!どうしたのソフィちゃん」
「いや、なんか言わなきゃいけない気がした」
「そんなことよりちゃんと誘導しなさーい!!どっちに運べばいいのよー!!」
フシ町の方向からセンシティブの波動を感じでわけも分からず叫んじゃったけど、そんなことより今はグラちゃんの巨岩運搬の誘導しなきゃ!
グラちゃんは今、ダンジョン編集能力で巨岩の上に乗ったまま巨岩を浮かして移動しているのだ。
いやー凄いね、推定重量2万トン以上もある巨岩が浮いてるのはまさに壮観と言うべき光景だ。
ちなみに私は指定された場所まで誘導する係だ。
「もうちょい前ー!違うそっちじゃない!こっち!」
「だからどっちよー!見えないからもっと具体的にお願いするわー!」
グラちゃんが運んでいる巨岩·····
いや、正確には私が魔法で山をブチ抜いた時に岩盤が崩落して入口の前に落っこちていて邪魔になっていた岩なんだけどね?
その岩は幅20m、高さ15m、奥行25mくらいあるため、上に立っていたら足元なんぞ見えるわけが無い。
なので私が誘導しているんだけど、中々伝わらなくて困っていた。
「もういいや!私が目標地点に立ってるからそこ目掛けてすすんでー!」
「分かったわ!!じゃあお願いするわ!!」
グラちゃんはマップを表示すれば私たちの居場所を把握出来るので、私がそこに立っていれば誘導も簡単になるはずだと思いついたのだ。
そうとなれば早速実行するしかない。
私は指定された地点に立つと、グラちゃんに声を掛けて·····
「こっちこっち!早く運んでー!」
「分かったわ!ちょっと待ちなさい!」
グラちゃんが巨岩を運ぶ速度はゆっくりなので、その間に私は考え事を始めた。
まさかお兄ちゃんとエビちゃんが両想いだったなんて思わなかった。
確かに、前にちょこっとエビちゃんがお兄ちゃんとかいいかもって言ってるのは聞いた事があったような気はするけど、本当に好きだったとは思わなかった。
お兄ちゃんに関してはエビちゃんをチラチラ見てたのは知ってるし、なんならエビちゃんについてあれやこれや聞いてきてたから気になってるんだとは思ってた。
私って、本当に恋愛に鈍感だなぁ·····
·····ん?なんか今心にチクッと来たんだけどなんだろ、なんか大事な事に気が付いてない気がしてきた。
まぁ私鈍感だから分からないけどね!!
·····にしても、告白、かぁ。
どうせなら私もフィーロ君に·····
いや、まだ早い。
それにこんなタイミングじゃダメ、もっと積極的にアプローチして、雰囲気の良いロマンのあるタイミングで告白したいな。
「はぁ····· お兄ちゃん大丈夫かなぁ····· エビちゃん肉食系だからなぁ·····」
「下ろすわよー」
「はーい!もしかしたら今頃····· いやまさかね?」
「ソフィちゃん危ないっ!!」
「えっ?」
プチッ
ワシは着ていた服のボタンを外しながら、ラクトの唇からワシの唇を離した。
すると絡み合っていた舌と舌に唾液の橋ができて、プツッと切れた。
「·····ラクト」
「何?」
「もっともっと、大人がやる事をしてみぬか?ワシは·····良いぞ?」
「·····うん」
了承は得た。
ワシは立ち上がると服を脱ぎ、履いていたズボンも脱いで下着のままベッドに腰掛けていたラクトの前に立った。
「お主は脱がぬのか?」
「う、うん·····」
ラクトは恥ずかしがりながらも服を脱いだのを見て、ワシは下着も脱いで一糸まとわぬ姿となった。
ワシは普段から服をあまり着たくない派じゃが、こうして好きな人の前で脱ぐととても恥ずかしい。
本音を言えば、服を着て逃げたいと思うくらいには恥ずかしく感じる。
だけどワシは魔王じゃ。
勇者は魔王の前からは逃げられぬが、魔王も勇者の前から逃げてはならぬのじゃ。
彼が勇気を見せてくれたなら、彼が勇者になったのであれば、魔王は相手をせねばならぬのじゃ。
「ワシは····· その、初めてじゃ、分からぬ事もあると思うが、頑張るのじゃ」
「ぼっ、ぼくも、何もわかんないけどよろしく·····」
「ふっ、どっちも同じじゃな····· 安心するのじゃ、ワシも優しくやるつもりじゃからな、それにこの部屋に遮音結界を張って鍵も締めるのじゃ、じゃからどんなに騒いでも問題ないのじゃ」
ワシはラクトの上に跨り、そのままベッドに押し倒した。
心臓がバクバクと激しく鼓動する。
あまりにも激しくて痛いくらいだが、それよりも期待の方が大きくてワシは気にならなかった。
「ラクト·····」
「エビちゃん·····」
ワシは恋人の体にワシの体をピタリと重ね·····
◇
「はいアウトォォォオオオオオオオオッッッ!!!」
「のわあっ!?」
「あっ、やっと生き返った」
「大丈夫?ごめんなさい退いてないのに岩を下ろしてしまって····· 痛くなかったかしら?」
「よかった!岩の下で生き返ったらどうしよっかなって心配してたんだ!!」
「ん、びっくり」
「はっ!?な、何が·····?」
「岩に押し潰されてプチッとしちゃったのよ·····」
「·····あ」
「悪気は無かったのよ、衝撃的すぎてぼんやりしてたわ····· ちなみに見るのが恐ろしかったから岩の下はそのままだけど、大丈夫かしら?」
「あー、大丈夫、後で私が何とかしとくから」
考え事をしていたら、みんなの叫び声が聞こえた後に物凄い圧力と激痛を感じて一瞬で視界が暗転してしまった。
その後はもちろん記憶が無く、はっと目覚めた時にはみんなに囲まれて地面に寝転がっていた。
どうも状況的に考えて、私はグラちゃんの運んでいた岩の下敷きになってしまったようだ。
「やっぱり私がやっといて良かったなぁ····· 私じゃなかったら確実に死んでたよ?いや死んでるけど」
「はぁ····· 悪いとは思うけど、考え事に集中しすぎる癖はなんとかした方がいいわよ?まぁ私もうっかりしてたけれど·····」
「そうだよ!ソフィちゃん前もそれで馬車に轢かれてたじゃん!·····って言ったけど、僕ももっと前からちゃんと指摘しとけば良かったから強くは言えないなぁ」
「いや今日ばっかりは仕方ないじゃん!だってお兄ちゃんとエビちゃんがいきなり付き合い始めたんだよ!?理解出来るわけないじゃん!!」
『『だよねぇ·····』』
どうやらみんなも集中力が無くなってるらしい。
まぁ仕方ないよね、まさかエビちゃんに彼氏が、それも私のお兄ちゃんだなんて信じられないよね·····
「さて、気を引き締めて作業を終わらせるよー!」
『『おー!』』
今日はみんなの調子が良くないので、グラちゃんの能力検証も早めに切り上げてさっさと帰る事にした。
·····ちらっ。
うわっ、ミンチよりひでぇや。
◇
「責任者さーん!作業終わりましたー!」
「おっ!流石Sランク冒険者パーティーだ!仕事が早いな!ホント助かるぜ、だが格安な報酬でいいのか?国を代表する冒険者なんだろう?」
「良いんですよ別に!·····元々私が開けた穴ですし」
「あー·····そういやこの穴を開けたのって『賢者姫』だったか、おかげで俺たちの仕事が増えてガッポガポ稼がせてもらってるぜ、ありがとな!まぁ増えすぎて困ってるくらいだけどな!ガハハ!」
「えっ?あー、どういたしまして?」
なんか豪快な人だなぁ·····
まぁ私のおかげで仕事に困らなくなったならいいんじゃないかな?
「もしかしたら今後も依頼を出すかもしれねぇ、なからそんときはよろしく頼むぜ!」
「はーい!じゃあみんな!エビちゃんを回収してギルドに報告しに行くよー!」
『『はーい!』』
「それじゃお世話になりましたー」
「おう!頑張れよ賢者姫!」
そして私たちはフシ町にある私の実家にエビちゃんを回収しに向かった。
◇
マーキングを一通り終わらせたワシは、服を着てラクトの膝を枕にして寝転がっていた。
本当はずっと彼と繋がって居たかったが、そろそろあやつらが帰ってくる頃合じゃと察知して早めに切り上げたのだ。
「もうすぐワシは帰るのじゃ·····寂しいのぅ·····」
「うん·····」
「まぁこれが今生の別れという訳でも無い、ソフィに頼めば何時でも逢うことが出来るし、ワシが飛べば一刻もあれば再び逢えるのじゃ」
「そうだね·····」
「ワシはまだあと1年は学校に行かねばならぬ、それまでは時々逢うくらいで許して欲しいのじゃ·····」
ワシ自身でも驚くくらい自分がしおらしくなっているのを感じる。
それほど彼の事が好きで好きで仕方ないのだろう。
ワシは魔王じゃ。
魔王とは欲望に忠実な悪の権化と言われておる。
実際はそんな事無いのじゃが、今日くらい御伽噺の魔王になったって良いだろう。
·····彼に甘えるくらい別に構わぬだろう。
「卒業したらお主と共にこの家で暮らしたいのじゃ、その時は家族として歓迎して欲しいのじゃ·····」
「うん、ぼくもお父さんとお母さんを説得する、一緒に住もう」
「うむ····· よろしく頼むのじゃ·····」
\えっびちゃーん!迎えにきたよー!!/
ワシがラクトに甘えていると、どうやら迎えが来てしまったらしい。
もっと遅れればいいのに、そう感じたが時刻は既に夕方だ。
明日は学校じゃから早起きせねばならぬ。
いつまでもこうしてイチャイチャしていたいが呼ばれたらなら仕方無い。
「じゃあそろそろ行くのじゃ·····きっとすぐ帰ってくるのじゃ」
「行ってらっしゃい、学校頑張ってね」
「うむ····· ラクトっ!」
ちゅっ
「っっ!?」
「ふっ····· 行ってくるのじゃ」
ワシは彼に行ってきますのキスをして、真っ赤になっているであろう顔をみられないようちょっと落ち着いてから、親しき友人たちの元へ向かった。
◇
実家に到着した私たちは、早速エビちゃんを呼んだが中々出てこない·····
そして出てきたのは5分後だった。
「すまぬ、待たせてしまったのじゃ!」
「ソフィ····· おかえり·····」
「うわあっ!?お兄ちゃんどうしたの!?絞りカスみたいになってるよ!?というかエビちゃんものすっごいツヤツヤなんだけど!?·····さては」
「ふっ····· 大人の階段を駆け足で登ってたのじゃ」
「絞りカス····· 言い得て妙····· でも幸せ·····」
玄関から出てきたカップルは、エビちゃんはツヤッツヤに、お兄ちゃんは絞ったまま干された雑巾みたいにカラッカラになっていた。
「なんというか····· うーん····· 程々にね?」
「ワシ基準で程々にしたのじゃ」
「アレで·····?」
「ふっ·····今度は手加減せぬぞ?」
「ワーイヤッター」
あっ、お兄ちゃんの目が嬉しそうなのに死んでる·····
「もー!いい加減にイチャイチャすんのやめてっ!!エビちゃん早く帰るよ!」
「うむ、す、少し待って欲しいのじゃ」
そう言うと、エビちゃんはお兄ちゃんに別れのキスをして、ケッテンクラートの牽引車に乗り込んだ。
うわぁ·····
「ラクト、必ずまた来るのじゃ」
「うん、待ってるよ」
「はいはいしゅっぱーつ!!しんこー!!」
見るに堪え切れなくなった私は、ギアを最高速にしようとしたが、情けで低速で少しゆっくりと家から離れて行った。
「·····ラクト、よくやった」
「うふふ、思ったより早く孫の顔が見れそうね」
「今夜はパーティーですね、準備致します」
「ちょっ!何でバレてるの!?」
『『だって声ダダ漏れだったし』』
「まっ、まさか!」
◇
「あっ」
「ん?どうしたのエビちゃん」
「いや、2階の部屋でも割としっかりソフィの呼ぶ声が聞こえてきたのじゃ····· ええと、つまりじゃ、ワシもあれくらいの声出ておったから····· あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!ワシのバカアァァァァアアアッ!!!」
フシ町に1組のカップルの絶叫が響き渡った。
名前:エビちゃん
年齢:14歳
ひと言コメント
「ちなみにじゃが、魔族は好きなタイミングで妊娠出来るのじゃ、これは長寿命な種族故に無駄が生まれないよう確実に妊娠するためにこうなってるらしいのじゃ、何故今この話をしたかって?·····なんでじゃろうなぁ」
名前:ラクト・シュティン
年齢:17歳
ひと言コメント
「なんか、パーティー料理にやたらニンニクが入ってたし、変な亀を食べさせられた····· 美味しかったし元気出たからいいけど」
名前:なかよし組
平均年齢:14歳
ひと言コメント
ソフィ
「うわー·····実の兄が·····うわー·····」
アルム
「ちょっとエビちゃんに色々聞きたいんだけど?主に感想」
フィーロ
「エビちゃん大人だなぁ·····」
グラちゃん
「本当ならこの話も私が主人公だったはずなのに·····全部エビちゃんに持ってかれたわ·····」
ウナちゃん
「エビちゃんのお肌つやつやー!いいなーエビちゃんいいなー!!」
ミカちゃん
「寝てたら話が進みすぎててよくわかんない·····」




