潜入!冒険者酒場っ!
「あっ、スパイシーで美味しい!」
「甘い物を食べたらしょっぱいの食べたくなるね!」
「あぁ、お肉サイコー·····」
流石の私たちでも甘い物を食べ続けていたらちょっと飽きてきてしまったので、今は串焼きを何本か購入して食べながら通りを進んでいた。
ちなみに私はオークの豚バラ串だ。
醤油のタレ味が無いのが非常に残念だけど、美味しいから良しとしよう。
あぁ醤油、醤油が欲しい。
早く作る手段見つけないと欠乏症になって私死んじゃう。
なんて考えていると、いつの間にか屋台の雰囲気が変わり始めていた。
「うーん····· なんかスイーツの屋台が少なくなってきて、お肉とかお魚とかお酒のお店が増えてきちゃったね·····」
「確かに少ないなぁ····· たぶん大人向けの飲み屋街になってきたのかな?アルムちゃん、フィーロ君、どうする?ここら辺で引き返す?」
「ソフィちゃんこのまま進もう?今日は探索が目的でしょ?引き返したら意味無いよ?」
「確かに、ワタシもフィーロ君の意見に賛成!」
「ええー·····」
もうちょっとスイーツ食べたかったなぁ·····
まぁ、さっき多数決で買い食いに決定しちゃったんで、少数派の私は大人しく多数派に従いますか·····
◇
今度は川魚や川エビやサワガニを使った料理を楽しみながら進んでいると、なんか凄く人だかりがあって騒がしいお店が見えてきた。
「ねぇ、アレってもしかして·····」
「うん····· アレだよね」
「うわあ!アレだっ!!」
「「たぶん有名店だ!!」」
「冒険者酒場だっ!!」
「「「·····ん?」」」
なんか、1人だけ違うぞ?
やれやれ、あんな人だかりが出来ている店なんて汗臭い冒険者酒場なわけ無いでしょ。
これだから男子は·····
「えっと、ソフィちゃん、アレ冒険者酒場だよ·····」
「僕の言った通りだったでしょ?ねぇ!ちょっと覗きに行って見ようよ!」
「えっ!?冒険者酒場だったのかぁ····· むぅ·····」
口が完全に甘い物を食べるモードになってたからガッカリだよ·····
まぁでも、冒険者酒場もちょっと気になるから見に行くのは賛成だ。
「わかった、でも中に入ると怖い冒険者たちに絡まれるかもしれないから扉の隙間から覗くだけにしよ?」
「「りょーかいっ!」」
「じゃあ冒険者酒場にいってみよー!」
「「おーっ!!」」
私たちはアルコールの匂いと熱気が溢れる冒険者酒場へと突撃しに行った。
◇
「ちらっ」
「にょきっ」
「すすすっ」
私たちは今、冒険者酒場の入口から三段重ねのお団子みたいに頭だけチラッと出して中を覗いている。
一番下が私、真ん中がアルムちゃん、1番上がフィーロ君の三色団子だ。
おぉ凄い·····
いかにもガラの悪そうな冒険者たちが樽のビールジョッキで酒飲んでるわぁ·····
いいなぁ、早く大人になってあそこに加わりたいなぁ、って、今の人すっご!?
本当にビキニアーマーみたいな際どい鎧ってあるんだ、防御力とかどうなってるんだろ?
よしっ、私もいつかボインボインになって、際どい鎧を着てやるわっ!!
「うわぁ、凄い」
「何が?」
「おっp····· ちゃん達!」
「ふぅん?」
なんか、フィーロ君の発言と目線が若干怪しかったけど、まぁ男の子ならアレは仕方ないよね。
というか私も同性なのをいい事にガン見してたから人のこと言えないし。
あっ、ビキニアーマーのお姉さんがこっち来た。
「わわっ!?」
「ちょっ!フィーロ君押さないでっ!」
「あばばばばばっ!潰れる潰れるっ!!」
「「「うわあっ!?」」」
ドンガラガッシャーン!!
こっちに来たビキニアーマーのお姉さんに驚いたフィーロ君がバランスを崩してアルムちゃんの背中を押し、そのせいでアルムちゃんが私の上に倒れ込み、押しつぶされた私がフィーロ君の足を蹴飛ばして、足を蹴っ飛ばされてすっ転んだフィーロ君が冒険者酒場の扉をブチ開けて、もんどりうって私たちは冒険者酒場の中に転がり込んでしまった。
◇
「あいたたた·····」
「うーん·····」
「うぅ·····」
「「「はっ!!」」」
私たち3人は一斉に顔を上げると、お酒を呑んで騒いでいた屈強な冒険者たちが全員呑むのを中断して私たちをじっと見つめていた。
や、ヤバいかも·····?
「おいガキ共、ここが何処かわかってんのか?」
「「「ひっ!?」」」
き、きたー!!
冒険者ギルドに不相応な人が入ると必ずエンカウントするガラの悪い冒険者だーっ!!
ガキはママのお乳でも飲んで寝てな!って言われるやつだーっ!!
「ここはな·····」
『格安!大量!酒が呑める!』
『その三拍子が揃った我ら冒険者憩いの場!』
『冒険者酒場へようこそォ!!』
「って事で歓迎するぜガキンチョ共····· と言いたい所なんだが、夜はガラの悪い冒険者も多いしコイツら悪酔いしてっからな、つーわけでガキンチョ共は酒場として営業してる時間は諦めて帰れ、だが、明日の昼に来るといいぜ!学生向けに格安でランチが食べられるようにしてっからお前さんたちも安心して美味い飯食いに来いよな!」
『ちなみに!冒険者ギルドはここの隣の建物だ!間違えんなよ!!』
『あとここの飯はうめぇぞ!なんつったって新鮮な魔物肉をふんだんに使ってっからなァ!!』
「はーい!」
「うんっ!」
「わかりましたっ!冒険者さんたち、ありがとうございます!」
「おう、お前らも学校頑張れよ!あと不審者に追われたら冒険者酒場かギルドに駆け込めよ、一応あの学園と提携を結んでるからな、なんかあったら冒険者を頼ってくれ」
「「「はーいっ!!」」」
「それじゃ、退散っ!!」
「「たいさんーっ!!」」
屈強で優しい冒険者さん達に見送られ、私たちは自分たちの寮へと脇目も····· 振りながら、寄り道しながら帰った。
◇
そんな訳で、時刻は20時1分。
門限過ぎちゃった☆
「それで、今何時かしら?」
「「「·····」」」
「20時1分、門限は何時だったかしら?」
「「「20時です·····」」」
いきなり初日から門限破りは非常にマズい、お父さん達に報告されたら怒りのゲンコツが私に降り注ぐわ。
だから魔法で裏工作することにした。
「全く、初日から門限を破るなんて····· って、あら?あっちの時計だとまだ19時55分ね、ズレたかしら?じゃあ····· あら、管理室の中の時計もだわ·····」
ドーミさんは懐から懐中時計も出したけれど、時計の針はやはり19時55分を刺していた。
「まぁ、今日は時計のズレって事にしておいてあげるわ、次からはギリギリじゃなくてちょっと早めに帰ってくるのよ?」
「「「はーい!!」」」
何とかドーミさんが許してくれたので、私たちはバレない内にそさくさと自分たちの部屋に帰っていった。
うん、買い食いしすぎちゃった☆
【後書き】
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「んふふ、『周囲の時計の針を一斉に動かす魔法』なんて何処で使うんだって思ってたけど、こう使うための魔法だったんだ、んふふふ·····」




