粉骨砕身っ!海渡り!
「姿勢制御システム起動、制御ブラスターテスト開始」
パシュッ!
パシュゥゥウウウ!
「姿勢制御システム確認完了、続いて行動アシストシステム起動、テスト開始」
キュルルルルッ
ウウゥゥウウウン·····
「行動アシストシステム正常、ジェットウィング稼働開始、出力上げよ」
カチャンッ
キィィィィィィイイイイン!!
「推進力確認完了、ウィンドバリア及びマジックバリア&ソリッドバリア展開」
ヒュオオオッ
カキンッ!
「展開確認完了、各種計器ホログラムウィンドウで明度10にて展開、システムウィンドウのみ明度30、展開位置を視界に会わせろ」
ヴォンッ
ピピピピッ·····
キュインッ!
「ウィンドウ位置修正完了、動作正常、続いて肉体強化システム系起動」
ググググッ·····
ギュッギュッ
「強化確認、続いて強制肉体再生システム起動」
キィィィィイイイイイインッ!!!
「んっぐ····· 問題、なし!血中二酸化炭素強制還元システム起動」
フッ·····
シューーー·····
「酸素供給確認完了、『彗星駆鎧』最終安全装置解除、最終安全チェック開始」
カカカカンッ!
ギュォォォォオオオオオオオオン!
「最終安全チェック完了!『彗星駆鎧』起動!」
キィィィイイイッ·····!
ッッッドオオオオオォォォオオオオン!!!
彗星駆鎧を起動した瞬間、身に纏う夜空色の鎧に美しい星空のラインが現れ、膨大な量の魔力が溢れ出した。
溢れ出る魔力は体の周囲で渦を巻き、それが集まって頭上にて高濃度の魔力の環となった。
「ふっ」
ボッ!!
軽くジャブを繰り出すと、空気が裂けて爆裂する激しい音が鳴り響いた。
「ぐっ、痛ぃっっった!!·····うん、計算通り身体能力が100倍になってる·····けど、負荷が凄い·····」
今のパンチだけで私の腕が悲鳴を上げている。
そりゃ時間遅延魔法の須臾も使わず、人知を超えた速度で動けばこうなるに決まってる。
まぁこの体はサブだし、即座に傷付いた筋肉や骨や関節が回復魔法で治ったから問題ない。
そう、私が死んでも代わりはいるもの作戦&無限再生地獄作戦だ。
オリジナルの体はインベントリで時間停止状態で保管中だ。
なんでこんな事をしているのかを説明しよう。
◇
私は『須臾』による時間遅延の効果で水上を物理法則に従ったうえで歩く事ができるようになった。
しかし、私はこう思った。
『これじゃ自分の力とは言えない』
『須臾』はこの世の理に干渉して、動画再生速度を変更するように遅くして、私だけその速度についていけるというシステムだ。
だけど、これを使ってやるのはなんか違くないって思ったのだ。
「ならばインチキ抜きでこの肉体だけで海の上を走ってやろう」
ただ、無理やり強化しただけでは筋肉が切れ骨が折れ血管が破裂するし、長時間、長距離を走り抜くことが出来ない。
そこで私は実験体用に何体か保存しているサブの私の体を使い、そのうちの1つを使って魔法による極限強化実験を行ったのだ。
しかし、限界を超えた強化をすると少し動いただけで身体がボロボロになってしまい、どうしようも無かった。
だが私は全身の骨がひび割れ筋肉が断裂して血が吹き出す激痛の中で、悪魔的発想を思いついた。
『動くと壊れていくなら、壊れていくのと一緒に回復すれば良い』
その結果が、この彗星駆鎧の最新システム『肉体強制回復システム』だ。
もちろんこんなの常人じゃ使いこない代物だ。
何せ完全回復させる時に傷付いた時と同じレベルの痛みを伴うからだ。
だが私は大丈夫だ、何せ腕がモゲたり大火傷をしたり全身バラバラになったりと、ありとあらゆる激痛は味わってもう慣れた····· というよりも堪えられるようになったのだ。
そして、この強制回復&超強化の組み合わせによって、私の体は須臾を使わずとも音速を超える速度で、水の上を走れる速度で走ることが可能となったのだ。
◇
「よし、そろそろ行くかな·····」
「頑張るのよソフィ、·····無茶はしないでとは言わないけど、程々にね」
「わーかってるよグラちゃん、んじゃちょっくら逝ってくるわ」
私はタスキを肩から掛け魔法でしっかり固定した。
「ふぅ····· みんな離れてて!」
「ソフィから離れて!近くに居ると危険よ!!」
おっ、グラちゃん分かってるぅ!
グラちゃんがスタッフや観客に声を掛け、なんとか私の周囲から遠ざけてくれたおかげで全力で行ける。
「ルート制定!ホログラムウィンドウに表示!」
「船舶の行動を予測、動線表示!」
「思考加速!倍率100倍にしろ!!」
その瞬間、私の思考が超加速した。
周囲の速度が100分の1になり、スローになる。
こうでもしないと早すぎて足を踏み出したり姿勢制御したり出来ないのだ。
そして私の体は100倍の速度で動き壊れ再生してスローに見える世界に追いついたのだ。
これなら行ける
「『オミワタリ作戦』開始っ!!」
ズッッッッッッッ
ドッゴォォオオオオオオオオオオン!!
ブチッ!メギッ!ボキッ!
「あ゛ぅっ!!?」
私が砂浜から一歩踏み出すと、早速右足が折れて筋肉がちぎれた。
が、それもほんの一瞬で元通りになる。
そして私の体に2倍になった痛みが駆け巡る。
だが歩は止めないっ!!
「ヴおお゛オおぉォぁぁあアあああ゛ア゛ッッ!」
私は腹の底から猛獣の如き雄叫びを上げながら、砂浜を物凄い勢いで蹴飛ばし、砂嵐を巻き起こしながら海へと走って行く。
時速はたった数歩で1400km近くまで上がって、体の周囲に展開した風避けの結界にソニックブームが発生したことを示す白い雲が纏わりついた。
魔法による身体強化、ただそれだけで音速を超える速度を私の体はたたき出したのだ。
いける。
これなら行けるっ!!
私はたった数歩で渚へと到達すると、一際強く踏み出して海の上へと飛び出した。
そして足を海面へと振り下ろし·····
パシャッ
バアァァァァァアアァァァアアアンッ!!!
「うははははははははっ!!走ってる!!私っ!!海の上を走ってる!!」
私の足は水に沈むこと無く、地上と変わらぬ推進力を得て私の体を前方へと吹っ飛ばした。
そして波を変に踏んだ事で吹っ飛ばされてバランスを崩しかけた体を、『彗星駆鎧』に付いた姿勢制御用のブラスターが私の体制を修正して、次の1歩を踏み出す手助けをした。
傍から見たら、私は河原でやる水切りのようにピョンピョンと海面を跳ねるように移動してるように見えるだろう。
「い゛っだいなもう!!治れ!!」
だがこの1歩で私の足はミンチ肉みたいにバラバラになり、次の1歩で反対の足も木っ端微塵に砕けた。
·····が、形も残らないほどぐちゃぐちゃになった足は、頑丈な太ももの中ほどまで覆うブーツのお陰で外骨格のように形状を保ち、再生までの時間稼ぎをしてくれた。
ブーツの中身がグチャグチャと元に戻り、次の1歩を踏み込む瞬間には再生してしまい、そして次の1歩でまた砕け散る。
もちろんめっちゃ痛い。
でも治ったら水面を蹴り飛ばして再び砕けてしまうから今更痛みなんて気にしない。
ちなみに、私の足のみ強化倍率を上げてるので、マッハ数十くらいで動かせるようになっている。
もちろん動かしたら速攻で足がぶっ飛ぶけど、私の両足というか下半身は『彗星駆鎧』で覆っているので足が粉砕しても骨盤が折れても外骨格のように形状を保って即座に回復して、次の1歩を踏み出すのを繰り返せるようになっている。
当然の如く死にたくなるくらい痛い。
「でもっ!楽しいっ!!」
私は両足を潰しては戻してを繰り返し血を吹き出しながら海の上を走って行った。
◇
〜15km地点〜
ブシャッ!
「ゔっ····· 血が足りないっ!『血液増殖』!」
海の上を自分の足で走っていると、そこら中の血管や皮膚が裂けて血が吹き出す。
しかしそれは直ぐに治るのだが吹き出した血が置いてかれてる事があって、貧血になり始めたので私は血液を増やして無理やり何とかした。
「おらおらー!お邪魔は無いのかー!!」
さっきから何隻も船を見かけるが、一向に邪魔をしてこない。
というか魔法が発動した頃には私は遥か彼方に居るから意味が無いのだろう。
そして私が踏み込んだ海面は爆発したかのように水柱が上がり、大波が発生して船がひっくり返ったりしているようだ。
人に魔法を向けていいのはやり返される覚悟のある奴だけだから大丈夫だろう。
まぁ、転覆した船があったって知ったのは渡り終わった後の事なんだけどね?
◇
ドパァン!
「あと、ちょっと!!」
もう何度足が砕けたか分からない。
もう何度骨盤がへし折れたか分からない。
もう何度内臓が捻じ切れたか分からない。
もう何度致死量の血を吹き出したか分からない。
でも確実にゴールは近付いてきている。
「うおおおおおおおおおおおおっっ!!!」
私の目の前にあるゴール地点の砂浜がどんどん近付いてきている。
ここまでたった数分の出来事だが、私の精神はもう満身創痍だ。
激痛に激痛が重なって、最早激痛では表しきれないほどの痛みで精神が狂いそうになる。
だが私には精神崩壊しなくなる『絶淵の奈落姫』というスキルがある。
それを使って私は無理やり正気を保ちながら、海の上をひたすら走って走って走って、永遠に感じるような苦痛を走るという意思で上書きしながら走り続ける。
だが、永遠に続くような錯覚をする時間ももう終わりを迎える。
「ブラスター反転!最大減速!」
ドッ!!
バシュゥゥウウウウウッッ!!
「んぎぎぎぎっ!!!」
もうゴールは目前だ。
私はゴール地点の地面のシミにならないよう、音速から一気に速度を落とすためブラスターを前に向けて作動させた。
すると減速により体に物凄いGが掛かり、私の視界が赤く暗くなってきたが、即座に元の色に戻った。
多分減速が激しすぎて目の血管が破裂したりしたんだろう。
でもそれも予想済み、私の体は1秒後には元通りになっていた。
そして·····
「ゴールッ!!記録2分くらい!!自分の足だけで!海を渡りきったー!!!」
シーン·····
「·····拍手は?」
「ソフィちゃん·····鏡見たら?」
「えっ?うわっ!?何これ!?」
無事にゴールした私は、てっきり大歓声で迎えられると思っていたのでその静寂さに驚いた。
んで、まっていた校長先生から鏡を見るよう言われたので見てみたら、なんか私が真っ赤になってた。
うん、走ってる時は夢中で気が付かなかったけど血が吹き出して私に掛かってたねこりゃ。
というか髪に肉片とか骨片が絡まってるのめっちゃグロいんだけど·····
「·····お風呂あります?」
「海で洗ってきなさい?どうせ無傷なんでしょう?はぁ·····ほんとにアホな事をやったわね貴女」
「へーい····· まぁ勝ったしいいじゃん、ですよね?」
『ぇあっ?あっ、そ、ソフィ選手!なんと海の上を走って渡りきってしまいました!!そしてソフィ選手のゴールによって『マグウェル魔法学校チーム』が1位となりました!!おめでとうございます!ソフィ選手!インタビューを·····ってあれ?』
とりあえず私は体にこびり付いた汚れを落とすために海に飛び込んだ。
◇
ごぽぽぽっ·····
海の中で私は鎧を一旦全部外して全裸になると、インベントリに保管していたメインの私の体を取り出して意識を移し替えた。
おはよう私の本物のカラダ。
流石にさっきまでの体は酷使しすぎてたみたいで、再生してたとはいえガタが来ていたので元の体に戻したのだ。
「ぷはっ!あー気持ちいい·····」
そんで後は海中で下着や鎧を魔法でパパっと装着して、先程まで私にとっての地面だった海面に顔を出してプカプカと浮かんだ。
『ソフィ選手が浮かんできました!大丈夫ですか!?今救護班を呼びます!』
「大丈夫でーす、怪我は無いのでー、ちょっと鎧の冷却がてら休憩してるだけなんでお気になさらずー」
『それは良かったです、ではインタビューをしたいので戻ってきてくれませんか?』
「えー····· わかりました·····」
私は渋々インタビューを受けるために陸に上がり、インタビューに答えたらまた海の上にプカプカと浮いて休憩しながリレーが終わるのを待った。
ちなみにリレーが終わったのは数時間後だった。
名前:ソフィ・シュティン
年齢:12歳
ひと言コメント?
「·····正直さ、出産って死ぬほど痛いって聞くんだけどさ、2分間全身の筋肉と骨と皮膚と内臓が裂けて砕けて両足が千切れ続けるのとどっちが痛いかな?ぶっちゃけ私は後者の方が痛いと思うんだけど·····」
「ちなみに2位は案の定『エンシェンオースト魔法学園』だったよ」
「·····それと、マジで痛すぎて色々漏らしてたのはナイショだよ?」




