いざ街へっ!
壁の中からアルムちゃんとフィーロ君を手招きしていると、アルムちゃんが興味津々といった様子で私の方に近付いてきて·····
ん?フィーロ君が逃げようとしてる?
「ひっ!?」
「きゃっ!?」
「はーい、2名様いらっしゃ〜い♪」
私は女の子のベッドに乗るのを躊躇って逃げようとしていたフィーロ君と、ついでにアルムちゃんの腕をガシッと掴んで『ディメンションルーム』に引きずり込んだ。
あと、部屋の鍵を閉め忘れていたので無属性魔法『念力』で閉めておいた。
誰かに勝手に入ってこられると困るもんね!
そして、私の部屋に静寂が訪れた。
◇
「うーん····· はっ!?ここはっ!?」
「えっ!?すっごーいっ!!ひろーい!!」
「んふふ、でしょ?今は私の部屋にしちゃってるけどねっ!後でここは皆で使えるリビングにしようと考えてるよ!」
流石にうら若き乙女のプライベートルームを集会所にするのは嫌なので、そこは許して欲しい。
「でっ!ソフィちゃん!どんな部屋があるの!?」
「それは後でね?今は街探索の計画を話し合お?フィーロ君は逃げようとしないで!居てもいいから!」
「わっ!?」
こっそり逃げようとしているフィーロ君を呼び止め、私たちはみんなでリビングの床に座って会議を始めた。
フィーロくんが正座気味に座ってすごく居心地が悪そうにしてるのが見てて面白いけど、今はそれより会議の方が大事だ。
「で、今日の街探索はどうする?私は色んな屋台に寄って買い食いが良いかなって思うんだけど」
「僕はちゃんとしたお店がいいかな、あと冒険者の酒場とかもちょっと覗いてみたいな」
「私はソフィちゃんとほぼ同じかなー、でもスイーツ多めで!」
「いいね!多数決で買い食いに決定!」
「やったー!」
「·····あれ?これ僕圧倒的に不利なんじゃ?」
安心してねフィーロ君、私は中身が男だったから君の意見もよーくわかるよ、たまーにだけど味方するから安心してねっ☆
·····たまーに、だけどね。
◇
計画も決まったので私たちは『ディメンションルーム』から出て、早速マグウェルの街の探索に出かける事にした。
「っとその前に、私の杖って持ち歩いとかなきゃ危ないかな?」
「うん、魔法がソフィちゃんの想定外の威力になる杖を置きっぱなしにするのは危ないと思うよ」
って事で、杖を持って私たちは外へ出た。
ちなみに、フィーロ君は杖を常に持ち歩いているそうだ。
私もその気持ちわかるよ、手頃な棒があると振り回したくなる年頃だからね。
◇
寮の1階に到着すると、寮母のドーミさんが掃除をしていたので、声を掛けてから外出をすることにした。
いくらルールは破るためにある!っていうような行動をしてる私でもトラブルは起こしたくないし、報告できるならちゃんと報告したいからね。
「ドーミさん!私たち3人で外出してきます!さっき申請した通り、夜ご飯は外で食べてきます!」
「はいよ、門限はちゃんと覚えてるかい?」
「「「20時!」」」
「合ってるわね、じゃあ行ってらっしゃい、悪い人に絡まれないよう気をつけるのよ、門限を過ぎたら締め出すから時間はこまめに確認する事、わかった?」
「「「はーい!」」」
ドーミさんに許可を得たので、さっそく見知らぬ街の探索へ·····
「とつげきー!!」
「「おー!!」」
私を先頭に3人組は街へと飛び出して行った。
◇
寮から出て暫く道なりに進むと、広い商店街が広がっているようであたりが賑やかになってきた。
更に、もうすぐ夕飯時というだけあって道の左右にあるお店の他に、移動式の屋台が沢山やって来ているので活気が溢れかえっている。
これよコレ!
私が求めていたのはコレだよ!!
ビバッ☆ 異世界っ!!!
憧れの景色に私たちは心躍らせ、無意識の内に1歩、また1歩と通りの方へ歩みを進めてしまっていた。
そして、歩みは甘い香りのする方へ引っ張られ·····
「あっ!ソフィちゃんアレ美味しそうだよっ!」
「どれどれ?おおっ!パンケーキだっ!いこっ!」
「じゃあ僕はあっちの串焼き屋に····· えっ?ちょっと2人とも離して?あああぁぁ·····」
フィーロは必死に抵抗をしたが、女子2人の甘い物に対する執念には一切歯が立たず、ズリズリとパンケーキの屋台へと引きずられて行ってしまった。
◇
「「あっっまーーーーーーい♡!」」
「うん、美味しい、美味しいよ、美味しいけど、口の中が物凄く甘い····· あぁ串焼きが食べたい、しょっぱくて味が濃い串焼きを食べたい·····」
私たちは屋台で注文した『ビックフワフワパンケーキ・フルーツ&ハニー&ジャム』をペロリと完食してしまった。
なんか、この身体になってから甘い物なら無限に食べられる気がする。
女の子は第2の胃袋があるって本当だったんだ!
ビバ!女の子ライフ!
だが、そんな女の子ライフに対する裏切り者が若干1名ほど紛れ込んでいるようだ。
「·····ほらよボウズ、餞別だ、なんというか、頑張れよ?」
「うん····· ありがとうございます、知らない通行人さん····· あぁ、やっと甘い物地獄」
「「じごく·····?」」ギロッ
「·····甘い物天国もいいね!でもお肉もおいしいなー、そうだ、次は塩っぱい物を食べない?」
そうだよね、やっぱり甘い物は最高だよね!
私とアルムちゃんはお互い目配せをして、タイミングを揃えてフィーロ君を両脇からホールドした。
「「じゃ、次はクレープ屋さんに行こー!!」」
「えっ!?ちょっ、僕は串焼きが····· うわぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
そのとき、先程フィーロに肉串をあげた通行人Aが居る集団がフィーロの目に止まった。
「死んだな」
「あぁ·····アイツは良い奴だったよ·····」
「そこの通行人さん!見てないでたすけてっ!」
しかし、現実は非情である。
「·····所でさ、アイツの両脇にいる女の子たち、まだ子供だけどなかなか可愛いくないか?」
「ん?あぁ確かに····· いやまてお前ロリコン·····」
「ちげぇよ!将来有望そうな感じって意味だ!俺は普通だ!」
「将来有望とか言ってやがるぞコイツ!変態だ!」
「今はそれはどうでもいい!みろよアイツ!あんな可愛い女の子2人を侍らせてやがったのか!?」
「なんだと!?あの年でモテモテなのか!?」
「魔法学校の新入生か····· その顔、覚えたぞ」
「えっ、ちょっと、通行人さんたち?目が怖いよ?」
串焼き屋の屋台で酒を呑んでいた集団が、フィーロに向け一斉にサムズアップし·····
親指を下に向けた
「うわぁぁぁぁぁぁぁああああッ!!!」
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:6才
ひと言コメント
「甘い物はいいね!甘い物は心を癒してくれる!」
名前:アルム
年齢:6才
ひと言コメント
「甘い物は人間が生み出した料理の極地だよ!そう思わない?フィーロ君」
名前:フィーロ
年齢:6才
ひと言コメント
「気持ち悪い·····」




