大会に向けての下準備っ!
「よし!やるかっ!」
私上半身だけ脱いだ作業着にタンクトップというThe作業用な装備に着替えて工房に立っていた。
なんたって今日と明日は大会前最後の休日。
そんな貴重な時間を使って、私はみんなが本番で使う装備のアップグレードや最終調整を行っていた。
「でもとりあえずは私の装備からやっちゃおっと」
まず私の使っている『ラズワルドロッド』のアップグレードだ。
この杖は6年間ずっと使っている1番長い付き合いの杖だが、実は1度もマトモにアップグレードした事は無く、やってもせいぜいエビちゃんのケンカして頭をぶん殴って曲がったのを修理する程度だった。
「とりあえず材質を『3号鋼』にするかなぁ·····」
星核合金3号鋼、これは私が見つけた3番目の星核合金系金属の比率で、ミスリル・オリハルコン・アダマンタイトをピッタリ33.333%ずつ混ぜ合わせ、足りない0.001%に私が作った超高魔力密度の魔結晶を均等に混ぜ合わせる事で完成する現状最強の合金だ。
もちろん作るのは簡単ではない、普通に魔法で作ろうとすると比率が若干ブレて3号鋼どころか『星核合金』さえ作れないのだ。
そんな貴重な3号鋼の横に私の愛杖『ラズワルドロッド』を置くと、私は魔法を発動した。
「ふぅ·····『等価交換』」
すると杖を構成していた普通の星核合金が解けて浮かび上がり縁のオリハルコンだけが残り、隣にあった『3号鋼』も同量が浮かび上がってクルッと場所を入れ替え、材質だけ入れ替わってそれぞれ元の形へと戻っ·····
あっ、ちょいまち!
普通の星核合金はそのままで!
元々ラズワルドロッドだった普通の星核合金が3号鋼の塊へと混ざろうとしていたのですんでのところで止めて事なきを得た。
これ作るの大変だから混ざられると面倒なのよ。
「よし完成!シン・ラズワルドロッド!」
見た目は前と全く変わらないけど性能は数倍〜数十倍に跳ね上がったトンデモ兵器が完成した。
ちなみにさっき使った『等価交換』という魔法は錬金魔法で最近フィーロ君が練習中の魔法だ。
別に使っても普通は足とか腕を持ってかれるような事は無く、効果は普通に材質の入れ替えってだけだ。
分かりやすく言うと、同じ量の青銅の剣と鉄インゴットがある場合にこの魔法を使うと、剣の青銅と鉄が材質だけ入れ替わって、切れ味はそのままって感じになる。
つまり材質AとBを入れ替えるのであって、材質AがBに変化する訳ではないって事だ。
ちなみに私は通常素材なら後者も出来る。
「まぁ出来たしいいや、あとは内部の魔導回路の更新とか魔結晶の新調とかやろっと」
結局いろいろやってたら杖だけで1時間は掛かった。
◇
「ヤバいヤバい!間に合わない!!」
自分の杖のアップグレードが終わった私は急ピッチだけど超絶丁寧にみんなの装備を調整&アップグレードしていた。
今日明日でやるべき事は沢山あって
・私の『機械乙女ノ星鎧』の調整
・私の義手にビーム式仕込み刀を付ける
・アルムちゃんの杖の魔改造
・フィーロ君の杖の魔改造&超強化
・グラちゃんの杖の魔改造
・ウナちゃんの杖の解析&魔改造
・エビちゃんの杖の修繕&魔改造
・エビちゃんの『黒戦乙女:竜』の強化
・ミカちゃんの杖の作成(仮)
・先輩3人のリレー対策アイテムの開発と作成
・お昼ご飯の作成
・【自主規制】
・エビちゃんに頼まれた【自主規制】の作成
・カレー用のスパイスの栽培実験
・カレー用のスパイスの比率研究
・カレーの美味しい作り方の研究
・在庫が減ってきたお米の栽培・収穫
・星核合金4号鋼の開発
・漏れそう
・トイレ行きたい
・すっごくトイレ行きたい
「よし!今は出来ることからやろう!漏れるー!!」
私は大慌てでトイレに駆け込んだ。
◇
トイレから戻った私は作業を再開した。
まずはみんなの杖の修理や調整や魔改造をするので、みんなから借りた杖を杖立てに並べていた。
「まとめて解析····· うん、やっぱりエビちゃんのが1番消耗が早いや」
通常は杖は早々消耗しないはずなんだけど、エビちゃんの杖はかなりボロくなってきていた。
まぁそりゃ普段から杖を真っ二つにしてわざと不安定状態にして魔法を暴発させて威力を上げるという仕組みだし、直接攻撃できるように刃も付けてる上によく斬りかかってるからボロくなって当然だ。
とりあえずエビちゃんのも含めたみんなの杖も少なからず壊れたりしてるので、私はなんでも直しちゃう魔法『修繕』で修理を行った。
あとはみんなの杖の魔結晶を新たに作った魔力ー魔法変換効率の良い魔結晶を組み込んで、細かい流路のアップグレードとか材質の変更とかを行って大体完了した。
「問題はなぁ····· これどうしよっかなぁ·····」
そして最後に残ったのは、未だ手付かずのウナちゃんの杖『Despair or Disappear』だ。
この杖は見た目からしてやばくて、真っ黒でアクションゲームで武器のテクスチャがバグったみたいな動きをしている。
具体的に言うと、杖を持ったら持ってる所以外がバラバラな速度で遅れたり先に行ったりして付いてくるのだけど、触るとそこにはちゃんと杖があるっていう感じだ。
どうも座標がズレて表示されてるっぽいかな?
昔ゲームでよくやったわぁ、キャラの頭だけ表示する座標をズラして頭伸ばすとか·····
まぁ要は当たり判定はあるんだけど見た目だけズレて表示される·····
事もあるし、マジで杖がバラバラになったりする。
今触ったらズレてたわ。
というかこれ杖というより黒い稲妻みたいな形のナニカとしか例えようのない見た目をしてるから、本当に杖かも怪しいんだよなぁ。
「やっぱりわからん·····」
前に私が『この世界のバグ』と称した通り、この杖に関する情報はほとんど判明していない。
わかっているのは、『Despair』『Disappear』という2つの杖に分離する事、これを持てるのは闇属性と『ナニカ』に適応がある事、私がイジれる余地がほとんどない事。
最新の鑑定によると、カオスを司る神の杖らしいけどその説明に相応しいカオスな杖だ。
·····うん、説明出来る事がこれだけしかないのだ。
「まぁイジれる余地が一切ない訳では無いからイジるんだけどさ·····」
とりあえず内部の魔力流路を開くと、おっそろしいほどグチャグチャに絡み合っているが美しい魔力の流路が見える。
多分1ヶ所でも間違えて組み立てたら杖が消失するだろう。
そんな繊細な精密機器の爆弾を私はチマチマとイジって行き、ウナちゃんが使うのに特化した改造を施して行った。
「·····あれ?これって·····げぇっっ!!?!?たすっ、助けてぇぇぇぇえっ!!!?!?!?!?あああああああああああああああいああああアッー!!!!??」
が、私は突然暴走した混沌に引きずり込まれ、大変な事になってしまったのだった。
◇
みんなの杖を改造し終わったのは午後になってからだった。
·····ウナちゃんの杖についてはノーコメント。
そのお陰でとある禁断の強化方式を見つけられたけど、とにかくノーコメントだ。
ちなみに今日のお昼は試作のカレーだった。
味はバターチキンカレーでナンも作った。
「よし!次はエビちゃんの装備の魔改造っと·····」
エビちゃんが魔王城で作った装備『黒戦乙女:竜』は材質が普通·····って言ったら変だけどそこまで狂った物は使っていないため、そこまで滅茶苦茶な性能があった訳ではなかった。
なので今回は私謹製のウルトラアップグレードをしてやろうという訳だ。
「材質は····· 杖と同じ『星核合金:新月』のアップグレード版『星核合金:深月』かな」
前にエビちゃんが闇属性の魔力を星核合金に込めら真っ黒になったのを応用し、エビちゃんの魔力を私が借りて強化して生みだした合金だ。
こいつはあまりにも黒くなりすぎて光を反射しないのに僅かに紫に光り始めていて、見た目の良さも向上している。
そしてこの合金は魔法の発動には向いていない性能で、攻撃を受けると物理や魔法でも関係なく衝撃を吸収して何処かへ消してしまう性質がある。
私の頭の中のイメージではブラックホールだ。
マジでそれくらいヤバい攻撃吸収性能がある。
「よし、作成開始!!」
私はエビちゃんの装備のデータをアカシックレコードから取り出して、ヤバい素材をふんだんに使って同型だけど全く新しい装備を作り始めた。
◇
「できたー!!『戦乙女ノ暗黒魔装:龍』!!」
名前は厨二センスを使って付けたが、満足できる防具が完成した。
見た目は根本は同じだけどかなり変わっていて、メカメカしい露出度が高い黒い女騎士の鎧って感じ?
というかほぼメカニカルアーマーって感じになってしまった。
あとは背中のスラスターだが、こちらはエビちゃんはアクロバティックに動くので邪魔にならないよう『擬似収集型魔法・ナノマシン』方式にしてあって、使おうと思った時に背中から機械仕掛けのまあまあデカいウィングが展開されてフライモードになったり、行動の補助をするパーツが展開されるようになったりするようにした。
で、展開されるウィング等の強度確保のために、普通に使われる魔法『周囲から集めて魔法を構築する方式』を利用した、予め鎧のバックパック内部に星核合金のナノサイズの粉を入れておいてそれを魔法で再構築して追加パーツをその場で構築する方式を新採用してみた。
現状のテストでは問題なく動くし、かなり画期的なシステムだ。
·····まぁ、変幻自在のブースト機関だから使いこなすのは難しいだろうけど、エビちゃんなら難なく使いこなせるはずだ。
ついでに私の『機械乙女ノ星鎧』も魔改造してこの機構を組み込んだので見た目が全く変わって全身がより機械的な見た目になって、第3,4腕がよりスムーズに出せて特殊なフィールドも発生させられて防御力も上がって、更にカッコよくなったのでヨシッ!ということにした。
そんでこの『想像具現化システム』なのだが、元は私が使ってた『万能結界』だ。
これを元にいくつか機能のテンプレートを組み込む事で発動魔力を大幅に削減してテンプレート召喚をする事で、私以外でも使えてあたかも異次元から武装を取り出したみたいな感じで巨大な武装を展開できるようになっている。
例えば私の星鎧に付いていたスラスターなんかも収納可能になっているし、義手ではない右手にも巨大な機械仕掛けのアームを取り付けられたり、脚部を空を歩けるブーツにしたり、虚空からメカメカしいバイクを呼び出したりと、もうロマンの塊みたいな装備になっている。
あとはこの腕とかにもアシスト機能をもりもり詰め込んだので、超精密作業が出来たと思えば半端ないパワーで物を掴んだり持ち上げたり出来るし、ウィンドウを展開して装備の設定を色々イジれたりするようになっている超便利な機能付きだ。
ちなみにアシストありだと4本腕で2本槍を持って戦ったり出来るくらいアシスト効果は高い。
あとこれが1番の改造ポイントで、装備を自由に切り替えられるようなシステムを組み込んだので普段は首元にチョーカーを装着しておいて、戦闘になるとチョーカーに魔力を流して変身キーワードを言うと一瞬で装備が展開して装着される仕組みになっている。
で、鎧や元々来ていた服はやっとこさ完成した『固有亜空間収納』要はマジックバック機能に収納されていて、発動と同時に格納&搬出をして一瞬で自動装着されるような仕組みにしたのだ!!
ちなみにだけど、私やエビちゃんみたいな超魔力が多い人物で、こういう装備にロマンを感じる乙女じゃないと装備できない、そういう風に私が設定した。
「よし、あとはミカエル先輩の杖と他の先輩たちの補助アイテムを作れば····· うひひ·····」
私は新しくなった『機械乙女ノ星鎧』を身につけたまま、次の作業に取り掛かった。
名前:ソフィ・シュティン
年齢:12歳
ひと言コメント
「·····ミカちゃんとギーク先輩のが問題なんだよなぁ、抱き枕に出来る杖って作れるかそんなもん!!!まぁギーク先輩のは何とかなると思うけどさ」




