故郷への手がかり
『地球へ帰る方法』
それは私がずっと探し求めていた事の1つだ。
それを探し求めていたのは私だけじゃない、3600年前にこの世界に勇者召喚でやってきて取り残された校長先生こと加藤 郷美さんもずっと探し求めていた事だ。
逆に言えば、3600年以上もこの世界から抜け出す方法は判明していないほど難易度の高い、ほぼ不可能と言っても過言では無い事だ。
今はほんの僅かな手がかりでも欲しい、そんな状況で『異世界転移の方法を知っている』と言われたら、日本に時々行ってるという人物が目の前に居たら、聞かざるを得ないだろう。
「·····で、方法というのは?」
「んー、着心地のいいパジャマ、ほしいな?」
「試作EX・DX版ウルトラふわもこパジャマを献上致しますので、何卒·····」
「ん、おっけ」
私は最近作ったばかりの、神のパンツを解析して作った着心地抜群な超絶ふわもこ生地のパジャマをミカちゃんに献上した。
私が使う予定だったのに·····
それに満足したのか、彼女は異世界転移の方法を語り出した。
「わたしのやり方は、いっかい神界にいって天使のとおりみち使って地球までびゅーんって行ってる」
「·····だけ?」
「ん、そんだけ」
「うーん····· なるほど·····」
·····やっぱり無理かも。
◇
実は私、既に異世界転移の方法だけは見つけて、既に発動して転移できることも確認しているのだ。
まぁ転移したのはゴブリンだけど。
んで、世界間の移動についてだけどこれがまぁ難しい。
その空間転移をする空間を覗いたのだけれど、どうやらこの世界には平行世界が沢山あるらしい事が判明したのだ。
私が見た光景は多分4次元空間の景色だったんだけど、一つ一つがほぼ同じ形の3次元宇宙空間の『泡』が大量に包まれた『包み』が無限に広がって重なりあっていたのだ。
私の居る世界とよく似た世界だけでも、私の居る世界のある『包み』だけでも『泡』は数え切れないほどあった。
その平行世界ではほんのちょっとだけ違ってしまった可能性の世界が繰り広げられていた。
·····けど、何故か私たちの居るこの世界には平行世界が存在しない。
理由はよく分からないけど、とにかく平行世界が無くて平行世界の私もみんなも居ないのは確かだった。
こんな感じで、ここみたいな特例じゃ無ければほんの少ししか差のない世界が無限に広がり、似た世界同士が集まって巨大な包みになり、それらが無限大に存在している。
それをこの広い4次元空間から、私が男として存在していた『地球』を見つける事は困難というか絶対に無理だ。
手がかりがあるとすれば、元いた世界には私····· は死んで魂だけ来た感じだから、『加藤 郷美』という人物が存在しない世界だという事だけだ。
·····少し分かりにくかったかな?
わかりやすく例えるなら『団地』と『マンション』と『部屋』だ。
私が今いるこの世界を団地にある『部屋』とすると、同じような間取りで違う人が住む『部屋』が大量に存在している。
それらが内包された建物が『マンション』だ。
この『マンション』では隣の部屋を開ければ全く同じ間取りの部屋があるが、違う家具や人が住んでいるって感じだ。
そんで、この『マンション』には似た様式のマンションが更に沢山あって、それらをまとめて『団地』とする。
で、私が元いた世界を探すのが大変って言ったのは
『元いた部屋の住所は知らないけど、引越し先からその部屋を探す』
という事だったからだ。
当然ながら一軒一軒尋ねれば元いた世界を見つけられるかもしれない。
だけどこの『団地』には似たような部屋が何百、何千、何万、何億、何兆、何京、何垓·····
そんなのいちいち調べてられる訳がない。
まぁ実は『団地』は『マンション』の部屋の形が似ていたら····· 例えば地球の大陸の形が似通った物とかは集まる習性があるのか、場所によっては私の記憶の形に近い大陸がある世界もあった。
まぁその世界、全部宇宙人に滅ぼされた後の世界たちだったんだけどね?
今はその『マンション』周辺を探索して私の記憶にある地図と一致する世界が無いか探しているところだ。
そんな感じで、手がかりがあればそれを辿れば早く見つけられるかもしれない。
まぁ、無理なんだけどね·····
この異世界を覗き見している魔法なのだが、使うと私でさえ死ぬほど疲れるのだ。
そりゃ3次元世界の住人が4次元空間へと干渉しているのだから常人では絶対無理だしやったら死ぬ。
そもそもこの魔法、異世界転移の魔法じゃないし。
特級禁忌指定魔法『Paradise Lost』 別名『失楽園』
この魔法は旧約聖書でアダムとイブがエデンの園を追放された出来事を指す言葉が使われるに相応しい魔法だ。
この世界からの追放
今いるこの世界から放り出して、数多の世界が浮かぶ4次元空間へと投げ出すという恐ろしい魔法だ。
私はそれを魔改造して、投げ出す窓から『千里眼』を特化改造した『次元潜望鏡』を差し込んで近くの世界を観測する魔法に改造したのだ。
名前は『世界の観測者』
消費魔力は意外と少なくて1回1千万程度だ。
この世界に1mm以下の穴を開けられれば充分覗けるのでこの程度で済んでいるが、何が疲れるかって覗いてる時だ。
分かりにくいけど、覗いてる時の私の視界を例えるなら『極彩色のマンデルブロ集合を万華鏡で同時に数万個見ながら天体望遠鏡で遠くの惑星の表面にある顕微鏡を覗き込んで極小の本を読む』って感じだ。
これが本当にきつくて、1日あたり10ヶ所の世界を見て回るのが限界、それ以上やると目というか脳が焼き切れて頭がおかしくなる。
1回やらかして16ヶ所見ちゃった時は、記憶にないんだけど何故か逆立ちしながら激アツ鍋食べようとして案の定転んで酷い目にあったらしい。
あと1週間以上休まないと次発動するのがキツいのも難点かな。
·····短時間でやったら脳がとろけて鼻から全部出て死んだのはトラウマだからもうやりたくない。
◇
って感じで捜索が難航していたのだ。
でもミカちゃんは、今も日本とこの世界を行き来しているたった一つの日本への道標·····
·····になるはずだった。
「神界経由じゃなんの意味もない·····」
「·····ぱじゃまは返さない、よ」
「いや、それはそのままあげるけど、そっかぁ····· 惜しかったなぁ」
神界経由ルートは、私も考えたことはある。
この前死んだ時に神界探検をちょっとしたんだけど、どうも各世界に派遣される天使たちは専用の通り道があるみたいで、それを使えば日本に行けそうだった。
近くにいた天使をとっ捕まえて聞いた感じ、行き先を指定されたカードが支給されてそれを使えば目的地に自動で送ってくれるタクシーみたいなシステムらしくて、入ったらビューンッと送られるんだとか。
直接移動すると大変だから、より上位の4次元空間を経由する事で移動距離を短縮効率化したすごいシステムだって、専用ルートに資格がなくて入れなくて駄々をこねた挙句、通りかかった天使に襲いかかって異世界行きの切符を強奪しようとした私を慌てて回収しに来たガイア様が言ってた。
それはさておき、実は神界に人間が行く方法は一つだけある。
魂になれば良いのだ。
まぁつまり死ぬって事なんだけどね。
で、神界へ魂にならずに行く方法は神かそれに類する存在になるしかない。
私でさえ今も天使に進化できずに止まってるんだから、1番日本に行きたいであろう郷美さんは絶対に通れないルートだ。
まぁつまり何が言いたいかって、ミカちゃんから聞いた方法は無理って事だ。
「ん、でも、来た道には、跡がのこる」
「えっそれマジ!?」
それなら可能性が·····
いや、私は1度神界を経由して来てるからあの世界には痕跡が無いだろう。
天使専用ルートと同じ、神界を経由した移動だから痕跡は残っていないだろう。
だとしたら·····
「跡ってどれくらい残ります?3600年経ってたら流石に消えます?」
「んー、わかんない、でも、たぶん消える」
「ああああっ!ダメだこりゃ!」
ガンジー救出····· じゃなくて万事休すだ。
どうにかして『宛先』がわかればいいんだけど·····
この宛先さえ判明すれば元の世界が分かって後は転移してルートを確立させるだけなのに·····
くっそ!あの時並んでた天使を片っ端からひっくり返して日本行きの切符探して宛先を探しておくべきだったわ!!
ちゃんと交渉して手に入れようとしてめっちゃ時間かかったの間違いだったわ!!!
「ええい!こうなりゃ最終手段っ!!」
「んぅ?」
私はヤケクソ気味にウィンドウを呼び出してメールを開くと·····
ピロンッ♪
《メッセージを1件受信しました》
◇
件名:現在対応が出来ません(返信不可)
送信元:女神ガイア
宛先:ソフィ・シュテイン
本文
ごめんねソフィちゃん、地球でトラブルがあったから対応中でちょーっち忙しいの。
キラウェアちゃんがま〜〜〜た癇癪起こして派手にやらかしかけててね·····
今は現場からスマホで送ってるんだけどしばらく対応できそうにないんだよね。
それと、世界の住所については神以外に教えちゃいけない決まりになってるんだよ〜、メンゴ☆
後でハワイ土産にハワイアンなトーテムポールとマカダミアチョコをあげるから許してねっ☆
P.S. ハワイ語は さようなら も『アロハ』だよん、そんじゃアロハ〜☆
◇
イラッ☆
◇
件名:おいコラ(強制返信)
送信元:ソフィ・シュティン
宛先:ガイア
本文
なにハワイ旅行してんだゴルァ
よく分からんトーテムポール送るな、マカダミアチョコだけよこせ
◇
「はぁすっきり·····じゃないわい!!何ハワイ旅行してんだコイツ!!」
「んぅっ!?」
私がメールを送ろうとしたら、クソ女神からジャストタイミングでメールが送られてきた。
あいつ、ハワイ旅行してやがった。
またキラウェア火山が爆発でもして街に溶岩でも雪崩込んだんだろうけど、こっちがガチで悩んでるのにお土産とかふざけられるとキレたくもなる。
いらんわトーテムポールなんて。
·····トーテムポールってハワイじゃなくてネイティブ・アメリカンのやつじゃね?
まぁどうでもいいや、どっちにしろ要らないし。
「はあ····· もういいや、絶対に帰んなきゃいけない訳でもないし、そろそろのぼせそうだから上がろ?」
「ん、あつい·····」
その後私たちは風呂から上がって、先輩に試作EX版ウルトラふわもこパジャマを渡して、長く風呂に入ってたせいで熱くなりすぎたので肩にタオルだけ掛けて外に出たらフィーロ君に怒られたり、ミカちゃん呼びになった事を報告したりしてたら夜遅くになってしまった。
「おやすみー、またあしたー」
『『おやすみー』』
さて、明日は何をしようかな。
名前:ソフィ・シュティン
ひと言コメント
「なんでフィーロ君は私が裸で出たくらいで怒るかなぁ····· 別にいいじゃんもう長い付き合いなんだし」
名前:アルム
ひと言コメント
「相変わらずソフィちゃんのおっぱいは小さいなぁ····· はぁ、肩が凝る····· え?なに?みんなそんな怖い目で私を見て·····」
名前:フィーロ
ひと言コメント
「本当に裸で出てくるの止めて····· 僕の身体が持たないから·····」
名前:グラちゃん
ひと言コメント
「ミカはソフィタイプね····· 身体は細いけど胸も無いタイプね」
名前:ウナちゃん
ひと言コメント
「ミカちゃん!わたしミカちゃんとお話したい!」
名前:エビちゃん
ひと言コメント
「ミカエルとやら「ミカって呼んで?」はいはいわかったのじゃ、ミカから嫌な感じがすると思っとったのじゃが天使だったからか····· ワシは種族的に天使が苦手なのじゃ」
名前:ミカエル
ひと言コメント
「パジャマもらった、ぴーす」




