油断
まず飛び出してきたのはハイゴブリン4体だった。
「んふふ、まだ遊び足りないから手を抜いてあげるよ、私がここから1歩でも動いたら負けね」
『ゴブゴブ!!』
ハイゴブリン共は他のゴブリンより圧倒的に身体性能や知能が高く、4体が連携を取って私の周囲を駆け回り、絶えず攻撃を仕掛けては逃げるヒットアンドアウェイ戦法で戦っていた。
だが、敵はそれだけではない。
ヒュンッ
「チッ!」
ギュイン!!
突然私目掛けて高速で鉄製の槍の穂先が森の中から飛んできた。
どうやらシャーマンが魔法で折れた槍を飛ばしてきているらしい。
「全員でやるってわけね、いいよ面白いっ!」
来た、後ろっ!
バキッ!
『ゴブっ·····!!』
後ろから接近してきていたゴブリンを峰打ちで叩こうとしたが、手応えが少なかった。
どうやら上手いこと回避されたらしい。
と思ったら今度は左から右から正面から、ありとあらゆる方向から攻撃を食らうが全て弾き飛ばして防いでいく。
「ちっ、ちょこまか動き回って鬱陶しい····· 動けないから狙いにくすぎるっ!!」
ゴブリンとは言え流石にナメ過ぎていたらしい。
この大振りな包丁だとチョコマカと動き回るゴブリン相手には不利なようだ。
「仕方ない、『星断』も使うか·····」
私は巨大な包丁を鞘に収め、腰から日本刀のような形の包丁を抜き出した。
「やっぱり手に馴染むなぁ、愛刀だもん」
『·····っ!!?』
私はすっと包丁を横に振った。
すると真横から生暖かい血のシャワーが私の全身に掛かった。
「うん、動かしやすい」
ヒュンッ
『ギッ!?』
先程までの感覚で動いていたハイゴブリン達は間合いを間違え、更に飛ぶ斬撃により次々に私に切り裂かれて絶命して行った。
「見つけた」
ズバァッ!!
『ギェッ!?』
先程まではハイゴブリン4体の攻撃で気がつけなかったが、森の奥で魔力が発生しているのを見つけた私はそこへ向かって斬撃を飛ばした。
どうやらゴブリンシャーマンのうちの1匹の腕を切り落とせたようだ。
「血の匂い····· 見つけた!」
『ギゴャゥ!!』
よし邪魔なゴブリンシャーマンは1匹倒せた。
あともう1匹いた気がするんだけどどこだったかな?
『ギィー!!』
「っと?·····えっ?」
私は油断していた。
なんと足元の地面にあった影からゴブリンシャーマンが現れ、露出している私のお腹に明らかに呪いが込められて居るであろうオーラをまとったナイフを突き立てたのだ。
流石の私の反射神経····· で十分追いつける速度だったけどビックリしていて間に合わず、それでも刃を掴んだが勢いは殺せずお腹に突き刺さり、思わず後ろへ後ずさりして地面に倒れ込んだ。
「かはっ····· どう、し、て·····」
『ゴブフフ····· ヤットクタバッタカ····· ツレテコイ』
『ゴブッ』
幸い致命傷ではないが、ナイフが呪いを私に掛けてくる。
どうやら隷属化や洗脳や無力化の拘束系に加え、苦痛付与や絶望付与などの精神攻撃の効果もあるようだ。
あと地味に対象の魔力の侵食とかやって来てるわこれ·····
しかも相当強力な呪力らしく私でも刺さってたら流石にかなり厳しかったかもしれない。
そして動けない私にゴブリンシャーマンとナイト3匹が近付いてきた。
どうやら私をゴブリンジェネラルの供物にするつもりらしい。
『ゴブッ』
『『『ゴブブ!』』』
ゴブリンシャーマンが私のお腹にある呪いのナイフを引き抜っ
『·····?』
引き抜くっ
『·····ゴブ?』
今度は私の上に跨り、伝説の剣を抜くように思い切り引っ張ってとうとう抜けっ
『·····????』
どうやっても抜けなかった。
仕方ないので抜き方をレクチャーしてあげる事にした。
「あのね、抜き方があるから教えてあげるよ、まずこうやってお腹に刺さってたでしょ?まぁ手で掴んでただけなんだけど」
『ごぶごぶ、ブグェッ!?』
私は掴んでいたナイフをちゃんと持つと、ゴブリンシャーマンの腹に刺して代わりに寝転がってもらった。
「んでこうやって侵食してくるでしょ?そしたらこれを1回押し込むの」
『ゴッ!?ご、ごぶぶ』
「うんうん、そうしたらこれを捻りながら引っこ抜くと·····」
『ゴバァ!?』
スッポーン!!
「ほら引っこ抜けたでしょ?」
『ごぶご····· ぶ····· ???』
\ばたっ/
『『『ゴブブブブー!!』』』
『サスガダ ミゴトダッタゾ!!』
私の呪いのナイフの抜き方講座が終わり、見守っていたナイトたちが私に拍手を送った。
「みなさんご清聴ありがとうございました!」
『ゴブゴブー!!·····ごぶ?』
『·····ゴブ!?』
·····え?
私はやられてたんじゃないかって?
いやいや?
倒れたのは『1歩も動かない』っていうのを達成できなくてショックだったからだよ?
あとお腹に刺さったとは言ったけど、正確にはお腹『の結界』に刺さっただから別にダメージはないしそもそもこの程度の呪物で私をどうにかしようなんて140億光年早い。
たしかに侵食はしてきてたけど、ナイアガラの滝を百均の水鉄砲で押し返すなんて無理だからね。
んで、約束を破っちゃったのでお詫びに全力で挑んであげることにしたのだ。
まずはキノコ神拳を発動した。
「で、みんな油断しちゃダメよ?ふんっ!!」
ドゴァッ!!
『ゴブッ!ゴ····· ゴァ?』
次に私はやってみたかった事で、ゴブリンナイトの腹をぶん殴って穴を開けるとその中に呪いのナイフを入れて『修繕魔法』で傷を元通りにした。
すると体内に取り残されたナイフが呪いを発してゴブリンナイト1が倒れてしまい、倒れた衝撃でナイフが変な所に刺さったのか死んでしまった。
『ごぶ、ゴァアア!!』
「当たるとでも思った?」
それを見ていたゴブリンナイトが槍を突き出してきたが、私はひょいっとその上に飛び乗った。
「ほーれほーれ、離さないと死んじゃうよ〜?」
『ブギギァ!!』
ナイトは槍を必死に振って私を振り落とそうとするが、重力魔法で固定しているので離れることは無い。
しかし三半規管にダメージは来てるので、槍の上を歩いて近づいて行き·····
「ゲームオーバーだよ」
『く゜びぅ、!』
フルアーマーの兜を思い切り蹴飛ばした。
ありゃま、首が一回転して元にもどっちゃったよ。
「ほっ」
倒れ始めたゴブリンナイトの槍から降りた私目掛けて槍が飛んできた。
ギュリィィインッ!!
「ざんね〜ん、結界がありました〜」
私は片手を突き出すと多重結界を展開して飛んできた槍をガードした。
·····お約束だとこのあと槍が変形して結界が破れて顔に刺さるんだけど、どうなるかな?
『シネ!!』
「っがはっ!?」
A.横からゴブリンジェネラルが攻撃してくる
というかお前·····
ゴブリンナイト踏み潰してるよ·····
こうしてゴブリン集団は全滅し残すはラスボスのゴブリンジェネラルだけになったが、私はぶっ飛ばされてどこかへ消えていった。
〜冒険者たちが到着するまであと30分〜
◇
「··········ぁぁああああっ!げふっ!?」
ドゴンッ!!
からんっ
「うわあっ!?」
「ソフィちゃん!?あっ、包丁落としたよ!!拾わなきゃ!」
「すごい勢いで飛んできたわね·····」
「どーしたの?」「なんかあった?」
「·····むっ!来るのじゃ!ソフィしっかりするのじゃ!!」
「けふっ····· あれ?みんななんでここに····· 痛っ!?」
森の中を吹っ飛ばされた私は、何か固いものに衝突してようやく止まった。
その衝撃で星断を手放してしまい、飛んで行った先を見るとなぜかなかよし組のみんなが居た。
どうやら私のケッテンクラートに衝突したらしい。
「痛づっ!いっっったぁぁぁああああぁぁぁ·····」
そして少し遅れ、蹴られた所が痛くなってきた。
相当頑丈な防具を着てても、結界を避けて直撃を食らったら痛いわ·····
「ふぅぅうぅ····· 治癒·····」
『ゴブフフフ····· ナカマガイタノカ』
「ちっ回復が間に合わない····· 不意打ちとは卑怯だね」
『グブフフ····· マトメテカカッテキテモイインダゾ?』
「いいや、お前なんて私ひとりで十分だよ」
·····よし、時間は稼げた。
ギリ立てるまで回復はできたし、持続回復の魔法も掛けられた。
『ゴフフフ、ナラバコイ!』
「みんなはその中に居て!こいつは私が殺る!」
そう言うと私は『機械乙女ノ星鎧』のブースターを全力で吹かすと、一瞬でゴブリンジェネラルの元まで接近し、思い切り殴りかかった。
ゴギャン!!
「かたっ!?」
『ソンナパンチキカヌワ!』
·····が、奴が持っていた大斧で防がれ体勢が戻らないウチに上から大斧を振り下ろされた。
\ズッガァァアアアアアンッ!!!/
「がはっ!」
『ゴブ?シンデナイダト?』
私は脳天から斧の一撃を食らったが多重結界の効果で切られることは無かったが、あまりの威力で足元には巨大なクレーターが出来た。
直撃してたら縦真っ二つどころかグチャグチャになっていただろうと考えると恐ろしい威力だ。
だが私は無傷····· 押された結界に頭をぶつけたせいでちょっとタンコブが出来た頭に乗っかっている斧をガシッと掴むと、解析を始めた。
「ふぅん?威力倍増の効果があるのか·····」
『ハナセ!ハナサナイナラシネ!!』
「ばーりあっ」
メギォッ
『ゴブァッ!?』
うわっ、いたたっ·····
ゴブリンジェネラルの蹴りは今度は私の結界に阻まれ、足の爪が何枚か剥がれてしまっていた。
多分骨が折れてるのもあるんじゃないかな?
『ハナセェッ!!』
「いいよ?」
『ゴブっ!?』
だがゴブリンジェネラルは怯まず斧を引き抜こうとしたので、私は素直にぱっと手を離した。
するとゴブリンジェネラルはバランスを崩して隙を見せてしまった。
「んふ、隙を見せたね!!」
ベギャッ!!
『バグブッ!?ゴブアァァァァアアアアッ!?!!』
だが私は慈悲深いので結界を重ねた結界弾を飛ばして股間に激突させるだけで済ませてあげた。
うわ痛そう、元男だったし私も股間潰されたからその痛み分かるよ。
だからこそ当てたんだけどね。
「ねぇどんな気持ち?二度と使えなくなった気持ちはどんな気持ち?」
『ゴロズ!ギザマ!!ゼッダイゴロズ!!』
「へぇ?やってみなよ、そんなボロボロの状態でできるなら」
地面に蹲っていたゴブリンジェネラルが急に顔だけこちらに向け、何か魔法を掛けてきた。
「·····ん?何も無い?」
殺気
「·····ッッッッ!!?!?」
しゅるっ
ドサッ
「·····えっ」
背後から僅かな殺気を感じ、私は咄嗟に右に避けた。
その瞬間、見覚えのある夜空のような刃が私の左肩をすり抜けたのが見え、何かが足元へと落ちた。
目線をやると、誰かの腕が落ちていた。
·····違う
これは
私の腕だ
「ぎっ!?あ゛ぁぁああああああ゛あ゛ぁぁァァアああぁあァァアぁぁあアァァアアアッッ!!??!?!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
私の頭は何をされたか理解するより早く、痛みで支配され何も考えられなくなった。
「っひゅぅぁぅっ····· っげぇ、ごぷっ、おえ゛えぇえええっ·····」
私の左肩からは凄まじい量の血が噴出している。
あまりの痛みに耐えきれず血はおろか出せる液体が口から下から左腕から全部漏れ出しながら私は地面へと頽れ、本能的に右手で左腕を押さえようとするが、掴めない。
何せ掴もうとしている左腕は、もう無いのだから。
「お、まえ、なに、やっ、た·····」
『ぐぶふふ····· ナカマニウラギラレルトハコッケイダナァ!!』
私は激痛を堪えながら血が止まらない左腕の付け根を必死に押さえ、後ろを振り返った。
「·····」
「ふぃー、ろ、くん?」
「ちょっと!フィーロ君何やってるの!?ソフィちゃんが!ソフィちゃんの腕が!!」
「まずいわ!撤退よ!今すぐ止血して治療院に!」
「あわわわっ」「腕ひろわなきゃ·····!」
「ソフィ!大丈夫か!フィーロよ!お主どうした!」
そこには、虚ろな目をして『星断』を持ったフィーロ君が居た。
『星断』からは私のらしき血が滴り、その刀身を赤く染めていた。
「どう、じて····· ·」
「·····」
フィーロ君は何も答えず、再び『星断』を構え、私の首筋に当ててきた。
斬られる。
今度は、首を。
うぅ、痛い·····
血が足りない·····
痛す ぎて、あたま が はた ら かな い·····
私は必死に避けようとしたが、激痛と失血で意識は朦朧として、足も体ももう動かなくなっていた。
よけ られ
ない·····
「あ゛ぁああ゛あ゛あぁっ!!!?」
ぷつっ
須臾も使ってないのに景色がスローになってきた。
星断が皮膚を突き破る激痛と共に、ドロッと血が流れ出し体に伝い始めた感覚がした。
ブジュッ
皮膚を斬った刃は止まることなく肉を裂き、動脈を断った瞬間、比べ物にならない量の血が噴き出した。
それと同時に意識が急に遠のきはじめ、私の細い首も半分ほど途切れた所で気道へと刃が侵入したのか、口の中に嫌な血の味が広がった。
もう、助からない。
「ど、うし、て·····
ふぃー、ろ、
くん····· わた、
し、
ふぃー·····
ろ、
くんの、こ·····
と·····
好き、だったのに
切り裂かれた気道から漏れだした呼気に混ざる最後の声は、虚ろな目の彼に届く事はなく·····
ぼとっ
《スキル発動》
ユニークスキル『リスポーン』が発動します
本日の使用回数:1回目(1/3)
(※回数は翌日にリセットされます)
魂の補完····· 完了
頸部の接続····· 完了
神経系等····· 異常なし
左腕の接続····· 保留
左腕切断部の縫合····· 完了
血液の補充····· 完了
肉体と魂の結合····· 完了
リスポーン地点読み込み中·····
リスポーン地点を認識しました
《リスポーン地点》
『██』
《特殊条件》
復活タイミング:任意
リスポーンを開始します




