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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第二章 TS賢者は魔法学校へ行くっ!
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魔法学校への旅路 1日目〜アディショナルタイム〜


 建国1219年3月28日 23時47分


 私はパチリと目を覚まし、抱き枕(フィーロ君)から離れて馬車の外に出た。



「寒っ!」


 外に出ると、冷たい空気が私を包み込んだ。

 ここは盆地なので、そろそろ春になるとはいえ夜になると底冷えするような寒さになる。

 特に用がなかったら絶対に外に出たくない気温だ。


 つまり、私が今外にいるという事は外に用があるという事になる。


「ん?嬢ちゃんどうした?外にいると危ないぞ?」


「あの、ちょっとお花を摘みに·····」


「お花?こんな時間にじゃなくても····· いや、お花ならそこの岩の裏にある、好きなだけ摘んでこい、何かあったら大声で叫べ」


「はーい、ありがとー」


 私はお花摘み(トイレ)に行くフリを····· いや、間違いではないが、目的はソレじゃない。


 焚き火に薪を焚べ、暇を紛らわすかのようにじっと炎を眺めている冒険者を後目に、私は大きな岩の裏に回り込み、消音の結界と()()()()()()()を展開した。



「はぁスッキリ····· さて、ここからが本題だよ」


 私が深夜に起きている理由、それは昼間の会話が原因だった。


《回想》


〜今日の昼頃〜


 馬車に揺られながら、みんなと会話している時の出来事だった。



「ねぇソフィちゃんフィーロくん、2人とも杖ってどうするの?今もってないみたいだけど·····」


「えっ?あっ、ええと、私の杖は荷馬車の方に積んであるよ」


「あぁ、僕はワンド型だから腰に付けてるよ、ほら」


 そう言うと、フィーロ君はローブで隠れていた腰の辺りから、魔力のある木の枝に魔石を付けたシンプルなワンドを見せてくれた。


「おおー!可愛い!ワタシの杖はロッド型だから、いま荷馬車に詰んでて見せられないけど、負けてないくらい可愛いんだよ!」


「わ、私のもロッド型·····かな?」


「·····かな?」


「あっ、いや、杖にはあんまり詳しくないから·····」


 そう言えば、前に杖を作ろうと考えた事はあるが、魔力でゴリ押しする私には関係無いので放棄したんだった。


 ·····もしかして、魔法学校で使う?


 コレはヤバいな、案はあるから後でこっそり自作しなきゃ·····


《回想終了》


 そんなワケで、ここでコッソリと杖を作って荷馬車に詰め込もうという魂胆だ。


 実は杖の形状案は既に完成している。

 小さい頃、暇つぶしに考えていたのだ。


 私が作ろうとしているのは『金属杖』、それに私が『賢人の石』で生成した大きめの魔力結晶(※練習して手から作れるようになった)をくっつけて作る計画だ。


 まずは、杖本体に必要な金属を()()()()集める。


「ふぅ、イメージはボーリング、それも旧ソ連がやってたコラ半島超深度掘削みたいな、この星の深部まで届く細く強靱な1本の線、目標は『深度5500km』!」


「複合魔法『ウルトラディープ・マイニング』!」


 地面に手をついて自作魔法を地面に撃ち込む。


 これは岩盤を構成する岩石などを透過する魔力波のみを生成、更に収束して1cmの細い線にして一気に惑星の奥深くにある固体金属で出来たコアまで撃ち込み、先端に仕込んだ魔法で周囲の特殊な魔導金属のみを吸着させて地表まで転移で届けるという、危険極まりない魔法だ。

 しかも、この魔法はそれだけじゃない、地表では採取した激アツの金属を冷却するために、無酸素で高温高圧の空間を転移先に指定してあり、大気中で酸化や急速冷却して変質しないようにしてある。

 ちなみに、今回採掘を指定しているのは『魔導金属類』で、アダマンタイトやオリハルコン、ミスリルにヒヒイロカネ、あと名称不明の魔力がある金属だ。


 世に出たらきっと禁忌に指定される魔法だろう。


 だが、この魔法にだって欠点はある。


「うぐぅううううっ!?」


 この感覚は、いっきに、魔力を、吸われてるっ!?

 

 私の魔力がガンガン吸われていき、私の総MPの()()()()が無くなってしまった。

 その消費魔力は何と『約6000万』、アルムちゃん換算で40万アルムもの馬鹿げた消費魔力だ。


「うぐぐぐぐぐ·····」



 数分後、転送先に指定した空間に変化があった。

 赤橙色に輝く金属の塊が空中に現れ、フワフワと浮かんでいる。


「おおお!実験は成功だっ!って熱いっ!?」


 そりゃそうか、地球の核付近の温度は約5500度くらいだから熱いよね。

 割としっかり結界を張ったつもりだが、熱気が漏れてきてしまっている程の熱さとは·····


「まぁ、熱いのはいいとして、何の金属が採れたっかな〜♪『鑑定』!」



《鑑定結果》


【星核合金】

レア度:SS


説明:

 星の最も深い場所でのみ生成される特殊な合金。


 アルミニウムの魔力同位体『ミスリル』

 タングステンの魔力同位体『アダマンタイト』

 金と銀の合金エレクトラムの魔力同位体『オリハルコン』

 この三種が高温超高圧かつ魔力濃度が非常に高い場所にあるとき、各種金属に含まれる魔素が活性化し互いに共鳴して結合する事で、通常有り得ない構成の合金を作り出す。


 また、通常の気圧、魔力濃度、温度の下で自然冷却してしまうと魔素同士の結合が外れ、各種単体金属の塊になってしまう。

 しかし、想像を絶する魔力を受けながら魔法現象に由来する温度変化を受ける事により、結合が安定したまま冷却され人の手で扱えるようになる。


 この合金は密度が非常に高いためとても重いが、常に微弱な重力魔法が働いており所有者の魔力を混ぜ込む事で、所有者が持つ場合のみ質量を軽減する事が可能となる。


 この合金は惑星の核付近に存在するが、稀に宇宙空間を漂う小惑星の中にも存在しており、ごく稀に小惑星由来の隕石から発見される事がある。

 隕鉄から造られた武具が魔法的に優れているのはこのためである。


 また、現状どの国もこの合金の存在を知らない未知の金属。


《性能》

 魔力の伝達効率上昇:極大

 重力軽減魔法:微小

 魔力貯蓄:極大

 耐久力:極大



 これだ。

 私に合う杖の材質はコレしかない。


 本当は各種魔導金属を魔法で分離して、オリハルコンとミスリルの杖にしようとしていたが、そんな事はもうどうでも良い。


「じゃあ早速冷却!魔改造『フリーズ』!」


 MPが減って疲れている身体に鞭を打って、更にMPを100万も込めた超絶フリーズをアツアツの『星核合金』に当てて冷却を開始する。



 冷却が終わると、赤橙色だった星核合金の色が落ち着き、宇宙を思わせるような黒·····

 いや、とてつもなく暗い青色、しかもただ暗いだけではない、余りの濃さに黒く見えるほど強烈な青色をした美しい金属だ。

 そして、不透明な筈の金属なのに、その奥で星空のような光の粒が瞬いている。


 あまりの美しさに見惚れてしまいそうになったが、そんな暇は無い。

 この合金で私の杖を作るのが目的なのだから。


「鉄は熱いうちにいくよっ!『モデリング』『フォーミング』『スクアッシュ』『ポリッシュ』『ラストラス』っ!そして『ヒュージョン』『ヒュージョン』!さらに『賢人の石:魔力枝』『賢人の石:魔力の実』!『コネクティングロッド』『スタビライズ』っ!!」


 冷えた星核合金の一部を、使う分だけ魔法で饅頭を千切るように切り取り、様々な魔法を駆使して私の思い通りの形に加工して行く。



 数分後·····


「できたっ!!名付けて『ラズワルド・ロッド』!」


 この杖のデザインのモデルは『コンパウンドボウ』で、そこから上下にパーツを伸ばして杖のような形にしてある。


 そして、各部分の説明をすると


紺色の部分が『星核合金』

黄金の部分が『オリハルコン』

水色の部分が『魔力結晶』

恒星の部分が『賢人の石:魔力の実』

紺色の内部に『賢人の石:魔力枝』


 が組み込まれている。


 持つときは右側から中央のクビレ付近にある水色の魔力結晶ごと握るように持つ事で、魔力結晶から伸びる『魔力枝』を伝って杖全体に私の魔力が行き渡る仕組みになっていて、魔力伝達効率や増幅率を補強してある。


 しかも上部左側に魔力刃を生成し薙刀のような使い方も可能で、なんと!恒星部分で魚も焼けちゃう最新機能も搭載!!


 あっ、この恒星部分は使用者に対しては燃焼効果を発揮しないので、私は扱ってても全然熱くないよっ☆


 さて、早速魔法の試し打ちしてみよっ!


「斜め下に向けて『ストーンバレット』!」


 ッパァァアアアアアアアンッッッ!!!


「ひいっ!?」


 と、とくに何も魔改造してないのに、圧縮された石の弾丸が発射された瞬間、白い霧のようなモノを纏い爆音を鳴らしながら地面にトンネルを穿ち、見えなくなってしまった。


 お、音速を超えてやがる、エグいソニックブームが発生してた·····

 消音結界を張ってて良かった·····



 何はともあれ、私の杖が完成したのでヨシッ!


 という事にして、杖と『星核合金』をインベントリに収納し各種結界を解除して、もう一眠りするため馬車へと向かった。


 その前に·····


「穿った穴ってどれくらいの深さが·····」


 ちょっと気になったので、トテトテと小走りで先程穿った穴の所まで戻り、穴を照明魔法『ライト』で照らしてみた。



 だが、そこにはただひたすら斜め下方向に続く真っ暗なトンネルが続いているだけだった。


 私は穴から届く強烈な熱気を感じ、怖くなって急いで穴の入口を塞いで、一目散に馬車に走って戻ると、再び抱き枕(フィーロ君)を抱いて眠りに就いたのだった。



 すやぁ·····


名前:ソフィ・シュテイン

年齢:6才


所持

『星々の杖 ラズワルド・ロッド』

『星核合金』

『アダマンタイト』

『オリハルコン』

『ミスリル』


ひと言コメント

「この杖どうしよっかな····· 後でうまく威力調整しないと絶対大事になるなぁ····· とりあえず寝よ·····」



フィーロ(うううぅぅぅ····· せっかくソフィちゃんが離れてゆっくり寝れると思ったのに、また抱きついて寝ちゃうなんて····· あっ、ちょっ、ソフィちゃんソコはっ!あぅっ!だめっ!)


ソフィ「むにゃむにゃ·····」

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