行き過ぎた魔法は科学と変わりない
【建国1225年1月4日 7時30分】
「んみゅはぁぁああっ!!よく寝た·····」
昨日はフィーロ君の声を思い返しながら寝たら、それはもう最高に気持ちよく眠ることができた。
·····やっぱり寝ても醒めてもフィーロ君への気持ちはあんまり変わってない。
私、変わっちゃったんだなぁ·····
まぁ今はそんな事より、みんなで出かける方が大事だからさっさと着替えてしまおう。
「今日は何着よっかな〜♪」
私はクローゼットを開いて、結構がっつり悩んでから可愛い感じの町娘ファッション·····
というか、『天使の服(ver.冬服)』を着てその上から茶色のコートを羽織り、フィーロ君お手製のマフラーを巻いた。
この天使の服は気温が下がってきたら見た目が勝手に変化して、着てるとボディラインが透けてる見えるけど下着は何故か透けない不自然な薄さの夏バージョンに比べると布がかなり厚くなっていて、そもそも形もかなり変わってる。
具体的に言うと、長袖になった上で肩周りの露出がゼロになってるし、夏服はフリフリふわふわだったのに対して冬服はタイトでカッチリした感じになっている。
だが色は見事な純白で、天使らしさは全く消えていないのが不思議だ。
「んふふ、フィーロ気に入ってくれるかな?」
私は着替えた服を鏡の前でフリフリとさせて、オマケに1回ターンしてみんなのいる『秘密基地』へと向かった。
◇
「みんなおっはよー!!」
「ソフィちゃんおはよっ!今日は新作のスイーツがあるか探しに行くよ!」
「いいね!私もそろそろ糖分不足だから楽しみ!」
「ソフィちゃんおはよう、今日はちゃんとした服着てて安心したよ」
「にゅふっ♡ あっ、ふぃ、フィーロ君、どう?可愛い?似合ってる?」
「に、似合ってると思うよ」
「えへへ·····」
「·····エビちゃんが来てなくて良かったわ、居たら絶対砂糖を吐き散らしてたわね」
「うんうん、きっとまた糖分が足りなくなって倒れてたとおもうよ」
私がフィーロ君に褒められて、それにみんながツッコミを入れるといういつも通りのパターンだ。
「ふぁぁああっ····· よく寝たのじゃ·····」
「あっエビちゃんおはよー!」
「おはようなのじゃ·····」
そして掛けていたなかよし組最後の1人、魔王のエビちゃんが眠そうにしながら部屋から出てきた。
なんでも昨日は魔力切れを引き起こして回復のために爆睡していたそうだ。
そのせいで集合時間に遅れてしまったらしい。
「遅いよエビちゃん!もう着替えてるみたいだからさっさと出発するよ!」
「へぁい·····」
エビちゃんは目を眠そうに擦りながら移動を開始した私たちに付いてきて、そのまま部屋の外へ寮の外へと誘われて行った。
◇
「美味しいのじゃー!!っかァァァ!激辛スープはやっぱりサイコーなのじゃっ!!」
「あふっからっ!!うわ辛っ!?ゲホッ!!ヤバいこれ!死ぬほど辛い!!そして熱い!!」
「うわぁ····· 辛そう·····」
「僕達は普通の辛さにしといて良かったね」
「少し辛いけどそれがまた温まったいいわぁ·····」
「うなぁ····· 甘口なのに辛い·····」
街中に出てきた私たちは、甘いスイーツを探していたはずなのに何故か激辛のスープというか鍋料理をガツガツと食べていた。
だって、まだ雪も残ってて放射冷却で激寒だったところに刺激的で超あったかそうな激辛スープなんてあったら買うしかないでしょ!
でも私は調子に乗ってエビちゃんと辛さの我慢比べをしてしまい、辛さMAXを選んでヒーヒー言ってしまう事態に陥っていた。
「あー辛い!暑いっ!!」
「ほら言わんこっちゃないのじゃ、ほれワシが食ってやるから普通のを買ってくるのじゃ」
「嫌だね、意地でも食べる」
こうなったら化学の力で辛さを減らしてやろう。
まずカプサイシンとはどんな性質を持ってるのかを考えれば簡単な話だ。
よく激辛料理で特に辛い部分はどんな所か?
答えは『油脂』だ。
·····いや、唐辛子本体は辛くて当然だけども、違うそうじゃない。
本題に戻して、カプサイシンとはアルカロイドのうちカプサイシノイドと呼ばれる化合物で、ちょっと特殊な性質がある。
これは『脂溶性』や『疎水性』と呼ばれ、水には溶けにくいが油などには溶けやすいという性質を意味している。
遠回りしてしまったが辛さの原因となるカプサイシンは脂に溶け込んでいる場合が多いのだ。
実際にこのスープにも真っ赤なオイルが浮いていて、そこを飲むと激辛だけど上手く避けてスープだけ飲むとギリ耐えられる程度の辛さなのだ。
まぁ辛いけど。
これグッツグツに煮込んでたから、たぶん辛い脂が乳化を起こしてスープに混ざってるな·····
それを差し引いても、表面にたっぷり浮かんでる真っ赤な脂が辛すぎる。
だから、このオイルから『カプサイシン』を抽出してやれば辛味を抑えることが出来るのだ。
だけどリアルな化学ではどうやって分離すればいいかなんて私は知らん。
だからこそ、私にしか出来ない方法を使うのだ。
「カプサイシン分離」
そう、魔法だ。
行き過ぎた科学は魔法に見えると言うが、行き過ぎた魔法は科学に見える。
そして行き過ぎた科学と魔法が手を取りあったとき、最強の『科学魔法』が生まれるのだ。
科学の力を獲得した魔法は本当に万能で、簡単にカプサイシンのみを抜き出すことも可能なのだ。
あっだとすると化学の方が正しいかな?
まぁ他にも用途はあるし科学でいいや。
しかしこの抽出は意外な魔法を使っている。
使うのはなんと『氷魔法』なのだ。
まず氷魔法とは、大気中の水分や地中の水脈などから水を集めてそれを低温で結晶化させる事で発動する仕組みなのだが、この水を『カプサイシン』に置き換えて化学魔法を組み込んでやるとなんと有機化合物でも結晶化出来てしまうのだ。
·····実はこの魔法は結構前から使っていて、エビちゃん印の砂糖から氷砂糖を作る時に使ってたりする。
1回フシ町の綺麗な美味しい水で水溶液にして、それを魔法で結晶化する事で氷砂糖ができるって仕組みね。
そして、浮いている激辛油にその魔法を使った瞬間、私のスープから小さい粉状の結晶がポロポロと浮かび上がり、全部魔法で回収して小瓶に詰めておいた。
「よし出来た!純カプサイシン結晶!」
「·····なんじゃそれ?」
「ある意味最強の武器だよ」
コイツはありとあらゆる悪用方法が思つく最悪級の武器になる。
長くなるから簡潔に言うと、口に入れれば超絶激辛に支配され、目に入れたら失明、粘膜に接触したら激痛などなど、恐ろしい性能を隠し持つ武器だ。
鳥みたいに辛さを感じなくとも、目とかに触れるだけで効果があるヤバい物だよっ☆
まぁ悪用方法は無限に思いつくけど今は使い道も無いからとりあえず収納して、この辛さが控え目になったスープでも頂くとしよう。
「ずずず····· あぁ丁度よくなった·····」
「辛味を抜き取ったのか!?もったいないのじゃ!」
「ん、まぁ少し抜き取っただけでみんなが食べたら激辛っていうレベルだよ?」
「むむむ····· まぁそれならいいのじゃ」
なんでか知らないけど許されたので、私はスープを1口ずずっと飲んッッッゲッ!!?!?
「っぶべげっほげほ!!ぐぇっ、え゛ぅ!やば、ゲェッホッ!!変なとこ入った、鼻、鼻に入っゲホ!!げっほげっほ!!げぇーっほっ!!」
「ぶははははっ!!アホじゃ!調子に乗って一気に飲むからそうなるのじゃ!」
「ご、ごのやろう·····」
今すぐカプサイシン結晶を口にぶち込んでやりたいけど、変なとこに入ったスープの辛さが刺激してきてヒリヒリする。
まぁこれもカプサイシンのせいだから抽出してあげれば治るんだけどね!
という訳でまた抽出魔法を使ってなんとか回復出来たので、笑ってきやがったエビのレンゲの中のスープに純カプサイシンを混ぜてやった。
\ノギャーッ!!?!?!/
そしたらめちゃくちゃ悶えてたから面白かった。
◇
激辛スープを食べ終わった私たちは、今度こそ甘いものを探すため再出発していた。
「はひぃ····· 酷い目に会ったのじゃ·····」
「エビちゃん、人の不幸を笑っちゃダメだよ?」
「へぁい·····」
エビちゃんはまだ舌に辛さが残っているみたいでヒーヒー言っていた。
あの激辛でさえ澄ました顔で食べるエビちゃんが絶叫するレベルだから本当に舐めなくて良かったわ。
カプサイシン結晶は使用を控えようと思う。
寒空の下でそう誓った私であった。
名前:ソフィ・シュティン
年齢:12歳
ひと言コメント
「科学×魔法は本当に万能だよ!何せ私の魔法の大半は現代知識の応用で成り立っているからね!」
名前:アルム
年齢:12歳
ひと言コメント
「辛いのは好きじゃないけど、体が温まるからたまにはいいかも」
名前:フィーロ
年齢:12歳
ひと言コメント
「へぇ、辛さってカプサイシンっていうのが原因なんだ····· 錬金術で何かに使えないかな?」
名前:グラちゃん
年齢:11歳
ひと言コメント
「何よこれ!辛さ0を選んだのに辛いじゃないのよ!!あー辛い!辛い!!暑いわっ!!」
名前:ウナちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「グラちゃんの食べさせてもらったけど、ぜんぜん辛くないよ?苦手すぎるのかな?」
名前:エビちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「ソフィに超激辛にされて大変だったのじゃ····· そのあとソフィとフィーロがイチャイチャしだしたけど今日ばかりはそれに感謝するのじゃ·····砂糖が辛さを癒してくれたのじゃ·····」




