ときめく乙女のココロ
「うひゃわぁぁあ♡」
ぼふっ!
部屋に逃げ帰ってきた私は速度そのままにベッドに飛び込むと枕に頭を埋めて足をジタバタさせ暴れた。
そしてすぐにピタッと止まった。
彼の言葉を思い出したからだ。
『へぇ····· ソフィちゃんって耳が弱いんだ·····』
「·····あれは反則だよ」
私の耳の中には、さっきのフィーロ君のイケボがずっとこびり付いてループされていた。
『どうなの?こうされるの好きなの?』
『じゃあお預けだよ』
「っっっ!う゛あ゛あぁぁあっ!!」
そして繰り返される度に私はビクビクして悶えまくっていた。
·····どうしよ、あの声めっちゃヤバい。
それに、ちょっとサディスティックなフィーロ君がやばかった。
この気持ち、なんて表現すればいいんだろ·····
「好き····· なのかな」
私の考える事が分からない。
私が何にときめいているのか分からない。
私がそんなことを考えてる意味が分からない。
私はフィーロ君の事が好きなのかな·····
それともフィーロ君の声が好きなのかな·····
あの声の主がフィーロ君じゃなかったら私はここまでときめいてたのかな·····
「ううぅ····· わかんない·····」
私は恋愛なんて経験がない。
前世で男の時も、今世で女の時も、恋なんてした事がないし誰かを好きになるなんて事も無かった。
だからこの胸の奥がキュッとするけど、ポカポカするどころか燃え盛るような感じが恋なのかどうなのかも分からない。
そもそも声を聞いただけで好きになるなんて考えられない、ただあの声に弱かったと言うだけなのかもしれない。
「そうだよ、私はもともとああいう感じの音声に弱いだけなんだよきっと····· はい!これで思考は終わり!ちょっと休む!」
そう言うと私はベッドの上で大の字になり目を瞑った。
·····けど、私の頭からフィーロ君の事が離れる事は無かった。
むしろ、今まで普通だった激近な距離感で見てきた彼の顔が、なんか、妙にキラキラして見えてきた。
「ぅぅぁああああっ!!わかんないっ!なんでっ!うがぁぁああっ!!」
私は布団を頭から被り、悶えに悶えまくった。
「冷静に、冷静になれ私·····」
一旦、ちゃんと自己分析しよう。
私は今なんでこんな悩んでるのか?
答えは、あの声が好きだか·····っ!?好き!?好きって、どういう好きなんだ!?
友達として?親友として?仲間として?それとも·····
まって、また冷静じゃなくなってる、落ち着こう·····
·····私はフィーロ君の事が好きなのか嫌いなのか?
答えは『嫌いじゃない』
じゃあ好きなのか?
『分からないけど好きなのかもしれない』
どんな感じで好きなのか?
『友達としてなら大好き、·····だと思いたい、でもついちょっかいを出してしまいたくなる感じ、いじり甲斐のある友達だから、そういう好きだと思う、·····でも、それだと今の私の気持ちが説明がつかない、いつも通りのはずだったのに·····』
「·····わかんない」
この先、私たちが成長していった時に、フィーロ君とはどういう関係で居たいのか?
『友達で居たい、例えどんな関係になっても変わる事なく大親友で居たい』
·····いつか、フィーロ君が私じゃなくて他の誰かと、アルムちゃん、グラちゃん、ウナちゃん、エビちゃんの誰かか、もしくはクラスメイトとか知らない誰かと付き合って結婚した時に、私はどう想うのか。
『·····凄く嫌、·····嫌!?なんで、私そんなこと思ったんだろ、別にフィーロ君が誰と関係を持っても私には止める資格なんてないのに』
わかんない。
やっぱり理解できない、私の理性で、藤石 賢人という大人の思考でも、私のこの·····なんていうんだろう、コレが全く分かんない。
『それが、好きって事だよ』
それがわかんないから、今!私!悩んでるの!!
理由も理屈も何もかも分からないの!!!
『·····ねぇ、好きになる事に、理由は必要?』
·····わかんないってば!!
私は元男で、フィーロ君と同性のはずだったのに!
なんで、声だけでこんな変な気持ちになってるの!!
『好きな相手の事なら、何だってそうなるよ?』
「うるさい····· 私の悩みも分からないくせに·····」
『もうわかってるんじゃない?』
「うるさい、うるさいうるさいうるさいっ!!!」
『もう心も体も、女子になったんだよ私は。男だったってだけのチンケなプライドで認めたくないだけでしょ?』
『フィーロ君のことが、異性として好きだって』
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!うーるーさーいーーっ!!私はッ!フィーロ君なんてっ!!好きじゃ····· 好き····· ·····」
『嫌いなの?』
「〜〜〜〜〜〜っ!!!うるさいうるさいうるさい黙れ黙れうるさい黙れうるさい黙れ黙れっ!!私は、みんなと、仲良くできてれば何だっていいのに!!」
『でも、私がその気持ちを認めないと、フィーロ君目移りしちゃうかもよ?』
『胸も大きくて活発でコミュ力高いアルムちゃん』
『見た目も麗しくて高貴な血筋のグラちゃん』
『可愛らしさが残ってて王族でもあるウナちゃん』
『力も強く趣味も合うし彼好みの体型のエビちゃん』
『なかよし組のみんなは、みんなが全員ものすごく魅力的な個性をもってる』
『それに部屋にフィーロ君が居ても、アルムちゃんもグラちゃんもウナちゃんも幼なじみだから慣れてて薄着で出歩いてるし、スキンシップも多くて距離感も近い』
『·····男だったなら、わかるでしょ?思春期の男子が、そんな女の子たちの中に1人だけ居たら、どんな気持ちになってるかなんて』
『そんなみんなと四六時中一緒に過ごしてるんだから、私が今のままだったら、あっという間に他の子に取られちゃうんじゃない?』
「·····っ」
『·····嫌、でしょ?』
「·····認めない」
『この期に及んで?』
「·····私は、大人だから」
『この程度のことで悩んでるのに?』
「私は、勢いだけで、関係を持っちゃうようなガキじゃない·····」
『·····』
「私はっ!ちゃんと理性で考えて!自分の頭で答えを出したい!!」
「·····だから、認めない」
「フィーロ君の事が、ただ理由もなく声を聞いただけで好になっちゃったって」
「彼の気持ちも理解して、私の気持ちもしっかり整えてから、この気持ちの答えを出したい」
「お前の言う事なんて、関係ない」
「これは、私の人生なんだから」
·····だから、フィーロ君に会いに戻ろう。
優しい彼なら、きっと部屋に逃げ帰った私の事を心配してるはずだから。
◇
バァンッ!!
「ただいまー!!ごめんねみんな取り乱しちゃって!完全復活したよー!」
「おかえりー!大丈夫だった?」
「まぁソフィが大丈夫というなら大丈夫よね?」
「ソフィちゃん元気になったー!」
「進まんかったか·····まだ苦労しそうなのじゃ·····」
「おかえりソフィちゃん」
「んひゅはっ♡」
ごめん、やっぱ無理かも。
私は部屋に戻ってきたが、早速フィーロ君の声にやられそうになってしまった。
ダメだ、やっぱりフィーロ君の声にすっごく弱い·····
脳がとろける感じ·····
·····
·····うん。
「·····やっぱりなんか変!」
「ええっ!?」
「んひゅっ♡ ちがっ♡フィーロくんの声は、大丈夫だからぁ♡」
「よかった·····」
たしかに中毒性があってすごく良い声で大好きな声なんだけど、聞くだけで頭がおかしくなるくらいキュンキュンするのは明らかにおかしい。
というか、声だけだと説明がつかないっていうか、胸の奥が変に揺らぐ感じに違和感があるのよ。
いや恋心とかじゃなくて、魔力を生み出してるあたりが変に揺らいでる気がしてきたのよ。
「んっ♡ よし、ちょっとなんか喋ってみて」
「わかった····· あーあー、ソフィちゃん大丈夫?なんか様子が変だけど·····」
「あぅぁぁ·····ッ♡おかしくなっちゃう·····」
脳が蕩けてキュンキュンして気持ちよくなってくるけど、アダマンタイトの如き意思で何とか原因を解析しようと頑張った。
そして、原因が判明した。
「もう、大丈夫····· わかった·····」
「わかったの!?」
「ゃうんっ♡ えっと、フィーロ君の声に、魔力が乗ってて、私の魔力と相性が良くて、私の魔力と反応して、変になってるみたい·····」
「ふーん·····」
はぁ、頭がやっと落ち着いてきた·····
資料で読んだ事があるのだけど、この世界の子供は第二次性徴の時に身体や性格に変化が訪れるだけでなく、固有魔力波形にも僅かに変化が発生するらしい。
当然のことながら私も既に魔力波形が少し変化しているし、フィーロ君の波形も前に比べるとその波形が変化している事がわかった。
そして、なんで急に声に魔力が乗るようになったかも、説明がつく。
さっき飲ませたレモネードだ。
というか、レモネードに入れた『プリミティブフルーツ』の果汁だ。
「果汁の微小な飛沫が声に乗って出てきてて、その果汁にフィーロ君の魔力が乗ってるせいで、こうなってるんだと思う」
「もうちょいちゃんと説明して?」
「ひゃぅあっ♡」
で、なんで私が喘いでるかというと、すんごいざっくり説明すると『くしゃみ』だ。
フィーロ君は成長期で魔力の波長に変化が起きたんだけど、それがどうも私の魔力にぶつかると妙な反応を起こしてるらしい。
なんというか、私の体にある鍵穴にジャストフィットに近い形の鍵を差し込まれてるっていうか、いい感じにピッキングされててカチャカチャ言ってる感じというか·····
どちらにせよ、なんか変な所が刺激されて無意識に体が反応しちゃってるのが原因だろう。
ちなみに、魔力の波形を見た感じだと魔力波形が凄く似てて一部だけピッタリと逆位相になってるんだけど、私とフィーロ君の魔力が融合するとどうも中和する時に妙な共鳴を起こして、その時に私が変な快感を感じるらしい。
「·····って事っぽい」
「ふーん····· じゃあこの声に魔力が乗ってるのをなんとかしないとソフィちゃんがずっと悶え続けちゃうってこと?」
「んっっ····· あっ♡ぁうっ♡っぐぅぅぅううう·····♡」
ビクンッ!
長文はらめぇ·····
「·····っはぁ♡ごめんごめん····· 何とかするからちょっとまってて·····」
一瞬頭が真っ白になるくらい気持ちよくなって動けなくなったが、なんとか耐えて対策を始めた。
·····ちょっと漏れたかも。
まぁ神の下着のお陰で速乾即浄化してるだろうから平気かな。
「フィーロ君ちょっとごめんね、口開けて」
「わかった、うあー」
フィーロ君が口を開けたので、私はその中にとある魔法を仕込んだ。
「よしOK!ちょっと喋ってみて!」
「了解、赤ドラゴン黄ドラゴン青ドラゴン、あーあー、どう?大丈夫?」
「よしOK!!はぁ何とかなった·····」
「·····で、何をやったの?」
「えっとね、口の中に『口内洗浄』って魔法を常時発動するように仕込んでおいて、声に含まれてる魔力を吸い取って発動するように仕組んだんだ!」
「·····って事は歯磨きいらず?」
「そこはちゃんと磨いて?」
とりあえずツッコミを入れたが、これで何とかなったみたいだ。
こうして、フィーロ君の声騒動が終わっ
「ありがとうソフィちゃん」
「んひゅっ♡あっ♡だめっ♡私フィーロ君の声が普通に好きみたい·····」
「すすすきっ!?!?えっ、あっ、ぼ、僕の声、そんなにいいの?」
「·····(無言で頷く)」
ダメだったわ、少しはマシになったけど、私フィーロ君の声が普通に大好きだったみたいだわ·····
さっき止めたはいいけど、やっぱりたまに解除したり、ASMRしてもらったりしたい·····
私はフィーロ君に密着して、いつのまにか目線が上になっていたフィーロ君の目を見つめて·····
「·····たまにだけど、声聞かせて?」
「いつでもいいよ、ソフィちゃんなら」
大好きな声を聞かせて欲しいとお願いした。
そして背後で悲鳴?が聞こえた。
「のじゃげぶぼろほばぼぼほほぼほぁぁぁあっ!!」
「ちょっと!!エビちゃんが砂糖をありえないくらい吐いてるんだけど!!止まらないんだけど!ちょっとー!2人ともやめてー!!これ以上イチャイチャしたらエビちゃんが絞りカスになっちゃうー!!」
「「イチャイチャしてないっ!!」」
私とフィーロ君は息ピッタリで否定したら、エビちゃんが更に砂糖を吐き出した。
「がぼぁぁばぁはぁばびぼはぁばあのじゃっ!!」
「「「え、エビちゃぁぁぁぁああん!!」」」
そしてエビちゃんが吐いた砂糖は広いはずの秘密基地を埋めつくし、エビちゃんは絞りカスみたいになってしまった。
名前:ソフィ・シュティン
年齢:12歳
ひと言コメント
「これって声フェチっていうのかな?声フェチと好きって感情って同じ?」
名前:フィーロ
年齢:12歳
ひと言コメント
「ソフィちゃんが凄く可愛かった····· 声変わりしてホントによかった·····」
名前:アルム
年齢:12歳
ひと言コメント
「さっきエビちゃんを止めたけど、ワタシもあの2人のイチャイチャがいい加減甘くなってきたから何とかしたい」
名前:グラちゃん
年齢:11歳
ひと言コメント
「本気でフィーロの声に何も感じないのだけれど、ソフィにとってはそんなにいい声なのかしら?」
名前:ウナちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「お砂糖たくさん!食べ放題だー!」
名前:エビちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「砂糖を吐きすぎて魔力が全部尽きたのじゃ····· 1億越えの魔力がじゃぞ····· ワシの砂糖は魔力から出来ておるのじゃ····· 全部無くなるって····· こやつら早く【自主規制】してしまえ····· 早う結婚してほしいのじゃ·····」




