逝く年
【建国1224年12月31日 23時51分】
みんなの分の天丼を作ったりお喋りをしていたら今年もあと9分くらいになってしまった。
「みんな!今年もあと10分切ったよ!!」
「ほんと!?じゃあワタシは年越しジャンプする!」
「アルムちゃんそれ好きだねぇ····· あと10分····· ふぅぅぅ····· 緊張してきた·····」
「来年はどんな年になるのかしら」
「いつも通りがいちばんだよー」
「ふっ、来年は春が来そうなのじゃ」
春が来る?毎年普通に来て·····
あっ!桜!!今度桜植えよっと!!
最近やっとラナ町あたりの····· 日本地図でいう所の紀伊半島の真ん中あたりの超山奥でサクラの木を見つけたのよね。
いまはその木の栽培と繁殖に尽力中だ。
「じゃあカウントダウンを表示しとくね!」
ヴォンッ
私は『秘密基地』のテレビ的な物に時計を表示して、年越しの瞬間がわかるようにしておいた。
うーん·····
やっぱり芸能人のケツをシバくの見て爆笑してないから物足りないよなぁ·····
とりあえず後でエビちゃんのケツでもシバいて我慢しようかな。
それといつか日本のテレビ番組の電波も入るようにしたいけど、なかなか難しいんだよね·····
今もずっと日本へ行く方法を考えてるんだけど、まだその方法が分かっていない。
実は異空間転移をする方法はもう発見しているし、消費魔力も私の貯蓄で全然足りる。
しかし、地球の座標が分からなかったせいで行けなかった。
何度も地球のある世界の捜索をしたが、見つからなかったのだ。
その捜索の時に判明したけど、どうやら世界の構造は4次元空間に内包される泡のような構造·····って例えればいいのかな?
まぁ、その『泡』が物凄い量、たぶん無限大に存在していて一つ一つ探しても時間が足りないし、まず私は地球との行き来を想定しているので一方的な転移はやりたくないから、そこら辺はまだ考案中だ。
校長先生が3600年間も帰れなかった理由が改めてよく分かったわ·····
◇
【12月31日 23時55分】
「やばっ!もうあと5分じゃん!」
「そうだよ!もう年越しなのにボーッとするクセが出ちゃってて起きるか不安だったんだよ!」
「う、うん·····」
「何考えてるか気になるけど、どうせ碌でもない事でしょう?聞かないでおくわ」
「ねむい·····」
「もう5分なんじゃのぅ····· そうじゃ、皆で今年の反省と来年の抱負でも発表するのじゃ!」
『『いいねっ!』』
という訳で、みんなで今年の反省&来年の抱負の発表会が始まった。
◇
先発は私だ。
「私は今年は····· うん、色々やりすぎたからちょっと反省しなきゃ」
「来年はもっと騒いで、もっともっとみんなと一緒に遊びたい!」
·····みんなから『反省してないだろ!』ってツッコまれちゃった☆
◇
次はアルムちゃんの番だ。
「今年の反省かぁ····· 食べすぎて体重増えたから減らしたいなぁ·····」
「来年の抱負····· 私もみんなと一緒にワイワイ遊べたらいいな!」
アルムちゃん·····
体重はお腹じゃなくてその上にあるスイカが原因なんだよ·····
◇
その次はフィーロ君だったんだけど、最後がいいと言われたのでグラちゃんの番だ。
「私は今年はというか、この前はしゃぎ過ぎたから自制出来るようになりたいわ」
「あっ来年の抱負言っちゃってたわね、とりあえずみんなといる時は素の性格を程々に出せるようになりたいわ」
素の性格出してもいいけどさ?
テンションが高くなり過ぎないよう気をつけてね?
マジで手が付けられなくなるから·····
◇
そして眠そうにしていたウナちゃんを何とか起こして言ってもらった。
「わたしはー····· はんせいは特にないなぁ·····」
「来年のほうふ····· そろそろ、お城で、お姫様らしくできるように、いろいろがんばるー·····」
·····なんか、なんか!やべぇ事言ってらっしゃりますわですよこの子ぉ!?!?
うん、聞かなかった事にしよう!!!!
◇
年越しもあと少しになったので、私はお汁粉を食べ始めた。
んふふ、つきたてのお餅が美味しいわぁ。
あっ、次はエビちゃんね。
「ワシはアレじゃ、胸が大きくならんかったのが反省なのじゃ·····」
「来年こそは!来年こそはボインボインになってやるのじゃ!!そして喧嘩でソフィに絶対に負けん!来年こそは圧勝するのじゃ!!」
なんだとー!?
私も絶対に負けないっ!!
私は後ちょっとのお汁粉を餅ごと一気に飲み込んっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!
「ッッッッッっっっっつ!!?!?!!?!?」
◇
もがっ!?もぢがぁっ!?かっ、げっ、げぅ、がぁっ!?
「つ、次は僕だね····· はふぅ····· よし!今年の僕の反省は!言いたかった事が言えなかった事!」
「おえっ、げっ、げっっ!っっっ!!!」
「そして!来年はっ!来年こそは言いたかった事を言う!!だからソフィちゃんっ!」
も、もぢ、えぅっ、のっど、っおごっ!?!
「おっおっおっ!?フィーロお主とうとう決心したのじゃな!!」
「何やるの!?がんばれー!」
「もうあと1分よ!早くしなさいっ!」
「うなぁ·····」
「だ、だぶげ、っぉがぶっ」
ががぁっ!げぅ!
ぁっ、いき、いし、き··かっ···かぅ····ゲェ·····
「だ、だず、げ·····」
「ふぅぅぅうぅ·····」
フィーロは、自分の首を抑えて顔を毒キノコのように真紫にして胸を必死にドンドンと叩いている、白目を向いたソフィの側までやってきた。
「そ、ソフィちゃん!僕、僕っ!そっ、ソフィちゃんの事·····」
「がっ··· げぅ··· ブぃ···ロ····ぐ、だ、ずげ····」
「頑張るのじゃ!!」
「·······じ··········ぬ···············」
「ふぅ····· 僕!ソフィちゃんの事がっ!!」
「かっ··········」
\ばたっ/
「ソフィちゃんの事がっ!好きだっ!!」
【建国1225年1月1日 0時0分】
◇ Happy New Year ◇
静寂
『『·····ん?』』
「おい!ソフィが倒れたのじゃ!何か様子がおかしいのじゃ!!!」
「ちょっ!?大丈夫!?というかいま告白!?好きなのは知ってたけど!!」
「それどころじゃないわっ!!緊急事態よ!!」
「どうしたの!?みんなどうしたのっ!?」
「えっ、もももしかして、えっ、失敗·····?」
「·····」
「ソフィちゃん!へ、返事は?·····あれ?ソフィちゃん?ソフィちゃーん?·····ソフィちゃんっ!?」
白目を剥いて倒れたままピクリとも動かないソフィの周囲に『なかよし組』の面々が集まってきた。
「おい!ふざけてるならとっとと起きるのじゃ!」
ベチッ!
エヴィリンがソフィの顔を割と強めに叩いたが、ソフィはピクリとも動かなかった。
普段なら狸寝入りしてても絶対にキレてエヴィリンと大喧嘩に発展して、最終的になぜか2人とも全裸になるはずだ。
しかし、ソフィは動かなかった。
「ほらおきてー?こちょこちょー」
今度はウナがソフィの脇腹をくすぐった。
ソフィは脇腹を擽られると寝たフリをしていても笑いだしてしまう。
しかし、いくら擽ってもまるで死んだようにピクリとも動かなかった。
「·····変ね、ソフィちょっと失礼するわ」
ぎゅむっ
今度はグラシアルがソフィの胸の出っ張りをかなり強く抓ったが、全く反応しなかった。
普段なら寝ていても絶対に変な声を漏らしてしまうはずなのだ。
「·····まって、ソフィちゃん息してる?」
「確認してみるね····· ん?あれ、おかしい、息、してない」
「脈は!?」
「どうやるの!?胸に手を当てたらいいの!?」
「腕の手の付け根あたり·····あぁもうワシがやる!!」
エヴィリンがソフィの手を掴み、脈を測った。
「·····ない」
「は?も、もうちょっと大きく言って?」
「脈が、ない、·····心臓、が動いて、ないのじゃ」
ソフィの脈拍は·····0だった。
「し、死んじゃった·····?」
「まだじゃ!確か校長から教わった心臓マッサージと人工呼吸をするのじゃ!!」
「どうやるの!?」
「まずはとりあえず服を脱がすのじゃ!確か丁度乳首と乳首の間を、ええと、骨を折らん程度に押すのじゃ!回数は秒間100回·····違う!1分間に100回じゃ!」
「わかった!·····えっ、僕がやるの?」
「やれ!マッサージした後はええと、50回?やったら2回息を吹き込むのじゃ!」
「どうやって!?」
「ええい!とっとと脱がすのじゃ!!そんで心臓を押すのじゃ!!」
エヴィリンがソフィのパジャマの上を脱がした。
「こやつ!またブラを付けておらんではないか····· おいフィーロ!目を背けるなっ!どうせもう見慣れてるじゃろ!早く心臓マッサージを!」
「わわわわわかったよ····· うぅ····· 後で怒らないでよっ!!」
フィーロは覚悟を決めてソフィの心臓あたりをグッグッと押して心臓マッサージを始めた。
「ふっふっふっはっはっ!·····こんな感じ!?」
「手を緩めるなっ!」
「わかったからっ!!·····はい!50回やったよ!」
「次は人工呼吸するのじゃ!」
「わかった!ふ、ふーっ」
フィーロがソフィの口を開けて、ロウソクを消すように息を口の中に吹き込んだ。
「そうじゃないのじゃっ!!」
「じゃあどうすんの!?」
「口を付けて····· あーもう!!キスじゃ!キスして息を吹き込めっ!!しっかり肺に酸素を送り込むのじゃ!」
「ええっ!?いやたしかに告白はしたけど聞いてなかったかもしれないしダメだったかもしれないじゃんなのにキスをするなんてダメだよ!キスなんてしたら子供できちゃうよっ!結婚しないとダメだからっ!!」
「うるさいうるさい!貴様の想い人が死んでもええのかっ!覚悟を決めてやるのじゃ!!」
「うううぅぅぅ····· ホントに後で怒らないでよ·····っ!!」
フィーロは覚悟を決めて、ソフィの唇に自身の唇を近づけ·····
\シュンッ/
『『·····えっ!?』』
「えっ、消えッ!?いでっ!?」
\ドゴスッ!!!!/
突如ソフィの身体が消失し、光となって消えてしまった。
そしててっきり想い人とキスを出来ると思っていたフィーロはバランスを崩し、地面と熱烈なキスをして、さらに頭部を地面に強打したせいで気絶した。
そして気絶するフィーロを後目に、元々ソフィだった光の欠片は空中にすぅっと消えていった。
ソフィの痕跡は、エヴィリンが脱がしたソフィのパジャマの上だけだった。
◇
この日、異世界より転生してきた1人の元男の少女の命が建国1224年と共に終わりを迎えた。
ソフィ・シュテイン
享年12歳
死亡時刻
建国1224年12月31日 23時59分47秒
死因
餅を喉に詰まらせた事による窒息
名前:ソフィ・シュテイン
享年:12歳
死因
モチを喉に詰まらせた事による窒息死
名前:フィーロ
年齢:12歳
状態異常:気絶、記憶喪失(十数分間)
ひと言コメント
《気絶中のためありません》
《記憶喪失しています》
名前:アルム
年齢:12歳
ひと言コメント
「ソフィちゃん死んじゃった····· 体も消えちゃった····· 私たち、どうすればいいの·····」
名前:グラシアル・ド・ウィザール
年齢:11歳
ひと言コメント
「ソフィ····· どうして····· もっと、遊びたかったのに·····」
名前:ウナ・ウェア・ラ・サークレット
年齢:12歳
ひと言コメント
「うああぁぁぁああんっ!!ソフィちゃぁぁあああん!死んじゃヤダーーー!!!」
名前:エヴィリン・アマイモン・ファゴサイトーシス
年齢:12歳
ひと言コメント
「せっかくフィーロが告白したのに·····よき友人だったのに····· もっと、もっとケンカして、バカ騒ぎして、たくさん、たくさん話したかったのに、誕生日に酒を一緒に呑もうって、言ったのに····· ぐずっ····· ソフィ·····ソフィ·····ぅぅ·····」
皆様ご愛読ありがとうございました
彼女は新年を迎えられず死亡してしまいました
皆様も餅を食べる際は喉に詰まらせないようお気をつけください
では良いお年を·····
《スキル発動》
ユニークスキル『リスポーン』が発動します
本日の使用回数:1回目(1/3)
(※回数は翌日にリセットされます)
魂の補完完了
死因の除去完了
血中酸素濃度の回復完了
損傷した脳細胞の再生完了
損傷した内臓系の再生完了
肉体と魂の再結合完了
リスポーン地点読み込み中·····
リスポーン地点を認識しました
《リスポーン地点》
ディメンションルームのソフィの部屋(ベッドの上)
《リスポーンを開始します》




