正月支度
【建国1224年12月30日】
「よいしょっと!」
私は作業部屋····· 今ではもう工場みたいになってしまった部屋の中で色々作業をしていた。
「えーっと、机はこれでいいかな·····あとはアレを作って、魔石も加工して·····」
カキンッ!ギャインッ!
ギュイィィィィィイイン!
ギャリギャリギャリ!
ガリゴリ!ボキッ!メギョッ!!ベチャッ!ピーガガガムッ!!ぺちっ!!
「できたー!!禁断の魔道具『コタツ』!!」
そして出来上がったのは、普通のこたつだ。
しかも4つも作ってしまった。
・横長角型コタツ(6人用)
・角型掘りコタツ(4人用)
・小型角型コタツ(1人用)×2
もちろんそれぞれにピッタリなサイズのコタツ布団もあるし、生地にもこだわっているから多分入った瞬間に昏睡状態になるだろう。
コイツの構造は現世のとほとんど同じだが、熱源がちょっと特殊だ。
まぁもちろん魔法で動かしているんだけどね?
構造は魔力を通さない四角い金属板の四隅に埋め込んだ魔結晶に発熱魔法を組み込み、そこから魔力を通すミスリル線で中心の魔結晶に接続、中央の魔結晶を魔力バッテリーにして、入った人から少しずつ魔力を貰うシステムにしてある。
そしてこの熱源を保護するケースは触れても熱くならないようにした『星核合金』で作られており、コタツの中で足をぶつけても火傷をしないようにしてある。
「よし、リモコンの動作も良好!」
更に、基盤には遠隔で操作できるように魔導アンテナも組み込んであって、テーブルに埋め込んだ魔石をイジる事で発熱量を変更出来る。
「うーん完璧!アキさーん!ちょっと来てー!」
「はいはい何でしょう?」
「ちょっとこれ入って使い心地試してみて?」
「承知しました、では失礼します」
アキさんが靴を脱いでコタツに入った。
いや、入ってしまった。
ふふふ、この部屋はわざと寒くしてたから、アキさんはもう二度と出て来れないだろう。
「どう?」
「凄くいいですね····· はぁあったかい·····」
アキさんは机にへにゃっと倒れ込むと、物凄くリラックスした顔になった。
普段はシャキッとして真面目な黒髪パッツンのメガネ美人なだけあって、ダラけた姿がとても可愛らしく見える。
これ多分前世の私だったらイチコロで惚れてたな。
「アキさんちゃんとレビューして?」
「サイコーです·····」
あっ、ダメだこれ
「一旦出て?」
「命令ですか?」
「ひっ!め、命令」
「いくら主様でも許しませんよ?この楽園から出ろというのならば容赦しません」
\シュキンッ!/
アキさんはどこからともなく投げナイフを取り出して、マジな目で私を睨んできた。
これ割とマジだ、多分引きずり出したら私死ぬわ。
「わかった、それはアキさん用に作ったから持ってっていい」
「ありがとうございますソフィ様には一生忠誠を誓いますこれからもよろしくお願いいたしますあと熱燗とおつまみと何か合いそうな物をお願いいたします」
「·····はい、ミカンどうぞ」
私はミカンの入ったカゴと紙ゴミ箱を渡して、役立たずになったアキさんを置いてキッチンへと向かった。
◇
「アシュラさん餅は出来てる?」
『カタカタッ』
「おおー!しっかりお餅だー!!」
アシュラさんはアシュラスケルトンという腕が6本あるかなり上位の骨の魔物で、とりあえず全身を高温殺菌してもらって餅つきをしてもらっていた。
そして私の予想通り、その6本の腕で高速餅つきをしてくれたようだ。
そのおかげで餅はもうモッチモチだ。
「んへへへへ····· ありがとアシュラさん!」
『カタカタタッ』
アシュラさんにお礼の魔力をあげた私は、餅をインベントリに回収して早速キッチンに立った·····
といってももう雑煮とか、おせち料理に必要な物はだいたい揃えてるし、こっちの様式に合わせたブッふぃェ····· ぶっぶひ·····べっべ、ぶっぷ、ぷっぺ·····
やばいヒッヒェが·····また噛んだし上手く発音できないわ。
もういいや、なんか文句言われそうだけどバイキング形式のパーティー料理も用意している。
スモークサーモンとかチーズとかクラッカーとかサラダとか·····
それはもう豪華としか言えない大量の料理をアキさんと一緒に作っていた。
ちなみに途中で手一杯になったからアキさんの後輩にも手伝いに来てもらった。
·····呼び出し魔力はかなり減らしたはずなのに、10人中3人が吐いてしまったのはなんか不服だった。
今はもう仕上げの段階なので、新築のシルキーさん専用の家というかマンションに案内してある。
というか、今から居たら死ぬような事をするからお風呂に案内して、その後は各自自室を自分好みにカスタマイズように言ってある。
·····アキさんが、新人をビシバシ育てるとか言ってて私もシルキーさん達も震え上がってる。
大丈夫かな、シルキーさん達。
まぁいいや。
「ふぅ·····『絶淵の奈落姫』、クトゥさんアレの準備は出来てる?」
『Vollllr』
「やった!クトゥさんたちありがとう!」
深海からやって来た方々に私は海産物の調達をお願いしていたのだ。
頼んだのは脂が乗って美味しい鯛を3匹、ボタンエビとかの美味しい深海エビを沢山、伊勢海老を10匹、タラバガニを2匹に毛ガニを3匹にズワイガニを6匹、アワビを6個にホタテは多め、ノドグロや金目鯛も何匹か、あと色々お願いしていたのだ。
そしてその全てを見事に揃えて持ってきてくれた。
·····ちゃんと数を指定しないとこの人たちアレなのよ、田舎のおじいちゃんたちみたいに、何故か必要以上に集めて渡してくるのよ。
現にホタテを『多め』って頼んだせいで、ホタテ漁の漁船が水揚げしてる時みたいな量のホタテ届いたし。
何kgって次元じゃない、トン単位であるぞこれ。
·····くそ、ノドグロも金目鯛も『何匹か』って頼んだせいで数百匹は居るわ。
美味しいからいいけど食べきれないわ。
そんで前にも『カニが沢山食べたい』って言ったら、名前忘れたけど全長10mくらいあるめちゃくちゃデカいカニの魔物を200匹くらい捕まえて持ってきた事件以来、私はちゃんと品名も数も指定するようにしている。
で、忘れると大体こうなるのよね。
「んっふっふ·····やべ、タコ忘れてた、クトゥさんタコってある?」
『Vol』
ブチィッ!!!
「えっ!?その触手ちぎってもいいの!?えっ、絶品なの!?ふんふん?魔力を込めながら塩揉みして魔力水で茹でれば赤くなって毒が抜け·····毒!?あっ、人間の体に有害な魔力が抜けるのね、ありがとクトゥさん!」
なんとクトゥさんは自分の髭(触手)を引っこ抜いて私にくれた。
·····なんで自分の調理方法知ってたんだろ?
◇
「うん、めちゃくちゃ脂のってる!」
私は時の流れを少し遅くしながら、高速で料理の仕上げをしていた。
今は何故か20匹も届いたノドグロの内蔵を抜いて、美味しそうな肝とかは酒につけといて臭み抜きしたり、骨を抜いたり色々色々やっている。
そんであっちでは、シルキー軍団が大量のホタテを剥き身にしてる。
もはや水産加工場だ。
シルキーさん達には各自醤油を支給してて、食べたくなったら好きなだけ食べていいって事にしてる。
まぁみんな食べ飽きたみたいだし、もう半分以上終わってるのは流石はシルキーって所だ。
·····けど、流石のシルキーさん達でも長時間の作業だと無言になってしまうようで、私含め誰も喋ってなくて部屋にはホタテを剥くカチャカチャという音と、私が料理する音くらいしか聞こえてなかった。
「ヤバい無言になっちゃう、なんか話題·····」
別に煮付けのレシピとか捌き方のコツとかクトゥさんの触手の調理方法とか求めてないよね?
「ちょっとカメラ止めちゃうね、そっちの方が集中できるから」
ぷつんっ
◇
「あー、あー、カメラ入ってる?音声はちゃんととれてる?大丈夫?よし!撮影再開するよ!」
何だかんだ2時間近く慌ただしく料理をしていたが、前々から料理してたおかげでなんとか正月料理を作り終えた。
そして料理を全て時間が止まる『インベントリ』の中に仕舞って、今度は『秘密基地』に殺人級の魔道具『コタツ』を搬入するために工場へとやって来ていた。
「しゅぴー····· しゅぴー·····」
「·····」
アキさんは2時間経ってもコタツから一切出ずにダラダラしていた。
後輩シルキーちゃん達はあんな頑張ってたのに。
·····ていうか、あの、なんでそこのワインボトルにレモンジュースが溜まってるんですか?
「アキさん、流石にもうダメだよ?このコタツ没収するよ?」
「はっ····· あっ、寝てた····· ····· ····· はっ!!す、すいません気持ちよさすぎてつい····· 御手洗に行くのも億劫になってつい·····」
「はぁぁぁぁああぁぁぁ····· 汚してない?」
「汚してません、シルフィーの誇りにかけて」
·····今の姿見ても誇りを一切感じないんだけど。
「とりあえず部屋に運ぶから外に出てー」
「あっ、まま待ってください!まだっ、ああぁぁぁああっ!!」
コタツから出ようとせずモゾモゾしていたアキさんを無理やり引っ張り出して·····
「·····はぁ」
とりあえず一旦戻した。
「す、すいません·····」
「いやね?裸で入るの気持ちいいの分かるけどさ?さすがにそれは自分の部屋で·····」
「いやっ!その!これは御手洗をするため·····」
ちょっとカット、怒るわ。
人の事言えないけど、流石に私生活が酷すぎるわ。
〜説教中〜
「申し訳ございません·····以後気をつけます·····」
「分かればよろしい、それと今日は仕事終わっていいよ、早くコタツでダラダラしたいでしょ?」
「···············はい」
珍しく説教をする側になった私は怠惰の極みになってたアキさんに説教をして、今日は休んでいいと伝えた。
私も今年やるべき事は大体終わらせてるからね!
◇
「よいしょー!!」
「ソフィちゃん、その変なテーブル何?」
「なんか布団挟んでるけど····· 新しい寝具かな?」
「あの布団も暖かそうね、入ってみたいわ」
「わたし、あの中で寝たい·····」
「ふむ?膝掛けが無くとも暖かくなるテーブルとはよく考えたのじゃ、早速入らせるのじゃ!」
私は2つのコタツを『秘密基地』へと運び込み、畳エリアには事前に作ってた掘りごたつの上にもコタツを置いて、カーペットエリアには長コタツを置いた。
「待たれよ」
「うわらばっ!?」
匍匐前進でコソコソとコタツに入ろうとしていたエビちゃんを踏んづけ、私はコタツのスイッチを入れた。
「これはコタツ!人をダメにする最強の暖房器具だよっ!」
『『おおーー!』』
「ただーし!!コイツは強すぎる!1度入ったら出られなくなってしまう!故にコイツを使うにあたって何個か制約を設けるからね!!」
「その1!私が『もう出て』と言ったら出ること!」
『『はーい』』
「その2!トイレはちゃんと行く事!」
『『はーい!』』
「その3!コタツを汚した人はコタツ使用禁止!」
『『は、はーい』』
「その4!ここで寝るのは私が許可した時以外ダメ昼寝はOKだけど夜はちゃんと自分のベッドで寝ること!暖かいけど風邪ひくからね!!」
『『はーい!!』』
「その5!みんな仲良く入りましょう!!じゃあどうぞー!!」
『『わーい!!』』
私が許可を出した瞬間、みんながコタツ目掛けて突撃してきた。
「うべべべべっ!?あぎゃっ!?お、お主ら!ワシ!ワシ踏んでる!痛いのじゃ!!ぎゃひぃー!!」
私はエビちゃんから足を離したが、突撃してきたみんながエビちゃんを踏んづけて通って行った。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:12歳
ひと言コメント
「あぁヤバいコタツヤバい····· マジ最高·····」
名前:アルム
年齢:12歳
ひと言コメント
「もうダメ····· ワタシ、もう、あぁ·····」
名前:フィーロ
年齢:12歳
ひと言コメント
「·····よしっ、ソフィちゃんの隣座れた」
名前:グラちゃん
年齢:11歳
ひと言コメント
「はぁ暖かいわ····· ん?寒さ無効なのに暖かく感じるのかって?私は寒さ無効だけよ?熱いものは熱く感じるわよ?」
名前:ウナちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「あったかぁ····· ウナはコタツで丸くなる·····」
名前:エビちゃん
年齢:12歳
ひと言コメント
「なんで皆ワシに気が付かなかったのじゃ·····」
『だって胸が床みたいじゃん?』
「なんだとー!?!!!ソフィ貴様!貴様!絶対に言ってはいけないことを言ったな!?絶対に許さぬっ!!貴様の乳をもぎ取って真っ平らにしてやるのじゃー!!」
『なんだとー!?黙れまな板!私の胸はまだまだ成長してんのにそっちはいつまでもぺったんこの癖に!!』
「うがー!!黙れ黙れ黙れこの貧乳っ!!」
『あー!!貧乳って言ったこの無乳!!私は成長途中だから希望あるんだよ!!エビちゃんさ、今度海行った時男の子用の海パン穿いてみてよ!絶対バレないよ!!』
「ふぬぅぁぁぁああぁぁあっっ!!!お主に履かせてやるのじゃぁぁぁあッ!!」
『なんだと!?テメーこっち来やがれ!男水着チャレンジさせてやる!!』
「お主の方がお似合いじゃー!!てめぇ絶対許さんのじゃ!!ぬがしてやる!!」
ギャーギャー!!
「あー····· 僕ちょっと居たらヤバそうだからあっちに逃げとくね」
「いいよー」
「わかったわ、あとは任せなさい」
「まかせるうなぁ·····」
「せっかく隣座れたんだけどなぁ····· まぁ、大晦日に·····するつもりだからいっか·····」




