空を穿ち理に叛逆する少女
無事にフシ町の危機を救った私は、駆けつけたお父さんや町民の人々と談話していた。
·····が、私はまだこれで事態が終わったとは思っていなかった。
「ごめんみんな、最後にやらなきゃいけない事があるの、それをやってからでもいい?」
「何をやるんだ?この雪山を氷室の中に入れてくれるのか?」
「いや、それじゃないよ」
そう言うと、私はまだ吹雪いている空を見上げた。
「·····まさか!」
「うん、根本的な原因を何とかしないとね?だからちょっと行ってくる、みんな離れて」
私は飛翔魔法を発動させ、天使の服の効果がONになっているのをしっかりと確認した。
さっきエビちゃんと雪合戦した時はOFFになっててめちゃくちゃ寒かったので、もっと寒い上空に行くからちゃんとチェックしたのだ。
そしてチェックを終えたタイミングで野次馬の人達が私から離れていて、私の周囲にポッカリと円が出来ていた。
「じゃあ次は星空の下で会おうね!行ってきます!」
『『行ってらっしゃい!』』
私はその場でジャンプすると、そのまま一気に音速近くまで加速して空へと消えていった。
◇
ぼふっ
「よし!出た!!」
私は一瞬で雲の上までやって来て、巨大な雲の塊の前で腕を組んで考え事を始めた。
私は雪雲を丸ごと消し飛ばすと言ったが、ただ単に吹き飛ばすだけだと一時しのぎにしかならないはず。
雪雲の原因は大体は海から来た暖かい湿った風と、山から来た冷たい風が激突して出来る仕組みだし、フシ町はその条件はある程度満たしてるんだけど·····
「·····今回は違う、霊峰があるから暖かい風は霊峰にぶつかってこっちには殆ど届かないから」
盆地は暖かいから熱気が上がりやすいけど、それが原因なら毎年こうなるはずだから考えにくい·····
「『魔力眼』発動····· あーやっぱり·····」
自然現象にしてはおかしいと思って魔力で見てみると、何故か魔力が篭っていた。
これでレーダー魔法の魔力波の調子が悪かった理由がわかった。
·····そして雪雲に魔力が篭ってるってことは、誰かが故意に魔法でここに雪を降らせた可能性もあるし、上空の魔力溜まりに雪雲が発生した可能性もありえる。
この世界では、自然発生した魔力が溜まりすぎるとたまに変な不自然現象が発生する。
晴れてるのに雨が降ってきたり、冬なのに真夏みたいに暑くなったり、カエルが降ってきたり、サメ混じりの竜巻が来たりとか色々起きる。
今回も不自然現象が原因じゃないかと疑ってる。
そうとなれば、魔力を散らして雪雲を吹き飛ばしてやれば事態は収束に向かうはずだ。
「でもなぁ····· このサイズになるとなぁ·····」
私の前に立ちはだかるのは、一般的に『かなとこ雲』と呼ばれる形状の積乱雲で、巨大な積乱雲が対流圏界面にぶつかり横に拡がった事で出来る、超巨大積乱雲だ。
その高さは実に10km、幅は脅威の100kmという、超巨大な雲の台地が盆地の上を覆っていた。
「·····ん?これ、人為的に生み出した雪雲かも」
注意深く雪雲を観察していると、何か違和感があった。
雪雲に篭った魔力から、人間から出る魔力波形っぽさを感じる。
本来、不自然現象は『元々あった事象を魔力が乗っ取って強化する』事で発生している。
が、この雪雲からはそれを感じないというか、『雪雲を作れ』という魔法術式を感じる。
作為的に、ここに大雪を発生させるかの如き指示内容だ。
「·····人のせい、か」
そして雪雲の魔力を調べていくと、人間が関与したであろう特徴的な波形のパターンが検出できた。
すごーく薄まってて分かりにくいけど、間違いない。
「何のためにこんな····· いや、戦争か、醜いモノだねぇ」
この世界は未だに戦争が起きていて、平和とは程遠いのだ。
たぶんこの国もどこかから恨まれ·····
ん?なんで王都じゃなくてここなんだ?
「·····そういう事か、ここには校長先生とかエビちゃんか私が居て世界有数の魔法学校もあって、更に魔結晶鉱山もあるから戦力増強の要だもんね、戦力を少しでも削ぐのが目的かな」
たしかにこの盆地には異様なほど高レベルの人物が揃っているから襲われた可能性も十分有り得る。
それに、うちの鉱山は鉄から魔導金属から魔結晶まで幅広く採れる優秀な鉱山だ。
それはつまり、敵国からしたら攻めるのに邪魔な戦力を生み出す場所でもある。
もし私が攻め込む側なら、真っ先に潰しておきたいと思う程だ。
まぁ、そんな事は今考える必要は無い。
だってこの雲を吹き飛ばすのが最優先だからね。
◇
「ここら辺なら大丈夫かな、よし雪雲もしっかり見えてる」
フシ町を飛び去った私は、とある場所に来ていた。
吹き飛ばす手段を色々考えていたが、まだ試験段階の超威力魔法を使うことにした。
というか、生半可な魔法じゃこの超巨大な雲の塊を吹き飛ばすのは無理だ。
実際に『マギ・レールガン』では直径100mの穴が空いた程度で、一瞬で塞がってしまった。
「アレを消し飛ばすにはもっともっと高威力じゃないと無理だ、だとすると、アレしかない」
超々高威力狙撃攻撃による巨大積乱雲の消滅作戦
雲のせいで真っ暗になった大地に光を取り戻すべく、空を覆う巨大な戸を開けるが如く私の魔法で雪雲を消し飛ばしてみせる。
「これよりこの作戦を『アマノイワト作戦』とする」
私の前世の故郷、日本の神話から名前を貰ったこの作戦は凄く簡単だ。
日本で例えると、箱根にある二子山····· はこの世界には無いっぽいから箱根山の山頂を狙撃開始地点にして、八ヶ岳の方向に魔法をぶっ放して盆地のド真ん中をぶち抜いて雲を吹き飛ばす作戦だ。
なぜこのポイントにしたかというと、目印にしやすかったのと、丁度この位置だと霊峰を避けて盆地のド真ん中をぶち抜けるからだ。
ちなみにあの盆地の中央部分には街が無いので被害は無いはずだ。
「魔法発動開始、魔力充填開始」
私はとんでもない量の魔力を魔法に込めていく。
その魔法発動の為に魔力がどんどん吸われ、全身に強烈な脱力感が発生し立ってるのもままならなくなってきた。
「やっば····· さすが、に、1兆は、キツすぎ、る·····」
消費魔力量は脅威の1兆。
「でも!ようやく出番だよ『臨光速スピン式縮退砲』!」
その魔法を発動した瞬間目の前の空間が捻れるように歪み、それがどんどん加速し徐々に景色が一点へと収束を開始した。
そう、今回使用する魔法はかつて私が考案した超威力魔法『臨光速スピン式縮退砲』の完成した物だ。
今回はそれを『縮退』モードで発射、空間ごと雪雲を巻き込んで圧縮して空高く飛ばし、ある程度飛んだら『解放』モードに切り替えて雪雲を消し飛ばす作戦を立てている。
·····が、この魔法、欠点も多々ある。
実験室でのテストの結果、空間もろともかなりの範囲をズタズタに引き裂いてしまう事が判明している。
それに、引き込まれた物質は圧縮され原子核融合を引き起こしてるため、解放すると物凄い核爆発が発生する。
そのせいで実験室を4回新調する羽目になった。
つまり、コイツを使うには相当な対策をしないといけないって訳だ。
·····けど、対策してない訳ではない。
なんで4回も実験室を崩壊させて作り直してたかというと、もうひとつの魔法のテストのためだ。
「ふぅ····· 追加で1兆もってけ『次元断裂結界』」
私は周囲の被害を考えて、フシ町のある盆地に、こちらも新たに開発した魔法を展開した。
この魔法は『臨光速スピン式縮退砲』を最強の矛とするなら、最強の盾だ。
その理論は盾というより『溝』、空間を切り裂いて遮断する事によりその向こうへ攻撃を届かなくする事で守る仕組みになっている。
·····ただ、現状空間を切り裂く方法が『星核合金』製の刃に相当量の魔力を込めて切るしかないから、自力での発動は厳しいのが難点だ。
そして切り裂いた空間を魔法で無理やりこじ開けたまま維持する事で、この魔法は実現した。
·····仕組みを簡単に説明すると『魔法瓶』だ。
真空状態の層を作る事で熱を遮断してるのと同じような感じね。
とりあえず、試作段階では『次元断裂砲』でさえ完全にはじき飛ばした魔法だから多分大丈夫なはず。
「·····よし、いくよ『星断』!よいしょーっ!!」
ザンッ!!
私が包丁を思い切り振り抜くと同時に『次元断裂結界』が発動し、 光さえ通り抜け不可能な空間の亀裂、次元断裂結界面が出現した。
·····今回は範囲も物凄く広いため、消費魔力がとてつもない事になってる。
早く済ませないと私でもガス切れになっちゃうわ。
ギュィィィィイイイイイイイインッ!!
「よし、こっちも準備OK!」
私の前には瞳の色と同じ綺麗な青水色の光の球体が発生しており、その中心は縮退した影響か真っ黒な空間の歪み、擬似ブラックホールが形成されていた。
余剰エネルギーが若干漏れているが、問題なさそうだ。
「ふぅ、対ショック対閃光防御」
もちろん発射時に目を開けてると失明するので、周囲にも『次元断裂結界』を発動させ、衝撃も光も何もかもを遮断して内部に魔法で十字型の照準線を展開して、衛星からのデータに従って照準をズラしていく。
「射角37.958度、誤差修正左5度····· 照準固定!」
そして狙いが定まったので照準を固定して動かないようにして、私は最終仕上げに入った。
「発射まで残り10秒、『次元断裂結界』完全遮断距離まで開けっ!!」
ガオンッ!!!
『次元断裂結界』が発動し、盆地の上空の空間を切断していた断層面が魔法により引き剥がされ、強力な結界が展開された。
これでフシ街もマグウェル街も無事なはずだ。
「5,4,3,2,1·····」
ギュルァァァァァァアアアアアアア!!!
「はっっっっっしゃぁぁぁぁああああっ!!!」
キュゥイイイイイインッッッ
ッッッズギャァァァァァアア!
キュァァァアアアアァァァアァァァァアアアァァァァアアアアッ!!
光の球が物凄い爆音を立てながら打ち出され、青白い軌跡を残しながら、まるで極太のビーム光線が如き様相で超巨大積乱雲目掛けて直進した。
その光球の周囲は熱気で光が屈折するが如く、空間が強烈に捻れる事で光をも歪め揺らめき、事象の地平面から虹のように七色に輝く眩い光が溢れ出していた。
山頂に居たドラゴンでさえ飛び起きる程の魔力を持った魔法は遮られる事もなくフシ山の東方を駆け抜け、あっという間に盆地上空の雪雲へと到達した。
「いっけぇぇぇえええっ!!!」
ギュオアッ!!
そして魔法が雪雲に突き刺さった瞬間、安物のCGのように空間が捻れ、あれだけ巨大だった雪雲がたった1点へと縮退し消し飛んだ。
雪雲を丸ごと飲み込んだ魔法の砲弾はなおも空間を吸収し続けて空高く飛び続け、あっという間に成層圏へと到達した。
「そろそろ····· 弾けろっ『解放』ッ!!!」
刹那
たった1点へと縮退していた全空間、物質、エネルギー、魔力の全てが反転し、解放された。
カッッッッッッ!!!!!!
ドッッッゴオオォォォォオオオオオオオオンッ!!!!
「んぐっ!!?」
遥か彼方の爆発のため世界を焼き尽くす程の光が真っ先に届き、遅れて爆音·····否、衝撃波が私の所まで届いた。
あまりの風圧に吹き飛ばされかけたものの魔法で堪え、現状を確認した。
「·····うん、空が綺麗、見事な冬の満天の星空だなぁ」
·····フシ盆地はおろか、サークレット王国の広範囲に渡って大惨事になってる事に目を瞑れば、事態は解決した。
空間が捻れて引きずり込まれた事で、射線上にあった地面は隆起し捻れ捲れ上がり、フシ山は1/3程が山体崩壊を引き起こし、山頂のドラゴン達がブチギレてこっち飛んできてる。
それだけでは終わらない。
『解放』により発生した核爆発は凄まじい量の有害物質を広範囲に四散させ汚染、衝撃波は相当な高度での炸裂にもかかわらず直下の海面を海底が見えるほど吹き飛ばしていた。
それに加え熱エネルギーも凄まじく、海面は水蒸気爆発も起こしていたようで北西方向の空が凄まじい事になっている。
これじゃ、どっちがこの国を滅ぼそうとしてるのか分からないわ。
いや、間違いなく私のしでかした事の方が重大だ。
「·····完全に、威力を見誤ってた、私のミスだ」
私の使える魔法を使っても、この範囲の被害を治す方法はほぼ存在しない。
「もう四の五の言ってられない、か····· 仕方ない、アレを使うかな」
私は数少ない、私指定の禁忌魔法を発動させる準備を始めた。
「対象、超巨大積乱雲のあった範囲のみ」
私は『ソフィの石』に魔力流路を直結させ、そこに貯めた魔力を体に流し始めた。
「っ!くっ、ぁっ、ゃば、ぅぐぅぁぁぁうぁぁぁうぁぅぅあ·····」
そして盆地の上空と私の周囲にのみ、私の時空属性の魔力が拡散した。
その消費魔力はもうインフレを起こしまくっている、なんと広げただけで500億だ、アレかよ、クッキーを増殖させる系のゲームの終盤かよ、ってくらいだ。
「はぁ、はぁ、んっ····· よし、いくよ·····」
「過ぎ去りし時よ理に背き流れに逆らい登り戻り別の道を歩むが良い『TimeReverse』」
◇
「『esreveRemiT』い良がむ歩を道の別り戻り登いら逆にれ流き背に理よ時しり去ぎ過」
「·····よくい、しよ ·····っん、ぁは、ぁは」
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。だん飛し消し退縮とへ点1たったが雲雪たっだ大巨けだれあ、れ捻が間空にうよのGCの物安、間瞬たっさ刺き突に雲雪が法魔てしそ
!!ッアオュギ
「!!!っえええぇぇぇけっい」
。たし達到とへ雲雪の空上地盆に間ういとっあ、け抜け駆を方東の山シフくなも事るれら遮は法魔たっ持を力魔の程るき起び飛えさでンゴラドた居に頂山
。たいてし出れ溢が光い眩く輝に色七にうよの虹らか面平地の象事、きめら揺め歪もを光で事るれ捻に烈強が間空、く如がるす折屈が光で気熱は囲周の球光のそ
。たし進直てけ掛目雲乱積大巨超で相様き如が線光ムービの太極でるま、らがなし残を跡軌い白青、れさ出ち打らがなて立を音爆い凄物が球の光
!!ッアアアアァァァァアアアァァァァアァァァアアアアァァァュキ!
アアァァァァァャギズッッッ
ッッッンイイイイイイゥュキ
「!!!っああああぁぁぁぁゃしっっっっっは」
!!!アアアアアアアァァァァァァルュギ
きいてっ戻は時てしそ·····そして時は戻っていき
◇
「はっしゃぁぁあああっ中止!エネルギー回収!」
ぎゅううううううぅぅぅぅぅぅぅぅん·····
私は『次元断裂砲』の発射をキャンセルした。
「よし、成功、雲は無くなってる、ね·····」
私とあの巨大な雲のあった位置だけは時空魔力で包んだ事で時の逆流から取り残された状態で保たれ、『臨光速スピン式縮退砲』発射前の時間まで逆行してきた。
「っあっ!かはっ、げほっ、ヴぇっ、げぼっ·····」
ちょっとタンマ·····
「あーヤバい····· さすがに、やりすぎた·····」
この逆行で使った魔力は脅威の150兆、私自身の魔力じゃ足りなくてソフィの石から無理やり引き出したんだけど、流石の私でも体がボロボロでそのせいで吐いてしまったほどだ。
·····本来、ソフィの石は貯蓄がメインで引き出すのはあんまり得意じゃないみたいなのよね。
だからとんでもない量を無理やり引きずり出すと、体へ物凄い負担が掛かってしまうようだ。
「だめだ、多分今日明日は動けないや····· 」
それに、この量の魔力を一気に消費した事が無いし、この魔力を回復するまでに何ヶ月掛かるか·····
とりあえず明日はフル回復モードで魔力の補充をしなきゃ·····
「あっ、もう、無理····· 『早着替え』『急速休息回復モード』『アキさん召喚』·····アキさん、私を、ベッドに、運んで····· 1日····· 寝る····· 伝え·····きゅぅ·····」
「かしこまりました、後はお任せ下さい」
私はアキさんに指示を出すと、美しい星空を目に焼き付けながら、その目を瞑り、意識を手放した。
名前:アキ
種族:家事精霊シルフィー
ひと言コメント
「ソフィ様がこうして気を失うほど憔悴するとは珍しいですね····· うふふ、こういう姿もお可愛らしくて·····おっと素が出てしまいましたね、うふふ·····」
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:12歳
ひと言コメント
《休息中なのでありません》
《ステータス変化》
魔力量
3兆6000億→7兆2000億




