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TS賢者は今日も逝くっ!  作者: すげぇ女神のそふぃ
第3章 TS賢者はアイを知るっ!?
129/227

除雪者ソフィ・シュテイン


「いそげぇええええっ!!!」


 私はケッテンクラートを雪上モードにして、大雪原になった盆地の上を爆走していた。


 地図上ではいつもより早めに半分くらいの所に到着していた。


 何せここは手付かずの盆地なのに更に大量の雪が積もっていて、並大抵の魔物じゃこの中では·····


『kyooooooon!!!!』


「なんだっ!?」


 なんかいた。


 というか、2m近く振り積もってるフカフカの雪の上をなんか魔物が走ってた。

 色は白っぽくて、もふっとしていた。


「『鑑定』」



《鑑定結果》


名前:ユッキャー・コンコゥ

ランク:B


《説明》

別名は邪雪狐

大雪地帯に稀に出現する危険な魔物

この魔物が出現した付近は酷い大雪になると言われているが、この魔物が元凶かは不明

実際にこの魔物が現れた影響で町が雪山になって滅びたという記録が残っている


体の周囲に猛吹雪の壁を纏っており、生半可な実力では吹き飛ばされて凍ってしまい、近付く事さえ不可能。



 ギュオオオオオオオンッ!!!


「すまねぇ、私のケッテンクラートが猛吹雪を食っちまった」


『Gyaon!?』


 私のケッテンクラートは吹雪なんぞものともしない、そもそも軽量化しても300kgもあるので吹雪程度では吹っ飛ばないし、魔法無効化結界も風避けの結界も張ってるからコイツの猛吹雪も軽く蹴散らせる。


 そして巨大雪狐に向けて瞬間的に『6速』、それもキャタピラ駆動ではなく『飛翔魔法』の応用で一瞬だけリニア新幹線の如き速度に加速して突撃した。


「オラオラー!異世界直葬バイクのお出ましだー!」


『Gyain!!』


 そして私は避ける隙も与えずケッテンクラートで巨大雪狐に激突し、相手の体を空高くぶっ飛ばしてしまった。


事故(ジコ)っちまったか····· 不運(ハードラック)舞踏会(ダンスパーティー)でもしてな」


『Kyoooon·····』


 こうして、この猛吹雪の元凶の命は手に乗った雪のが溶けるように消えていった。




「·····止まないじゃんっ!!」


 私は轢き殺した巨大雪狐をインベントリに入れて、フシ町へと出発していたが雪は全然止まなかった。

 さっきドヤ顔で『猛吹雪の元凶は死んだ』とか言ったけど、ぜんっぜん元凶じゃないじゃん!


 そもそもこの規模の災害を起こせるならBランクじゃなくてSランクの魔物だわ!!


 つまりこの大雪はアイツが原因なんじゃなくて、これくらいの大雪になると出現する魔物って事かな?


 まぁそんな事はどうでもいい。


「間に合え····· 急げ!!」


 今は現実世界でいうところの甲州市の上あたりにあるフシ町のある·····えっと、なんて言ったっけ?確か『谷底低地』?まぁそんな感じの場所に繋がる広い谷目掛けてカーブをしたので、到着までたぶん5分くらいのはずだ。


「まっててねみんな!今助けるっ!」


 私は後方に雪嵐を発生させながら、日が沈み始める雪原を爆走して行った。





「見えたっ!フシ町!」


 私の予想通りほぼ5分、正確には6分33秒走行して無事にフシ町までやってこれた。

 合計タイムは32分12秒、途中の狐で3分くらいタイムロスが生まれたが問題ない。


「門番さーーーん!!町長の娘のソフィです!雪かきの助けに来ましたっ!!門を開けて下さい!」


 フシ町の門は閉まっていたが、門番小屋の中から光が漏れているのが見えた。

 たぶん門番が中に居るのだろうと予測した私は大声で門番に話しかけると、小屋の窓が開いて門番が顔を覗かせてきた。


「·····?·····!」


「なに!?聞こえないよ!!」


 だが雪が凄くて何言ってんのか聞き取れなかったので、私はケッテンクラートで門番小屋に近づいた。


「あっ!町長のとこの娘じゃねぇか!どうやってこの雪の中を····· まさかその魔動車で来たのか!」


「もちろん!ヤバそうだったから助けに来たの!今すぐ門を開けて!私が魔法で一気に雪かきする!」


「マジか!それは助かる!·····が、雪が邪魔で門が開かねぇんだ!しかも凍りついてるから除雪しても開かねぇ!」


「じゃあ私だけ入る!とりあえず門の前にケッテンクラート停めてていい!?」


「もちろんだ!頼む!家が何軒も潰れて結構な人数が避難してるんだ!もう町が持たねぇ!!」


「それはヤバい····· 門番さん退いて!」


「うわっ!?」


 私はケッテンクラートから勢いよく飛び出すと、小さい窓の隙間を通り抜けて中に入った。


「よし入れたっ!」


「い、いくら何でも無茶しすぎじゃねぇか?まぁいいや!出口はこっちだ!」


「助かるっ!」


 私はケッテンクラートに遠隔でしっかりロックを掛けておき、門番さんに誘導されフシ町へと入った。





 フシ町の中に入ると、絶望的な光景が広がっていた。

 町の道沿いには数mはあろうかという除雪した雪が積み上げられた山があちこちにあるにもかかわらず、屋根の上には物凄い量の雪が積もっていた。


 全く除雪が間に合ってないんだ。


「うわ····· これはヤバい·····」


「だろ、門番とか衛兵も、普段山の中に居る鉱夫とかも全員出払って総出で雪かきしてるんだが間に合わねぇんだ·····」


「でも、もう大丈夫!私が来たからっ!とりあえず門番さんはみんなに私が来たって伝えて!そんで私の指示に従って!」


「わかった!何をすればいい!」


 私は空中に浮かぶと、自分の周囲を強く光らせて吹雪の中でも分かるように、街中の全員から見えるようにして、『拡声魔法』を発動した。



『みんなーーー!!町長の娘、ソフィ・シュテインです!!救助に来ましたー!!!』


『『うぉぉぉおおおおっ!!』』


『今から大規模魔法でこの町の雪を一気に除雪するから、私の指示に従って下さい!!これは町長命令ですから拒否権はありません!』


『まず町民の皆さんは早急に家に戻るか、近くの民家の中に避難してください!家が壊れた、もしくは壊れそうな人は他の人の家か避難所へ行ってください!』

『家が無事な人は、避難者を受け入れてくれると助かりますっ!』


『次に門番と衛兵さんは住民の避難誘導をしてください!終わり次第、皆さんも隠れて下さい!』


『では皆さんお願いします!』


『『うぉぁぁぁぁぁああああああっ!!』』


 私はスピーチを終えた瞬間に強力な光魔法を発動させ、薄暗くなって避難が難しくなっていた街中を一気に照らした。


 それと同時にマップに人々の魔力反応を反映させ、避難の様子を確認している。


「くっ····· やっぱりフシ町は結構広いから避難が遅れてる·····」


 が、雪が多すぎて道も雪で埋まり、地面も舗装されてない部分が多いから泥だらけで歩きづらく、避難が遅れていた。


 とりあえず避難所までの道をマップに示し、私はそれに従って魔法を発動させる準備をした。


『みなさん!今から避難所への道を一気に除雪します!強い風が吹く可能性があるので気をつけて!』


 そのアナウンスから30秒後に私は指定地点に突風を巻き起こして雪を吹き飛ばして道を確保した。


『道は出来ました!早く通って下さい!』


 そしてその間にも私は並行作業をやっており、町中の積雪量のデータ化及び範囲指定、そして雪への魔力浸透を行っていた。


 この町の大きさは直径約4km強で、直線で構成されたカクカクした楕円、例えると横倒しになってもうちょい太くなった山手線の内側みたいな形だ。


 我ながら分かりにくいっ!!


 とりあえず大雑把に面積を計算すると『半径×半径×3.14(円周率)=面積』だから楕円というのを考慮して大体2平方キロメートル!

 ヘクタール換算で多分400ha!


 だから町というより都市という規模だけど、人口はおおよそ6万人で、この町の大半は工場とか鉱物の選別場だからこんなに土地が広くなってしまったのだ。


 たしか埼玉県の蕨市と同じレベルの人口密度だ。


 そして鉱業区と居住区は町の左右で別れており、西側が居住区、東側が鉱業区だ。

 理由はちゃんとある、この土地は西から大きな川が流れており、上流には生活用水で使うため居住区が、下流には鉱物の洗浄で使うために鉱業区がある。


 ちゃんと鉱害が発生しないよう考えられた町の形になっているのだ。


 まぁそんなことはどうでいい。

 要約すると、西側の密度がエグいし、東側も大きな工場とかが多くて積雪がヤバいし、町の面積もデカいから積雪量がエグい事になってるという事だ。



 そして、もうすぐ住民の避難が終わる。





 私はマップを確認して、逃げ遅れが無いかを確認しながら衛兵の人達に指示を出している。


 あと途中で私のおじいちゃん、この町を領地とする貴族である『シュテイン家』の衛兵の人達もお父さん達が声を掛けてくれたのか手伝ってくれたお陰で、1時間もしないうちに住民が誰も外に出ていない状況を作る事が出来た。



『これから5分後に雪を一気に退かします!その影響で多少揺れたり大きな音が鳴ったりする可能性があります!でも絶対に家から出ないように!そして念の為机の下や倉庫などの頑丈な物の下に隠れていてください!お願いします!』



 町民への警告はできたので、その間に私は最終チェックを行う。


 まずは町中の雪に浸透させた私の魔力の状況だ。


 この面積で平均1.7m近く振り積もった雪の総重量は恐ろしい事になっており、全体に魔力を浸透させるのに1時間近く掛かってしまった。


 計算だと1立方メートルの雪で約1トンの重量があるはず、そして『サイコキネシス』は質量に比例して消費魔力量が変化する。

 1トンの物で大体1000くらい消費する(普通の魔法使いの魔力量は大体5000)ので、普通なら民家1軒分の雪を退かすのが限界だろう。


 だとすると、この町の面積を計算すると、えっと、40万平方メートル·····だよね?


 となると消費魔力量は40万トン×1000だから約2億だけどこれは1mの場合だから、1.7mにして計算し直すと


「約7億か····· 私じゃなきゃ無理だね」


 浮かせる前でこの消費魔力量だ。

 浮かせた場合は1分ごとに7億近い魔力を消費していくし、屋根と接着した雪を剥がすためにも魔法が使うから、瞬間最高消費魔力量は約10億かな。


「·····大丈夫、自然回復の範囲内」


 私は動いていても毎秒10億近く魔力を回復するので、この程度なら朝飯前と言ったところだ。

 だけど億単位の魔力を消費するのはさすがに疲れるし、何より精神もめちゃくちゃ使う。


 まぁ慣れてるからこの程度問題ないんだけどねっ☆


「よし魔力は通った、あとはタイミングを見て浮かすだけだ·····」


 暫くマップ上の人の位置を見ていたが、大体の人の動きが止まったのを確認した私は再び『拡声魔法』を使った。



『では動かします!頭を守って下さい!』



「ふぅ·····『サイコキネシス』発動!あー、仮称『切断結界』よ雪を剥がせ!」



 シュキンッ!



 私は屋根に圧縮され凍りついた雪を剥がすため、強固な結界を極薄にした刃で凍った所を切り裂いた。


「浮かべぇぇぇええぇぇえええええっ!!!!」


 そしてラズワルドロッドを曇天の雪空へと振り上げ、それをトリガーに積もった雪を一気に持ち上げた。


 ズゴゴゴゴゴゴゴ·····


 まるで雪崩でも起きているのかというような音が鳴り響き、少しずつ積もっていた雪が空へと浮かび始めた。


「うぐぐぐぐぐぐっ····· さすがにキツいっ!」


 やはり大規模な魔法を使うと負荷がエグい。

 頭がビリビリと痛むけど、この程度の事でやめる訳にはいかないっ!!



「どぅおりゃぁぁぁぁぁあああっ!!!」



 先程までは家を傷付けないようゆっくり浮かべていたが、ある程度離れたので私は一気に空へと雪を浮かしていった。



「ひとつに纏まれぇぇぁえええっ!!」



 そしてフシ町を押し潰そうといていた雪は1箇所に集まり、超巨大な雪の塊が出来上がった。



「·····これどこに置こうかな」



 出来上がった雪玉はなんと直径約90m、なんとビル30階に相当する、想像を絶するような大きさだ。


 こんな大きさの物を置く場所なんて早々無い。


 ·····お父さんに聞こっと。


 私はお父さんのところまで魔法で声を飛ばして、同時に盗聴魔法も発動させて通信を開始した。



「もしもし?私ソフィちゃん、いまフシ町の上空に居るの、そっちの声も聞こえてるから独り言みたいに喋って!」


『うおっ!?ソフィか!凄い揺れたが大丈夫なのか!?』


「外を見ればわかるよ!」


『ちょっと待ってろ·····は!?』


 あっ、ウチのリビングあたりの窓が開いてお父さんたちが顔を出してきた。


 手振っとこ。


「この雪玉?なんだけどさ、どこに置けばいい?」


『マジかよ····· うちの娘、成長しすぎじゃねぇか·····』

『す、凄すぎるわ····· 一体どれだけの魔力があれば浮かせられるのかしら·····』

『ソフィだ!凄い、物凄い大きい雪玉だ·····』

『·····はっ、えっ、凄っ』



 おっ?みんなの声も聞こえてきてる。


 ·····置き場所聞いたんだけどなぁ。



「えっと、どこに置けばいいか聞いたんだけど·····」


『あっ、すまんすまん····· よし、とりあえずしばらく待機してくれるか、置き場所を相談する』


「仮置きって····· これ動かすのに毎分3億4000万くらい魔力使ってるんだけど、余裕はあるけどあんま動かしたくないから出来ればというか今すぐ場所教えて欲しいんだけど·····」


『おい、桁を5個くらい間違えてないか?』


「えっ、さすがに3兆4000億だと私でも1分しか持たないよ!?」


『そっちじゃない!!というか3兆もあるのかよ!!1分も持つのかよ!!あと桁を上方向に間違えるな!!』


「早くしてよー!!この間にもめちゃくちゃ魔力減っていってるんだから!!」


『わかったわかった!!!町の坂道広場に氷室がある!場所は分かるよな!そこの前の広場に置け!』


「了解っ!!」


 町の坂道広場は·····

 あそこか。


 確か河岸段丘の斜面がキツすぎて家が建てられなくて、野原にして憩いの場になってるエリアのはず。

 あそこの斜面を掘って氷室が作られてたんだっけ。


『大丈夫か!?本当に動かせるのか!?』


「たかが雪玉一つ!魔法で押し出してやる!ソフィ・シュテインは伊達じゃない!!」



 私は雪玉を全力で押しながら、氷室のある町の南西方向へと移動して行った。



 ·····まぁ、私の推進力で動かしてる訳じゃなくて、普通にサイコキネシスで動かして私は押してるフリをしてるだけだけどねっ☆



「あっそうだ、いつかガ〇ダムみたいなの作ろっと」





「よいしょー!!」



 ズゥゥゥウウウン·····


 何事も無く氷室のある広場に大雪玉を下ろした私は、『サイコキネシス』を解除した。


 ズドドドドドドッ!!


 そして雪玉は形状を私が魔法で保っていたので、解除された途端崩れて雪山になった。



「ソフィ!大丈夫か!」


「あっお父さん!大丈夫だよっ!」


「·····すげぇな、一瞬でめちゃくちゃデカい雪山が出来ちまった」


「だねぇ·····」



 雪山は少し低くなって高さ85mになったが、それでも街中にこれだけの大きさの山が出来ると壮観だ。



「あっ、ちょっとまってね、町のみんなに伝えるから!すぅ·····」



 私は呼吸を整え、町民に雪かきが終わった事を伝えるため、拡声魔法を使った



『あー、あー、町中の雪は町民の娘、ソフィ・シュテインが全て除雪いたしました!もう外へ出ても大丈夫です!もう雪かきをする必要はありません!そして雪は氷室前に集めて巨大な山となっています!後処理は皆さんにお任せします!!』


『『うぉぉおおおおっ!!』』




 こうして、フシ町を襲った前代未聞の大雪は私の魔法によって片付けられ、フシ町は危機を脱したのだった。




名前:ソフィ・シュテイン

年齢:12歳

ひと言コメント

「·····さてと、最後の仕上げでもしよっかな」


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