大質量物理攻撃兵器『賢者の杖』
「ええと····· 静止衛星軌道はここら辺だっけ·····」
私は今、天使セットを着用して宇宙空間を漂っていた。
なぜ私が宇宙空間にいるかと言うと·····
あっ、やべもう言ってたわ。
そう、私は衛星軌道に私専用の衛星を作ろうと考えているのだ。
というか実行中だ。
「ふんふふーん♪」
私が作っている衛星は前世で衛星と言われて思い浮かぶのとはかなり違う、直径20mほどの綺麗な球状の衛星だ。
もちろん球形にしたのも理由がちゃんとある。
耐圧の性能においては球状は最強の形状である事、そしてこの衛星の中心に向けて重力魔法を発生させて中でも歩けるようにしたいからだ。
というか、球状が宇宙空間で理想的な形状なのは惑星や恒星を見れば分かるだろう。
つまりこの人工衛星は宇宙空間に特化した究極の形状なのだ。
「っよいしょぉおおお!!」
私はディメンションルームの『格納庫』から事前に作っておいた衛星を取り出して、魔改造して出力を上げた『飛翔魔法』で衛星ごと静止衛星軌道を飛び始めた。
目標速度は秒速約8km、時速換算で約28800kmだ。
「うおりゃぁぁぁぁあああああっっ!!!」
この6年くらいでレベルアップした私は、『須臾』を使わずともこの程度の速度で飛べるようになった。
しかもこの衛星は推定重量·····何トンだろ?
まぁ何トンでもいいや、巨大な金属の塊を私は魔法で軽々牽引し、地図を見ながら静止ポイントに向けて目標速度まで加速していく。
「よし到着っ!!」
そしてあっという間に到着したのは、魔法学校やフシ町のある盆地の中心の遥か上空だ。
「魔導アンカー射出、位置固定!」
魔導アンカーとか言ったけど、実は地表とかには何も刺さってない。
空間魔法とか飛翔魔法とか重力魔法とか色々か魔法で盆地の真上に固定しているのだ。
「よし固定完了!あとは色んなテストだよっ」
まず出入りに関しては魔導障壁で私だけ通れるようにしておけばOKなのでハッチは必要ないんだけど、間違って生身で外に出ちゃったら『考えるのをやめた』するハメになるので赤道の位置にハッチがあって、簡単には外に出られないようになっている。
もちろん結界もあるので開けても空気が外に漏れないし、常に『ディメンションルーム』経由で酸素を供給してるので酸素や水不足にはならない。
そしてこの衛星の構造は4層構造で、1番外側が居住区、第2層がコントロールルーム、第3層が『武器庫』、第4層が『重力・動力室』になっている。
そして多重結界による各種バリアも張ってるので、隕石が衝突しても平気で耐える設計だ。
「よいしょっと、重力良好、宇宙線遮断良好、あとはー·····何かわからないけどとりあえずヨシッ!」
指差し確認を終えた私は、早速操縦室へとやってきて、操縦席に座った。
「じゃあテスト開始、爆撃衛星『賢者の杖』起動」
ヴンッ
この操縦席は窓さえない球状の無重力状態になってる部屋で、中央に浮遊する座席が1つあるだけというシンプルな構造だ。
だが、この部屋は起動する事で真価を発揮する。
真っ暗な部屋が突如星が輝くプラネタリウムになり、眼下に青い地球が、私が憧れていた某宇宙実験室そっくりな景色が広がり、色々な情報が表示された青白いホログラムウィンドウが現れた。
イメージはアレだ、某汎用人造人間兵器のエントリーするアレの中だ。
そして、座席をフリー回転するように設計しておいたから、レバーを弄れば·····
「よいしょっ、おおうっ!?」
ギュルンッ!!
座席についた座席回転レバーを動かすと、座席がグルグル回り出して止まらなくなってしまった。
「ああーー!!!目が回るるるるるるるるぅー!」
というかレバーを離しても回転が止まらなくてヤバ
「んぷっ、ヤバ、吐くぅ!ええい!座席を地球に向けて!」
キュッ!
「んぶっ!?」
座席が急に止まり、止まった勢いでなんか出かけたけど乙女の意地で飲み込んだ。
「ごくんっ····· あー····· これは凄いや·····」
そして私は地表に対して並行な状態になった。
そんな私の視界いっぱいに美しい地球が·····
あっ、言い忘れてたけどこの星の事を私は呼びなれた地球って呼ぶことにしたよっ☆
そして、この衛星は盆地の真上に固定されているから盆地がとてもよく見える。
「んふふふふ····· これなら正確に爆撃できそう」
そう、この衛星は私の趣味で作ったワケでは無い。
コイツの真の姿は『衛星兵器』だ。
普段は軌道高度約1000kmを地球自転速度と同じ時速1700kmで動いている静止衛星だが、本気を出すと世界中どこにでも移動して局所爆撃を行うのだ。
しかも、使用するのは魔法で作ったレーザーとか、マジックバレットとかじゃない。
だだの高さ4.5m 直径30cmの金属の棒だ。
そう、コイツはアメリカが開発してたという運動エネルギー爆撃衛星をパク····· 私が異世界で完成させてあげた究極の物理兵器なのだ!
私は魔法が凄く強いから必要なさそうに感じるけど、もしかしたら魔法無効の敵が現れるかもしれないと先日気がついたので、100%物理の超威力攻撃の方法を考えた結果生まれたのだ。
んふふ·····
しかもここは地表から1000kmという超上空、例えドラゴンであろうが衛星まで届く攻撃は不可能だ。
だからここに逃げ込めば一方的に攻撃できちゃうワケなのよ!
◇
「よし、移動開始、目標地点は大陸奥部の砂漠」
とりあえずひとしきり操作をして操縦に慣れた私は、衛星を固定状態から解放して移動を開始した。
狙う場所は大陸のかなり奥にある、人が住んでおらず魔物くらいしか住んでない砂漠だ。
そりゃ人工隕石を落とすんだから、フシ町とかの近くに落とす訳にはいかないからねっ☆
「『杖』装填、攻撃地点ロックオン開始」
ガコンッ
ギュィィィイイイイイ·····
衛星が宇宙空間に固定され、地表に向いた部分にある射出口が開いた。
そして第3層、通称『弾倉』に収納してある金属の棒が射出部に装填され、魔法が付与された。
付与した魔法は、重力魔法の『質量増加』、風魔法の『風遮断結界』、火魔法の『熱遮断結界』、オリジナル魔法の『魔伝導体』の4つ。
そして射出部というか砲身は『マギ・レールキャノン』というレールガンの改造で、ただの鉄の柱を魔力で加速して地表にぶつけるという仕組みになってる。
·····のだけど、ただの鉄の柱だと加速が効かなかったので魔力で包んで加速ができるようにしてある。
あとは鉄だと重さが足りなかったため、重力魔法で質量を強制的に増やしてある。
あとは大気圏突入時に断熱圧縮が発生して砲弾が減速したり溶けないように結界も張ってあり、対象から一定距離まで近づくと解除されて純質量兵器となる仕組みだ。
要するに、大気圏突破までは魔法による保護をして、大気圏内に入ったらパージしてドカーンだ。
ちなみに発射時にものすごく反動が来るので、空間魔法とかで反動で吹っ飛ばないよう調整してある。
「んー、目標は····· あのオアシスあたりでいっか、ロックオン完了、衛星固定準備完了」
投下地点が決まったので、各種機関に魔力を流して発射準備をする。
「ふぅ····· 緊張する·····」
発射トリガーとかは特に無くて、衛星と魔力で繋がった状態の私が指示を出せば発射される。
とにかく、精神を安定させて·····
「よし、『賢者の杖』発射!」
·····あっ、そうか宇宙空間だから音は無いよね。
しかし、砲弾は目にも止まらぬ速さで地表へと向かい、あっという間に着弾すると·····
「えっ、やばっ·····」
さすがに肉眼では見えないけど、ズームして見てみると巨大なクレーターが出来てて、その中に地獄絵図が誕生していた。
「これは····· うん、簡単には使っちゃいけないやつだわ·····」
毎度毎度思うんだけど、私がなんか思いついて実行すると大体地形が変わっちゃうんだよね·····
前に魔物イノシシを『須臾』で爆散したときは後ろの山が半分消し飛んだし、その前に『ラズワルドロッド』を使ってゴブリンを撃った時は盆地に新しい直線道路が出来たし、他にも色々·····
でも今回は桁違いにヤバい、たぶん直径数百メートル、下手したら1kmに届くほどのクレーターができてしまった。
·····普通の隕石より速い速度で投下したからかな?威力が桁違いに高いんだけど。
あーあ、衝撃波が雲吹っ飛ばしてるよ·····
というかマジヤバいな、爆風で砂漠がー····· えっと、マップによると····· は?10km!?
ええと、着弾地点から10km圏内の砂漠の砂が吹っ飛ばされて、岩盤が露出してしまった。
しかも被害はそれだけに留まらない。
遮る物の無い砂漠という地形ゆえに、超高温の爆風により溶けた砂がガラス状になって吹き荒れ、熱に強い魔物でもサンドブラスターのように削り取って骨ごと大根おろしにして命を奪い尽くしていた。
たぶん威力が残ってる範囲は100km〜400kmくらいで、あとは爆風と強力な砂嵐の被害が出た程度だろうけど、それでもエグすぎる。
クレーターの中が真っ赤になるって一体どれだけの威力よ·····
という感じで、直撃したあたりを詳細に分析しながら、アカシックレコードへと記録していると、ホログラムウィンドウの1つが壊れていた。
「あれ?カウンターがとんでもない勢いで回転してる?おーい、大丈夫?·····やべっ」
この狂ってるカウンター、魔物討伐数を記録してたヤツだわ。
·····やっべ!あそこにあったやけにデカいオアシス消滅してんじゃん!
しかもなんか『ダンジョン殲滅者』って称号ついたんだけど!?
あそこダンジョン化してたの!?
あー!!今度は『ドラゴンスレイヤー』って称号ついた!!?
えっ!?あそこのボス、ドラゴンだったの!?
·····お宝がぁぁああああっ!!
「あーあ、あーあ!もうダメだこりゃ!砂漠の生態系も変わっちゃうじゃん!あはははは!もうどうにでもなーれ!·····おごごごこごっ!?!?!?」
あばばばばばばばばばば!?!?!?
アタマがっ!?アタマが割れるっ!
「あばばっ!?こ、これヤバっ、し、しぬ····· うごごごご·····」
こ、これ、経験値が、一気に入っ、て、レベルが、めっちゃ、上がっ····· て·····
「くぴゅう·····」
私はレベルアップの負荷に耐えきれず、座席にシートベルトで固定されたまま気絶してしまった。
名前:ソフィ・シュテイン
年齢:12歳
ひと言コメント
「まさか投下地点にダンジョンがあるとは思ってなかった、今回は私のせいじゃない!あそこにあったダンジョンが悪いんだ!!」
《進化》
レベルアップと特定条件を満たしたため、種族が変化します
【ソフィ・シュテイン】
人間→???
名称 : 砂漠のダンジョン
攻略難易度 : S+
状態:『消滅』
ボス:アダマント・ドラゴン(S級魔物)
世界中に存在するダンジョンの中でもトップクラスの難易度を誇るS+級のダンジョン
周囲数百kmが砂漠なので途中での補給が不可能なため、攻略どころか入口に辿り着くことさえ不可能な人類未発見のダンジョンだった。
·····が、爆風でダンジョン全域が吹き飛ばされて消滅した。
また、ドロップアイテムや財宝はごく一部がソフィのインベントリに収納され、それ以外は消滅した。
ちなみに、ボスのアダマント・ドラゴンは伝説級の魔物で、暴れれば国が数個消えるほどの強さを誇っていたはずである。
·····が、運悪くソフィの投下した鉄柱が直撃、訳もわからず即死した。




